毛利元就
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「……フン」
今日は元就さんの機嫌がすこぶる悪い。
ずっと苦虫を噛み潰したような顔をしているような気がする。
原因はおそらく、昨日のアレが原因だ。
*
「なまえ!我の親愛なるなまえ!」
「こ、この声……間違いなく元就さんの声だけど、この声のテンションは間違いなく……」
「我が名はサンデー毛利!」
「……はい」
なぜかご丁寧に自己紹介してくださったサンデーさん。また宗麟くんあたりに捕まったのだろうか。元就さんは時々こうして、冷酷非常な毛利元就から天真爛漫(?)なサンデー毛利へと変貌する。
「さあ、共に愛を誓おうぞ……!」
「えっ!?」
「我が愛しのなまえ……あぁ、なまえが奏でる愛は甘美なる響き!」
「な、なんですか急に?」
「我もなまえに愛を捧げようぞ」
私が愛を奏でた覚えは全くないけど、なぜかサンデーさんは私の手を取って、熱い視線で見つめてくる。
普段元就さんが私に向ける冷徹な表情とは違って、なんというか、その……愛しいものを見るような、愛に満ちた表情とでも言えばいいのだろうか。
こんな顔で見つめられるのは慣れていない。正直に言ってしまうと、私が好きなのは元就さんであってサンデーさんではない。でも、お顔は同じなわけで。
好きな人から見つめられるのって、こんなに心臓に悪いのかぁ……。
「………………」
「あ、あの……」
見つめるにしても、あまりにも長い。
サンデーさんはいったい私の何を見ているんだ。穴が開くほど見つめられて、おかしくなりそうだ。
「なまえ」
「は、はい?……なっ、えっ!?」
サンデーさんは私の手の甲に唇を寄せた。
こ、これって……キス、ということになるのだろうか。
普段の元就さんは私に触れもしないから、突然の出来事に色々とキャパオーバーだ。手だってまだ繋いだことないのに!
「愛い……」
サンデーさんは私の手を取ってそのまま私を抱き寄せる。
「我にすべてを預けて、身を委ねよ」
耳元で囁かれて、少しだけまた心臓がうるさくなる。
……今の声音は、ちょっとだけ元就さんに似ていた。いや、サンデーさんも元就さんも一応同じ人ではあるんだけど。
「元就さ……っ」
思わず元就さん、と言いかけて慌てて口をつぐむ。
「我はなまえの、すべてが─────」
私の頬にサンデーさんの手が触れる。
……どうしよう。これキスされるんだ。
「だ、ダメです!」
「なっ……!?」
サンデーさんは目を見開いて、驚いたような顔をした。
「はじめては、元就さんがいい……です。あ、いや、二回目ならいいとかそういうお話でもないんですけど!」
「……なまえ」
「ご、ごめんなさいサンデーさん!」
サンデーさんに向かって頭を下げる。ていうか私は一体何を言っているんだ。はじめては元就さんがいいとか、まあまあ大胆なことを言ってしまった気がする。
「…………サン、デー?貴様、今なんと申した」
……え?
顔を上げると、そこには元就さんがいた。
冷徹な表情、慈愛のじの字もない眼差し。
どうやらサンデーさんはいつの間にかどこかに行ってしまったらしい。
「我は…………先ほどなまえに…………は?」
元就さんが何か呟いている。はっきりとは聞こえないけど、どうやら今あった出来事を整理しているらしい。
「…………」
突然黙ったかと思ったら、元就さんの顔がどんどん青くなっていく。こ、これ大丈夫なの?
「……忘れよ」
「え?」
「先程の事は金輪際思い出すでないわ」
「先程のことって、サンデーさんの?」
「その名を口に出すでないわ!」
*
─────といった昨日の出来事があってから、元就さんの機嫌がすこぶる悪い。
「ねぇ元就さん、私大丈夫ですよ?あんなことされちゃったので、完全に忘れるのは無理ですけど……別に誰かに言いふらしたりとかしませんし」
「……我は忘れよと申したはずだが」
「だから完全に忘れるのは無理ですってば〜!あれはその、元就さんじゃなくて、サンデーさんなわけですし。元就さんのせいじゃないでしょう?」
「貴様は一度、奴に我の名を呼びかけたな」
「ゔっ……」
呼び間違えたことまで覚えられていた。
どうやら元就さんは、昨日の出来事をすべて覚えているらしい。お互いの記憶は共有されるけど人格は別、ということなのだろうか。
「加えて、奴からの施しも受けようとは」
「施し?……ってもしかしてキスのことですか!?いや、唇のはちゃんと断ったじゃないですか!手の甲はその、あまりにも突然だったから」
「……あぁ。初めては我がいいだのなんだのとほざいておったな貴様は」
「めちゃくちゃ覚えてるじゃないですか!恥ずかしいので忘れてください!」
「無理を申すでないわ」
さ、さっきは私に向かって昨日の出来事は忘れろとか言ってたくせに……!
「……元就さんはしてくれないんですか?キス」
「…………は?」
「私はしてほしいです、元就さんに。はじめてだけじゃなくて、二回目も、三回目のキスも、ずっと」
……い、言っちゃった。顔に熱が集まってくるのが身に染みて分かる。
「フン、貴様の小煩い口を塞ぐなど造作もないわ」
「……えっ、小うるさいってどういうことですか!?」
「煩い、動くでないわ。やり難い」
「えっ、ちょっと元就さっ」
─────はじめてのキスは好きな人と。
二回目も、その先も……してくれたらいいな。
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