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赤い星が消えるまで

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―――……

「これで終わりだ……ッ、ニズゼルファ!!」

 ゴォ、と相棒の二刀ギガブレイクが邪神の巨体を抉り、切り裂く。周辺で祈りを捧げていた子らが光と共に消し飛び……。

【グウウォオオオオァァァアァアッ……!!?!】

 ついに、凄まじい音を立てながら邪神が崩壊していく。それと共に奴が作りだしたこの空間も徐々に崩れ始めていたが、完全に奴が消え去るまではその場を離れる訳にも行かず、皆ケトスにつかまり様子を伺っている。

 ――だが、オレはなんとなく、「こいつはもう終わりだ」と分かっていた。
 仲間達がニズゼルファを注意深く睨みつける中、オレは一人簡単な答え合わせを行うために、以前から抱いていた疑念を口にする。

「オレの時渡りに力を貸してくれていたのは、お前だな」

 ……鎧が剥がれ落ち、体のあちらこちらが崩れても、それでもあがき続ける邪神に飛ばした言葉は、当然のように反応がなく。オレはそれを気にすることもなく、言葉を続けていく。

「前回、オレに歯車を見つけさせたのも、塔への案内をさせたのもお前だった。そうだろ?流石にあれだけオレの意志とは違う行動をやらされれば気づきもするが……全く、無意識とは言え邪神に協力していたとは、とんだ裏切り者だな、オレは」

 急速に砕けていく空間と消え去っていく邪神を見ながら、誰にも聞こえないような小さな声でオレは呟く。

「それでも、神様の力がなけりゃオレはここにたどり着けなかった。我欲だらけの矮小な人間は、番人が言う通り、預言者が言う通りに、無意味に灰になっておしまいだったわけだ」

 恐らく、こいつはオレのことを助けようと思って助けたわけではないのだろう。一度目も二度目も単なる気まぐれか――それとも、自分勝手で穢れた祈りが起こした奇跡か。

「……ありがとな、ニズゼルファ」

 オレはオレのために、邪神に小さく礼を言う。
 いよいよガラガラと全てが砕け始め、奴の体内から強烈な光が爆ぜた。終わりを察し、危険を感じたケトスが急激に闇から離れていく。

(ああ、これでやっと――……)

 ――ぽたりと一筋、赤黒い滴が金の鯨の背に落とされた。きっとこの雫には誰も気づかないだろう。それでいいんだ。
 静かに微笑んだオレの視線の先に、希望の輝きに包まれた世界が広がっている。
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