君の初めては、僕のもの
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服に着替えて部屋に戻った2人はガラス越しに夜景の広がるリビングで食事を取っていた。
窓際に寄せられた高級感のある机上には、見たことのないフランス料理が置かれあかりはそのたびに目を輝かせた。
フランス料理のフルコースが一品ずつ、ちょうど食べ終えた頃に運ばれてくる。緊張気味のあかりはワインを呑みながら無駄のない所作で食事を進める月島をチラリと見つめた。その視線に気付いた月島は、ふっと鼻で笑っている。
「食べ方わかんないんでしょ」
「そっ…そんなことないです…けど…(ず、図星...)」
「ふぅん?それ、逆だけど」
ニヤリと片側の口角を釣り上げる月島の指摘に、あかりは彼と自分の手元を見比べてハッとした。
彼の手元を真似することに集中しすぎて、途中からミラーになってしまったらしい。
「嘘つきました....すみません...」
「ふ、別に謝ることないでしょ。誰か見てるわけじゃないし、ご飯くらい好き食べなよ。」
「(月島くんに見られているのが一番緊張するんですけども...!)」
しおらしい彼女の様子に、クスクスと笑いながら白ワインを煽る月島。
次の機会までには必ず作法をマスターしようと心に決めて、再び月島の動作を見様見真似で食事を進めたのだった。
———————————
時刻は22時過ぎ。
食事を終えた2人はふわふわの大きなソファに座り、残ったワインを呑みながら過ごしていた。
「(ああっ落ち着かない....!せっかくのお食事の味もよくわからなかったですし...!お酒は美味しいし...!)」
ソワソワしながらワイングラスに口をつけるあかりの脳内はパニックを起こしていた。
嫌でも目に入る大きなベッドの存在感。
今まで夜を同じベッドで過ごしたことのなく、意識せざるを得ないあかりはぎこちなく口を開いた。
「あ、あのっ、食事、美味しかったですね....!」
「....あぁ、うん。そうだね」
月島は何か考え事をしていたのか、一呼吸置いて返事をした。その様子に少し心配になったあかりは首を傾げながら彼の顔を覗き込み、口を開いた。
「大丈夫ですか...?」
「だ、大丈夫だから....ちょっと離れて」
彼の顔色を伺うため、ずいっと自分の顔を近づけるあかりの肩を掌で軽く押し無理矢理離れさせた。
珍しい彼の反応と、その手に拒絶されたような気持ちになり、あかりは胸が痛むのを感じながら眉尻を下げた。
「お風呂、入ってきたら」
「....はい、ではお先に...」
ぺこっと頭を下げてお風呂場へ向かうあかりの後ろ姿が見えなくなった瞬間、月島は前髪をぐしゃりと掴み盛大な溜息を吐いた。
ソファから立ち上がり、ガラス越しに賑やかな夜景を眺めながら、「お膳立てはしたぞ」なんて言っていた白川の言葉を思い出していた。
正直ひとつのベッドで夜を過ごすなんて、余裕だと思っていた。もちろん我慢をすることが、だ。
あんなに辛い思いをしたばかりの小さな体に、また負担をかけるようなことをしたくなかったし、何より自分の手で傷つけてしまうことが怖かった。
そんな自分の意思に反して、今日のあかりはいつも以上に愛らしく見えた。そして恐らく彼女も意識をしているのだろうか、時折色っぽくも見えて、何度も身体が熱くなるのを感じた。
絶対に傷付けたくない。
だがたしかに、その先を望む自分もいた。
相反する2つの願望が自分の心をぐちゃぐちゃに掻き乱す。
「ほんと、かっこ悪...」
自分の中に、制御できないほどの欲望があったなんて。ガラスに反射する自分の顔が情けなく見えて、それに背を向けるとワイングラスに入っていた残りを全て飲み干した。
一方、あかりはシャワーを浴びて一通り身体を洗った後、食事前に予め沸かしておいた湯船に浸かっていた。
家のお風呂場とは違い、足を伸ばしても余裕があるほどの大きなバスタブに顔の半分まで湯船に浸けた。
先程の月島の様子が気にかかり、思わず溜息が漏れる。やはり疲れさせてしまっただろうか、食事まともにできないことを呆れられたのだろうか、それともこれからのことを彼も考えているのだろうか...
ふと、髪の巻き方を教えてくれたサチのメールの内容が思い浮かぶ。そういう行為、について無知だった私に「これで勉強しなさい!」と渡されたのは少女漫画だった。
そのおかげで大体何をするか、というのはわかっているつもりだ。だがいざ月島とベッドを前にすると緊張と羞恥心、ほんの少しの恐怖で動けなくなりそうだった。
ビーチベッドで横になるだけでも耐えきれなかったのに...と、自分に呆れ返りながら頬をパチンと叩き、勢いよく立ち上がる。
「こんなことでは...今日は情けないところばかりお見せしましたし...よし!」
お風呂から出ると、肌をケアし、髪を乾かして、サチおすすめのお泊まり用化粧を軽く施し、薄いピンク色のリップをつける。
月島の元へ戻ると、バツの悪そうに顔を赤らめた彼が「僕もお風呂入ってくる」とだけ言い残し、お風呂場へ向かった。
暫くしてお風呂から上がった月島は未だソファで肩を固くさせている彼女を見つめ、苦笑を浮かべながらその横に腰掛けた。
その2人の間には1人分ほどの間が空けられており、その空間にはなんとも言えない緊張感が漂っている。
「....そろそろ寝ようか」
「はっ、はい...!」
無表情を装う月島の声に、過敏に反応を見せるあかり。ベッドに向かうその手足は右と左で一緒に出てしまっている。そんな彼女の後ろ姿に呆れた笑みを溢す月島はベッドに入った。
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ、なさい」
恐る恐るベッドに入りあかりは目を瞑る。
いつ始まるんだろう、と緊張で胸が高鳴る。だがいつまで経っても月島は動く気配がなく、チラリと視線を送ると綺麗な寝顔が見えた。
「(まつ毛長い....本当に綺麗な寝顔です...)」
そっと彼の寝顔を覗き込み、その寝顔に愛らしさを感じながらあかりはその薄い唇に触れるだけの軽いキスをした。
すると、離れようとしたあかりの後頭部は大きな手で包み込み込まれ、月島は強引にその唇を奪った。
「....っ!?...っん、...っ、」
「っは....こっちがせっかく我慢してるのに、本当なんなの....?」
月島は自分を覗き込んでいたあかりを隣に押し倒した。彼は湧き上がる欲望を隠すように不機嫌そうな表情を浮かべている。
「我慢、してるんですか....?」
「当たり前でしょ...」
「あの、それはどうして...」
おずおずと自分を組み伏せる彼の瞳を見つめるあかり。はぁっ、と溜息を吐きながら片手で自分の顔を覆う月島は仕方なく口を開いた。
「っ、そもそも他人に急かされるものでもないし」
「うっ、たしかに....」
「..........それに、傷付けたく、ない」
月島はバツの悪そうな顔を逸らしながら、小さな声で呟くように言った。
何の根拠もないけれどきっと本音は後者だろうと感じたあかりは、目の前の彼に対して愛しさが込み上げ、その頬に触れた。
「大事にしてくださって、ありがとうございます」
「べ、別に…当たり前でしょ…(ああもう、かっこ悪...退こ....)」
「それなら、あ、の…」
顔を逸らしたまま口を尖らせる月島のバスローブの胸元を、指先でつんと引っ張り遠慮がちに口を開いた。
「キス、してくれませんか....?」
彼女からの想定外の申し出にぶわっと顔を赤らめて「は!?」と聞き返す月島。彼女の唇は小さく震えていた。
「月島くん、との...その、気持ちよくて...」
腕で口元を隠すあかりは聴こえるかどうかの小さな声で恥ずかしそうに呟いた。
その姿に月島はゾクッ、と体が反応するのがわかった。
「...っ、後悔しても知らないから」
口元を隠す腕を退ける月島の熱を帯びた瞳が、羞恥に顔を染めるあかりを捉える。彼女は震えながら目を瞑った。
そしてゆっくり潤んだ彼女の唇に、自分の唇を合わせる。まだ慣れない様子の彼女の呼吸を注視しながら、その唇の柔らかさに酔いしれる。
触れただけのキスから、月島は舌で彼女の唇を開かせなぞるように舌先を絡めた。
「んっ...は....っ、(こんな、...っ何も考えられなく、なっ...)」
上顎をなぞる彼の舌の刺激が、あかりの身体中を駆け巡る。待って、と言葉を出そうとするも、全て喘ぐような声に変わってしまう。さらに追い詰めるように月島の指が耳に触れ、また変な声が出てしまった。
そろそろ限界かな、と月島は唇を離しニヤリと笑いながら蕩けた表情の彼女を見下ろした。
「....へぇ、キスだけでそんな顔になっちゃうんだ」
「つ、きしまく...見ないで...」
「君がしたいって言ったんだよね?」
月島は自分の口元についたどちらともわからない唾液を親指で拭い妖艶な笑みを浮かべたかと思うと、再び彼女の濡れた唇を啄んだ。
「ねぇ、舌出して」
「っ....は、い」
有無を言わさないような彼の言葉に、ぎこちなく少しだけ口から舌を出した。彼は羞恥に震えるあかりの表情にゾクリと鳥肌を立てながら、赤く濡れた小さな舌に自分の舌を絡ませた。
ぬるり、とした感触に思わずあかりの声が上ずる。
それに構わず、月島の舌は彼女の中を愛撫し続けた。
「(............あ。)」
夢中になっていた月島がハッとして顔を離すと、息も絶え絶えになっているあかりはまるでのぼせた様な顔になっていた。
「やりすぎたか」と急いで備え付けの冷蔵庫に入っていたペットボトルの水を取りに行き、彼女に手渡した。
「...ごめん、大丈夫?」
「っ、だ、大丈夫です....ありがとうございます...」
「だから、後悔するって言ったのに」
ベッドに腰掛け、水を飲む彼女に背を向ける月島。その声から彼がどんな表情をしているから手にとるようにわかり、思わずクスッと笑みを溢した。
「月島くん」
「なに...ちょ、あかり...」
あかりは後ろから抱きしめる様に、その背中に身体を付けてそっと耳打ちする。背中に当たる柔らかい感触に全ての箍が外れかけるのを感じ、月島は固まってしまった。
「後悔なんて、するわけ....ありま.......」
「.......?」
背中にふっと力が抜けた様に体重がかかり、月島が彼女の名前を呼ぶ。が返ってくるのは小さな寝息の音だった。
月島はゆっくり彼女をベッドに寝かしつけて、その横に寝そべりながらそのあどけない寝顔を見つめる。
「(こっちの気も知らないで、呑気なもんだよね...全く)」
彼女の顔にかかる前髪を指先で避けて、思わず呆れた笑みを溢す月島。
「今日はこのくらいにしといてあげる」
彼女の頬にキスを落として、月島も寄り添うように寝転ぶと、ゆっくりと目を閉じた。
———————————-
朝、目を覚ましたあかりの視界に飛び込んできたのは、自分の方に体を向けて眠る月島の寝顔だった。
お互いに向き合って眠っていたようで、鼻がくっつきそうなほどの超至近距離に、あかりは思わず息を呑んだ。
「(ちっ、近い...!危うく声出そうでした...)」
すやすやと寝息を立てる彼の顔をまじまじと見つめながら、あかりの口元は緩んでいた。いつもの意地悪い笑みや、嘲笑を浮かべる彼を思い出しながら、同一人物とは思えないほど可愛らしい寝顔に思わずクスリと笑った。
「(あれ?そういえば昨日...どうやって寝たんでしたっけ...)」
ふと寝る直前の記憶がないことに疑問を抱き、目を瞑りながら記憶を辿ってみる。
「(たしか、ベッドに入ってそのまま寝てしまいそうになって、私から...それで何度も何度も、キスを、して....)」
と思い返した辺りで込み上げてくる羞恥に耐えきれなくなったあかりは顔を両手で覆い、叫び出しそうになるのを必死に堪えた。
「(いやいやっ、そこは一旦置いといて....!そのあと..あ、思い出しました...!私寝落ちしちゃったのでした...!!)」
思い立ったようにパチ、と目を開けると、そこにはニヤニヤ笑みを浮かべる月島の顔があった。あかりは驚いて上半身を起こし「わぁ!」と声を上げた。
「朝からお盛んデスネ」
「おさっ....!?」
いつから見られていたのかと聞きたくなったが、全てを見透かしたような瞳の月島を見ると、それは愚問であると感じる。
あかりは言い訳を諦めて、欠伸をする彼にぎこちなく「おはようございます」と言った。
「おはよう。でもまだ早いんじゃない」
ベッドの横にある棚のスマホ画面をタップすると、表示されたのは時刻は7時30分だった。
「本当ですね、すっごく寝た気がしたのですが...」
「そうだね、すっごい寝てたね」
「ゔ、すみません....寝落ちしました...」
「僕の背中でね」
ぷっとわざとらしく笑う月島に、あかりは狼狽えながらベッドの上で正座に座り直し、素早く何度も頭を下げていた。
「すみませんすみません....!!本当にごめんなさい...!お恥ずかしい...!」
「ちょっと、謝りすぎ」
呆れたような笑みを浮かべる月島は上体を起こし、正座する彼女の腕を掴んで引き寄せた。
「わぁっ、つ、月島くん...?」
「もうちょっとだけ」
月島は無抵抗の彼女を包み込むように抱き締めて横になった。まるで抱き枕のようにされるがままになっているあかりは、その心地いい温もりに包まれながら眠りについた。
そして9時頃、ほぼ同時に目が覚めた2人は若干の気恥ずかしさを抱えながら起床した。
それぞれ身支度を整えながら、着替え終えた月島を見つめるあかりは嬉しそうに口を開いた。
「月島くん、スーツなのですね」
「うん。一旦家帰れればよかったんだけど」
最低限の替えだけ持ってきていた月島は新しいワイシャツに身を包んでいた。紺の控えめなストライプ模様のスーツがよく似合っている。
今はクールビズらしくジャケットやネクタイは無く、第2ボタンまで開けられている首元からは若干の色気が見え隠れしていた。
「いえ!私、月島くんのスーツ姿とても好きなので...!むしろありがとうございますというか.....!」
「なにそれ、変わってるね」
「やはり月島くんは全然わかっておられないようですね...!」
理解不能とでも言いたげな月島の表情に、腰に手を当てて胸を張りながらあかりは口を尖らせた。
「スーツ姿の月島くんは、世の中の全女性が見惚れるくらいカッコいいと言っても過言ではないのですよ!」
「それ、すごい過言だし、何で君が偉そうなの...」
「あ!スーツはあくまでオマケ要素であって、月島くん自身が最高に格好良いので、そこは誤解されないようにしてくださいね!」
「(この子たまに山口みたいなこと言うんだよな....)」
彼女の勢いに圧されるまま、呆れて言葉も出ない様子の月島は、地元にいる親友の顔を思い出していた。自分のことのように自慢していた彼を懐かしく思うと同時に、彼女の目に自分がそう映っているなら「まあいいか」という結論に至った。
「バカなこと言ってないで早く行くよ」
おでこを指先で軽く弾き、目を瞬かせるあかりを鼻で笑いながら部屋の出入り口の方へ向かった。
「あっ、待ってください....!」
慌ててカバンを持って扉に手をかける月島のワイシャツを掴んだ。「ん?」と後ろを振り向く月島に、あかりは「ちょっと屈んでください」と手のひらでジェスチャーをしている。
疑問符を浮かべたまま月島はそれを読み取り少し屈むと、あかりは精一杯背伸びをして彼の唇に触れるだけのキスをした。
「ふふ、行きましょうか!」
無邪気に笑いながらあかりは扉を開けて共有の廊下に出た。月島は一気に顔に熱が集中していくのを感じながら、深い驚きを吐き出すようにため息をついて部屋を出た。
チェックアウトの時間にはまだ時間があるからか、人気のないエレベーターホールで上機嫌な様子で鼻歌を歌うあかりと、羞恥に眉を顰める月島は並んで立っていた。
すぐにチン、という音がエレベーター到着を知らせる。そこには誰も乗っておらず、あかりが最初に歩みを進め、片側の広角を上げる月島が後から乗り込んだ。
エレベーターの扉が閉まり一階のボタンを押したあかりはくるりと振り向いて口を開いた。
「そういえば、今からどちらに...わ、あの...!?」
エレベーター奥の壁に背を預け、ニヤリと笑みを浮かべる月島は、驚愕の声を上げるあかりの腕を引き寄せた。そして彼女の顎を指先で固定し、フン、と鼻で笑った。
「君って、結構煽り上手だよね」
「なっ、....っんん...、ちょ....っ...、んっ...(こんなところで...っ)」
月島は優しく口付けをし、柔らかな唇を自分の唇で啄む。そして彼女の唇を舌で無理やりこじ開けて逃げる舌を絡めた。
エレベーターは速度を落とさず駆動音が聞こえ続けている。
月島は下がっていく階の数字を見ると一度顔を離し、余裕そうな笑みで涙目になる彼女を見下ろした。
「...っ、はぁ...昨日より、上手くなったんじゃない?」
「つ、月島くん...これ以上、は...っ」
「まだ、だめ」
正反対に余裕が1ミリも無さそうな彼女の言葉を遮るように、月島は唇を押し当た。なんとか逃げようとするあかりの後頭部を手で包み、逃がさないというように深いキスを繰り返す。
やがて、階数が3階を通り過ぎ、エレベーターが止まる合図をするかのように速度が緩むのを感じた月島は唇を離した。
そして解放した彼女の前に出て、エレベーターの扉の前に立った。
チン、という音と共に開かれた扉の左右には、エレベーターに乗ろうとしている人達が並んでいる。
月島は涼しい顔をしてエレベーターを降り、彼女の様子を伺うためチラリと後ろを見た。ワンテンポ置き、耳まで真っ赤にさせて俯きながら早歩きで追いかけてくる彼女を、エレベーター待ちしていた人が不思議そうな視線を送っている。
エレベーター乗り場から少し離れて、ロビーへ向かう途中、悪戯な笑みを浮かべた月島が口を開いた。
「君ポーカーフェイスできない人種だったっけ」
「だっ...誰のせいですか....っ」
「なんかデジャヴ」
「今回は悪くないですよね、私...!」
未だ目を潤ませながら必死に抗議するあかりに、悪戯な笑みを浮かべる月島はそっと顔を近づけた。
「口元、汚れてるよ?」
「〜〜〜っ!ちょっとお手洗いに...!」
耳打ちされたあかりは瞬時に口元を両手で覆い、ロビーの隅にお手洗いの看板を見つけると小走りで向かっていった。
その素早さにクスクスと笑いながら、チェックアウトを済ませるためロビーのカウンターへ向かった。