麦と真珠
名前変換
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【第2話 姫と忍の友情のはじまり】
「よっ、また会ったね」
「……あ!あの時の!?」
初めて会った時から、どれくらい経った頃だったかな。
……そんなに経ってないような気もするけど。
なまえと俺様は、また屋根の上で再会を果たした。
「ていうかまた屋根なんて登って……今日は滑らなかった?」
「大丈夫!あれから何回か登ったけど、あれ以来はヘマしてないよ」
「ホント?ならいいけどさ…っていうか、あれからまた屋根登ってたわけ?ひとりで降りられるようになったの?」
「……ええと、うん?」
「え、なんで疑問系なのさ」
「……あー、ええと。通りすがりの別の忍さんに、助けていただきまして」
「は!?」
別の忍って誰?俺様の部下?それとも……
「女の人だったの。金髪でね、綺麗なひとだったよ」
「……ん?」
なんだかすごく、知っている奴な気がしてならないんだけど。
「かすがさんっていうんだけどね」
「いや、名乗ったのかよあいつ……」
「えっかすがさんと知り合いなの?猿飛佐助さん」
「……え?」
「えへへ。かすがさんにあなたの特徴を伝えたらね、"それは紛れもなく猿飛佐助だ"って……」
「あいつ教えたのかよ……」
「うん、教えられちゃった」
……別にいいけどさ。なんなら、いずれ教えるつもりではあったし。
「あ、あとね、名前はわからないんだけど。最後に黒い羽根だけが残ってね……無口なんだけど、すっごく俊敏な人にも助けてもらったんだ」
「なんでこう、俺様の見知ったヤツばっかり出てくるかなあ……!!」
かすがの次は風魔かよ!流石に助けられすぎじゃない!?ていうか、ここどんだけ忍が通るんだよ!?
「えっ!?知り合いなの……?世間って狭いなあ」
「ホントだよ」
……それだけこの軍が色々なところから目をつけられているってことか。
多分、いい意味で。
……っていうのは。俺様達と同様に、ここと同盟を結びたいと考えている軍があまりにも多いから。
なまえの父が総大将を務めるこの軍と同盟を結ぶことは、戦における様々な面において有利になることが考えられる。
兵力、資源……ここの軍が持つあらゆるものを、多くの軍が欲しているということ。喉から手が出るくらいに、な。
……なまえはそれを、理解しているのか?
ふとなまえを見ると、不安そうな顔をしていた。
「なまえ?……どうした?」
「……あ、あのさ。あなたの名前、知っちゃマズかったかな」
「え?」
「あなたって……私にとっては、敵国の忍になったりするの?私に名前知られちゃったら、都合悪い?誰かに怒られる?」
……どうやら、俺の心配をしているらしかった。敵国の忍かもって考えたら、自分の身を案じるもんじゃないの?普通はさ。
「私、あなたとお友達になりたい。あの日の夜、すごく楽しくて……今日までずっと、ずっと考えていたの。私のような立場の人間が、忍のひとにこんなことを言うのは……もしかしたら普通ではないことなのかもしれないけれど」
……なまえと出会った日。
あの時に見た、哀しそうに微笑むなまえの顔を思い出した。
幽閉されていたんだ、きっと友達なんていなかったんだろう。
「奇遇だな。俺様もなまえと仲良くしたいな〜とは思ってたんだよね!俺様、敵国の忍じゃないし?姫と忍がお友達なんて、面白い話じゃない?」
「ほ、ほんと!?」
さっきまでの憂いを帯びた表情はどこへやら。
なまえは目を丸くした後に、満面の笑みを浮かべた。わりと感情が表情に出るよね、なまえって。
「ちなみに俺様がここに忍び込んでる理由は、武田とここが同盟を結ぶための事前調査してるからなんだわ。こんなこと普段は絶対に言わないんだけど、なまえは特別な」
「ど、同盟……よかった〜……!!私たち、敵対してないんだ……」
敵国の忍ではないと分かったからなのか、なまえはほっとした様子だった。
「ここに忍び込んでるってことは、こっちの情報が欲しくて……情報が欲しいのは、私たちを倒すため……?じゃあ私たち、立場を考えると敵対してるのかな?とか色々考えてたの」
「そんなこと考えていながら、俺様とお友達になりたいなんて言ったわけ?もし俺様が敵国の忍だったらどうしてたのさ」
俺様がそう言うと、なまえは"言わなきゃだめ?"と訴えてくるような視線を送ってきた。
俺様も負けじと、"言わなきゃだめ"と訴える視線を送る。
仕方ないな、とため息をついたなまえは口を開いた。
「……私、正直この家のことどうでもよくってさ。父上のこと、あんまりよく思ってないし?だから別にあなたさえよければ、敵国だろうがなんだろうが仲良くする気だったの」
なまえから質問の答えを聞けたのはいいけど、理由を聞いた俺が驚く羽目になってしまった。
「……けっこう肝据わってるよね、あんた」
「あは、ばれちゃった?でもよかった。同盟組むなら、今よりもここに来やすくなるんでしょ?……あ、でも私の存在が世間に隠されてるからなあ。私に会うのは、堂々とできないかあ」
申し訳なさそうに微笑むなまえ。ちょっと、俺様が何なのか忘れてない?堂々と会う必要なんてないだろ?
「何言ってんの。俺様は忍なんだぜ?そもそも堂々となんて来ないっての」
「あ、それもそうか。よーし、何はともあれお友達だっ!よろしく、猿飛!」
「あぁこちらこそ……っていうかそう呼ぶの!?別にいいけどさぁ」
あまりにも自然な流れで呼ぶもんだから、思わず流しかけた。さっきまでは"あなた"呼びだったよね?なんていうか……差が激しくない!?
「響きが好きなんだ、"猿飛"っていう……佐助は佐助でかっこいいと思うんだけど!なんかこう……わかる?」
「いやわかんないけど!?」
*
____これが、初めてなまえに名前を呼ばれた時の話。
……名前の響きの話とはいえ、好きって言われてちょっとドキッとしたのは内緒な。
「よっ、また会ったね」
「……あ!あの時の!?」
初めて会った時から、どれくらい経った頃だったかな。
……そんなに経ってないような気もするけど。
なまえと俺様は、また屋根の上で再会を果たした。
「ていうかまた屋根なんて登って……今日は滑らなかった?」
「大丈夫!あれから何回か登ったけど、あれ以来はヘマしてないよ」
「ホント?ならいいけどさ…っていうか、あれからまた屋根登ってたわけ?ひとりで降りられるようになったの?」
「……ええと、うん?」
「え、なんで疑問系なのさ」
「……あー、ええと。通りすがりの別の忍さんに、助けていただきまして」
「は!?」
別の忍って誰?俺様の部下?それとも……
「女の人だったの。金髪でね、綺麗なひとだったよ」
「……ん?」
なんだかすごく、知っている奴な気がしてならないんだけど。
「かすがさんっていうんだけどね」
「いや、名乗ったのかよあいつ……」
「えっかすがさんと知り合いなの?猿飛佐助さん」
「……え?」
「えへへ。かすがさんにあなたの特徴を伝えたらね、"それは紛れもなく猿飛佐助だ"って……」
「あいつ教えたのかよ……」
「うん、教えられちゃった」
……別にいいけどさ。なんなら、いずれ教えるつもりではあったし。
「あ、あとね、名前はわからないんだけど。最後に黒い羽根だけが残ってね……無口なんだけど、すっごく俊敏な人にも助けてもらったんだ」
「なんでこう、俺様の見知ったヤツばっかり出てくるかなあ……!!」
かすがの次は風魔かよ!流石に助けられすぎじゃない!?ていうか、ここどんだけ忍が通るんだよ!?
「えっ!?知り合いなの……?世間って狭いなあ」
「ホントだよ」
……それだけこの軍が色々なところから目をつけられているってことか。
多分、いい意味で。
……っていうのは。俺様達と同様に、ここと同盟を結びたいと考えている軍があまりにも多いから。
なまえの父が総大将を務めるこの軍と同盟を結ぶことは、戦における様々な面において有利になることが考えられる。
兵力、資源……ここの軍が持つあらゆるものを、多くの軍が欲しているということ。喉から手が出るくらいに、な。
……なまえはそれを、理解しているのか?
ふとなまえを見ると、不安そうな顔をしていた。
「なまえ?……どうした?」
「……あ、あのさ。あなたの名前、知っちゃマズかったかな」
「え?」
「あなたって……私にとっては、敵国の忍になったりするの?私に名前知られちゃったら、都合悪い?誰かに怒られる?」
……どうやら、俺の心配をしているらしかった。敵国の忍かもって考えたら、自分の身を案じるもんじゃないの?普通はさ。
「私、あなたとお友達になりたい。あの日の夜、すごく楽しくて……今日までずっと、ずっと考えていたの。私のような立場の人間が、忍のひとにこんなことを言うのは……もしかしたら普通ではないことなのかもしれないけれど」
……なまえと出会った日。
あの時に見た、哀しそうに微笑むなまえの顔を思い出した。
幽閉されていたんだ、きっと友達なんていなかったんだろう。
「奇遇だな。俺様もなまえと仲良くしたいな〜とは思ってたんだよね!俺様、敵国の忍じゃないし?姫と忍がお友達なんて、面白い話じゃない?」
「ほ、ほんと!?」
さっきまでの憂いを帯びた表情はどこへやら。
なまえは目を丸くした後に、満面の笑みを浮かべた。わりと感情が表情に出るよね、なまえって。
「ちなみに俺様がここに忍び込んでる理由は、武田とここが同盟を結ぶための事前調査してるからなんだわ。こんなこと普段は絶対に言わないんだけど、なまえは特別な」
「ど、同盟……よかった〜……!!私たち、敵対してないんだ……」
敵国の忍ではないと分かったからなのか、なまえはほっとした様子だった。
「ここに忍び込んでるってことは、こっちの情報が欲しくて……情報が欲しいのは、私たちを倒すため……?じゃあ私たち、立場を考えると敵対してるのかな?とか色々考えてたの」
「そんなこと考えていながら、俺様とお友達になりたいなんて言ったわけ?もし俺様が敵国の忍だったらどうしてたのさ」
俺様がそう言うと、なまえは"言わなきゃだめ?"と訴えてくるような視線を送ってきた。
俺様も負けじと、"言わなきゃだめ"と訴える視線を送る。
仕方ないな、とため息をついたなまえは口を開いた。
「……私、正直この家のことどうでもよくってさ。父上のこと、あんまりよく思ってないし?だから別にあなたさえよければ、敵国だろうがなんだろうが仲良くする気だったの」
なまえから質問の答えを聞けたのはいいけど、理由を聞いた俺が驚く羽目になってしまった。
「……けっこう肝据わってるよね、あんた」
「あは、ばれちゃった?でもよかった。同盟組むなら、今よりもここに来やすくなるんでしょ?……あ、でも私の存在が世間に隠されてるからなあ。私に会うのは、堂々とできないかあ」
申し訳なさそうに微笑むなまえ。ちょっと、俺様が何なのか忘れてない?堂々と会う必要なんてないだろ?
「何言ってんの。俺様は忍なんだぜ?そもそも堂々となんて来ないっての」
「あ、それもそうか。よーし、何はともあれお友達だっ!よろしく、猿飛!」
「あぁこちらこそ……っていうかそう呼ぶの!?別にいいけどさぁ」
あまりにも自然な流れで呼ぶもんだから、思わず流しかけた。さっきまでは"あなた"呼びだったよね?なんていうか……差が激しくない!?
「響きが好きなんだ、"猿飛"っていう……佐助は佐助でかっこいいと思うんだけど!なんかこう……わかる?」
「いやわかんないけど!?」
*
____これが、初めてなまえに名前を呼ばれた時の話。
……名前の響きの話とはいえ、好きって言われてちょっとドキッとしたのは内緒な。