島左近
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すべてがあの頃のままではないけれど
「……ぜったいやだ」
「えっ、ま、まじで?まじでダメ?」
「だめ」
「なんで!?」
「嫌だよ!卒業して何年経ったと思ってるの!?」
「そ、そんなの関係ないっしょ〜!?」
さっきから駄々をこねまくっている左近くんと、左近くんのお願いを断固拒否し続けている私。
いつもは甘え上手な左近くんに押されて色々と承諾しちゃうけど、今回ばかりは拒否せざるを得ない。
「ねえ、さっきも言ったけど私もう大人なの!大人は普通、学校の制服なんて着ないの!」
「き、着る人もいるかもしれないじゃん!?てかいる!います!」
……そう、私たちは今「卒業した学校の制服を私が着るか否か」で揉めている。
理由は単純。家具の組み立てのお手伝いとして左近くんを自宅に呼んだところ、私がかつて着ていた制服を早々に発見してしまったのだ。
私がドライバーをクローゼットの奥底にしまい込んでいたのがいけなかった。まさかこんなことになろうとは。
「ていうか何したいの!?制服着てすることって何!?」
「な、なにって言われると……てか逆に言っていいんすか!?なまえさん引かない!?」
「制服を着てほしいとか言ってる時点で既に引いてますけど!?」
「そ、そんなあ!」
そんなあ、ではない。
逆になんで引いてないと思ったんだ左近くん。
「ぐっ……いやでも、あの、マジでほんと5分だけとかでもいいんで……!」
「ぜ、全然退かない……!」
「ね、お願いしますよなまえさ〜ん……」
……まずい、完全におねだりモードだ。
何がまずいって、私はこの左近くんに勝てた試しがない。なぜかいつもうまいこと丸め込まれてOKしてしまう。
今回も多分、例によって─────。
*
「あ〜、まじで可愛いですなまえさん」
「そう……」
結局着てしまった。5分だけという約束で。
……キツい。とにかくキツいの一言でしかない。鏡に映る自分を全然見ることができないくらい恥ずかしいんだけど、こんなものを見て楽しいのか左近くんは。
「……俺、今すげー幸せです」
どうやら幸せらしい。こんなもので幸せを実感するな。
「いや、キツいでしょ色々……見てられないでしょ、こんなの」
「んなわけないっしょ!?ずっと見てられますけど!?普通にガン見!」
本当にガン見してくる。やめてほしい。
穴があいてしまいそうだ。
「なまえさん、ほんと可愛い。あの時からずっと……ずっと可愛いままっす、まじで」
「な、なに?どうしたの急に」
「いや、なまえさんが今俺の彼女として隣にいるのって、当時の俺からしたらけっこうありえないことっていうか、奇跡みたいなことで……あの時可愛いなって思ってた人が今同じカッコして隣にいるんで、なんか、こう……すごいことだなって」
「そ、そっか……」
確かに私たちが付き合い出したのは、お互いに学校を卒業してからだ。ていうか左近くん、当時そんなふうに思ってたの!?
「ね、なまえさん」
左近くんは私の手を取って、少し屈んだ。私に目線を合わせて、顔を近づけてくる。
「今までもこれからも、なまえさんは俺にとってずっと可愛い人なんで……いや、可愛いのもそうなんすけど、ずっと好きな人なんで!」
「は、はい……」
「……ってなんかすんません!急に変なこと言っちゃって!」
「ほ、ホントだよ!そういうことはさあ、私がもっと普通の格好してる時に言ってよ……!」
ちょっとだけ気まずい空気が流れる。なんだかお互いに照れてしまって、なんて喋り出したらいいのかわからない。
「あー、この流れでアレなんすけど……なまえさん、一回俺のこと先輩って呼んでもらってもいいすか」
「……え?」
な、なんなんだ突然。あまりにも脈絡がなさすぎてびっくりしてしまった。
左近くんを先輩呼び?私が?
「いや、この流れで?って感じなのは分かってるんすけど!どうしてもこれやってほしくってぇ……」
どうやら左近くんは私の先輩になってみたかったようだ。なにその願望!?
「え……さ……さこん、先輩?」
「ま、マジでやってくれるとか……え?夢?」
「えっそんなに嬉しい?左近くんの感性、よくわかんないなあ」
「あーいいなあ!なまえさんに先輩って呼んでもらえた人。まじ羨まし……」
「そんなに!?いっそ先輩呼びすべき?」
「……そのカッコするときは、ちょっと呼んでほしいかも?」
「いや、これ着るの今回限りだからね!?」
「そ、そうだった……!」
あからさまにショックを受ける左近くん。
まあでも、少しだけ……ちょっとだけ左近くんの要望を叶えてあげるべきなのかもしれない。元はと言えば私のお手伝いで来てくれたんだし。これを報酬……にしていいのか分からないけど。
「えい」
思いっきり正面から左近くんに抱きついてみる。普段はこんなことを自分からやらないから、なんだかすごくぎこちない。
「わっ!?なまえさん…?」
「あのね、さっき私のこと好きって言ってくれたじゃない?私もちゃんと好きだからね、その、左近……先輩……のこと」
「か、かわっ……ちょ、軽率にそういうことしないで!?ヤバい!俺がやばい!ていうかそんな大事なこと言う時は先輩呼びじゃなくていいっすから!」
「えっ?そ、そうなの?私のほうがやばいじゃんなんか恥ずかしいし!」
「……なまえ」
「へっ!?」
「……って呼んでたのかな、なまえさんが同級生とか後輩だったら!」
「〜っ、そ、そうかもね!?」
呼び捨てにされただけなのに、なぜかすごく動揺してしまった。別に、名前なんて普段からたくさん呼ばれているのに。
「あー、あと、これは流石に頼んじゃダメかもなって思って最初言わなかったんすけどね?なまえさんが後輩って設定でちょっとそういうプレイするのはなまえさん的に……」
「えっ」
「いやダメっすよね流石に!?そうですよねまじで何言ってんすかね俺!」
「……もしかして制服見つけてから、ずっとそういうことしたいって思ってた?」
「…………ハイ」
「あわよくば最後までしたいと?」
「………………っすね」
下心をまるで隠さないなあ、左近くん。正直すぎて逆に清々しいまである。
「ならもっと学生時代に着てたような可愛い下着着ればよかった……大人っぽいやつ着てきちゃったよ」
「は!!?!?!?!?!?いや、それはそれでめちゃくちゃ需要あるってか……し、していいんすかそもそも!?」
「……今日はそっちが先輩なんでしょ?先輩の好きにすればいいんじゃないですか?」
「えっ、なんかもう始まってる……!?」
左近くんは動揺しながらもどこか嬉しそうだ。
5分だけという約束はどこへやら。私は結局もう少しだけ、この制服を着ていなければならなくなってしまった。
「もう、なまえさんてば変なトコでノリいいんすから……そういうとこが好きなんですけどね」
左近くんに強い力で抱きしめられる。
この後の出来事は……まあ、ちょっと他人には言えない。言えるわけがない!
「……ぜったいやだ」
「えっ、ま、まじで?まじでダメ?」
「だめ」
「なんで!?」
「嫌だよ!卒業して何年経ったと思ってるの!?」
「そ、そんなの関係ないっしょ〜!?」
さっきから駄々をこねまくっている左近くんと、左近くんのお願いを断固拒否し続けている私。
いつもは甘え上手な左近くんに押されて色々と承諾しちゃうけど、今回ばかりは拒否せざるを得ない。
「ねえ、さっきも言ったけど私もう大人なの!大人は普通、学校の制服なんて着ないの!」
「き、着る人もいるかもしれないじゃん!?てかいる!います!」
……そう、私たちは今「卒業した学校の制服を私が着るか否か」で揉めている。
理由は単純。家具の組み立てのお手伝いとして左近くんを自宅に呼んだところ、私がかつて着ていた制服を早々に発見してしまったのだ。
私がドライバーをクローゼットの奥底にしまい込んでいたのがいけなかった。まさかこんなことになろうとは。
「ていうか何したいの!?制服着てすることって何!?」
「な、なにって言われると……てか逆に言っていいんすか!?なまえさん引かない!?」
「制服を着てほしいとか言ってる時点で既に引いてますけど!?」
「そ、そんなあ!」
そんなあ、ではない。
逆になんで引いてないと思ったんだ左近くん。
「ぐっ……いやでも、あの、マジでほんと5分だけとかでもいいんで……!」
「ぜ、全然退かない……!」
「ね、お願いしますよなまえさ〜ん……」
……まずい、完全におねだりモードだ。
何がまずいって、私はこの左近くんに勝てた試しがない。なぜかいつもうまいこと丸め込まれてOKしてしまう。
今回も多分、例によって─────。
*
「あ〜、まじで可愛いですなまえさん」
「そう……」
結局着てしまった。5分だけという約束で。
……キツい。とにかくキツいの一言でしかない。鏡に映る自分を全然見ることができないくらい恥ずかしいんだけど、こんなものを見て楽しいのか左近くんは。
「……俺、今すげー幸せです」
どうやら幸せらしい。こんなもので幸せを実感するな。
「いや、キツいでしょ色々……見てられないでしょ、こんなの」
「んなわけないっしょ!?ずっと見てられますけど!?普通にガン見!」
本当にガン見してくる。やめてほしい。
穴があいてしまいそうだ。
「なまえさん、ほんと可愛い。あの時からずっと……ずっと可愛いままっす、まじで」
「な、なに?どうしたの急に」
「いや、なまえさんが今俺の彼女として隣にいるのって、当時の俺からしたらけっこうありえないことっていうか、奇跡みたいなことで……あの時可愛いなって思ってた人が今同じカッコして隣にいるんで、なんか、こう……すごいことだなって」
「そ、そっか……」
確かに私たちが付き合い出したのは、お互いに学校を卒業してからだ。ていうか左近くん、当時そんなふうに思ってたの!?
「ね、なまえさん」
左近くんは私の手を取って、少し屈んだ。私に目線を合わせて、顔を近づけてくる。
「今までもこれからも、なまえさんは俺にとってずっと可愛い人なんで……いや、可愛いのもそうなんすけど、ずっと好きな人なんで!」
「は、はい……」
「……ってなんかすんません!急に変なこと言っちゃって!」
「ほ、ホントだよ!そういうことはさあ、私がもっと普通の格好してる時に言ってよ……!」
ちょっとだけ気まずい空気が流れる。なんだかお互いに照れてしまって、なんて喋り出したらいいのかわからない。
「あー、この流れでアレなんすけど……なまえさん、一回俺のこと先輩って呼んでもらってもいいすか」
「……え?」
な、なんなんだ突然。あまりにも脈絡がなさすぎてびっくりしてしまった。
左近くんを先輩呼び?私が?
「いや、この流れで?って感じなのは分かってるんすけど!どうしてもこれやってほしくってぇ……」
どうやら左近くんは私の先輩になってみたかったようだ。なにその願望!?
「え……さ……さこん、先輩?」
「ま、マジでやってくれるとか……え?夢?」
「えっそんなに嬉しい?左近くんの感性、よくわかんないなあ」
「あーいいなあ!なまえさんに先輩って呼んでもらえた人。まじ羨まし……」
「そんなに!?いっそ先輩呼びすべき?」
「……そのカッコするときは、ちょっと呼んでほしいかも?」
「いや、これ着るの今回限りだからね!?」
「そ、そうだった……!」
あからさまにショックを受ける左近くん。
まあでも、少しだけ……ちょっとだけ左近くんの要望を叶えてあげるべきなのかもしれない。元はと言えば私のお手伝いで来てくれたんだし。これを報酬……にしていいのか分からないけど。
「えい」
思いっきり正面から左近くんに抱きついてみる。普段はこんなことを自分からやらないから、なんだかすごくぎこちない。
「わっ!?なまえさん…?」
「あのね、さっき私のこと好きって言ってくれたじゃない?私もちゃんと好きだからね、その、左近……先輩……のこと」
「か、かわっ……ちょ、軽率にそういうことしないで!?ヤバい!俺がやばい!ていうかそんな大事なこと言う時は先輩呼びじゃなくていいっすから!」
「えっ?そ、そうなの?私のほうがやばいじゃんなんか恥ずかしいし!」
「……なまえ」
「へっ!?」
「……って呼んでたのかな、なまえさんが同級生とか後輩だったら!」
「〜っ、そ、そうかもね!?」
呼び捨てにされただけなのに、なぜかすごく動揺してしまった。別に、名前なんて普段からたくさん呼ばれているのに。
「あー、あと、これは流石に頼んじゃダメかもなって思って最初言わなかったんすけどね?なまえさんが後輩って設定でちょっとそういうプレイするのはなまえさん的に……」
「えっ」
「いやダメっすよね流石に!?そうですよねまじで何言ってんすかね俺!」
「……もしかして制服見つけてから、ずっとそういうことしたいって思ってた?」
「…………ハイ」
「あわよくば最後までしたいと?」
「………………っすね」
下心をまるで隠さないなあ、左近くん。正直すぎて逆に清々しいまである。
「ならもっと学生時代に着てたような可愛い下着着ればよかった……大人っぽいやつ着てきちゃったよ」
「は!!?!?!?!?!?いや、それはそれでめちゃくちゃ需要あるってか……し、していいんすかそもそも!?」
「……今日はそっちが先輩なんでしょ?先輩の好きにすればいいんじゃないですか?」
「えっ、なんかもう始まってる……!?」
左近くんは動揺しながらもどこか嬉しそうだ。
5分だけという約束はどこへやら。私は結局もう少しだけ、この制服を着ていなければならなくなってしまった。
「もう、なまえさんてば変なトコでノリいいんすから……そういうとこが好きなんですけどね」
左近くんに強い力で抱きしめられる。
この後の出来事は……まあ、ちょっと他人には言えない。言えるわけがない!
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