麦と真珠
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【第4話 物怪の気配】
「突然だけど猿飛……物怪(もののけ)とか霊の類って、信じてる?」
「え?」
*
いつものように屋根の上でなまえと話していたら、なまえが突然深刻な顔をして聞いてきた。
物怪や霊を信じるか、と。
「ど、どうしたのさ突然?そんなに深刻な顔しちゃって」
「実はその、私が普段いる物置部屋なんだけどさ。物怪的なものがいるかもしれなくて……」
「ふーん、物怪ねぇ……え?物怪?」
「ほ、本当なんだよ!本当にいるかもしれないの!昨日だって、頻繁に物音がして……」
「鼠とか、そういうのじゃなくて?」
「私も最初はそうなのかもって思ってた。でも、そういうのじゃないと思う。なんていうか、うまく言えないけど……そういう気配じゃないの。もっと、こう……」
「……違う気配がするんだな?」
「うん……」
頻繁に物音がする。
鼠とかそういう気配じゃない。
────なまえの感覚を信じるならば、とある可能性が浮上する。
俺以外の忍が、なまえの近くに潜んでいるかもしれないってことだ。
以前なまえも言ってたけど、なまえの存在が他軍の忍にバレつつある。俺やかすがみたいな奴ならまだいいけど、中には悪意を持った連中だっているかもしれない。
ここの戦力は他軍にとっても魅力的だ。なまえを人質に取って交渉に踏み切ることを考える軍も出てくるかもしれない。
……まぁ、ここの城主がそれに応じるかどうかはわからないけどさ。
とにかく、なまえの話を聞く限りはなまえの近くに敵が潜んでいる可能性が高いかもしれないってことだ。
本人は物怪じゃないかって言ってるけど……これ、下手したら物怪よりもヤバいんじゃないの?
「こりゃあ鼠……いや、物怪の顔が拝んでみたいね」
─────お姫様に気配を勘付かれてしまうような物怪の顔を、実際にこの目で見て確認しないとな。
*
数日後、俺はなまえに勘付かれないように物置部屋の天井裏に忍び込んだ。
……いや、正当な理由があってやってるからね?物怪(多分他軍の忍)を成敗するためにやってるからね!?
なまえの話を聞いてから数日間は、部下になまえの見張りをさせた。なまえに気づかれないようにな。
本当は俺様が側にいてやりたかったけど、俺様もけっこう忙しいんだよね。
部下の報告によれば、この数日間は特に何もなかったらしい。俺自身も念のため他軍が変な動きをしていないか探ってみたけど、どの軍も特に目立った動きはなかった。
ただ、なんとなく嫌な予感はしてる。これから何か起こるんじゃないかって気がしてな。
相手はおそらく、俺がなまえの側にいる時はこの城にいない。だから今まで、俺は気配を感じなかったんだ。
奴が凄腕の忍じゃない限りはな。
この俺様が気配を感じないんだ。もしこれで近くに潜んでいるんだったら、相当腕が立つ奴だ。
……そんなことを知らないであろうなまえは今、物置の隅で本を読んでいる。
今のところ、なまえは俺に気づいていない様子だ。
まぁ気づくわけないか。本気で忍んでる俺様を見つけられる奴なんてこの世にいる?いないでしょ?
─────そういえば、昼のなまえを見るのは初めてだ。
今のなまえといつも俺様が会うなまえは、かなり印象が違う。
今のなまえは楽しくなさそうだ。心なしか寂しそうにも感じる。星を見ている時のなまえはあんなに楽しそうで、無邪気で、可愛いのに。
ここの物置には書物くらいしかないし、昼は本を読むくらいしかやることはなさそうだ。
きっとここにある本はすべて読み尽くしたんだろうな。もう飽きてるんじゃないの?同じ本何回も何回も読んでさ。
───なまえ、ずっと此処にいなきゃいけないんだもんな。
よその姫さんみたいに、華美なものに囲まれる生活とは無縁なわけだ。本来であれば、なまえはもっと華やかな生活を送っていたのかもしれない。
……そしたら、なまえと俺は屋根の上で出会うことはなかったのかもな。
「……はぁ」
なまえは読んでいた本から目を離して立ち上がると、小さな窓から空を覗いた。
「早く夜にならないかな……」
なまえ、本当に星を見るのが好きなんだな。そんなに夜が待ち遠しいか。
それとも案外、俺様に会いたいと思ってくれてたりして─────。
「今日は猿飛、来るかな……」
…………え?
「早く来たらいいのに」
───さっきまで寂しそうな表情をしていたなまえが、優しく微笑んだ。
……あー、勘違いしそうになる。こんな顔されたら、なまえが俺のこと好きなのかもって思っちゃうでしょ?
でも、多分俺はなまえにとって初めての友達なわけで。きっと、恋愛とかそういう感情じゃ─────。
…………いやいや、何動揺してんの俺様。
今はなまえの周囲に怪しい奴がいないか確認しないといけないんだから。余計なこと考えてるヒマなんてないっての!
まぁ今のところは、天井裏に潜んでなまえのことを見てる俺様がいちばん怪しいけど!?
ガタッ
…………今、明らかに物音がした。
なんの音だ、これ?
「な、なに……?また?」
なまえも今の物音に驚いた様子だ。そういえば、なまえは最近よく物音がするって言ってた。物音ってこのことか?
……今のところ、近くに誰かが潜んでいる気配はない。もっと遠くにいるのか?
それとも、俺が察知できてないだけで……いるのか?近くに?
────気配を感じないのに、なんで嫌な予感がしてるんだ?今すぐなまえの側に行かなきゃいけないような気がするのは、何故なんだ?
「くそっ……」
尋常じゃなく嫌な予感がする。俺は天井裏からなまえの隣に移動した。
「……よっ、昼に会うのは初めてだな」
「えっ!?……さッ……えっ!?猿飛!?なんで!?」
「なんかヤな予感してな。杞憂だったらいいんだけど……っ!?」
─────ふとなまえから視線を逸らして窓の外を見ると、遠くの小高い丘に誰かが立っていた。
「伏せろなまえッ!」
「……っ!?」
俺となまえが伏せた次の瞬間、俺たちの頭上を矢が通過して、背後の壁に刺さった。
「突然だけど猿飛……物怪(もののけ)とか霊の類って、信じてる?」
「え?」
*
いつものように屋根の上でなまえと話していたら、なまえが突然深刻な顔をして聞いてきた。
物怪や霊を信じるか、と。
「ど、どうしたのさ突然?そんなに深刻な顔しちゃって」
「実はその、私が普段いる物置部屋なんだけどさ。物怪的なものがいるかもしれなくて……」
「ふーん、物怪ねぇ……え?物怪?」
「ほ、本当なんだよ!本当にいるかもしれないの!昨日だって、頻繁に物音がして……」
「鼠とか、そういうのじゃなくて?」
「私も最初はそうなのかもって思ってた。でも、そういうのじゃないと思う。なんていうか、うまく言えないけど……そういう気配じゃないの。もっと、こう……」
「……違う気配がするんだな?」
「うん……」
頻繁に物音がする。
鼠とかそういう気配じゃない。
────なまえの感覚を信じるならば、とある可能性が浮上する。
俺以外の忍が、なまえの近くに潜んでいるかもしれないってことだ。
以前なまえも言ってたけど、なまえの存在が他軍の忍にバレつつある。俺やかすがみたいな奴ならまだいいけど、中には悪意を持った連中だっているかもしれない。
ここの戦力は他軍にとっても魅力的だ。なまえを人質に取って交渉に踏み切ることを考える軍も出てくるかもしれない。
……まぁ、ここの城主がそれに応じるかどうかはわからないけどさ。
とにかく、なまえの話を聞く限りはなまえの近くに敵が潜んでいる可能性が高いかもしれないってことだ。
本人は物怪じゃないかって言ってるけど……これ、下手したら物怪よりもヤバいんじゃないの?
「こりゃあ鼠……いや、物怪の顔が拝んでみたいね」
─────お姫様に気配を勘付かれてしまうような物怪の顔を、実際にこの目で見て確認しないとな。
*
数日後、俺はなまえに勘付かれないように物置部屋の天井裏に忍び込んだ。
……いや、正当な理由があってやってるからね?物怪(多分他軍の忍)を成敗するためにやってるからね!?
なまえの話を聞いてから数日間は、部下になまえの見張りをさせた。なまえに気づかれないようにな。
本当は俺様が側にいてやりたかったけど、俺様もけっこう忙しいんだよね。
部下の報告によれば、この数日間は特に何もなかったらしい。俺自身も念のため他軍が変な動きをしていないか探ってみたけど、どの軍も特に目立った動きはなかった。
ただ、なんとなく嫌な予感はしてる。これから何か起こるんじゃないかって気がしてな。
相手はおそらく、俺がなまえの側にいる時はこの城にいない。だから今まで、俺は気配を感じなかったんだ。
奴が凄腕の忍じゃない限りはな。
この俺様が気配を感じないんだ。もしこれで近くに潜んでいるんだったら、相当腕が立つ奴だ。
……そんなことを知らないであろうなまえは今、物置の隅で本を読んでいる。
今のところ、なまえは俺に気づいていない様子だ。
まぁ気づくわけないか。本気で忍んでる俺様を見つけられる奴なんてこの世にいる?いないでしょ?
─────そういえば、昼のなまえを見るのは初めてだ。
今のなまえといつも俺様が会うなまえは、かなり印象が違う。
今のなまえは楽しくなさそうだ。心なしか寂しそうにも感じる。星を見ている時のなまえはあんなに楽しそうで、無邪気で、可愛いのに。
ここの物置には書物くらいしかないし、昼は本を読むくらいしかやることはなさそうだ。
きっとここにある本はすべて読み尽くしたんだろうな。もう飽きてるんじゃないの?同じ本何回も何回も読んでさ。
───なまえ、ずっと此処にいなきゃいけないんだもんな。
よその姫さんみたいに、華美なものに囲まれる生活とは無縁なわけだ。本来であれば、なまえはもっと華やかな生活を送っていたのかもしれない。
……そしたら、なまえと俺は屋根の上で出会うことはなかったのかもな。
「……はぁ」
なまえは読んでいた本から目を離して立ち上がると、小さな窓から空を覗いた。
「早く夜にならないかな……」
なまえ、本当に星を見るのが好きなんだな。そんなに夜が待ち遠しいか。
それとも案外、俺様に会いたいと思ってくれてたりして─────。
「今日は猿飛、来るかな……」
…………え?
「早く来たらいいのに」
───さっきまで寂しそうな表情をしていたなまえが、優しく微笑んだ。
……あー、勘違いしそうになる。こんな顔されたら、なまえが俺のこと好きなのかもって思っちゃうでしょ?
でも、多分俺はなまえにとって初めての友達なわけで。きっと、恋愛とかそういう感情じゃ─────。
…………いやいや、何動揺してんの俺様。
今はなまえの周囲に怪しい奴がいないか確認しないといけないんだから。余計なこと考えてるヒマなんてないっての!
まぁ今のところは、天井裏に潜んでなまえのことを見てる俺様がいちばん怪しいけど!?
ガタッ
…………今、明らかに物音がした。
なんの音だ、これ?
「な、なに……?また?」
なまえも今の物音に驚いた様子だ。そういえば、なまえは最近よく物音がするって言ってた。物音ってこのことか?
……今のところ、近くに誰かが潜んでいる気配はない。もっと遠くにいるのか?
それとも、俺が察知できてないだけで……いるのか?近くに?
────気配を感じないのに、なんで嫌な予感がしてるんだ?今すぐなまえの側に行かなきゃいけないような気がするのは、何故なんだ?
「くそっ……」
尋常じゃなく嫌な予感がする。俺は天井裏からなまえの隣に移動した。
「……よっ、昼に会うのは初めてだな」
「えっ!?……さッ……えっ!?猿飛!?なんで!?」
「なんかヤな予感してな。杞憂だったらいいんだけど……っ!?」
─────ふとなまえから視線を逸らして窓の外を見ると、遠くの小高い丘に誰かが立っていた。
「伏せろなまえッ!」
「……っ!?」
俺となまえが伏せた次の瞬間、俺たちの頭上を矢が通過して、背後の壁に刺さった。
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