僕のバケモノ
ムズムズとする身体にリクは首を傾げた。昼過ぎから様子がおかしい。人と話しているだけなのに、時々身体に甘い痺れを感じるような気がする。緩い刺激も重なればなかなかに耐え難い。おかしな事をしでかす前にと、人目を避けるように逃げ込んだのは勝手知ったる研究室。
「石月先生」
「榊くん?どうしましたか」
本棚の影から覗いた顔に安堵を覚えたのと同時に、先程までとは比べ物にならない程の快感が走る。
「ひっ?!ぁぁっ、ん…っ!!…???」
突然襲った感覚にその場に座り込んでしまった。何が起こったのか解らない。
「リク!!?」
慌てて机を飛び越えたサリエルは手前で一瞬動きを止め、パッと顔を反らした。
「…すまない」
「え??え???」
サリエルは眉をひそめてぎゅっと目を閉じる。
「リク、昼に机の上のチョコレートを食べましたね?」
「??あ、」
思い当たる。無造作に置いてあった小さな包をヒョイとつまんでから、午後の授業に向かったのだ。
「……魔術がかけられた物だったんです。その…数時間だが、『他者に可愛いと思われる』と快感を得るという魔術で……」
サリエルの目を強く瞑ったままの顔がじわじわ赤くなっていく。
つまり、午後からの妙な感覚は周りから『可愛い』と思われていたからで、今一瞬で腰が砕けたのはサリエルが強く『可愛い』と思ったから…。
「え、今??どこに可愛い要素ありました!?」
混乱しつつも、物凄く照れくさい。そもそも可愛いってなんだ、顔を見ただけでそんな…。
自覚が追いついてくると、自身の顔も熱くなってくる。
「すまない、私は…」
恐る恐る開いた目と目が合う。途端、リクの身体に電撃が走る。
「〜〜〜〜っ!!」
「っ……薬が切れるまで、離れていた方がいい」
「ちょっ、嘘でしょ!!遠隔で腰まで砕いといて!?」
後ずさるサリエルに飛びかかる。
震える足ではバランスが取れず、そのまま来客用のソファーに押し倒すような形になった。
襟首を掴みながら睨みつける。
「短時間で切れるんでしょう?付き合って下さいよ」
顔を寄せて口付ける。その拍子に、また強い快感が背筋を走った。
「んん…っ!!あ、あなたはっ!!どれだけ僕を…んっ、あぁ…っ」
快感に震えるリクを目の当たりにするサリエルは、自身の無意識すら暴かれているようでいたたまれなくなる。
それに肩で息をしながら赤面涙目で睨みつけられてもちっとも迫力がない。
むしろ可愛い。
「ひっ」
あぁ、これでは彼を苦しめるだけではないか!
「リク、私が悪かった。しかしこのままでは辛い一方だ、一度家で休もう」
「僕に自慰でもしろと?」
「私から離れれば熱は治まるだろう。私は、リクを…そう、思わないようにする事が出来ない」
羞恥と快楽で染まる頬にそっと指を添わせ、心の内を明かす。
「今だって愛らしい」
「ひぁぁっ」
自身がこんなにも始終相手を想っていることが露見するなど、何かに負けを認めるような気持ちにさせられる。
「ほら、終の無い熱は辛いだろう…今は離れて…」
「つ、ら、くない…」
「いい子だから…」
「サリエル…っ、さわっ、て…?あ、ぁぁぁーーーっ!!」
腰の上で細い体が跳ねる。
言い逃れはできない。今のは仕方ない。そう思うなという方が無理な話だ。
「ぅぅっ、…サリエル……」
ダメだ、と、思いつつも、愛しい人からここまで迫られて断れる男が居るだろうか。私の上に跨がり、腰をゆるく揺らしながら震える体。熱に浮かされ、涙を流しはじめる瞳。
……ダメだ、可愛い…っ!!
「ひゃぁぁぉっ!ダメっ、まだ…っ!あ、あ、ぁぁっ!!!」
「リク!!」
咄嗟に腕を伸ばして、何かから守るように彼を抱え込む。自分自身こそが元凶だというのに。
「サリエルっ、サリエルぅ〜、ぅぅ」
涙を流して快楽を逃がそうとする細い身体。
可哀想なリク…私だけのリク。
「かわいいリク」
「んんっ」
耳元で囁くとすぐさま反応が返ってくる。
「辛いだろうが、少し我慢だ…」
リクを横たえ、スラックスをくつろげる。既に下着は意味をなしていない。濡れた布の上から彼自身を撫でると可愛らしい声が上がる。指から与える快楽と、私が『可愛い』と思う度に与える快楽が重なり、軽くイッてしまったようだ。
着心地の悪いだろう下着を剥ぎ取り、腹まで反り返ったモノを包み込むようにゆるく撫でる。ワイシャツのボタンを外し、赤く腫れてきている胸を外気に触れさせると身体が震える。
「可愛いリク、寒くないだろうか?」
「いわ、ないで…っ」
「私だって酷い気持ちだ。リクをこんなにも愛らしいと想っていることが、直接的に顕になっているのだから…せめてちゃんと伝えさせてくれ」
「〜〜〜っ」
目を白黒させながら顔を真っ赤にするリク。「かわいい」塩っぽい目元に下を這わす。「かわいいな」唇を甘噛みし、首から胸までキスを散らす。「かわいい」浅く痙攣を繰り返す身体。可哀想に…それでも
「かわいいリク」
「さりえる、さりえる、んぁぁっ、も、ほし、ぃ…っ、ぁぁっ」
必死になって縋り付いてくる様のなんと愛らしいことか…!
「すまないが、加減が出来ない…リク、かわいいリク、愛しているよ」
軽く解しただけの蕾に自身を沈める。
リクは既に刺激の種類の判断がつかないようで、声にならない悲鳴を上げた。
しまった、と、もう引き返せないところまで来てから思う。
私に犯され快楽に乱れるリクは、それはそれは可愛いのだ。
魔術による快楽を与え続けながら、肉体的にも翻弄されたリクは、翌日も身体を動かせないほどに消耗してしまった。
魔術自体は切れたものの、始終かわいいかわいいと言い過ぎたせいで、その後「可愛い」に反応するようになってしまったのは別の話。
魔術のかかったチョコレートは同業者からの迷惑な差し入れでした。
「石月先生」
「榊くん?どうしましたか」
本棚の影から覗いた顔に安堵を覚えたのと同時に、先程までとは比べ物にならない程の快感が走る。
「ひっ?!ぁぁっ、ん…っ!!…???」
突然襲った感覚にその場に座り込んでしまった。何が起こったのか解らない。
「リク!!?」
慌てて机を飛び越えたサリエルは手前で一瞬動きを止め、パッと顔を反らした。
「…すまない」
「え??え???」
サリエルは眉をひそめてぎゅっと目を閉じる。
「リク、昼に机の上のチョコレートを食べましたね?」
「??あ、」
思い当たる。無造作に置いてあった小さな包をヒョイとつまんでから、午後の授業に向かったのだ。
「……魔術がかけられた物だったんです。その…数時間だが、『他者に可愛いと思われる』と快感を得るという魔術で……」
サリエルの目を強く瞑ったままの顔がじわじわ赤くなっていく。
つまり、午後からの妙な感覚は周りから『可愛い』と思われていたからで、今一瞬で腰が砕けたのはサリエルが強く『可愛い』と思ったから…。
「え、今??どこに可愛い要素ありました!?」
混乱しつつも、物凄く照れくさい。そもそも可愛いってなんだ、顔を見ただけでそんな…。
自覚が追いついてくると、自身の顔も熱くなってくる。
「すまない、私は…」
恐る恐る開いた目と目が合う。途端、リクの身体に電撃が走る。
「〜〜〜〜っ!!」
「っ……薬が切れるまで、離れていた方がいい」
「ちょっ、嘘でしょ!!遠隔で腰まで砕いといて!?」
後ずさるサリエルに飛びかかる。
震える足ではバランスが取れず、そのまま来客用のソファーに押し倒すような形になった。
襟首を掴みながら睨みつける。
「短時間で切れるんでしょう?付き合って下さいよ」
顔を寄せて口付ける。その拍子に、また強い快感が背筋を走った。
「んん…っ!!あ、あなたはっ!!どれだけ僕を…んっ、あぁ…っ」
快感に震えるリクを目の当たりにするサリエルは、自身の無意識すら暴かれているようでいたたまれなくなる。
それに肩で息をしながら赤面涙目で睨みつけられてもちっとも迫力がない。
むしろ可愛い。
「ひっ」
あぁ、これでは彼を苦しめるだけではないか!
「リク、私が悪かった。しかしこのままでは辛い一方だ、一度家で休もう」
「僕に自慰でもしろと?」
「私から離れれば熱は治まるだろう。私は、リクを…そう、思わないようにする事が出来ない」
羞恥と快楽で染まる頬にそっと指を添わせ、心の内を明かす。
「今だって愛らしい」
「ひぁぁっ」
自身がこんなにも始終相手を想っていることが露見するなど、何かに負けを認めるような気持ちにさせられる。
「ほら、終の無い熱は辛いだろう…今は離れて…」
「つ、ら、くない…」
「いい子だから…」
「サリエル…っ、さわっ、て…?あ、ぁぁぁーーーっ!!」
腰の上で細い体が跳ねる。
言い逃れはできない。今のは仕方ない。そう思うなという方が無理な話だ。
「ぅぅっ、…サリエル……」
ダメだ、と、思いつつも、愛しい人からここまで迫られて断れる男が居るだろうか。私の上に跨がり、腰をゆるく揺らしながら震える体。熱に浮かされ、涙を流しはじめる瞳。
……ダメだ、可愛い…っ!!
「ひゃぁぁぉっ!ダメっ、まだ…っ!あ、あ、ぁぁっ!!!」
「リク!!」
咄嗟に腕を伸ばして、何かから守るように彼を抱え込む。自分自身こそが元凶だというのに。
「サリエルっ、サリエルぅ〜、ぅぅ」
涙を流して快楽を逃がそうとする細い身体。
可哀想なリク…私だけのリク。
「かわいいリク」
「んんっ」
耳元で囁くとすぐさま反応が返ってくる。
「辛いだろうが、少し我慢だ…」
リクを横たえ、スラックスをくつろげる。既に下着は意味をなしていない。濡れた布の上から彼自身を撫でると可愛らしい声が上がる。指から与える快楽と、私が『可愛い』と思う度に与える快楽が重なり、軽くイッてしまったようだ。
着心地の悪いだろう下着を剥ぎ取り、腹まで反り返ったモノを包み込むようにゆるく撫でる。ワイシャツのボタンを外し、赤く腫れてきている胸を外気に触れさせると身体が震える。
「可愛いリク、寒くないだろうか?」
「いわ、ないで…っ」
「私だって酷い気持ちだ。リクをこんなにも愛らしいと想っていることが、直接的に顕になっているのだから…せめてちゃんと伝えさせてくれ」
「〜〜〜っ」
目を白黒させながら顔を真っ赤にするリク。「かわいい」塩っぽい目元に下を這わす。「かわいいな」唇を甘噛みし、首から胸までキスを散らす。「かわいい」浅く痙攣を繰り返す身体。可哀想に…それでも
「かわいいリク」
「さりえる、さりえる、んぁぁっ、も、ほし、ぃ…っ、ぁぁっ」
必死になって縋り付いてくる様のなんと愛らしいことか…!
「すまないが、加減が出来ない…リク、かわいいリク、愛しているよ」
軽く解しただけの蕾に自身を沈める。
リクは既に刺激の種類の判断がつかないようで、声にならない悲鳴を上げた。
しまった、と、もう引き返せないところまで来てから思う。
私に犯され快楽に乱れるリクは、それはそれは可愛いのだ。
魔術による快楽を与え続けながら、肉体的にも翻弄されたリクは、翌日も身体を動かせないほどに消耗してしまった。
魔術自体は切れたものの、始終かわいいかわいいと言い過ぎたせいで、その後「可愛い」に反応するようになってしまったのは別の話。
魔術のかかったチョコレートは同業者からの迷惑な差し入れでした。
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