竹中半兵衛
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
卒業式が終わった。本当に半兵衛さんが、卒業しちゃうんだ。
学年がひとつ上の先輩、半兵衛さん。私たち学生にとって、学年が1つ違うっていうのはすごく大きな壁で。私はあと1年この学校で過ごすのに、半兵衛さんは___。
「ああ、もうここまで歩いてきたんだね」
……もう校門前だ。本当に、本当にこれで最後なんだ。
「嫌です」
「僕も嫌だよ。なんで僕となまえは同じ学年じゃないんだろうね」
本当に、なんで?なんで同じ学年じゃないの?同じ学年なら、半兵衛さんと修学旅行も行けたし、もっと一緒にいれただろうに。同じクラスになる可能性だって……
「い、今からでも留年とか」
「できないからね」
わかってる。そんなことわかってますよ。
そんな、食い気味に言わなくてもいいじゃないですか。
「でも……他の生徒にバレないように、二人だけで生徒会室で会うのは楽しかったよ」
「う……」
確かに半兵衛さんは楽しんでいた……と思う。
もしかしたら、私が慌てているのを見るのが楽しかったのかもしれないけど……
『いま誰かに見つかったら、僕たちは優等生じゃいられなくなってしまうね』
誰かの足音や話し声が聞こえる度に、半兵衛さんはこういうことを言ってきた。
私たちは所謂『優等生』だ。成績だっていいし、生徒会役員だし。こんなところを誰かに見られたら瞬く間に噂になるだろうし、悪く思われるのは分かっていた。
だけど、やめられなかった。私と二人だけでいるときの半兵衛さんは、いつもの半兵衛さんと違う。
うまく言えないけれど……すごく甘い雰囲気に包まれるような感じがした。でも、たまに目が合うと半兵衛さんの目がぎらぎらしているような感じもして。
『それだけ君のことが好きってことだよ』
まっすぐに視線を合わせて言われるから、私はいつも何も言えなくなってしまう。加えて、こう言った後は決まって私の口を塞ぐかのようにキスをする。
この人は存外独占欲が強いのかもしれない、と気づくのにそう時間はかからなかった。
「なまえ」
「え?」
半兵衛さんが私の手を握った。
「なまえ、僕は……僕は、遠くに行くことになる。この街から、すごく遠いところに」
「……はい」
半兵衛さんは大学進学を機に、ここからずっと遠い街で暮らすことになる。ずっと前から分かっていたことなのに、改めて本人の口から聞くと悲しくなるし、涙が溢れそうになる。
「だから……君と行きたいところがあるんだ。これから時間はあるかな」
「い、今からですか!?わ、わかりましたっ」
今から、と言われたからびっくりした。いつもより少し大きな声で返事をしてしまった。
でも、半兵衛さんとまだ一緒にいたいと思っているのは事実だし。断る理由がなかった。
「ありがとう。ここで断られたらどうしようかと思ったよ」
「断るわけないじゃないですか!……ところで、どこに行くんですか?」
「……まずは生徒会室。忘れ物をしてきたから着いてきてくれないかな」
「えっ?……ってことは校内に逆戻りですか!?」
*
___生徒会室に着いた。
半兵衛さんと生徒会室に行く機会なんてもうないと思っていたから、なんだか変な感じだ。
それにしても半兵衛さんが忘れ物だなんて珍しい。いったい何を忘れたんだろう?
私物は全部持ち帰った、という話を数日前に聞いたはずだし。私が今朝赴いた時は、半兵衛さんの私物は何一つなかったはず。
「____本当は、忘れ物なんてないんだけどね」
「え?」
「最後に君と来たかったんだ。ここは、君と僕の大切な場所だから」
半兵衛さんの手が、私の顔に触れる。
「君はこれからもここに出入りするんだろう?だから、その度に僕を思い出してほしいと思って」
……私たちはまた、キスをした。触れるだけのキス。
きっとここでするキスは最後になるんだろうな。
……え、最後?最後なら、もっとちゃんと堪能すべきだったのでは……?
「……あ、あの。もう一回!……してほしいなって……ダメ、ですか」
い、言ってしまった。言ってしまった!半兵衛さんの反応は……
「…………」
半兵衛さんが黙ってしまった。
えっ、もしかして私すごく、変なことを言ってしまった!?
「ん?あの、半兵衛さ……んッ!?」
半兵衛さんの手が、私の後頭部に回る。優しい触れ方だけど、さっきより力が入っている感じがする。
「君が強請ったんだからね」
「え……?」
半兵衛さんの唇が、私の唇に触れ……って、え?ちょ、聞いてないんですけど!!?
「ん……」
今、生徒会室の近くには、きっと誰もいない。
周りが静かすぎて、私たちのキスの音だけが響いているから恥ずかしい。
どうしよう。すごくドキドキする。
半兵衛さんと視線が絡まる。色々と限界な私に気づいたのか、ようやく解放してくれた。
「は、んべ……さん!長いです!」
「……これからは、ここで真面目な会議をする時も、生徒会のメンツでここに集まる時も、今のことを思い出して悶えるといいよ」
「そ、そんなことしません!悶えたりとかしないですっ」
顔がすごい勢いで熱くなる。悶えたりとかしない、なんて言ったけど絶対無理。
これから生徒会室で活動する時、絶対思い出すじゃないですか!どうしてくれるんですか!?
「そういう可愛い反応をされるとね、少し意地悪をしたくなるんだよ」
「えっ」
「……なまえ」
_______ここじゃできないことをしたいから、これから僕の家に来てくれないかな。
……半兵衛さんにそう言われた私は、また顔を赤くすることしかできなかった。
生徒会室に行く時だけじゃない。しばらくは、ずっと半兵衛さんのことしか考えられなさそうだ。
学年がひとつ上の先輩、半兵衛さん。私たち学生にとって、学年が1つ違うっていうのはすごく大きな壁で。私はあと1年この学校で過ごすのに、半兵衛さんは___。
「ああ、もうここまで歩いてきたんだね」
……もう校門前だ。本当に、本当にこれで最後なんだ。
「嫌です」
「僕も嫌だよ。なんで僕となまえは同じ学年じゃないんだろうね」
本当に、なんで?なんで同じ学年じゃないの?同じ学年なら、半兵衛さんと修学旅行も行けたし、もっと一緒にいれただろうに。同じクラスになる可能性だって……
「い、今からでも留年とか」
「できないからね」
わかってる。そんなことわかってますよ。
そんな、食い気味に言わなくてもいいじゃないですか。
「でも……他の生徒にバレないように、二人だけで生徒会室で会うのは楽しかったよ」
「う……」
確かに半兵衛さんは楽しんでいた……と思う。
もしかしたら、私が慌てているのを見るのが楽しかったのかもしれないけど……
『いま誰かに見つかったら、僕たちは優等生じゃいられなくなってしまうね』
誰かの足音や話し声が聞こえる度に、半兵衛さんはこういうことを言ってきた。
私たちは所謂『優等生』だ。成績だっていいし、生徒会役員だし。こんなところを誰かに見られたら瞬く間に噂になるだろうし、悪く思われるのは分かっていた。
だけど、やめられなかった。私と二人だけでいるときの半兵衛さんは、いつもの半兵衛さんと違う。
うまく言えないけれど……すごく甘い雰囲気に包まれるような感じがした。でも、たまに目が合うと半兵衛さんの目がぎらぎらしているような感じもして。
『それだけ君のことが好きってことだよ』
まっすぐに視線を合わせて言われるから、私はいつも何も言えなくなってしまう。加えて、こう言った後は決まって私の口を塞ぐかのようにキスをする。
この人は存外独占欲が強いのかもしれない、と気づくのにそう時間はかからなかった。
「なまえ」
「え?」
半兵衛さんが私の手を握った。
「なまえ、僕は……僕は、遠くに行くことになる。この街から、すごく遠いところに」
「……はい」
半兵衛さんは大学進学を機に、ここからずっと遠い街で暮らすことになる。ずっと前から分かっていたことなのに、改めて本人の口から聞くと悲しくなるし、涙が溢れそうになる。
「だから……君と行きたいところがあるんだ。これから時間はあるかな」
「い、今からですか!?わ、わかりましたっ」
今から、と言われたからびっくりした。いつもより少し大きな声で返事をしてしまった。
でも、半兵衛さんとまだ一緒にいたいと思っているのは事実だし。断る理由がなかった。
「ありがとう。ここで断られたらどうしようかと思ったよ」
「断るわけないじゃないですか!……ところで、どこに行くんですか?」
「……まずは生徒会室。忘れ物をしてきたから着いてきてくれないかな」
「えっ?……ってことは校内に逆戻りですか!?」
*
___生徒会室に着いた。
半兵衛さんと生徒会室に行く機会なんてもうないと思っていたから、なんだか変な感じだ。
それにしても半兵衛さんが忘れ物だなんて珍しい。いったい何を忘れたんだろう?
私物は全部持ち帰った、という話を数日前に聞いたはずだし。私が今朝赴いた時は、半兵衛さんの私物は何一つなかったはず。
「____本当は、忘れ物なんてないんだけどね」
「え?」
「最後に君と来たかったんだ。ここは、君と僕の大切な場所だから」
半兵衛さんの手が、私の顔に触れる。
「君はこれからもここに出入りするんだろう?だから、その度に僕を思い出してほしいと思って」
……私たちはまた、キスをした。触れるだけのキス。
きっとここでするキスは最後になるんだろうな。
……え、最後?最後なら、もっとちゃんと堪能すべきだったのでは……?
「……あ、あの。もう一回!……してほしいなって……ダメ、ですか」
い、言ってしまった。言ってしまった!半兵衛さんの反応は……
「…………」
半兵衛さんが黙ってしまった。
えっ、もしかして私すごく、変なことを言ってしまった!?
「ん?あの、半兵衛さ……んッ!?」
半兵衛さんの手が、私の後頭部に回る。優しい触れ方だけど、さっきより力が入っている感じがする。
「君が強請ったんだからね」
「え……?」
半兵衛さんの唇が、私の唇に触れ……って、え?ちょ、聞いてないんですけど!!?
「ん……」
今、生徒会室の近くには、きっと誰もいない。
周りが静かすぎて、私たちのキスの音だけが響いているから恥ずかしい。
どうしよう。すごくドキドキする。
半兵衛さんと視線が絡まる。色々と限界な私に気づいたのか、ようやく解放してくれた。
「は、んべ……さん!長いです!」
「……これからは、ここで真面目な会議をする時も、生徒会のメンツでここに集まる時も、今のことを思い出して悶えるといいよ」
「そ、そんなことしません!悶えたりとかしないですっ」
顔がすごい勢いで熱くなる。悶えたりとかしない、なんて言ったけど絶対無理。
これから生徒会室で活動する時、絶対思い出すじゃないですか!どうしてくれるんですか!?
「そういう可愛い反応をされるとね、少し意地悪をしたくなるんだよ」
「えっ」
「……なまえ」
_______ここじゃできないことをしたいから、これから僕の家に来てくれないかな。
……半兵衛さんにそう言われた私は、また顔を赤くすることしかできなかった。
生徒会室に行く時だけじゃない。しばらくは、ずっと半兵衛さんのことしか考えられなさそうだ。
2/4ページ