空よりも深き青海の眩しさよ
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【第一話 光に焼かれ花は沈む】
「はぁ……ッ、はぁ……」
こんなに必死に走ったのは初めてだ。苦しくて痛いはずなのに、妙な気持ちよさを感じるのは何故だろう。
私は今まで生きた世界を捨てて、外の世界へ行く。私の心に刻まれた傷が完全に消えることはないだろうけど、あの人の束縛からは逃れることができる。
道具ではなく、人として生きられる。
あの強い光に焦がされることは、もうない。
─────波の音が、聞こえる。
……あぁ、これは行き止まりだ。
ここは崖で目の前は海。きっと追手もすぐ近くまで迫ってきている。
この海へと身を投げることが、外の世界へ行く条件なのか。
飛び込んだら死ぬかもしれない。でもこの場に留まっていたらきっと連れ戻される。
それならば、私は……
「……行きたい」
外の世界へ。
*
「─────えぇ、なまえ様があの崖から飛び降りる姿を目撃した者がおりまして」
「……身を投げたか」
「崖に様子を見に行った兵から、この髪飾りが落ちていたとの報告がありました。こちらは元就様にお渡しいたします」
「これは……もうよい、退がれ」
「……はい」
「……安芸から出れば、我から逃げられるとでも思うたか」
兵から渡された髪飾りを持つ手に、思わず力が入る。
髪飾りは、かつてなまえに元就が贈ったものであった。
「はぁ……ッ、はぁ……」
こんなに必死に走ったのは初めてだ。苦しくて痛いはずなのに、妙な気持ちよさを感じるのは何故だろう。
私は今まで生きた世界を捨てて、外の世界へ行く。私の心に刻まれた傷が完全に消えることはないだろうけど、あの人の束縛からは逃れることができる。
道具ではなく、人として生きられる。
あの強い光に焦がされることは、もうない。
─────波の音が、聞こえる。
……あぁ、これは行き止まりだ。
ここは崖で目の前は海。きっと追手もすぐ近くまで迫ってきている。
この海へと身を投げることが、外の世界へ行く条件なのか。
飛び込んだら死ぬかもしれない。でもこの場に留まっていたらきっと連れ戻される。
それならば、私は……
「……行きたい」
外の世界へ。
*
「─────えぇ、なまえ様があの崖から飛び降りる姿を目撃した者がおりまして」
「……身を投げたか」
「崖に様子を見に行った兵から、この髪飾りが落ちていたとの報告がありました。こちらは元就様にお渡しいたします」
「これは……もうよい、退がれ」
「……はい」
「……安芸から出れば、我から逃げられるとでも思うたか」
兵から渡された髪飾りを持つ手に、思わず力が入る。
髪飾りは、かつてなまえに元就が贈ったものであった。
1/2ページ