今日はなまえと駅で待ち合わせ……のはずが、数分遅刻してしまった。


「すまないなまえ！遅れてしまった……知らない男に声をかけられたんだが、そいつがしつこくてな」


「えっかすがちゃん、ナンパされちゃったの！？だ、大丈夫だった……？」


「あぁ、軟弱な男だったからな」


「そ、そっかあ……かすがちゃん美人さんだからなあ。やっぱりナンパされちゃうのかな」



「……お前もお前で、大変そうだな」



「え？……えっ！？いや、私はナンパなんてされないよ〜」


「いや、わからないならいいんだ」


「？」


……私がなまえに"大変そうだ"と言った理由は、そのへんの男どもがなまえに声をかけられないくらい、こいつの彼氏が怖いからだ。


なんなら、今も5メートルほど後ろでなまえを見ている。柱に隠れてな。

とにかく、なまえに対してはかなり過保護だ。
男が声をかけようとしたら、即座になまえの背後に立って睨むからな。


……そしてなまえが振り返る前に、また物陰へと戻るのだ。


「とりあえず、今日はお買い物だよね！お洋服とか色々買えたらいいな〜」


しかし、なまえは自分の彼氏がとんでもなく過保護なことは知らない。むしろ"いや、ちょっとそっけないところあるんだよ〜"なんて言っている。


違う、違うぞなまえ。奴がそっけないのは、なまえのことが好きすぎる故なんだ……！！


あいつは、文化祭でメイド服を着たお前にやたらそっけない態度をとっていた……が！！なまえの写真はばっちり撮っていたからな！！


ヤツは、お前とのツーショット写真も"そんなの別にいい"とかなんとか言っていたが結局撮っただろう？


……撮ったのは私だったが、大変だったんだぞ。


『別にいい(撮れよ！！！！！！！！)』


＿＿＿＿みたいな感じだったからな。心の声ダダ漏れだったからな。すごく目で訴えられたからな。


素直に言えばいいものを……。


「……どうしたのかすがちゃん？なんか考え事？」

「あ、いや……」


なまえの後方に佇んでいる"奴"のことを考えていたとは流石に言えない。


「なんでもないんだ」


……今日もまた、奴の存在をはぐらかす。
いいかげんなまえに伝えるべきなのだろうか。





＊





「今日はありがとうかすがちゃん！楽しかったよ！」



「そうか？私も楽しかったぞ」



……買い物はもちろん、お前の彼氏のバレバレの尾行も！