猿飛佐助
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
早いもので、そろそろ卒業式。
俺様としては、心残りがないように卒業したいわけで。
というわけで今、なまえにあることを頼み込んでいる。
「一生のお願い!じゃないと俺様卒業できない!」
「じゃあ留年してください」
「酷っ!」
うーん、想定内。
多少はこういうこと言われるだろうな、とは思ってた。
まぁ、内容が内容なんでね!
「いや酷いのはそっち!突然メイド服着ろって何!?」
そう。俺様は何を隠そう、なまえにメイド服を着てくれってお願いしてる。
……いや、ヤバいお願いしてるってのは流石に分かってるよ?
でも昨日新聞部の部室を整理してたら学園祭で使うはずだったメイド服が出てきて、思い出しちゃったわけよ。なまえのメイド姿を拝めなかったことを!
「学園祭でなまえがメイドさんになるっていうから俺様めちゃくちゃ楽しみにしてたの!それがなまえちゃんってば、試着の日も学園祭当日も欠席って!」
「今更学園祭の話!?いや、仕方ないじゃん……熱が出たの!そりゃ欠席するよ」
「とにかく!メイドのなまえ見ないと卒業できないの!未練タラタラなの!俺様、この学園の地縛霊と化すよ!?いいの!?」
「そっか。除霊のお願いしておくね」
「なまえちゃん薄情すぎない?」
……うーん、さすがなまえ。なかなかに手強い。
こうなったら、こちらも最終手段を繰り出すか。
「なまえがメイド服着てくれるなら、俺様の財布が許す限りなまえの好きなものを奢るつもりなんだけど」
「……え?」
なまえが俺をチラッと見る。
あ、食いついたなこれは。
「どう?少しは着る気になった?」
「……なんでそんなに必死なの?」
「そりゃあ見たいからね、なまえのメイドさん」
この機会を逃したら、なんか一生見れなさそうな気がするから。
いや、なまえとは一生一緒にいるつもりだけどさ!若気の至りでしかできないこともあるでしょ、きっと。
「…………本当に奢ってくれるなら着るけど」
やや引き気味とはいえ、なまえからなんとか了承していただいた。
……俺様の財布が犠牲になるけど、これくらい安いもんだ。
「はい決まり〜!言質取りました!やっぱ無理ってのはナシな!」
「ただ佐助、私の家まで来てもらうからね」
─────家?今、なまえの家って言ったのか?
「えっ?それは……そういうことだって思っていいわけ?」
ヤバいな、そこそこ動揺してるわ俺。
でも、これってそういうお誘いってこと?
「……誰かに見られたら私の人生が終わるから言ってるの!だから絶対に人に見られない場所を指定したの!」
なまえは一人暮らしだ。
確かに、なまえの部屋なら絶対に誰にも邪魔されずに……できるわけだけど。いろんなことが。
「あー……いや、それはそうかもだけどさ?なまえ、さすがに分かってるよな?男を、ましてや彼氏を部屋に呼ぶってことはさ、そういう────」
「分かって言ってるから、大丈夫……」
下を向くなまえの顔がどんどん赤くなる。
あ、耳まで赤くなった。
「……今そっちの言質も取れると思ってなかったわ」
「うるさい。黙れ佐助」
「なまえってほんと……ほんとそういうとこ可愛いよな」
面食らったような顔をするなまえ。
なまえって本当に分かりやすいな、すぐ顔に出るから。
それにしても、なんて言うんだこういうの。棚からぼたもち?いや、衝撃の度合いで言えば青天の霹靂?
あーもう、どっちでもいいだろそんなの!
そんなことより、なんかとんでもない展開じゃない!?
*
────で、なまえの家にメイド服と手土産のケーキを持ってお邪魔してるワケだけど。
「……うわー、これ?私これ着るの?マジで?」
「マジだよなまえ」
「……やっぱやめない?似合わないよ多分」
なまえがちょっと乗り気じゃない。
というか、実際にメイド服目の当たりにして気が引けちゃった?でもなまえに絶対似合うし、見たいし?
なんとしてでも着たところみたいし、なんなら着たままそういうことしたいし!?
「絶対似合う、絶対似合うから」
「マジな目するのやめて?怖いから」
「俺様の執念をナメないでくれる?今回はほぼ全財産を賭けて来てるからな?それにわざわざケーキも買って来たんだから俺様!」
「ケーキたいへん美味しかったです……なんなら一個余ってるやつをもう一個いただきたい……」
「なら着てくれるよな?」
「…………はい」
よし、なんとかなまえの承諾を得ることができた。あとは……
「ところでさ、大事なことだから念の為もう一回聞いとくんだけどっ!あー……その、いいんだよな?俺とそういうことしていいって解釈で……」
一応、改めてこっちの承諾もいただかないとな。こればっかりはホント、一方的なのはよくないし。
「なっ……だ、だからさぁ、もうわかるでしょここまで来ておいて……」
「ここまで来たから改めて聞いてんの!ダメならダメって言えよな。そんなことで幻滅したりしないから俺様」
……まぁ、ダメって言われたらちょっと残念っちゃ残念だけどな。でもなまえとは末永〜く付き合っていくワケだし、今回がダメでもいつかは─────。
「ダメ、じゃ……ない」
「……ッ」
絞り出すように声を出したなまえは、顔を真っ赤にしてうつむいた。
……ヤバい。なんだこの破壊力。
こんなに可愛かったっけなまえって。
いや可愛いだろ普段から!何言ってんの!?
「……こんなに幸せでいいのか、俺?」
「まあ近いうちに佐助のお財布からお金はなくなるけどね」
「ゔっ」
そうだった。それを条件にメイド服着てもらうんだった。
「今更だけどさ。もうケーキ貰ってもらったわけだしこれ以上はいいよ、私になんか奢るの」
「えっ、いいの?女神なの?」
どうしようなまえがいい子すぎる。
そして、なんか俺様しかいい思いをしてない気がする。なまえはホントにそれでいいわけ?
「だって全財産なんて使っちゃったらさあ……ごめんやっぱなんでもない」
「えっなにそれ、気になるから言ってくれない?」
「……春休みにいっぱいデートできないよね?佐助と行きたいところたくさんあるから、それは困るなって」
「…………」
「えっ?な、なんで黙るの!?」
もうなんなのこの子ホント……!!末恐ろしいわ!
多分計算とかじゃなくて無意識なんだろうし!
なのに俺様のツボを的確に突いてくるし!
「佐助……?」
あーもう困惑してる姿も可愛いし!
これキスとかしていいのか?一応さっきそういう許可取ったしいいよな?
「なまえ」
「え?」
俺がなまえの片頬を覆うように触れると、なまえはぎゅっと目を閉じた。
……何やっても可愛いなホント。ずっと見てられるわこの顔。
キスしたら、なまえはどんな反応するんだろうな。
「……佐助?」
なまえがゆっくりと目を開く。
キスされると思ったのになかなかされないから、ちょっと困ってるっぽい。
「ごめんごめん。次はちゃんとするからさ」
今度は親指でなまえの唇に触れる。
……あ、なまえの顔が赤くなった。
「……まだ?」
恥ずかしくて耐えられなくなってきたのか、なまえが俺をじーっと睨む。まぁかわいいだけなんだけど。
もっと見ていたいような気もするけど、これ以上焦らすのはちょっと可哀想か。
「ねぇ、さすっ……」
なまえが俺の名前を呼ぼうとした瞬間にキスをする。
とりあえず、まずは触れるだけの軽いやつ。最初から深いやつして、がっついてると思われんのもアレだし。
触れるだけのキスを終えてなまえを見ると、すでに限界っぽかった。
「どうしよう。まだキスしただけなのに、なんかもうだめそう……」
「ちょっと、もうそんなこと言っちゃう?これからもっとすごいことするんだけど?」
「……えっ」
驚くなまえを抱き寄せて顔を近づけると、俺の頬となまえの頬が触れる。
……なまえの顔が熱い。まだまだ序盤なんだけど大丈夫か?
「まあ安心してよなまえ、またキスするだけだから」
「え、うん……?」
キスするだけ、って言っても今度は思いっきり深いのするけどな。
さっきの優しいやつとは違って、少し強めに唇を押し当てた。なまえから漏れた声が普段の声音よりも数段甘くて、こっちが参りそうになる。
一瞬だけ唇を離すと、なまえの口が少し開いた。その隙を逃さずに舌を差し入れると、なまえの肩が少し跳ねた。
……あー、ホント可愛い。こういうのに戸惑ってるってことは、俺がはじめてってことでいいんだよな?
「さす、け……っ」
唇を離すと、なまえは俺の腕の中で肩を上下させた。俺の名前を呼ぶ声がいつもよりも舌足らずで可愛くて、もっと呼ばせたくなる。
いろんなものが理性で抑えられなくなる感覚ってこういうことを言うのか?
「なまえ、そんな可愛い声出すんだ」
「っ……」
耳元で囁くと、なまえがびくっと震える。
なまえの首筋に顔を寄せて唇を這わせると、また甘い声が漏れた。
どうしよう、これはどうにかなりそうだな。
そんなことを考えるだけの余裕と理性が一瞬機能したような気もするけど、本当に一瞬だった。
なまえが着ているシャツのボタンを数個外したのを合図に、余裕とか理性は全部吹き飛んだような気がした。
「じ、自分で脱げるってば……」
「じゃあなまえがメイド服に着替えるトコ、観察してればいい?」
「そういうことじゃな……っ」
鎖骨の下あたりにキスを落とすと、なまえは恥ずかしそうに顔を背けた。
「な、何回キスするの……っ」
「何回でもするつもりだけど?」
だって、ここには俺となまえの二人しかいないんだし。それに、なまえが可愛い反応してくれるし。
「あ、あのさ。着替えてるところ見られるのは本当に恥ずかしくてだめだから……着替えてる間は見ないで?」
「えっ、ダメなの?」
「ダメだよ!逆になんでいいと思ったわけ!?」
「……まぁ確かに、マトモに見てたらメイド服着終わる前に襲っちゃいそうだしな」
「えっそういう意味?と、とにかく見ないでね!?あっ、念のためにアレ渡すからちょっと待って」
「アレ?」
なまえが近くの棚から取り出したのは、アイマスクだった。
「これつけてて!私がいいって言うまで!」
「え、なんかこれはこれでそういうプレイみたいで興奮す─────」
「うるさい!」
*
─────なまえに半ば強制的に目隠しをさせられた俺は、なまえが着替え終わるまで大人しく待機することにした。
「これは……えっと、こうやって……」
視界からの情報が入ってこないからなのか、些細な音まで拾ってしまう。
なまえのひとりごとはもちろん、布が擦れる音も。
……これは、なまえが着替えてるところを俺様に見せまいと必死になった結果なんだろうけどさ。
なんか結果的に凄いことしてない?逆にエロいっていうか。
「き、着替え終わった」
「じゃ、コレ外していいってことね」
「……やっぱ見られたくない」
「へー。まぁ俺様は見たいので外しますよ、っと」
「えっ、ちょっ」
アイマスクを外すと、メイド服を着たなまえが恥ずかしそうにしていた。
スカートが短いからなのか、両手でスカートの裾を軽く握っている。
「やっぱり変じゃない……?」
「変じゃない。かわいい」
かわいい。本当にかわいい。
学園祭で見られなくて残念、とか思ってたけど……今考えたら他の男に見られなくてよかったかも。
今、なまえが俺のためだけに着てるってのがイイ。すごくいい。
「そんなに見なくてもいいじゃん……」
「いや見るでしょ。なまえ、ホント可愛いからな?ほら、鏡で見てみなって」
近くにあったスタンドミラーの前になまえを立たせる。なまえは自身の姿が鏡に映ると、鏡から目を逸らした。
「ほら、ちゃんと見なきゃ分からないだろ?」
「な、なんでメイド服の自分なんかをまじまじ見なきゃいけないの……」
なまえは鏡に映る自分自身を見ては視線を逸らし、鏡に映る俺と目が合うと顔を背けた。
そんな姿が可愛くて、いちいち俺の何かを刺激してくる。
後ろから抱きしめると、鏡にはなまえの恥ずかしそうな顔が映った。
……コレ、けっこういいかも?
「今のなまえ、すごい可愛い顔してる」
耳元で囁くと、なまえは一瞬だけ鏡を見た。
「あ……っ」
なまえの首筋に顔を埋めて舌を這わせると、なまえはぎゅっと目を閉じて、少しだけ身体をのけぞらせた。
「ね、だめ……さす、け……」
とろんとした声で『だめ』とか言われるの、破壊力エグいんだな。その上、名前なんて呼ばれたらもう……。
ヤバい、絶対ヤバい顔してるわ俺。こんな顔してんのなまえに見られるワケにはいかないでしょ流石に!
俺はさっきなまえが着替える時にしていたアイマスクを取り出して、それをなまえにつけた。
「さ、佐助……?なに?」
「目隠しされるとさ、視覚以外の感覚が敏感になる感じしない?」
「え、わかんな……ぁっ」
指でなまえの首筋をなぞると、また甘い声を漏らした。
……あー、ヤバい。今の声凄く好き。
ていうか咄嗟に目隠しなんてしちゃったけど、もしかして俺様すごいことしてる?ちょっと危ないプレイな気もしない?
なまえを俺の方に向かせて、親指で唇をなぞると少しだけ口を開いた。その半開きになった口に舌を差し入れる。
最初は身体をこわばらせていたなまえも、だんだん俺の誘いに応えてくれるようになってきた。なんかイイな、だんだん俺のものになっていくみたいな感じがして。
……それにしても、キスだけでこんなに気持ちよくなるものなのか。なんか想像以上にヤバそうだわ、これ。
「っ……はぁ…っ」
唇を離すと、なまえはさっきのキスの時よりも大きく肩を上下させていた。そして、あんまり身体に力が入らないのか、その場にへたりと座り込んだ。
やっぱり、目隠しすると感じやすくなったりするのか?
でも、これだとなまえの顔が見えないのがちょっとな。
俺もその場に座ってなまえのアイマスクを取ると、なまえはまだキスの余韻のせいなのかとろんとした表情をしている。ちょっと涙目なのも可愛い。
「やっぱこっちのほうがいいな」
「私も、見えないのはちょっと怖かった」
「あー……ゴメンな急に目隠しなんてして」
「その、佐助はああいうのが好きなの?目隠しとか鏡の前でとか、アブノーマル?っていうか……」
「…………思ってたよりは良かったかも?」
「えっ」
「まぁでも、なまえの顔が見えないのは嫌だな」
俺がそう言うと、なまえは少し驚いたような顔をして顔を伏せた。
あ、照れた?
「あっ、あとせっかくだからなまえにご主人様って呼んでほしいな〜なんて」
「……やっぱりそういうプレイが好きなんだ」
「違う違う!これはなまえが今メイド服着てるからであって────」
「えっち」
小さい声だけど、はっきり聞こえた。なまえの顔がどんどん赤くなっている。自分で言っておいて恥ずかしくなっちゃうとか可愛すぎない?
……今のがいちばん破壊力あったかも。
「なまえ……」
「やだ」
「えっ」
なまえを押し倒そうとしたら、なぜか拒否されてしまった。ちょ、ここまでやっておいておあずけ!?
「ここは、嫌……」
ここは嫌?
……あ、床だからってことか。
「じゃあ、どこならいい?」
ホントは分かってる。だってなまえの視線の先にはそれがあるんだから。
でもなまえに言わせたい。ちょっと意地悪で、ズルいと思われるかもしれないけど。
なまえは立ち上がって、それに向かって歩き出した。
「こ、ここ……」
────ベッドに座ったなまえは、恥ずかしそうに俯いた。
俺様としては、心残りがないように卒業したいわけで。
というわけで今、なまえにあることを頼み込んでいる。
「一生のお願い!じゃないと俺様卒業できない!」
「じゃあ留年してください」
「酷っ!」
うーん、想定内。
多少はこういうこと言われるだろうな、とは思ってた。
まぁ、内容が内容なんでね!
「いや酷いのはそっち!突然メイド服着ろって何!?」
そう。俺様は何を隠そう、なまえにメイド服を着てくれってお願いしてる。
……いや、ヤバいお願いしてるってのは流石に分かってるよ?
でも昨日新聞部の部室を整理してたら学園祭で使うはずだったメイド服が出てきて、思い出しちゃったわけよ。なまえのメイド姿を拝めなかったことを!
「学園祭でなまえがメイドさんになるっていうから俺様めちゃくちゃ楽しみにしてたの!それがなまえちゃんってば、試着の日も学園祭当日も欠席って!」
「今更学園祭の話!?いや、仕方ないじゃん……熱が出たの!そりゃ欠席するよ」
「とにかく!メイドのなまえ見ないと卒業できないの!未練タラタラなの!俺様、この学園の地縛霊と化すよ!?いいの!?」
「そっか。除霊のお願いしておくね」
「なまえちゃん薄情すぎない?」
……うーん、さすがなまえ。なかなかに手強い。
こうなったら、こちらも最終手段を繰り出すか。
「なまえがメイド服着てくれるなら、俺様の財布が許す限りなまえの好きなものを奢るつもりなんだけど」
「……え?」
なまえが俺をチラッと見る。
あ、食いついたなこれは。
「どう?少しは着る気になった?」
「……なんでそんなに必死なの?」
「そりゃあ見たいからね、なまえのメイドさん」
この機会を逃したら、なんか一生見れなさそうな気がするから。
いや、なまえとは一生一緒にいるつもりだけどさ!若気の至りでしかできないこともあるでしょ、きっと。
「…………本当に奢ってくれるなら着るけど」
やや引き気味とはいえ、なまえからなんとか了承していただいた。
……俺様の財布が犠牲になるけど、これくらい安いもんだ。
「はい決まり〜!言質取りました!やっぱ無理ってのはナシな!」
「ただ佐助、私の家まで来てもらうからね」
─────家?今、なまえの家って言ったのか?
「えっ?それは……そういうことだって思っていいわけ?」
ヤバいな、そこそこ動揺してるわ俺。
でも、これってそういうお誘いってこと?
「……誰かに見られたら私の人生が終わるから言ってるの!だから絶対に人に見られない場所を指定したの!」
なまえは一人暮らしだ。
確かに、なまえの部屋なら絶対に誰にも邪魔されずに……できるわけだけど。いろんなことが。
「あー……いや、それはそうかもだけどさ?なまえ、さすがに分かってるよな?男を、ましてや彼氏を部屋に呼ぶってことはさ、そういう────」
「分かって言ってるから、大丈夫……」
下を向くなまえの顔がどんどん赤くなる。
あ、耳まで赤くなった。
「……今そっちの言質も取れると思ってなかったわ」
「うるさい。黙れ佐助」
「なまえってほんと……ほんとそういうとこ可愛いよな」
面食らったような顔をするなまえ。
なまえって本当に分かりやすいな、すぐ顔に出るから。
それにしても、なんて言うんだこういうの。棚からぼたもち?いや、衝撃の度合いで言えば青天の霹靂?
あーもう、どっちでもいいだろそんなの!
そんなことより、なんかとんでもない展開じゃない!?
*
────で、なまえの家にメイド服と手土産のケーキを持ってお邪魔してるワケだけど。
「……うわー、これ?私これ着るの?マジで?」
「マジだよなまえ」
「……やっぱやめない?似合わないよ多分」
なまえがちょっと乗り気じゃない。
というか、実際にメイド服目の当たりにして気が引けちゃった?でもなまえに絶対似合うし、見たいし?
なんとしてでも着たところみたいし、なんなら着たままそういうことしたいし!?
「絶対似合う、絶対似合うから」
「マジな目するのやめて?怖いから」
「俺様の執念をナメないでくれる?今回はほぼ全財産を賭けて来てるからな?それにわざわざケーキも買って来たんだから俺様!」
「ケーキたいへん美味しかったです……なんなら一個余ってるやつをもう一個いただきたい……」
「なら着てくれるよな?」
「…………はい」
よし、なんとかなまえの承諾を得ることができた。あとは……
「ところでさ、大事なことだから念の為もう一回聞いとくんだけどっ!あー……その、いいんだよな?俺とそういうことしていいって解釈で……」
一応、改めてこっちの承諾もいただかないとな。こればっかりはホント、一方的なのはよくないし。
「なっ……だ、だからさぁ、もうわかるでしょここまで来ておいて……」
「ここまで来たから改めて聞いてんの!ダメならダメって言えよな。そんなことで幻滅したりしないから俺様」
……まぁ、ダメって言われたらちょっと残念っちゃ残念だけどな。でもなまえとは末永〜く付き合っていくワケだし、今回がダメでもいつかは─────。
「ダメ、じゃ……ない」
「……ッ」
絞り出すように声を出したなまえは、顔を真っ赤にしてうつむいた。
……ヤバい。なんだこの破壊力。
こんなに可愛かったっけなまえって。
いや可愛いだろ普段から!何言ってんの!?
「……こんなに幸せでいいのか、俺?」
「まあ近いうちに佐助のお財布からお金はなくなるけどね」
「ゔっ」
そうだった。それを条件にメイド服着てもらうんだった。
「今更だけどさ。もうケーキ貰ってもらったわけだしこれ以上はいいよ、私になんか奢るの」
「えっ、いいの?女神なの?」
どうしようなまえがいい子すぎる。
そして、なんか俺様しかいい思いをしてない気がする。なまえはホントにそれでいいわけ?
「だって全財産なんて使っちゃったらさあ……ごめんやっぱなんでもない」
「えっなにそれ、気になるから言ってくれない?」
「……春休みにいっぱいデートできないよね?佐助と行きたいところたくさんあるから、それは困るなって」
「…………」
「えっ?な、なんで黙るの!?」
もうなんなのこの子ホント……!!末恐ろしいわ!
多分計算とかじゃなくて無意識なんだろうし!
なのに俺様のツボを的確に突いてくるし!
「佐助……?」
あーもう困惑してる姿も可愛いし!
これキスとかしていいのか?一応さっきそういう許可取ったしいいよな?
「なまえ」
「え?」
俺がなまえの片頬を覆うように触れると、なまえはぎゅっと目を閉じた。
……何やっても可愛いなホント。ずっと見てられるわこの顔。
キスしたら、なまえはどんな反応するんだろうな。
「……佐助?」
なまえがゆっくりと目を開く。
キスされると思ったのになかなかされないから、ちょっと困ってるっぽい。
「ごめんごめん。次はちゃんとするからさ」
今度は親指でなまえの唇に触れる。
……あ、なまえの顔が赤くなった。
「……まだ?」
恥ずかしくて耐えられなくなってきたのか、なまえが俺をじーっと睨む。まぁかわいいだけなんだけど。
もっと見ていたいような気もするけど、これ以上焦らすのはちょっと可哀想か。
「ねぇ、さすっ……」
なまえが俺の名前を呼ぼうとした瞬間にキスをする。
とりあえず、まずは触れるだけの軽いやつ。最初から深いやつして、がっついてると思われんのもアレだし。
触れるだけのキスを終えてなまえを見ると、すでに限界っぽかった。
「どうしよう。まだキスしただけなのに、なんかもうだめそう……」
「ちょっと、もうそんなこと言っちゃう?これからもっとすごいことするんだけど?」
「……えっ」
驚くなまえを抱き寄せて顔を近づけると、俺の頬となまえの頬が触れる。
……なまえの顔が熱い。まだまだ序盤なんだけど大丈夫か?
「まあ安心してよなまえ、またキスするだけだから」
「え、うん……?」
キスするだけ、って言っても今度は思いっきり深いのするけどな。
さっきの優しいやつとは違って、少し強めに唇を押し当てた。なまえから漏れた声が普段の声音よりも数段甘くて、こっちが参りそうになる。
一瞬だけ唇を離すと、なまえの口が少し開いた。その隙を逃さずに舌を差し入れると、なまえの肩が少し跳ねた。
……あー、ホント可愛い。こういうのに戸惑ってるってことは、俺がはじめてってことでいいんだよな?
「さす、け……っ」
唇を離すと、なまえは俺の腕の中で肩を上下させた。俺の名前を呼ぶ声がいつもよりも舌足らずで可愛くて、もっと呼ばせたくなる。
いろんなものが理性で抑えられなくなる感覚ってこういうことを言うのか?
「なまえ、そんな可愛い声出すんだ」
「っ……」
耳元で囁くと、なまえがびくっと震える。
なまえの首筋に顔を寄せて唇を這わせると、また甘い声が漏れた。
どうしよう、これはどうにかなりそうだな。
そんなことを考えるだけの余裕と理性が一瞬機能したような気もするけど、本当に一瞬だった。
なまえが着ているシャツのボタンを数個外したのを合図に、余裕とか理性は全部吹き飛んだような気がした。
「じ、自分で脱げるってば……」
「じゃあなまえがメイド服に着替えるトコ、観察してればいい?」
「そういうことじゃな……っ」
鎖骨の下あたりにキスを落とすと、なまえは恥ずかしそうに顔を背けた。
「な、何回キスするの……っ」
「何回でもするつもりだけど?」
だって、ここには俺となまえの二人しかいないんだし。それに、なまえが可愛い反応してくれるし。
「あ、あのさ。着替えてるところ見られるのは本当に恥ずかしくてだめだから……着替えてる間は見ないで?」
「えっ、ダメなの?」
「ダメだよ!逆になんでいいと思ったわけ!?」
「……まぁ確かに、マトモに見てたらメイド服着終わる前に襲っちゃいそうだしな」
「えっそういう意味?と、とにかく見ないでね!?あっ、念のためにアレ渡すからちょっと待って」
「アレ?」
なまえが近くの棚から取り出したのは、アイマスクだった。
「これつけてて!私がいいって言うまで!」
「え、なんかこれはこれでそういうプレイみたいで興奮す─────」
「うるさい!」
*
─────なまえに半ば強制的に目隠しをさせられた俺は、なまえが着替え終わるまで大人しく待機することにした。
「これは……えっと、こうやって……」
視界からの情報が入ってこないからなのか、些細な音まで拾ってしまう。
なまえのひとりごとはもちろん、布が擦れる音も。
……これは、なまえが着替えてるところを俺様に見せまいと必死になった結果なんだろうけどさ。
なんか結果的に凄いことしてない?逆にエロいっていうか。
「き、着替え終わった」
「じゃ、コレ外していいってことね」
「……やっぱ見られたくない」
「へー。まぁ俺様は見たいので外しますよ、っと」
「えっ、ちょっ」
アイマスクを外すと、メイド服を着たなまえが恥ずかしそうにしていた。
スカートが短いからなのか、両手でスカートの裾を軽く握っている。
「やっぱり変じゃない……?」
「変じゃない。かわいい」
かわいい。本当にかわいい。
学園祭で見られなくて残念、とか思ってたけど……今考えたら他の男に見られなくてよかったかも。
今、なまえが俺のためだけに着てるってのがイイ。すごくいい。
「そんなに見なくてもいいじゃん……」
「いや見るでしょ。なまえ、ホント可愛いからな?ほら、鏡で見てみなって」
近くにあったスタンドミラーの前になまえを立たせる。なまえは自身の姿が鏡に映ると、鏡から目を逸らした。
「ほら、ちゃんと見なきゃ分からないだろ?」
「な、なんでメイド服の自分なんかをまじまじ見なきゃいけないの……」
なまえは鏡に映る自分自身を見ては視線を逸らし、鏡に映る俺と目が合うと顔を背けた。
そんな姿が可愛くて、いちいち俺の何かを刺激してくる。
後ろから抱きしめると、鏡にはなまえの恥ずかしそうな顔が映った。
……コレ、けっこういいかも?
「今のなまえ、すごい可愛い顔してる」
耳元で囁くと、なまえは一瞬だけ鏡を見た。
「あ……っ」
なまえの首筋に顔を埋めて舌を這わせると、なまえはぎゅっと目を閉じて、少しだけ身体をのけぞらせた。
「ね、だめ……さす、け……」
とろんとした声で『だめ』とか言われるの、破壊力エグいんだな。その上、名前なんて呼ばれたらもう……。
ヤバい、絶対ヤバい顔してるわ俺。こんな顔してんのなまえに見られるワケにはいかないでしょ流石に!
俺はさっきなまえが着替える時にしていたアイマスクを取り出して、それをなまえにつけた。
「さ、佐助……?なに?」
「目隠しされるとさ、視覚以外の感覚が敏感になる感じしない?」
「え、わかんな……ぁっ」
指でなまえの首筋をなぞると、また甘い声を漏らした。
……あー、ヤバい。今の声凄く好き。
ていうか咄嗟に目隠しなんてしちゃったけど、もしかして俺様すごいことしてる?ちょっと危ないプレイな気もしない?
なまえを俺の方に向かせて、親指で唇をなぞると少しだけ口を開いた。その半開きになった口に舌を差し入れる。
最初は身体をこわばらせていたなまえも、だんだん俺の誘いに応えてくれるようになってきた。なんかイイな、だんだん俺のものになっていくみたいな感じがして。
……それにしても、キスだけでこんなに気持ちよくなるものなのか。なんか想像以上にヤバそうだわ、これ。
「っ……はぁ…っ」
唇を離すと、なまえはさっきのキスの時よりも大きく肩を上下させていた。そして、あんまり身体に力が入らないのか、その場にへたりと座り込んだ。
やっぱり、目隠しすると感じやすくなったりするのか?
でも、これだとなまえの顔が見えないのがちょっとな。
俺もその場に座ってなまえのアイマスクを取ると、なまえはまだキスの余韻のせいなのかとろんとした表情をしている。ちょっと涙目なのも可愛い。
「やっぱこっちのほうがいいな」
「私も、見えないのはちょっと怖かった」
「あー……ゴメンな急に目隠しなんてして」
「その、佐助はああいうのが好きなの?目隠しとか鏡の前でとか、アブノーマル?っていうか……」
「…………思ってたよりは良かったかも?」
「えっ」
「まぁでも、なまえの顔が見えないのは嫌だな」
俺がそう言うと、なまえは少し驚いたような顔をして顔を伏せた。
あ、照れた?
「あっ、あとせっかくだからなまえにご主人様って呼んでほしいな〜なんて」
「……やっぱりそういうプレイが好きなんだ」
「違う違う!これはなまえが今メイド服着てるからであって────」
「えっち」
小さい声だけど、はっきり聞こえた。なまえの顔がどんどん赤くなっている。自分で言っておいて恥ずかしくなっちゃうとか可愛すぎない?
……今のがいちばん破壊力あったかも。
「なまえ……」
「やだ」
「えっ」
なまえを押し倒そうとしたら、なぜか拒否されてしまった。ちょ、ここまでやっておいておあずけ!?
「ここは、嫌……」
ここは嫌?
……あ、床だからってことか。
「じゃあ、どこならいい?」
ホントは分かってる。だってなまえの視線の先にはそれがあるんだから。
でもなまえに言わせたい。ちょっと意地悪で、ズルいと思われるかもしれないけど。
なまえは立ち上がって、それに向かって歩き出した。
「こ、ここ……」
────ベッドに座ったなまえは、恥ずかしそうに俯いた。
2/5ページ