片倉小十郎
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小十郎さんはやさしいひとだ。
こんな私に、毎日話しかけてくれるんだから。
「昨日、畑で山ほど野菜を収穫できてな」
「政宗様がなまえに会いたいとおっしゃっていた。俺がなまえのことを話したからなのだろうが……」
私は口下手で面白い返しなんてできないし、気の利いたことも言えないのに。
でも、小十郎さんは私に話しかけてくれる。
もしかしたら、ひとりでいることが多い私を気遣ってくれているのかな?
小十郎さんはやさしいひとだ。
こんな私を、いつも助けてくれる。
野良犬に吠えられて怖かった時も、重い荷物を持てなくて困っていた時も。
男のひとに因縁をつけられて、しつこく迫られて怖かったときも、助けてくれた。
男のひとに迫られたとき、私は怖くて……すごく怖くて。何か言わなきゃいけないのに、言葉が出てこなかった。
焦って、頭がぐるぐるして、どうしようもない時に小十郎さんが私の前に現れた。
そのときの小十郎さんは、すごく怖かった。
男のひとを、今にも殺めるんじゃないかってくらいの殺気を纏っていた。
あぁ、小十郎さんはこういうことを許せないひとなんだ。女の子に迫るような輩を許せないようなひとなんだ。
だから、私なんかを助けてくれたんだ。
小十郎さんは、すごくやさしいひとだ。
「まだなまえが帰ってきていないと聞いてな……町中探し回った」
私の両親から聞いたのだろうか。私を心配する両親のために、わざわざ私を探してくれたんだ。
よく見ると小十郎さんは汗をかいていて、髪も少し乱れていた。
……やっぱり、やさしいひとだ。
小十郎さんはやさしいひとだ。
こんな私を、好きだと言ってくれたから。
以前迫ってきた男のひとが、またしつこく私に何か言ってくるようになった。
そのひとは、あのとき私を助けてくれた小十郎さんのことを悪く言った。私にたぶらかされているだとか、お前みたいな女を選ぶだなんて趣味が悪いだとか。
違う。
小十郎さんは、やさしいから。
やさしいから、私と接してくれているだけなのに。
そのひとは、顔を合わせるたびに私と小十郎さんのことを悪く言った。
小十郎さんには言えなかった。前に迫ってきたひとが、またしつこく何か言ってくるだなんて。
だって、そんなの迷惑だ。
小十郎さんはやさしいから、きっとまた私を助けてくれる。頼ったら、きっと迷惑だ。
私はしばらく、そのひとの嫌味に耐え続けた。
私を悪く言うのはなんとも思わなかったけど、小十郎さんのことを悪く言われるのは、すごく嫌だった。
いつものように嫌味を言われているときだった。突然ぷつんと自分の中で何かが切れた。
「うるさい!」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。そのひとは一瞬驚いたような顔をした。でも、すぐに激昂したような様子で私に近づいてきた。
しまった、と思った瞬間、私は男に殴られた。
殴られて痛いからなのか、悔しいからなのか。そのどちらでもあるのかもしれない。気づいたら、涙がぽろぽろと溢れていた。
泣く私を見て、男はばつが悪そうにしてその場を去った。
私はその場で泣いた。泣いても泣いても涙は止まらなかった。
しばらくすると雨が降ってきた。それも土砂降りだ。
顔も髪も、服もぐしゃぐしゃだ。今の私、すごくみじめだ。なんで私ってこうなんだろう。
今日はもう帰ろう。こんな姿、小十郎さんに見られたくない。もし見られたらきっと立ち直れない。
「なまえ……?」
聞き慣れた声がした。
なんで今、よりによって。
「こんな雨の中、傘も持たずにどうしたんだ?」
「どうした?……泣いているのか?」
嫌だ、殴られた顔なんて見られたくない。
泣いてぐしゃぐしゃな顔も、雨で乱れてしまった髪も、汚れてしまった着物も。
私が小十郎さんから背を向けようとすると、小十郎さんは、はっとしたような顔をした。
「なまえ、その顔……ッ」
ああ、見られてしまった。小十郎さんには見られたくなかった。
「……誰にやられた?」
……小十郎さん、なんだか怖い。
怒っているのかな。
「だ、大丈夫です、私」
「……俺が大丈夫じゃない」
「えっ?」
「なまえのそんな顔を見ておいて放っておけるほど、俺は薄情じゃない」
「……なんで?なんでそんなにやさしいんですか?小十郎さん、いつも私を助けてくれるから」
私がそう言うと、小十郎さんはちょっと困ったような顔をした。
「何故だろうな。気付いたらなまえを目で追っていて、気付いたらなまえを助けている」
「す、すみません。私、そんなに目障りですか……?」
「な、何故そうなる?違う、俺が言いてえのは……」
小十郎さんは言い淀むと、しばらく考え込んでしまった。
あぁ、また気を遣わせてしまった。目障りですか、なんて聞いたら困るに決まっているじゃない。
「ご、ごめんなさ」
「俺はなまえが好きなんだ」
謝ろうと思って頭を下げかけたら、小十郎さんからとんでもないことを言われたような気がして、そのまま動けなくなった。
「す……?え……?な、何て……?」
戸惑いながら下げかけた頭を上げると、小十郎さんがまっすぐ私を見つめていた。
「……もう一度言わせる気か?」
「あっ、いや、その……なんか、絶対に小十郎さんが言わないようなことが聞こえて、聞き間違えたのかなって」
「そうか、俺はなまえのことが好きだと言ったんだがな」
「えっ、そ、そんなの……本当に?」
「最初は、なまえが危なっかしくて放っておけなかった。遠慮せずに、もっと誰かに頼ればいいと思っていた。今は、なまえが好きだから放っておけない。俺以外の誰かではなく、俺を頼ってほしい」
「小十郎さん……」
「まだ信じられねえか?」
「す、すみません。びっくり、しちゃって」
「……急にこんなこと言っちまって悪かった。別に返事が聞きてえわけじゃねえ。なまえから好かれなくたっていい。ただ、もっと俺を頼ってほしい。なまえは我儘を言うくらいでいいんだ」
なんでだろう、また涙が溢れそうだ。
小十郎さん。私を助けてくれる、やさしいひと。
────私のことを、好きでいてくれるひと。
「……で、なまえを殴って泣かせた奴は誰なんだ?」
……怒らせると、ちょっと怖いひと。
こんな私に、毎日話しかけてくれるんだから。
「昨日、畑で山ほど野菜を収穫できてな」
「政宗様がなまえに会いたいとおっしゃっていた。俺がなまえのことを話したからなのだろうが……」
私は口下手で面白い返しなんてできないし、気の利いたことも言えないのに。
でも、小十郎さんは私に話しかけてくれる。
もしかしたら、ひとりでいることが多い私を気遣ってくれているのかな?
小十郎さんはやさしいひとだ。
こんな私を、いつも助けてくれる。
野良犬に吠えられて怖かった時も、重い荷物を持てなくて困っていた時も。
男のひとに因縁をつけられて、しつこく迫られて怖かったときも、助けてくれた。
男のひとに迫られたとき、私は怖くて……すごく怖くて。何か言わなきゃいけないのに、言葉が出てこなかった。
焦って、頭がぐるぐるして、どうしようもない時に小十郎さんが私の前に現れた。
そのときの小十郎さんは、すごく怖かった。
男のひとを、今にも殺めるんじゃないかってくらいの殺気を纏っていた。
あぁ、小十郎さんはこういうことを許せないひとなんだ。女の子に迫るような輩を許せないようなひとなんだ。
だから、私なんかを助けてくれたんだ。
小十郎さんは、すごくやさしいひとだ。
「まだなまえが帰ってきていないと聞いてな……町中探し回った」
私の両親から聞いたのだろうか。私を心配する両親のために、わざわざ私を探してくれたんだ。
よく見ると小十郎さんは汗をかいていて、髪も少し乱れていた。
……やっぱり、やさしいひとだ。
小十郎さんはやさしいひとだ。
こんな私を、好きだと言ってくれたから。
以前迫ってきた男のひとが、またしつこく私に何か言ってくるようになった。
そのひとは、あのとき私を助けてくれた小十郎さんのことを悪く言った。私にたぶらかされているだとか、お前みたいな女を選ぶだなんて趣味が悪いだとか。
違う。
小十郎さんは、やさしいから。
やさしいから、私と接してくれているだけなのに。
そのひとは、顔を合わせるたびに私と小十郎さんのことを悪く言った。
小十郎さんには言えなかった。前に迫ってきたひとが、またしつこく何か言ってくるだなんて。
だって、そんなの迷惑だ。
小十郎さんはやさしいから、きっとまた私を助けてくれる。頼ったら、きっと迷惑だ。
私はしばらく、そのひとの嫌味に耐え続けた。
私を悪く言うのはなんとも思わなかったけど、小十郎さんのことを悪く言われるのは、すごく嫌だった。
いつものように嫌味を言われているときだった。突然ぷつんと自分の中で何かが切れた。
「うるさい!」
自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。そのひとは一瞬驚いたような顔をした。でも、すぐに激昂したような様子で私に近づいてきた。
しまった、と思った瞬間、私は男に殴られた。
殴られて痛いからなのか、悔しいからなのか。そのどちらでもあるのかもしれない。気づいたら、涙がぽろぽろと溢れていた。
泣く私を見て、男はばつが悪そうにしてその場を去った。
私はその場で泣いた。泣いても泣いても涙は止まらなかった。
しばらくすると雨が降ってきた。それも土砂降りだ。
顔も髪も、服もぐしゃぐしゃだ。今の私、すごくみじめだ。なんで私ってこうなんだろう。
今日はもう帰ろう。こんな姿、小十郎さんに見られたくない。もし見られたらきっと立ち直れない。
「なまえ……?」
聞き慣れた声がした。
なんで今、よりによって。
「こんな雨の中、傘も持たずにどうしたんだ?」
「どうした?……泣いているのか?」
嫌だ、殴られた顔なんて見られたくない。
泣いてぐしゃぐしゃな顔も、雨で乱れてしまった髪も、汚れてしまった着物も。
私が小十郎さんから背を向けようとすると、小十郎さんは、はっとしたような顔をした。
「なまえ、その顔……ッ」
ああ、見られてしまった。小十郎さんには見られたくなかった。
「……誰にやられた?」
……小十郎さん、なんだか怖い。
怒っているのかな。
「だ、大丈夫です、私」
「……俺が大丈夫じゃない」
「えっ?」
「なまえのそんな顔を見ておいて放っておけるほど、俺は薄情じゃない」
「……なんで?なんでそんなにやさしいんですか?小十郎さん、いつも私を助けてくれるから」
私がそう言うと、小十郎さんはちょっと困ったような顔をした。
「何故だろうな。気付いたらなまえを目で追っていて、気付いたらなまえを助けている」
「す、すみません。私、そんなに目障りですか……?」
「な、何故そうなる?違う、俺が言いてえのは……」
小十郎さんは言い淀むと、しばらく考え込んでしまった。
あぁ、また気を遣わせてしまった。目障りですか、なんて聞いたら困るに決まっているじゃない。
「ご、ごめんなさ」
「俺はなまえが好きなんだ」
謝ろうと思って頭を下げかけたら、小十郎さんからとんでもないことを言われたような気がして、そのまま動けなくなった。
「す……?え……?な、何て……?」
戸惑いながら下げかけた頭を上げると、小十郎さんがまっすぐ私を見つめていた。
「……もう一度言わせる気か?」
「あっ、いや、その……なんか、絶対に小十郎さんが言わないようなことが聞こえて、聞き間違えたのかなって」
「そうか、俺はなまえのことが好きだと言ったんだがな」
「えっ、そ、そんなの……本当に?」
「最初は、なまえが危なっかしくて放っておけなかった。遠慮せずに、もっと誰かに頼ればいいと思っていた。今は、なまえが好きだから放っておけない。俺以外の誰かではなく、俺を頼ってほしい」
「小十郎さん……」
「まだ信じられねえか?」
「す、すみません。びっくり、しちゃって」
「……急にこんなこと言っちまって悪かった。別に返事が聞きてえわけじゃねえ。なまえから好かれなくたっていい。ただ、もっと俺を頼ってほしい。なまえは我儘を言うくらいでいいんだ」
なんでだろう、また涙が溢れそうだ。
小十郎さん。私を助けてくれる、やさしいひと。
────私のことを、好きでいてくれるひと。
「……で、なまえを殴って泣かせた奴は誰なんだ?」
……怒らせると、ちょっと怖いひと。
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