猿飛佐助
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〜♪
ああ、最近よく耳にする曲だ。
スマホから流しっぱなしにしていた音楽を止めるために起き上がろうとすると、一気に倦怠感と頭痛が襲ってきた。
─────これは、だめだな。
気圧のせいなのか、この寒さのせいなのか。はたまた単純に睡眠不足なのか……ともかく、私は体調を崩してしまったようだ。
少し寝れば治る、なんて望みは早々に打ち砕かれてしまった。なんでよりによって今日なんだろう。今日はクリスマスイブなのに。
今スマホから流れ続けている曲も、本来であれば夜の華やぐ街で聞くはずだったのに。
……そうだ、佐助に謝らないと。今日は行けないって、今日は会えないって。
スマホのメッセージアプリを立ち上げて佐助とのトーク欄を開くと、昨日のやりとりが残っていた。
佐助からの“遅れるなよ” というメッセージに対して、“了解”のスタンプを返信している。
あぁ、このやりとりの後に断る連絡をいれるのってなんだかすごく……。
でも仕方ない。
〈ごめん 体調崩した 今日行けそうにないや〉
〈前から約束してたのにごめん〉
〈本当にごめん〉
我ながら何回謝るんだ、と送信してから気づいたけどもう遅い。頭痛と倦怠感でそんなことを考える余裕もなかった。
とりあえず、薬を飲まなきゃ。ああ、その前に何か食べたほうが─────。
だめだ、痛い。なんだか気持ち悪さも込み上げてきた。
とりあえず薬だけ飲んで、一旦寝よう……。
*
─────目覚めると、部屋のあまりの暗さに驚いた。
薬を飲んだ時はこんなに暗くなかったはずだ。
どうやらもう夜らしい。
え、今何時?
時間を確認しようとスマホを確認すると、佐助からメッセージと着信がきていた。
……まずい。マナーモードにしていて全然通知に気づかなかった。
〈ごめん、今気づいた〉
急いでメッセージを送る。結局また謝ることになってしまった。
「うわっ!?」
スマホが急に振動したのでびっくりしてしまった。画面には“佐助”の文字が表示されている。どうやら佐助からの着信らしい。
『あ、あのごめんさす』
『なまえ!?』
『えっ、あっ、うん!?』
食い気味に名前を呼ばれて驚いてしまった。
佐助のこんな焦ったような声は初めて耳にしたような気がする。
『……あー、よかった連絡ついて。体調は?大丈夫そ?』
『あ、うん……とりあえず薬飲んで寝たから、佐助に連絡した時よりかはだいぶいいかな』
『そっか、ならよかった。ところでさ、俺様いまちょうどなまえちゃんのおうちの前に着いたんだよねー。鍵開けてもらえるとかなり嬉しいんだけど……いい?』
『えっ?いるの!?こっちに!?』
『そ。なまえちゃんにプレゼント届けにきちゃった……つっても、スーパーで買った食材諸々だけど』
『ちょ、ちょっと待ってて!今開けるから!』
急いでベッドから降りて、部屋の電気をつけて玄関へ向かう。
それにしても、まさか玄関前にいるだなんて思わなかった。私が体調悪いなんて言ったものだから、心配してわざわざ来てくれたのだろうか。私がろくなものを食べていないことも見越して、何か買ってきてくれたのかもしれない。
「優しいよなあ、佐助……」
*
玄関のドア越しに聞こえてきたなまえのつぶやきに思わず笑ってしまった。
そう、俺様けっこう優しいのよ?特になまえには。なまえはあんまり気づいてないみたいだけど?
……あ、鍵が開く音がした。
「……本当にいる」
「いるに決まってるでしょ、なまえのために来たんだから」
「プレゼント、こんなにたくさんいいの?」
なまえは俺が持っているレジ袋を凝視している。やっぱ多すぎた?
体調不良の時に食べられそうなものに加えて、クリスマスコーナーにあったチキンやら何やらを買ってきたせいだ。まあ最悪なまえが食えなかったら俺が食べたっていいし?とか思って。
あと、単純にわからなかったんだよな。なまえは体調悪いときに何が食べられそうなのか。俺様は体調崩すことほぼないし、崩したとしてもまあまあ色々食べられるし。
「あー……まあ、クリスマスだから」
我ながらよくわからない言い訳だ。なんだこの言い訳。
「佐助、サンタさんみたい。白い袋にいっぱいプレゼント入れて……レジ袋だけど」
「レジ袋のサンタさんですみませんね」
いっそサンタ帽でも被ってくるべきだったか?
いや、流石にそれは浮かれすぎか。
「ごめん、長々と立ち話しちゃったね。とりあえず上がって?あぁ、散らかってるのはごめん……」
「はいはい、お邪魔しますよ〜っと」
なまえの家に来るのは久々な気がする。
確かに前に来た時よりかは散らかっている。
「あ、私お茶出すから佐助はテーブルのほうに……」
なまえは棚からカップを取り出そうとしている。
……いやいや、病人なんだから俺様が全部やるってば!
「なーに言ってんの、なまえは安静にしてなさいってば。お茶なら勝手に出して飲むレベルの仲でしょ俺様たち。あ、なまえはなんか飲む?一応それなりに色々買ってきたんだけど」
スポドリはもちろん、柄にもなくシャンメリーまで買ってきてしまった。一応お湯を淹れて作るタイプのココアとかスープも買ってきたけど。
「……ごめん、何から何まで」
……なんだか今日のなまえは謝ってばかりだ。俺だってそんなに大層なことをしているわけじゃないのに。
「ハイ、もう謝るの禁止!俺がやりたくてやってんだから謝らなくていいの!」
「う、うん……でも、前から約束してたおでかけができなくなっちゃったのは本当に謝りたくて!本当にごめん!」
「言った側から早速謝罪!?」
本当に今日の名前は謝りたがりだ。
……そんなに泣きそうな顔しなくてもいいのに。
「あのほんと、この埋め合わせは必ずするので……できることならなんでもするから!」
なまえの衝撃の発言に思わず手に持っていたペットボトルを落としそうになる。
「あ、あのねなまえ、男の前でなんでもするとか言っちゃダメだからね!?いや女の子の前でもダメだけど!言うなら俺様だけに言って欲しいけど!」
「佐助にしか言わないよ!ていうかはじめて言ったよこんなこと!」
「…………うん」
「なにその間!?」
いや、これは仕方なくない!?彼女にそんなこと言われたら色々な想像が頭を駆け巡るでしょ!?
「……できることならなんでもする?本当に?」
「す、するよ!できることなら!」
「なら……」
「な、なに?」
「今日は安静にしような……!」
……勝った。ギリ理性が勝った。どす黒い何かに勝った。
「わかった、安静にする!」
よかった。これでよかったんだ。
よかったんだよな……?
いやいいに決まってるでしょ、なまえが元気になるんだから。
「────けど、多少は甘えたりしてもいい?あの、クリスマス……だし?」
うつむいたなまえの顔は真っ赤だ。
かわいい。正直すごくかわいい。
……やっぱり、なんか負けそうかもしれない。
6/6ページ
