「なんていうか、進展がないんです」


はぁ……とため息をつくなまえ。
なんでも、彼氏と進展がないらしい。


どうせ、なまえを大切にしたいだの、可愛すぎて何もできないだの何だの……そんな理由なのだろう。からすめ。



「もうどうしたらいいんでしょう孫市先生」
「なぜそれを教師である私に聞く……」


……本当にどうかと思うぞ。生徒に話すならまだしも、教師に恋愛相談なんて。


「もう、私が押し倒すべきでしょうか」
「いや待て、落ち着け、本当に待て」


本当に、本当にどうかと思うぞ。いくらなんでも、発想があまりにも飛躍しすぎている。
それに、なまえに突然押し倒されでもしたら奴は……。


意識を失ってもおかしくない。
なまえとは手を繋ぐのがやっとなんだぞ、あのからすは。


「だ、だめでしょうか」
「ああ、もっと穏便にいけ。頼むから」


過激な作戦だと、あいつの命に関わりそうだからな。
……身を案じてやったんだ、感謝しろ。


「うーん……じゃあ突然キスしちゃいます。これならいいですよね！？」

「……あぁ、まぁいいんじゃないか？」


教師がこの提案に"いいんじゃないか？"と言ってしまうのはどうかと思うが。まぁ大丈夫だろう、この学園だからな。


「えへへ、びっくりする顔が見れるかもしれません！成功したら、また私のお話聞いてくださいね！」


「あぁ、健闘を祈る」


柔らかな微笑みを浮かべるなまえ。
……あいつは、なまえのこういうところに惚れたのだろうか。


「……あ。もし失敗しても、お話聞いてくださいね」


「フッ、もちろんだ」


……奴はなまえの突飛な行動に耐えられるだろうか。
いや、耐えてもらわなくては困る。


なまえの男を名乗るならこれくらいは、な。