複数人
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……あ、そういえばこの学園に代々伝わる都市伝説の話、知ってる?」
私が例の都市伝説を知ったのは、友人である猿飛佐助のこの一言がきっかけだった。
なんの前触れもなく、この学園の都市伝説について聞かされたのだ。
猿飛は新聞部の部員だ。常日頃からスクープを追っているからなのか、根も葉もない噂話だとかこういう手の話は嫌いではないらしく、時々こうして話を聞かされる。
「都市伝説?聞いたことないな……ていうかあるんだ、うちの学校にも」
私は別に幽霊とかそういうの信じてるわけじゃないんだけど。
でも、都市伝説とかそういう類の話を聞くのはわりと好きなほうだ。
「そうそう!あるのよ~?うちの学校にも。で、どんな話かっていうと~……」
猿飛の話はこうだった。
____なんでも、旧校舎の二階に「開かずの間」と呼ばれる教室があるらしく。
その開かずの間には財宝が隠されているかも~だとか、入ってしまったら一生その教室から出られない……とか。様々な憶測が飛び交っているらしい。
「開かずの間って……ただ単に使われてないからずっと鍵かけてるだけなんじゃないの?」
実際のところ、旧校舎にはそういう教室が多い。
以前、使われていない教室が不良のたまり場になった挙句、その不良たちがなにか備品を壊してしまったということがあったらしく。それ以来徹底しているという話を孫市先生から聞いたことがある。
「……って思って俺様、職員室に忍び込んでその教室の鍵を手に入れようと思ったんだけどさ」
「いや忍び込むなよ」
「だって財宝を手に入れるチャンスかもしれな___ってまあまあその話はちょ~っと置いといて!……で、俺様は鍵をそりゃもう血眼になって探しました」
「うん……で、鍵はどうだったの?」
「それが、なかったんだよね。他の教室の鍵は全部あったのに」
「そのときたまたま誰かが教室を使ってたとかではなく?」
「そう思って教室見に行ったんだけど、使われてなくってさ。もう一度職員室に行ってみたけど、やっぱり鍵はないし。で、気になって翌日管理してる先生にやんわり聞いたら、なんかずっと前からないんですよ~とか言い出すし」
「へぇ……」
それは単に鍵の管理が少々杜撰なのでは?と思わなくもなかったけど、猿飛には言わなかった。
夢がないだのなんだの、うるさく言われると思ったからだ。
___この時の私は、自分が明日旧校舎に赴くことになるだなんて、思ってなかった。
*
放課後、突然孫市先生から声をかけられた。
なんでも、元親と政宗を探しているらしい。
「……うーん、見てないですね」
「そうか……放課後に話があるから残れと伝えたのだがな」
孫市先生から直々に残れって……ふたりは何をやらかしたんだ。
「もしやつらを見かけたら職員室にすぐさま直行するよう伝えてくれ。なんなら連行してきてくれても構わない」
孫市先生の目がマジである。
……いや、本当になにやらかしたの?
「わかりました、見つけたらすぐさま連行します!」
あのふたりが行きそうな場所ってどこだろう、と思って窓の外を見てみると、ちょうど旧校舎が見えた。
___そして、旧校舎の教室にいる眼帯の男子生徒ふたりが見えた。
*
「たしか、あのふたりはこの辺りにいた!はず……」
とりあえず旧校舎の二階まで来てしまったけど、まだこの辺りにいるかな……なんだかんだで逃げ足の速いあのふたりのことだから、もう全然違う場所に移動している可能性もあるな。
ていうか、旧校舎の二階なんて初めて来たかもしれない。あれ、そういえば……。
____猿飛から聞いた都市伝説の教室、旧校舎の二階にあるんじゃなかった?
そういえば、どの教室なんだろう。行く機会もないしいいや、と思って詳細は聞かなかったんだよなあ。こんなに早く機会に恵まれるなら聞いておけばよかった。
……いや、別に信じてるわけじゃないけど。
「__なまえ?」
「うわぁっ!?……ってなんだ元親か」
びっくりした。今、すぐ脇の教室の扉から元親が顔を覗かせたのだ。
都市伝説の話を思い出した途端に名前を呼ばれるのは心臓に悪い……!!
「Huh?……なまえじゃねェか」
「ああ政宗も……はあ、なんか疲れちゃったな」
政宗は教室の中にいて、なぜか窓際でパンを食べていた。
……おいしそうだな!?
「えっずるい、私もパン食べた―――」
___と、私が教室に入った瞬間のことだった。
ガラガラ……ガチャッ。
誰も触れていないはずの教室の扉が閉まり、鍵がかかる音がした。
そして、なぜか一枚の紙が頭上から降ってきた。
____その紙には、
『○○しないと出られない部屋』
の文字が並んでいた。
*
「おいどうなってんだ!?扉全部開かねぇぞ!!?」
謎の音と、謎の紙が降ってきてから早数十分。私たち三人はなんとか扉をこじ開けようとしていた。
見るからに力のありそうな元親と、野球部で鍛え抜かれている政宗が扉を壊す勢いで(というか、壊す前提で)扉と格闘したけど、まったく歯が立たない。
「Hnmm……とんだHappeningだな」
「ま、窓は?ここ二階だし、窓から脱出とか難しいかもだけど一応……」
「そうか窓……ぐっ、固ッ!!なんだこれ建て付け悪りぃのか!?」
元親が窓を開けようとしたけど、十センチちょっとくらいを開けたところで止まってしまった。これ以上はビクともしない。
これくらいの隙間じゃ、人は流石に通れないよね……
いや、そもそもここから飛び降りるって発想もあれなんだけど。
「……え?ガラス割る??」
「オレはなまえのそういう考え方、嫌いじゃねェぜ」
「いや流石に冗談だよ政宗」
「つーかよォ、俺ら昨日ガラス割って怒られたばっかだぜ?流石にこれ以上割るのはなあ」
……ああ、だから孫市先生はふたりを探してたのか。ていうかガラス割るなよ。
「OK、扉も窓も全滅ってワケか」
全滅、ねぇ……
この教室、もしかして猿飛が言っていた例の「開かずの間」なんだろうか。入ってしまったら一生その教室から出られない、とかいう説もあるって言ってたような……いや、深く考えるのはやめよう。
あれ?そういえば……
「ところでさ、無視してたけど降ってきた紙に書いてあるアレはなんなの?」
扉を開けるのに必死だったし意味も分からなかったからすっかりスルーしてたけど、結局あれはなんだったんだろう。
○○しないと出られない部屋、とか書いてあったっけ。
○○、としか書いてなかったけど○○ってなんなの?
「紙ってこれか?……Huh?ちょっと待て、こんなこと書いてあったか?」
「え?どういうこと??…………えっ?」
政宗が持つ紙を覗き込むと、こう書かれていた。
『今から流れる音声指示に従わないと出られない部屋』
「お……音声指示?」
……都市伝説なんだよね?なんか、やけに現代的なんですけど。
『開かずの間にようこそ!早速だけど、脱出のために音声に従ってね!』
本来ならチャイムや放送が流れてくるスピーカーから、突然声が流れてきた。
…………音声案内、なんでプリクラでポーズとか指示してくれるあの声仕様なんだろう。
「Just a moment! 開かずの間って例の都市伝説か!?」
「た、たぶん……?」
「こんなにCheapな感じなのか!?」
「それには私も驚いてるよ政宗」
なんていうか、都市伝説としてどうなのこれ。なんかもっとこうあるでしょ!?
「開かずの間に財宝が隠されてるって聞いてわざわざこんなトコまで出向いたってのによ……ガセネタだったか」
「だから財宝なんてくだらねェって言ったろ。これで懲りたか?」
「ンなッ……」
____なるほど、そして元親は猿飛同様財宝説信者だった、と。
で、くだらないとかなんだかんだ言いつつ政宗もついてきた感じか。
『早速、ひとつめのお題だよ!まずは……紫の眼帯の彼!」
「ッ!?……おっ、俺か!?」
ひとつめのお題、ってことはいくつかあるパターンだなこれ。
そして音声案内さんは、まずは元親をご指名らしい。
『そう!横の彼女の両肩に手を置いて、視線を合わせて至近距離で見つめ合おう!』
「「「「はあっ!!?」」」
私たちの声が見事に揃う。
いや、だって、見つめ合うって!しかも、その横にいる彼女って……
「よ、横にいる彼女って実は政宗のこととか」
「ンなわけねーだろ」
「デスヨネー……」
私……なのか、私なんだな!?
これは、その……やるしかない感じでしょうか。
『私が終了の合図をする前に目をそらしたり、目をつぶったらチャレンジは失敗!あ、まばたきは流石にOKだよ!5秒以内に実行してね☆カウントダウン、スタート!5、4……』
いやいやいやいや、急すぎるでしょ!!?しかも5秒ってそんな、え!?
「なまえ」
「えっ、ひゃ……!?」
元親の大きい手が、私の肩の上に置かれた。
しかも、私の目線に合わせるために元親がかがむから……
「まるでKissする直前だな」
「う、うっせえ黙ってろ!余計照れんだろーがッ」
……わりとマジで、キスされる直前みたいなんだよなあ。
いや、したことないけど。こんな感じなのかな、とか考えちゃうな。
「脱出のためだ、ちょっくら我慢してくれ。こんなことされんの、嫌かもしれねぇけどよ」
こんな状況でも私を気遣ってくれるあたり、ほんと、なんていうか。
見た目はちょっと怖いけど、実はすごく優しいんだよね、元親。
「が、我慢って……元親こそ、その。わ、私は嫌とか思ってないから」
「ん、そうか……ハハッ、それ聞いて安心したぜ」
「なんだこの空気……sweetにもほどがあるぜ」
……なんだか、とっても恥ずかしいのですが。
*
「……ねえ、元親」
「な、なんだ?」
「…………長くないかなあこれ!!?」
元親と見つめ合ってけっこう経ったはずなんだけど。終了の合図があるまで目はそらせないし、その、色々と限界が近いのですが。
「Too long……ッ!!オレはこの空気の中でどうしろってんだ!?」
確かに政宗だけ蚊帳の外感が異常だ。正直、『政宗だけ指令を免れやがって……!』とか思ってたけど。
……なんか、政宗は政宗できついかもしれない。
「あれか?もっと顔近づけたほうがいいのかァ?ん?」
元親の顔がぐっと近づく。
……ん?元親さん?
「いやあの元親さん!!?」
急にお顔を近づけないでください!!えっ、まって何事!?
「なんだァ照れてんのか?」
「照れ……ッるよ!そりゃあ!!」
照れてんのか?じゃないよまったく!近くなればなるほどに元親ってけっこうかっこいいよなあとか自覚させられちゃうんだよこっちは!
「ふッ……」
「えっ?いま笑った!?」
「悪ィな、可愛いと思ってよ」
「か、かわぁ……っ!?」
「オイ、西海の鬼……テメエなまえを口説いてんじゃねーよ」
「べ、別に口説いたワケじゃねぇよ!……こんなに近づくことなんてねぇからよ、なんかその」
『3、2,1……しゅーりょー!!第一のミッション、クリアだよ!』
「なまえ、コイツはSuper dangerousだ。コイツから離れろ、一定の距離を保て」
終了の合図があった途端に政宗がすごい勢いで私と元親を引き離した。
いや、それにしてもスーパーデンジャラスってどうなのよ。
「なんだよ、ちょっくら危ない気ィ起こしそうになっただけじゃねえか」
「だから危ねえってんだ!マジでなまえに近づくんじゃねーぞ……」
「いや無茶言うんじゃねえよッ、なまえにあんな顔で見つめられてみろ……わかるだろ」
「Gah!……なんだ?自慢か?」
「なんだよ、羨ましいのかあ?」
「Ha!オレだったらもっとなまえを骨抜きにできると思っただけ___」
元親と政宗がなにやらヒソヒソ話してるけどなに話してるんだろ。
____あー、それにしてもすごい体力もってかれたなあ。次のミッションは、やさしいやつでお願いします。切実に。
『それじゃ、第二のミッションだよ!黒の眼帯の彼!横の彼女を後ろから抱きしめてみよう!!』
……あの。
「Ha!見てろよ、西海の鬼ッ!」
ぜんぜん、やさしくないんですけど……。
*
「いや、あのぉ~……」
……なに、この指令。私が?政宗に?後ろから?抱きしめられる?
『早速実行してもらうよ!というわけで、5,4,3、2、1、スタートっ!』
どうやら私の意思はガン無視らしい。いや、もう、どういうことなのよこれ。
「なまえ」
「……ッ!?」
い、いまガバって!ガバッっていかれましたよね政宗さん!?
う、後ろから抱きしめられてる!!!!ていうか近い近い近いって!!
「んな緊張するこたねえよ、もっとRelaxしな」
……政宗の顔が、私の顔のすぐ横にあるわけで。つまり、その。
み、耳元で、囁かれるかたちになるってことで。
「り、りらっく、す……は、無理」
「なんでRelaxできねぇんだ?ん?」
だ、だからなんでいちいち耳元で喋るのかな……!?わざとじゃないんだよね!!?
「そ、それは、近いし、うん……い、色々と?」
「……そうだぜ、なまえに顔近すぎるんじゃねえか?」
も、元親が助け船をっ!?いいぞもっと言ってやって!!
「アンタだってさっきはこんな感じだったんだぜ?」
「ンなッ……」
も、元親~っ!!!弱いっ!政宗に押されないでお願い頼む!
「ところでなまえ」
「は、はい!?」
うわびっくりしたあ……相変わらず耳元だし今のは突然呼ばれたし。
ただでさえドッキドキなんだよこっちは!
「____少しは意識してるか?オレのこと」
「ッッッッ!?」
……思わず肩を震わせてしまった。
だ、だって今、すごい、なんか。いつもの声音と違ったっていうか。
て、ていうか待って、すごい恥ずかしい。あれ、なんで急に恥ずかしさがこみ上げてきてるの!?
……なんで、こんな顔熱くなるの!!?
「Hmmm……そういうマジな反応するってことは」
『3,2,1、しゅーりょー!!お疲れ様っ』
政宗の言葉を遮るように終了のアナウンスが鳴り響く。
「Shit!遮りやがった」
「や、やっと解放される……っ」
ちなみに今回は元親によってすぐさま政宗から引っ剥がされました。
……ていうか、ほんとこれ私の心臓がすごいダメージ食らってる気がするんですけど。
今日だけで一生分の少女漫画的シチュエーションを味わってしまった感じだよほんと。
……そろそろ、ほんとに脱出したいんだけど。
*
「……ねぇ、これどうやって脱出する?いや、まじで」
これが万事休すとか万策尽きるってやつかな……。
前の指示を終えてまだ扉が開く様子がないってことは、次の指示があるってことなんだろうか。いや、これ以上の指示にはとても従いたくないんだけど。
「まあオレはなまえともっと近づけるならこのままでもいいけどな?」
「アンタみたいな危ないのをなまえに近付かせてたまるかよ!」
「Ha!お前よりはマシだろ」
「なっ……」
政宗と元親がまた口論を始めてしまった。ほんとキリがない……!
「ちょっと二人とも、いま口論なんてしても……」
『――え?次で……か……分か……た。じゃ、じゃあ、次でラストミッション!』
政宗と元親の口論を遮るように、音声案内が響き渡る。
……え?なんか今おかしくなかった?
明らかに人と会話しているような声が聞こえたような気がするんだけど。
……”向こう”にも複数人、いる?
____ていうかこれ、自動音声とかじゃなくて、今、生で指示してるってこと?
ってことは、音声案内さんとお話しできる可能性……もとい、交渉する余地がある感じですか?
「ちょ、ちょっと待って!音声案内の人!!」
『……え?』
「あなたたち、どこから指示してるんですか!?これ、いま生で指示されてますよね?ていうか、はやくここから出してほしいんですけどっ」
『ど、どうし……?やめといたほうが……続けますか!?』
「オイオイ、急に会話が筒抜けだぜ?」
『えっ……!!?』
「いいかげん脱出させてくれねぇか?音声案内さんよぉ」
『こ、こうなったら――痛ッ!?』
____向こう側の音声とともに、何かが倒れるような音が聞こえた。
『____まさかこんなことになってるとはね。てか俺様が駆けつけなかったらもっとヤバいことになってたでしょ……あー、なまえちゃん、聞こえる?』
この声って……
「猿飛っ!?」
『そ♡なまえちゃんのピンチに駆けつけたヒーロー、猿飛佐助で~す……ってね!ま、とりあえず状況の説明させてよ、ねっ!』
……おっと。
人を殴るような音と共に、何かが倒れる音がした。
『ヒィっ!に、逃げるぞお前ら!』
『ふーん、ま、顔覚えたから逃げても無駄だけど……とりあえずなまえちゃん、今から救出するから待っててね~……あ、ムサい眼帯たちもいたっけ?』
「コイツ……露骨に態度変えやがる!」
「コイツに助けられるなんざ……なんか癪だな」
……と、とりあえず、助かった……のかな?
*
「……はぁ、ほんっと俺様に感謝してよね」
あのあとすぐに私たちが閉じ込められた教室に駆けつけてくれた猿飛。
心なしか疲れているような……ほんと申し訳ない。
とりあえず、猿飛の説明をまとめると。
・音声案内の正体は新聞部の部員。
・猿飛が追っていた「開かずの間」の話を聞いて、男女をこの部屋に閉じ込め、スクープ写真を撮る計画を思いついた。
・この教室の鍵はこの計画に加担した新聞部の部員のひとりが前々から持っていたらしい。そして、鍵はこの計画云々のために入手したわけではなく、元々はこの教室でサボるために入手していたらしい。
・要するに、「ちょうど鍵もってるし、この教室を開かずの間にしちゃえ!」ってことで。
・まだ色々と準備段階であったが不幸にも教室の準備――もとい、人を閉じ込める準備はばっちり整っていたため、この教室に入室した私と政宗、元親が犠牲になった。
・猿飛が別の新聞部員から計画の噂を聞きつけ見に行ったところ、私たちが思いっきり犠牲になっていた。
____との、ことでして。
「最後の指令が実行されなくてほんとよかったよ、なまえちゃんの純潔がこいつらに奪われていたかも……なんて考えたら」
「じゅ、じゅんけっ……嘘でしょ!!?」
最後、どんな指令だったんですか!!?危なすぎるでしょ……!!
「ま、確かにChasity(純潔)を頂くのにコイツも一緒ってのはな……」
「はァ!!?そういう問題じゃあねーだろ!!?」
「ちょっとうるさいんだけど旦那達!」
*
____というわけで、私たちが閉じ込められた「開かずの間」は、都市伝説の噂と、行動力のある生徒たちによって作られた人工的なものなのでした。
そうそう。そういえば猿飛が……
「例の計画に加担した部員たちなんだけどさ。俺様がこっぴど~く叱ったあと、あの部屋の片付けに行ってくるって言ったっきり、姿を見てないんだよね」
「教室も鍵がかかってて開かないし。カーテンしてるのか、なんか外から見ても様子もわかんないし」
「___案外、都市伝説は本当だったりして」
とかなんとか言ってたけど。
…………冗談、だよね?
私が例の都市伝説を知ったのは、友人である猿飛佐助のこの一言がきっかけだった。
なんの前触れもなく、この学園の都市伝説について聞かされたのだ。
猿飛は新聞部の部員だ。常日頃からスクープを追っているからなのか、根も葉もない噂話だとかこういう手の話は嫌いではないらしく、時々こうして話を聞かされる。
「都市伝説?聞いたことないな……ていうかあるんだ、うちの学校にも」
私は別に幽霊とかそういうの信じてるわけじゃないんだけど。
でも、都市伝説とかそういう類の話を聞くのはわりと好きなほうだ。
「そうそう!あるのよ~?うちの学校にも。で、どんな話かっていうと~……」
猿飛の話はこうだった。
____なんでも、旧校舎の二階に「開かずの間」と呼ばれる教室があるらしく。
その開かずの間には財宝が隠されているかも~だとか、入ってしまったら一生その教室から出られない……とか。様々な憶測が飛び交っているらしい。
「開かずの間って……ただ単に使われてないからずっと鍵かけてるだけなんじゃないの?」
実際のところ、旧校舎にはそういう教室が多い。
以前、使われていない教室が不良のたまり場になった挙句、その不良たちがなにか備品を壊してしまったということがあったらしく。それ以来徹底しているという話を孫市先生から聞いたことがある。
「……って思って俺様、職員室に忍び込んでその教室の鍵を手に入れようと思ったんだけどさ」
「いや忍び込むなよ」
「だって財宝を手に入れるチャンスかもしれな___ってまあまあその話はちょ~っと置いといて!……で、俺様は鍵をそりゃもう血眼になって探しました」
「うん……で、鍵はどうだったの?」
「それが、なかったんだよね。他の教室の鍵は全部あったのに」
「そのときたまたま誰かが教室を使ってたとかではなく?」
「そう思って教室見に行ったんだけど、使われてなくってさ。もう一度職員室に行ってみたけど、やっぱり鍵はないし。で、気になって翌日管理してる先生にやんわり聞いたら、なんかずっと前からないんですよ~とか言い出すし」
「へぇ……」
それは単に鍵の管理が少々杜撰なのでは?と思わなくもなかったけど、猿飛には言わなかった。
夢がないだのなんだの、うるさく言われると思ったからだ。
___この時の私は、自分が明日旧校舎に赴くことになるだなんて、思ってなかった。
*
放課後、突然孫市先生から声をかけられた。
なんでも、元親と政宗を探しているらしい。
「……うーん、見てないですね」
「そうか……放課後に話があるから残れと伝えたのだがな」
孫市先生から直々に残れって……ふたりは何をやらかしたんだ。
「もしやつらを見かけたら職員室にすぐさま直行するよう伝えてくれ。なんなら連行してきてくれても構わない」
孫市先生の目がマジである。
……いや、本当になにやらかしたの?
「わかりました、見つけたらすぐさま連行します!」
あのふたりが行きそうな場所ってどこだろう、と思って窓の外を見てみると、ちょうど旧校舎が見えた。
___そして、旧校舎の教室にいる眼帯の男子生徒ふたりが見えた。
*
「たしか、あのふたりはこの辺りにいた!はず……」
とりあえず旧校舎の二階まで来てしまったけど、まだこの辺りにいるかな……なんだかんだで逃げ足の速いあのふたりのことだから、もう全然違う場所に移動している可能性もあるな。
ていうか、旧校舎の二階なんて初めて来たかもしれない。あれ、そういえば……。
____猿飛から聞いた都市伝説の教室、旧校舎の二階にあるんじゃなかった?
そういえば、どの教室なんだろう。行く機会もないしいいや、と思って詳細は聞かなかったんだよなあ。こんなに早く機会に恵まれるなら聞いておけばよかった。
……いや、別に信じてるわけじゃないけど。
「__なまえ?」
「うわぁっ!?……ってなんだ元親か」
びっくりした。今、すぐ脇の教室の扉から元親が顔を覗かせたのだ。
都市伝説の話を思い出した途端に名前を呼ばれるのは心臓に悪い……!!
「Huh?……なまえじゃねェか」
「ああ政宗も……はあ、なんか疲れちゃったな」
政宗は教室の中にいて、なぜか窓際でパンを食べていた。
……おいしそうだな!?
「えっずるい、私もパン食べた―――」
___と、私が教室に入った瞬間のことだった。
ガラガラ……ガチャッ。
誰も触れていないはずの教室の扉が閉まり、鍵がかかる音がした。
そして、なぜか一枚の紙が頭上から降ってきた。
____その紙には、
『○○しないと出られない部屋』
の文字が並んでいた。
*
「おいどうなってんだ!?扉全部開かねぇぞ!!?」
謎の音と、謎の紙が降ってきてから早数十分。私たち三人はなんとか扉をこじ開けようとしていた。
見るからに力のありそうな元親と、野球部で鍛え抜かれている政宗が扉を壊す勢いで(というか、壊す前提で)扉と格闘したけど、まったく歯が立たない。
「Hnmm……とんだHappeningだな」
「ま、窓は?ここ二階だし、窓から脱出とか難しいかもだけど一応……」
「そうか窓……ぐっ、固ッ!!なんだこれ建て付け悪りぃのか!?」
元親が窓を開けようとしたけど、十センチちょっとくらいを開けたところで止まってしまった。これ以上はビクともしない。
これくらいの隙間じゃ、人は流石に通れないよね……
いや、そもそもここから飛び降りるって発想もあれなんだけど。
「……え?ガラス割る??」
「オレはなまえのそういう考え方、嫌いじゃねェぜ」
「いや流石に冗談だよ政宗」
「つーかよォ、俺ら昨日ガラス割って怒られたばっかだぜ?流石にこれ以上割るのはなあ」
……ああ、だから孫市先生はふたりを探してたのか。ていうかガラス割るなよ。
「OK、扉も窓も全滅ってワケか」
全滅、ねぇ……
この教室、もしかして猿飛が言っていた例の「開かずの間」なんだろうか。入ってしまったら一生その教室から出られない、とかいう説もあるって言ってたような……いや、深く考えるのはやめよう。
あれ?そういえば……
「ところでさ、無視してたけど降ってきた紙に書いてあるアレはなんなの?」
扉を開けるのに必死だったし意味も分からなかったからすっかりスルーしてたけど、結局あれはなんだったんだろう。
○○しないと出られない部屋、とか書いてあったっけ。
○○、としか書いてなかったけど○○ってなんなの?
「紙ってこれか?……Huh?ちょっと待て、こんなこと書いてあったか?」
「え?どういうこと??…………えっ?」
政宗が持つ紙を覗き込むと、こう書かれていた。
『今から流れる音声指示に従わないと出られない部屋』
「お……音声指示?」
……都市伝説なんだよね?なんか、やけに現代的なんですけど。
『開かずの間にようこそ!早速だけど、脱出のために音声に従ってね!』
本来ならチャイムや放送が流れてくるスピーカーから、突然声が流れてきた。
…………音声案内、なんでプリクラでポーズとか指示してくれるあの声仕様なんだろう。
「Just a moment! 開かずの間って例の都市伝説か!?」
「た、たぶん……?」
「こんなにCheapな感じなのか!?」
「それには私も驚いてるよ政宗」
なんていうか、都市伝説としてどうなのこれ。なんかもっとこうあるでしょ!?
「開かずの間に財宝が隠されてるって聞いてわざわざこんなトコまで出向いたってのによ……ガセネタだったか」
「だから財宝なんてくだらねェって言ったろ。これで懲りたか?」
「ンなッ……」
____なるほど、そして元親は猿飛同様財宝説信者だった、と。
で、くだらないとかなんだかんだ言いつつ政宗もついてきた感じか。
『早速、ひとつめのお題だよ!まずは……紫の眼帯の彼!」
「ッ!?……おっ、俺か!?」
ひとつめのお題、ってことはいくつかあるパターンだなこれ。
そして音声案内さんは、まずは元親をご指名らしい。
『そう!横の彼女の両肩に手を置いて、視線を合わせて至近距離で見つめ合おう!』
「「「「はあっ!!?」」」
私たちの声が見事に揃う。
いや、だって、見つめ合うって!しかも、その横にいる彼女って……
「よ、横にいる彼女って実は政宗のこととか」
「ンなわけねーだろ」
「デスヨネー……」
私……なのか、私なんだな!?
これは、その……やるしかない感じでしょうか。
『私が終了の合図をする前に目をそらしたり、目をつぶったらチャレンジは失敗!あ、まばたきは流石にOKだよ!5秒以内に実行してね☆カウントダウン、スタート!5、4……』
いやいやいやいや、急すぎるでしょ!!?しかも5秒ってそんな、え!?
「なまえ」
「えっ、ひゃ……!?」
元親の大きい手が、私の肩の上に置かれた。
しかも、私の目線に合わせるために元親がかがむから……
「まるでKissする直前だな」
「う、うっせえ黙ってろ!余計照れんだろーがッ」
……わりとマジで、キスされる直前みたいなんだよなあ。
いや、したことないけど。こんな感じなのかな、とか考えちゃうな。
「脱出のためだ、ちょっくら我慢してくれ。こんなことされんの、嫌かもしれねぇけどよ」
こんな状況でも私を気遣ってくれるあたり、ほんと、なんていうか。
見た目はちょっと怖いけど、実はすごく優しいんだよね、元親。
「が、我慢って……元親こそ、その。わ、私は嫌とか思ってないから」
「ん、そうか……ハハッ、それ聞いて安心したぜ」
「なんだこの空気……sweetにもほどがあるぜ」
……なんだか、とっても恥ずかしいのですが。
*
「……ねえ、元親」
「な、なんだ?」
「…………長くないかなあこれ!!?」
元親と見つめ合ってけっこう経ったはずなんだけど。終了の合図があるまで目はそらせないし、その、色々と限界が近いのですが。
「Too long……ッ!!オレはこの空気の中でどうしろってんだ!?」
確かに政宗だけ蚊帳の外感が異常だ。正直、『政宗だけ指令を免れやがって……!』とか思ってたけど。
……なんか、政宗は政宗できついかもしれない。
「あれか?もっと顔近づけたほうがいいのかァ?ん?」
元親の顔がぐっと近づく。
……ん?元親さん?
「いやあの元親さん!!?」
急にお顔を近づけないでください!!えっ、まって何事!?
「なんだァ照れてんのか?」
「照れ……ッるよ!そりゃあ!!」
照れてんのか?じゃないよまったく!近くなればなるほどに元親ってけっこうかっこいいよなあとか自覚させられちゃうんだよこっちは!
「ふッ……」
「えっ?いま笑った!?」
「悪ィな、可愛いと思ってよ」
「か、かわぁ……っ!?」
「オイ、西海の鬼……テメエなまえを口説いてんじゃねーよ」
「べ、別に口説いたワケじゃねぇよ!……こんなに近づくことなんてねぇからよ、なんかその」
『3、2,1……しゅーりょー!!第一のミッション、クリアだよ!』
「なまえ、コイツはSuper dangerousだ。コイツから離れろ、一定の距離を保て」
終了の合図があった途端に政宗がすごい勢いで私と元親を引き離した。
いや、それにしてもスーパーデンジャラスってどうなのよ。
「なんだよ、ちょっくら危ない気ィ起こしそうになっただけじゃねえか」
「だから危ねえってんだ!マジでなまえに近づくんじゃねーぞ……」
「いや無茶言うんじゃねえよッ、なまえにあんな顔で見つめられてみろ……わかるだろ」
「Gah!……なんだ?自慢か?」
「なんだよ、羨ましいのかあ?」
「Ha!オレだったらもっとなまえを骨抜きにできると思っただけ___」
元親と政宗がなにやらヒソヒソ話してるけどなに話してるんだろ。
____あー、それにしてもすごい体力もってかれたなあ。次のミッションは、やさしいやつでお願いします。切実に。
『それじゃ、第二のミッションだよ!黒の眼帯の彼!横の彼女を後ろから抱きしめてみよう!!』
……あの。
「Ha!見てろよ、西海の鬼ッ!」
ぜんぜん、やさしくないんですけど……。
*
「いや、あのぉ~……」
……なに、この指令。私が?政宗に?後ろから?抱きしめられる?
『早速実行してもらうよ!というわけで、5,4,3、2、1、スタートっ!』
どうやら私の意思はガン無視らしい。いや、もう、どういうことなのよこれ。
「なまえ」
「……ッ!?」
い、いまガバって!ガバッっていかれましたよね政宗さん!?
う、後ろから抱きしめられてる!!!!ていうか近い近い近いって!!
「んな緊張するこたねえよ、もっとRelaxしな」
……政宗の顔が、私の顔のすぐ横にあるわけで。つまり、その。
み、耳元で、囁かれるかたちになるってことで。
「り、りらっく、す……は、無理」
「なんでRelaxできねぇんだ?ん?」
だ、だからなんでいちいち耳元で喋るのかな……!?わざとじゃないんだよね!!?
「そ、それは、近いし、うん……い、色々と?」
「……そうだぜ、なまえに顔近すぎるんじゃねえか?」
も、元親が助け船をっ!?いいぞもっと言ってやって!!
「アンタだってさっきはこんな感じだったんだぜ?」
「ンなッ……」
も、元親~っ!!!弱いっ!政宗に押されないでお願い頼む!
「ところでなまえ」
「は、はい!?」
うわびっくりしたあ……相変わらず耳元だし今のは突然呼ばれたし。
ただでさえドッキドキなんだよこっちは!
「____少しは意識してるか?オレのこと」
「ッッッッ!?」
……思わず肩を震わせてしまった。
だ、だって今、すごい、なんか。いつもの声音と違ったっていうか。
て、ていうか待って、すごい恥ずかしい。あれ、なんで急に恥ずかしさがこみ上げてきてるの!?
……なんで、こんな顔熱くなるの!!?
「Hmmm……そういうマジな反応するってことは」
『3,2,1、しゅーりょー!!お疲れ様っ』
政宗の言葉を遮るように終了のアナウンスが鳴り響く。
「Shit!遮りやがった」
「や、やっと解放される……っ」
ちなみに今回は元親によってすぐさま政宗から引っ剥がされました。
……ていうか、ほんとこれ私の心臓がすごいダメージ食らってる気がするんですけど。
今日だけで一生分の少女漫画的シチュエーションを味わってしまった感じだよほんと。
……そろそろ、ほんとに脱出したいんだけど。
*
「……ねぇ、これどうやって脱出する?いや、まじで」
これが万事休すとか万策尽きるってやつかな……。
前の指示を終えてまだ扉が開く様子がないってことは、次の指示があるってことなんだろうか。いや、これ以上の指示にはとても従いたくないんだけど。
「まあオレはなまえともっと近づけるならこのままでもいいけどな?」
「アンタみたいな危ないのをなまえに近付かせてたまるかよ!」
「Ha!お前よりはマシだろ」
「なっ……」
政宗と元親がまた口論を始めてしまった。ほんとキリがない……!
「ちょっと二人とも、いま口論なんてしても……」
『――え?次で……か……分か……た。じゃ、じゃあ、次でラストミッション!』
政宗と元親の口論を遮るように、音声案内が響き渡る。
……え?なんか今おかしくなかった?
明らかに人と会話しているような声が聞こえたような気がするんだけど。
……”向こう”にも複数人、いる?
____ていうかこれ、自動音声とかじゃなくて、今、生で指示してるってこと?
ってことは、音声案内さんとお話しできる可能性……もとい、交渉する余地がある感じですか?
「ちょ、ちょっと待って!音声案内の人!!」
『……え?』
「あなたたち、どこから指示してるんですか!?これ、いま生で指示されてますよね?ていうか、はやくここから出してほしいんですけどっ」
『ど、どうし……?やめといたほうが……続けますか!?』
「オイオイ、急に会話が筒抜けだぜ?」
『えっ……!!?』
「いいかげん脱出させてくれねぇか?音声案内さんよぉ」
『こ、こうなったら――痛ッ!?』
____向こう側の音声とともに、何かが倒れるような音が聞こえた。
『____まさかこんなことになってるとはね。てか俺様が駆けつけなかったらもっとヤバいことになってたでしょ……あー、なまえちゃん、聞こえる?』
この声って……
「猿飛っ!?」
『そ♡なまえちゃんのピンチに駆けつけたヒーロー、猿飛佐助で~す……ってね!ま、とりあえず状況の説明させてよ、ねっ!』
……おっと。
人を殴るような音と共に、何かが倒れる音がした。
『ヒィっ!に、逃げるぞお前ら!』
『ふーん、ま、顔覚えたから逃げても無駄だけど……とりあえずなまえちゃん、今から救出するから待っててね~……あ、ムサい眼帯たちもいたっけ?』
「コイツ……露骨に態度変えやがる!」
「コイツに助けられるなんざ……なんか癪だな」
……と、とりあえず、助かった……のかな?
*
「……はぁ、ほんっと俺様に感謝してよね」
あのあとすぐに私たちが閉じ込められた教室に駆けつけてくれた猿飛。
心なしか疲れているような……ほんと申し訳ない。
とりあえず、猿飛の説明をまとめると。
・音声案内の正体は新聞部の部員。
・猿飛が追っていた「開かずの間」の話を聞いて、男女をこの部屋に閉じ込め、スクープ写真を撮る計画を思いついた。
・この教室の鍵はこの計画に加担した新聞部の部員のひとりが前々から持っていたらしい。そして、鍵はこの計画云々のために入手したわけではなく、元々はこの教室でサボるために入手していたらしい。
・要するに、「ちょうど鍵もってるし、この教室を開かずの間にしちゃえ!」ってことで。
・まだ色々と準備段階であったが不幸にも教室の準備――もとい、人を閉じ込める準備はばっちり整っていたため、この教室に入室した私と政宗、元親が犠牲になった。
・猿飛が別の新聞部員から計画の噂を聞きつけ見に行ったところ、私たちが思いっきり犠牲になっていた。
____との、ことでして。
「最後の指令が実行されなくてほんとよかったよ、なまえちゃんの純潔がこいつらに奪われていたかも……なんて考えたら」
「じゅ、じゅんけっ……嘘でしょ!!?」
最後、どんな指令だったんですか!!?危なすぎるでしょ……!!
「ま、確かにChasity(純潔)を頂くのにコイツも一緒ってのはな……」
「はァ!!?そういう問題じゃあねーだろ!!?」
「ちょっとうるさいんだけど旦那達!」
*
____というわけで、私たちが閉じ込められた「開かずの間」は、都市伝説の噂と、行動力のある生徒たちによって作られた人工的なものなのでした。
そうそう。そういえば猿飛が……
「例の計画に加担した部員たちなんだけどさ。俺様がこっぴど~く叱ったあと、あの部屋の片付けに行ってくるって言ったっきり、姿を見てないんだよね」
「教室も鍵がかかってて開かないし。カーテンしてるのか、なんか外から見ても様子もわかんないし」
「___案外、都市伝説は本当だったりして」
とかなんとか言ってたけど。
…………冗談、だよね?
1/3ページ