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月島 {君、名前は?
月島{名字も教えて。





「いやぁー見事にハマりましたねぇ。ツッキーは」


「ハマった、ですか...?」


あかりの後ろに座る黒男は足を組み、そこに肘をのせて頬杖をついていた。


「まさかあの眼鏡君がこーんな必死にプレーをするようになるなんて、思ってもなかったですよ。」


「月島くんは、学生時代どんな選手だったのですか...?」


「なんっつーか、いつもクールで頭もキレるしセンスもあって...」


昔を懐かしむような声色で話す黒尾。昔の月島を垣間見ているようで、そのくすぐったさにあかりは小さく笑った。



「あー、ところで、お嬢さん。もしかしてバレーやってた?」


「はい!もう昔の話ですが...」


「通りで。今の試合の2セット目、お嬢さんの応援なかったらあのまま焦り続けて、ツッキー下げられてたかもしれないですよ」


残念だ、と言わんばかりに意地悪な笑みを浮かべる黒尾。


「ちょっと、黒尾さん。なにしてるんですか」


不意に聞こえた声に視線を送ると、首にかけたタオルで汗を拭う月島が不機嫌そうに立っていた。


「お、ツッキーお疲れさん〜。おたくのお嬢さん、お借りしてますよ」


「はぁ...あんまり余計なこと吹き込まないでくださいよ。あとその呼び方、やめてください」


ひらひらと手を振る黒尾に、眉間に皺を寄せて心底呆れた表情を浮かべる月島。
あかりは珍しい月島の表情にクスリと笑う。


「まだなーにも。それよりすげーじゃん、ツッキー。この調子だと昇格も夢じゃないね」


「(まだ...?)何言ってるんですか。上には上がいますから。」


「あ、まーた言ってる。お嬢さん、この人ね。こんな背ぇでかいくせして、昔からすーぐうじうじしちゃうんですよ。」


あかりの耳元に近寄り、黒尾は胡散臭い笑顔を浮かべる月島に聞こえる声でニヤリと笑った。その言葉に、月島はジロリと黒尾を睨みつけている。


「まじでうるさいです、黒尾さん」


「あぁっ!月島ぁ!彼女と密会かぁ!?」


「うわ、またうるさいのがきた...」


突如現れたのは白川だった。月島は顔に手を当て深い溜息を吐く。


「かかか、彼女ではないですよ...!!断じて…!」


「(そんなに否定しなくても...)いーから、間に受けなくて」


白川の言葉に全力で首を振るあかりに、内心少しだけ気を落としながら月島は呆れた口調で、彼女に視線を送った。
彼女の否定を聞いた白川は急に緊張した面持ちで手を差し出した。


「俺、白川優っす!!付き合ってください!!」


「えぇっ!?あの...いえ、私は、あの...!」


「だから、いーから、間に受けなくて」


苛立ちを隠せない様子の月島は、隣に並んで頭を下げる白川の頭を軽く叩いた。
「先輩を叩くとは何事だー!」とジャンプして月島の頭を叩こうとするが上手く避けられて、白川は悔しそうにしている。

すると、あっと声をあげて思い出したかのように白川が口を開いた。その表情は悪戯な笑みを浮かべている。


「そういえば今日お前、序盤イライラして調子悪そうだったよな〜」


「1セット目、ツッキーのミス連発で落としてたしねぇ〜あぁ、でもこのお嬢さんきてから、変わったみたいだったけど」


白々しい口調で、白川と全く同じ表情をしている黒尾に対し、当の月島は少し顔を赤らめ言い返そうと口を開く。が、その前にあかりの方が一呼吸早く声を上げた。


「あ、それは私がというよりスポーツグラスがなかったせいかと...」


「...う、うん。」


「「(哀れな月島(ツッキー)って貴重だ....)」」


そんな他愛無いやり取りを繰り広げていると、白川が体育館の時計を見て驚愕の声を上げた。


「やっべ!!月島、次の試合始まっちまうぞ!飯まだ食ってねーのに!」


「じゃ、君も早く帰りなよ。」


「うわぁ、ツッキーさいてー。この後も試合あるでしょ。お嬢さんも、みたいよねぇ」


時刻は12時50分。
月島はあかりを見つめて帰宅を促すと、黒尾が大袈裟に口元に手を当てながら前に座る彼女を見た。


「残念ですが、月島くんが帰って欲しいようでしたら...でも、とってもカッコよかったですよ、月島くん。ずっと見ていたいくらいでした!」


そう言い、月島に花が咲くような笑顔を向けるあかり。彼女な表情に思わず固まり、耳まで赤く染めている月島は眉間に皺を寄せて固まっていた。


「あ!月島が照れてる!うわ!!照れてる!!くぅぅ、俺も言われてぇええ!」


「(んーこのお嬢さん、もしかして天然かな...?)」


茶化す白川をよそに、黒尾は再度哀れみの視線を月島に送った。


「...か、帰って欲しい、とは言ってないけど」


目の前で首を傾げる彼女から思い切り顔を逸らし、小さな声で呟く月島。あかりはその言葉に大きく頷き、嬉しそうに微笑んだ。


「頑張ってくださいね。月島くん、白川さん」


彼女の言葉に喜ぶ白川が調子良く口を開きそうだったため、月島は彼の口を塞ぎズルズルと引っ張っていく。


「素直じゃないところは変わらねぇな。ちょっと安心したわ」


「とーっても嫌がってましたね....あはは」


あかりは彼の嫌がっている表情思い出し思わず乾いた笑いがでてしまった。黒尾はあれをそう受け止めるのか、と顔を引き攣らせている。

暫く他愛ない会話を続けているうちに、気付けば次の試合の時間が近づき、黒いユニフォームを身に纏った月島たちと、緑色のユニフォームを着た相手チームがコート入りしてきた。


「ふふ、楽しそうです、月島くん。昔から本当に...」


「昔?あぁ親戚、っていってましたっけ」


自然と口から出たその言葉に、あかりは思わず口元を手で押さえた。


「(あれ...昔からって、どうしていま私...)」


返す言葉を失うあかりは、自分が発した言葉に対して動揺した。黒尾は首を傾げたが、そこで試合開始の笛が鳴り響いた。



「お、はじまりますよ〜」


「は、はい!(いまは試合に集中です...!)」


小さく拳を作り、気合を入れる。
黒尾はそんなあかりの姿に、ふっと笑いコートに視線を向けた。

月島は前衛センターからのスタートとなった。



「やっぱ背たけぇなー、ツッキーは」


「そうですね、見渡しても超える背丈の方はなかなかいらっしゃいませんね...何センチくらいあるのでしょう」


「たしか、194cm...ここに所属したときに改めて測ったら大学在学中もまだ伸びてやがりましたよ、全く...」


今更ながら月島の身長を知ったあかりは非常に驚いている様子だった。


「あんだけタッパあって、センスと才能にも恵まれてんのに、一線引く癖はまだ完全に抜け切れてないみたいですけどね」


「一線、引く...ですか?」


「昔よりだいぶマシにはなってるみたいですけど。...超強い相手とか、自分より背が高い相手とか。どうせ勝てない、しょうがないってね。」


黒尾は頬杖をつきながら懐かしそうに目を細める。意味を理解した彼女は、なるほど、とあかりは唸り声を上げた。そして、すぐ顔を明るくさせて笑顔を浮かべた。


「でも、月島くんは大丈夫だと思います」


「?」


「さっき、5セット目の最終点、あんなに歯を食いしばってボールに食らいつく月島くんの顔、初めて見たんです。あそこでのツー、諦めない気持ちが強くないと、取れるわけありませんから。だから、きっと大丈夫です」


彼女の言葉に、首を傾げていた黒尾は、ふっと笑い頷いた。


「確かに、お嬢さんの言う通りかもしれませんね。よくみてますねぇー、ツッキーのこと」


「いえ...一緒に生活し始めて3ヶ月ほど経ちましたが、まだまだわからないことも多く....」


「...え!!?(同棲...!?あーメガネがどーのこーのって言ってたのはそういうことね...)」


会場中に響き渡りそうなほど、驚愕の声をあげた黒尾。たまたまサーブを打つためサービスエリアへ向かっている月島の耳にもそれは届いた。


「(くそっ、気が散る...というか、なんか腹立つ)」


「ヤキモチ妬くなよ月島ぁ!お前の性悪サーブ、ぶちかましたれぇ!」


「白川さん、変な名前つけないでもらっていいですか。あと、うるさいです。」


白川は月島の心の乱れをすかさずキャッチし、瞬時にヤジを飛ばす。眉間に皺を寄せる月島は楽しそうに拳を突き上げる白川をひと睨みした。

そして、数回ボールを床に叩きつけて意識を集中させ、息を深く吐く。


月島は助走をつけながらボールを低く上げ、タイミングを見計らい手で押し出した。

そのボールは横に回転しながら相手コートへ落ちていく。レシーブには触られたが、思わぬ方向にボールが飛び床に落ちてしまった。


「お〜、あれが噂の性悪サーブ」


「すごい、魔球みたいです...!」


先程とは明らかに球の軌道が異なるサーブに、感心の声をあげる黒尾とあかり。コート内のメンバーからは「ナイスサーブ!」と声があがっている。


またサーブ開始の合図が鳴り、月島は同じようなフォームでボールを打つ。

今度は相手も順応し、なんとかレシーブで対応するが膝をつかせた。


「しっかし、うまくなったな、本当。相当あいつらの活躍が効いたんだろうな」


「あいつら、ですか?」


含みを持たせた言い方に、あかりは不思議そうな表情で黒尾をみた。


「ライバル、ですよ。あいつらの活躍で、突き動かされてるって感じじゃないっすかね」


「ライバルですか...じゃあ、楽しみですね。いつかその方達との試合、観てみたいです」


「それは俺も観たいですねぇ〜、ならまずは来年のこのリーグ勝ち抜いて昇格しないとですけどね」


想像を絶する道のりに、あかりは困ったような表情を浮かべている。


「ライバルの方たちはV1なのですね!ならチャレンジマッチでしょうか」


「そう。まずは、来年の入れ替え戦でV2リーグで上位2位に入って、V1の下位チームと戦って勝つ。しかもただ勝てばいいってわけじゃない。獲得セット数によってポイント集めないといけないですしね〜過酷過酷」


黒尾は肩をすくめて首を振った。一方、あかりはワクワクした表情でコート上で闘う月島に視線を送る。


「でも、とても楽しみです。月島くんのあんな表情、これからもたくさん見れるってことなんですね」


「おお〜お嬢さん見かけによらずドSですね〜」


あかりの純粋な笑顔と言葉に、黒尾は心なしか嬉しそうに笑った。

一方月島のいるチームはあっという間にセットポイントを3点先取してストレート勝ち、見事な初日を終えた。


「このチーム、勢いがすごいですね...!まさかストレートで勝ってしまうとは...」


「チームに今までいなかった守備の脳が入りましたからねぇ...チームの矛が白川だとしたら、盾の要はツッキー。あの冷静な思考と判断力が、チームの血液を巡らせてるんです」


「なるほど...たしかに月島くんが指示出ししている場面は何度もありました...すごいですね、まだ所属したばかりなのに」


深く感心するあかりは指を顎に当てて、監督の元に集まるメンバーたちに視線を送っていた。

そして黒尾の説明に、試合を思い返し深く頷いた。


「まー、まだまだですけどねー。V1なんてもっとヤベー化け物がいっぱいいる。課題は山積みでしょーが」


素人目には課題など見当たらないが、黒尾の目にはしっかりとみえているようだった。
あかりは首を傾げながら考える素振りをみせたが、さっぱり見当もつかない。


「まぁ、自分が一番わかってるでしょうけど...お嬢さん、もしツッキーのことで困ったこととか、知りたいこと、何かあればいつでも連絡くださいよ。力になります」


黒尾の言葉に慌てて先刻頂戴した名刺を取り出す。
そこには彼の名前や社名、事業部名に加えて個人の電話番号やSNSのURL等が記載されていた。


「あ、ありがとうございます!でも、いいのでしょうか....」


「私も見て見たいんですよ。あのツッキーが本気をだしたらどこまでいけるのか、ね。なんせ、ツッキーは大事な弟子ですから」


おずおずと名刺を両手に持ちながら彼の真意を伺うあかりに、黒尾は歯を見せてはにかんだ。
「弟子」という言葉に驚いていると、彼はスッと立ち上がり細身の体を左右に捻った。


「さ、私はこれで失礼します。もうツッキーが出る試合はないので、じきにここへくると思いますし。嫌味を言われる前にお暇しますよ」


「はっはい...!あの、黒尾さん!今日は本当に助かりました。今後も月島くんのこと、よろしくお願いします!」


あかりも釣られて立ち上がり、黒尾に深く頭を下げた。黒尾は、ふっと笑いながら既に歩き出しており、あかりに背を向けて片手を軽く挙げた。


彼の背中が見えなくなると、あかりはストンと椅子に腰を落とし、ぼーっとしながら誰もいなくなったコートを見つめていた。


すると突如スマホが振動し、ディスプレイをみると受信したのは月島からのメッセージだった。


<もうおわるから、そこでまってて>


簡潔で無駄のないメッセージに、思わず笑みが溢れた。今まで見てきた家での月島と、コート上の月島は、どこか別人のような気がして、思い出すと胸が痛いくらいに騒ぎだす。


「(なんでしょう、この気持ちは...)」


胸に手を当てながら、落ち着かせるための深呼吸を繰り返しメッセージの返事をするべくスマホの操作をしていた。


メッセージの返事をしてから20分ほど経つと、あかりの前に不機嫌そうな月島が現れた。彼の隣には満面の笑みを浮かべる白川がソワソワしながら立っている。


あかりさん!どーでしたか!!ストレート勝ちっす!!」


「あ、白川さん!お疲れ様です、お二人とも...!」


白川は拳を作り、あかりに向けるとピースサインをだした。そんな無邪気な彼に、あかりも釣られて笑顔を向けながら立ち上がり軽く会釈した。


「黒尾さん、やっと帰ったんだ」


「はい、先程!とてもいいお師匠様ですね!私も色々と教えて頂いて....」


あかりが頷くと、月島は師匠という言葉に「うわ」と嫌そうな表情を浮かべた。何か余計なことを吹き込まれたのでは、という予感が見事に的中していたのである。


「なんすかそれ、どんな話っすか!」


「その話いいんでとっとと帰りますよ」


キラキラ目を輝かせる白川は、鼻息を荒くさせてあかりを見つめたが、それを遮るように月島が立ちはだかった。
瞬時に開けようとした口をつぐみ、あかりは苦笑いを浮かべる。


3人は他愛無い会話をしながら、2階の観客席から出入り口の方へ向かい歩き出していた。


190cmを超える高身長の月島と、その身長差40cmのあかり、そして髪をオールバックに固めた白川。


色んな意味で目立つ3人が歩いていく様子を、誰もが物珍しそうな視線を送ってた。


外を出るともう夕方で、ちょうど16時の鐘が鳴っている。



「じゃ俺はこっちだから!あかりさん、また応援お願いします!月島の調子爆上がりするんで!」


「ええっ、そ、そんなことはないかと...」


「...白川さんの身長はいつ爆上がりするんですかね」


白川は月島の肩を叩きながら、悪戯な笑みを浮かべてあかりに視線を送った。彼の言葉を否定すべく首を横に振るあかりを横目に、月島は白川に見下すように蔑んだ笑みを向けた。


「くぅー!かわいげねぇ〜こんな奴のどこがいいんすか!?俺にしません!?」


「間に受けなくていーから」


彼女前提で話しを進める白川は悔しそうな表情であかりを見つめている。
月島は困惑の表情を浮かべて戸惑うあかりに、呆れた声色で何度目かもわからないセリフを言い放った。


「そーんなこと言っちゃって〜、俺こっそりあかりさんと連絡先交換しちゃったもんね〜」


スマホをぶらぶらとさせながら、白川は何か企んでいるような悪い笑みを浮かべてあかりの隣に立った。
月島は想定外の事態に動揺したようで、少し目を見開いた。

実は観客席からここまで歩いてる最中、白川はコソコソとあかりに耳打ちし連絡先を交換していたのだった。


「(おー、あの月島が動揺してる!)」


「............別にいいですケド」


長い間と月島の不機嫌のそうな表情と声色に、白川は腹を抱えて爆笑している。


「はー笑った笑った!んじゃ、俺は帰るわ!お疲れーっす!」


「あっ、白川さんお疲れ様でした!」


散々笑い転げた後、白川は満足した顔で軽く手を挙げ歩き出した。慌てて、あかりが頭を下げて声を上げると、彼は嬉しそうに笑いながら振り返り手を振って走り去っていった。


「ふふ、面白い方でしたね...!」


「どこが...」


2人は嵐が去った後のような気持ちで、駐車場に向かいながら、あかりは月島に笑いかけた。


「本当にお疲れ様でした、月島くん。」


「...ありがと」


「またいつか、試合応援させてくださいね」


「...気が向いたらね(変な虫がつきそうだし、正直嫌なんだけど)」


月島の心配事が増えていく中、あかりは未だ試合の興奮が冷めやらぬ心臓の鼓動を抑えながら、隣で歩く彼を見上げて嬉しそうな笑みを浮かべている。

その微笑みに、月島は顔が赤らんでいくのを感じながら、それに気付かれないよう、寄り添うように揺れる2人の影に視線を移した。


後に、黒尾の連絡先まで受け取っていたことを知った月島は、盛大な溜息と共にもう忘れ物はしないと胸に誓うのだった。


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