【竹中半兵衛編】



「さて……僕は、一体どの男を消せばいいのかな？」


「しょ、初手物騒……！！」


次に出会ったのは半兵衛さん。


『ちょっといいかな？』


とにこやかに話しかけられたと思ったら、三成くんと並ぶ物騒具合だった。


「誰なんだい？君をたぶらかした野郎は……」


"野郎"なんて言っている半兵衛さん、はじめて見るかも……じゃなくて！こ、これはまずい気がする！いま半兵衛さんが纏っている雰囲気は、割と本気で怒っている時のやつだ。


「ふふ、なんてね」


「え？」


半兵衛さんが今まで纏っていた怒りのオーラが消えた……気がする。いつもの半兵衛さんに戻った？


「悪かったねなまえ。ちょっと揶揄うつもりが……分かっているよ。あの噂は嘘だってね」


「な、なんなんですか……びっくりしましたよ……」


「ただ……」


た、ただ？嫌な接続詞が聞こえたような……。
……あ、あれ？なんだかとっても嫌な予感がするのですが！？


「君の彼氏候補として、僕以外に何人も名前が挙がっているというのはどういうことなのかな？」


「え、ええ……」


「あまり気持ちのいいものではないんだよ。想い人に恋人がいる、なんて噂を聞くことはもちろん……君の彼氏候補として、他の誰かの名前が挙がることも」


「……お、想い人？」


「あぁ。僕にとっての、なまえだ」


仮面の下から、真っ直ぐに私を見つめる半兵衛さん。半兵衛さんから目を逸らすことができなくて、見つめ合うかたちになってしまった。


「……なまえ」


……あれ？半兵衛さんの顔、こんなに近くにありましたっけ？


「ちょ、な、何してるんですか！？」


「え？見つめ合っていい雰囲気になったらやることといえば……わかるだろう？」


「や、やっぱりキスしようとしてたんですか！？ダメですって！」


こんなことをしているのに、半兵衛さんは特に照れている様子もない。な、なんか私ばっかりうろたえている気がする……！


「……フフ、真っ赤になった可愛らしいなまえを見ることができたからね。今日はこのへんにしておいてあげるよ」


どうやら解放してくれるらしい。よ、よかった……半兵衛さんに会った時は、長時間拘束される覚悟をしていたんだけど。


「今日は僕のことを意識してくれさえすればいいから。それ以上のことはまた今度のお楽しみにしておくよ」



……あれ？この解放って、もしかして一時的なやつですか？