島左近
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2月14日、バレンタインデー。
ちょっと前から街の広告がバレンタインに侵食されてきてんなー、と思う。
下校の時によく寄るコンビニでも、入店と同時にチョコレートの山がこれでもかってくらい主張してくる。
いや、正直アレは発注ミスだと思うけど。発注ミスした店員はきっと震え上がってんだろうけど……俺はそこを通る度に浮かれまくっていた。
____ってのも、今年は俺、所謂「彼女持ち」ってヤツなんで!?バレンタインを理由に、イチャイチャしまくりなカンジ(になる予定)だし!?
……なまえさん。最近やっと俺の彼女になってくれたひと。歳が一個上なだけなのに、俺よりずっと大人っぽい。なまえさんが半兵衛様や刑部さんとかと並んでると余計にそう感じる。
まぁ、今年のバレンタインはそんななまえさんと過ごせるわけで。いや、別に約束とかしてるわけじゃねーけど。
……そして、待ちに待った放課後。なまえさんの口から衝撃の発言が飛び出した。
『左近くんさ、今日私の家来てくれない?』
『ハイ!…………えっ、家?』
なまえさんの提案に、勢いだけで返事をしてしまった。
『家ぇえ!!?』
状況は全然理解できてない。え?家?なんで?
……でも気づいたら俺はなまえさんの部屋にいて。道中何を話しながら来たんだろうとか、もうほとんど覚えてないし。
途中、なまえさんに突然手を繋がれてヤバかったのは覚えてる。
『……左近くん、あったかいねえ』
そう呟いたなまえさんの手はちょっと冷たかった。俺カイロ代わりにされた?
……あー、でもいいやカイロ代わりでも。なまえさんが嬉しそうだったからいい。
てか俺、マジでなまえさんの部屋にいるんだよな?てかなまえさんて一人暮らしだったよ……な?え、密室に2人っきりってこと?俺と?
……なまえさんが?
なまえさんわかってんのかな?俺を部屋に呼ぶってことはねぇ、なまえさん。さっきみたいに手を繋ぐだけじゃ済まないし、俺はなまえさんとそういうことしたいって思ってるわけで。
だから、強引に迫るかもしれねーし?いや、無理強いなんて本当はしたくねーけど!やろうと思えば、キスとか、押し倒すとか、もっとすごいことだってできるわけで。いつもなまえさんに押され気味な俺だけど、今日ばっかりは……
……今ちょっとヤバい想像しかけた。でも俺も健全な男子高校生だし?そういうこと想像すんのも仕方ないっしょ!?
ってなわけでなまえさん、今日はそれなりの覚悟してください、ね?
*
「ね、左近くん……」
……数十分前までは、『それなりの覚悟してくださいね?』とか思ってました、ハイ。
なんやかんやでなまえさんといい雰囲気になった……のはいい。でも、俺は完全になまえさんにリードされてる。
「ん……」
うわ、なんでこの人こんな顔できるわけ?マジでおかしくなるってこんなの……!
「ん、かわいい……」
まただ、また可愛いって言われた。
なまえさんはいつもそうだ。キスの後に必ずこう言う。
なまえさんはずるい。すごくズルい。
こんな風にいつもなまえさんのペースに乗せられて、とにかく俺は翻弄されっぱなし。
ってかなまえさんホントずるい。
俺がなまえさんにベタ惚れなの知ってて、俺を煽るようなことしてくるっていうか!?
いや、毎日のように好き好き言ってたのは俺だから、そりゃベタ惚れなのバレるだろって話だけど……。
『俺そんなに頼りないっすか?どこがだめっすか?』とかなんとか散々言って……なまえさんが折れてくれたっていうか。
……え、なんか俺カッコ悪くね?
今日だって本当はもっと、スマートに?カッコよく?なまえさんと……
い、いやまだこれから!これからっしょ!?
今日こそは俺がなまえさんを翻弄……で、できるのか?
あと、なまえさんのかわいい反応が見たい。むしろこっちがメイン。いつも余裕な感じななまえさんが照れてるとことか、見たい。
……俺が大胆な行動したら、いつもと違う反応とか見れちゃったりするわけ?
例えば俺がなまえさんを、押し倒す……とか?
*
『左近く、ん……っ』
俺に組み敷かれて、真っ赤になる(想像の中の)なまえさん。
うわ、これやばいかもなあ。
今は想像の中でしかなまえさんに対して強気になれない。べ、別にいいっしょ!?想像するくらい!
「左近くん」
「うわっ!?」
突然なまえさんに名前を呼ばれて、一気に現実に引き戻された。
あー、さっきまで俺が想像してたなまえさんもよかったけど、やっぱ今目の前にいるなまえさんが最強。まじで最強。
「……左近くん?」
え、ちょ、近ッ!?な、何また俺なまえさんからキスされ……
「っ!?」
……なまえさんの手が、俺のシャツの中に侵入しようとしていた。
「なっ、いや、それはだめっしょ!?」
「えー」
「えー、じゃないっすよ!」
この人は平気でこういうことしてくるから……!!
「左近くん何か考え事してるみたいだったから、いたずらしちゃおうかと思って。何考えてたの?」
何考えてたかって?そんなの、なまえさんを押し倒したら、どんな反応してくれんのかなって……
「え、えぇ〜っと……あは、は」
なんて、言えるわけない、か。
「……やましいこと考えてたんだ?」
「な、いやっ!え!?」
「ええ〜?わかりやすいなあ……」
微笑むなまえさん。しまった。やらしーこと考えてたのバレバレ!?
「す、すんませんっ!ほんっと!いやでも、そんな変なこと考えてないです!すんません!」
「ふふ、いいよ。左近くんのそういうとこ好きだから」
そういうとこ?
……どういうとこ!?
「そういう素直なところ。全部態度に出ちゃうから」
「う……」
にこにこ笑うなまえさん。ああもうだめだ、俺この人には敵わない。
「まあ、そんな素直な左近くんが好きだということで、その。プレゼントがあるんだけど」
え?プ、プレゼント?なんだこの急展開。
「ハッピーバレンタインということで」
なまえさんが持っているのはなんかすげーキレイな箱___ってコレ、お高いチョコじゃん!?
そうか、今日バレンタインだったわ。あんなに浮かれてたのに、なまえさんのせいで全部吹っ飛んでた。
「よいしょ、っと……あれ、これどこから開けるんだろう?あ、こうか」
「ってちょ、え!?ここで開けちゃう!?てかなまえさんが開けんの!?」
なまえさんによって箱の包装をべりべり剥がされてしまった上に、箱の蓋まで開けられてしまった。
……あ、2人で今食べようってことか。
「___どうせならなまえさんに食べさせて欲しいんすけど!だめ?」
「はいはい」
「スマートに、カッコよく」という目標は何処へやら。あー!もうかっこよくなくていい。今日はもう、思う存分に甘えてやる!
……俺、この人に甘やかされるのなんだかんだで好きなんだよなあ。他のヤツにはこんなとこ絶対見せられねーけど。
小さなハート型のチョコを摘んだなまえさんの手は俺の目の前。
「はい、あーん」
うわ、ヤッバ……なまえさんが俺にあーんしてくれてる……?
夢?夢だろこれ。いや夢じゃない!現実!?聞いてるかちょっと前の俺!なまえさんに当たっては砕けて、復活してまた砕けてを繰り返していたあの頃の俺!なまえさんが、あのなまえさんが俺に向かって、
「ちょ、チョコ溶けてきちゃってるんだけど……」
「わーっ!!!すんません!食べるっ!今すぐ食べるんでっ」
……ん、ウマい。ほどよい甘さ。
「ん、よかった。美味しい……」
なまえさんも指についてしまったチョコを舐める。ちょ、なんかすごいいけないもの見てるカンジなんですけど!?
学校では絶対見られないヤツだわ。なにこの色気っ!?
さっき俺が喜びを噛み締めている間、チョコはずっとなまえさんの指に摘まれていたわけで。そりゃあ当然チョコはなまえさんの体温によって溶かされる。
____なまえさんの体温で溶けたチョコ、ねえ。俺も似たようなモンか。なんつーか、なまえさんにでろっでろに溶かされてる感じする。
俺も周りから見たらこんな風に見えちゃってんの?
「……な、なに?いくらなんでも見過ぎだって」
「えっ?」
やべ。無意識になまえさんのことぼーっと見てた。
「お行儀悪いのはわかってるよ、指についたチョコ舐めるなんて……」
「いやそうじゃなくて!なんかその……秘密っス。よからぬこと考えてたんで」
いや何言ってんだ俺。ヤバいこと考えてましたって言ってるようなモンじゃん!?
「そっか、よからぬことかぁ。まあ私も左近くんのこと言えないや」
「え、なまえさんも?」
「……じゃなきゃ、部屋になんてわざわざ呼ばないよ」
珍しく目を伏せるなまえさん。え、照れてるってこと?
「……なんか、最初勢いだけでキスとかいっぱいしちゃったから。今になって恥ずかしくなってきた」
「え、なまえさん可愛い……」
なにこの人。なんか急に可愛い。いやなまえさんはいつも可愛いけど。なんていうか、いつも余裕で、大人っぽいから……うまく言えねーけど、今のは反応がかわいいっていうか。
「左近くんもかわいかったよ」
「む、何すかそれ〜!」
「え、かわいいよね?」
「いや俺に聞く!?」
いや、まあ可愛がられてるのは嬉しい……けど。
「だからいっぱいキスしちゃった。ごめんね」
えへへ、と笑いながら少し照れてるなまえさん。なんか、ちょっとヤバいかも。マジでかわいい。
「じゃあ俺も、なまえさんがかわいいからなまえさんに同じことします」
これくらい許されるっしょ?やられたら、やり返すってことで。
「……さっき私がやったみたいに、シャツの中に手も入れる?」
「そ、れは……していいんスか」
「変な声でたら、ごめん。」
いや絶対変じゃないし可愛いし。むしろ俺がヘンになっちゃう可能性高いんスけど!?
「……あ〜〜、もうなにそれずるくねえ?なまえさんなんでそんな可愛い顔でカワイイこと言うんすかあ」
「なんで左近くんはそうやって全部口に出しちゃうかなあ」
「なまえさんがカワイイから」
「そ、そっか」
珍しくなまえさんが照れてる。なまえさん、もしかして『カワイイ』って言われるの弱い?
なまえさんの頬に触れると、なまえさんの顔が少し熱くなるのが分かった。
うわ、早くキスしたい。キスだけじゃない、それ以上のことだって……
「いっぱいしましょーね?」
面食らったような顔をしたなまえさんにキスをした。
……がっつきすぎて、ちょっと怒られたけど。
でも、満更でもないカンジだったように見えたのは、俺の気のせいじゃないって信じたい。
*
なまえさんと付き合い始めて、初めてのバレンタイン。
かなりイイ時間を過ごしたと思うけど、唯一心残りがあるとしたら。
……チョコの口移し、やってみてもよかったかなー、なんて。
ちょっと変態っぽいこと言ってんのはわかってる。あー、あの時はチョコ食べ終わってから気づいたんだよなあ……俺のバカ。ほんとバカ。
近いうちに例のコンビニに寄って、あの発注ミスしたであろう大量のチョコを何個か買ってみますか。バレンタイン終わってさらに値下げしてそうだし?
なんか俺、チョコをなまえさんとイチャつくための免罪符にしてね?
……まあいっか。商品買うならコンビニの人も喜ぶっしょ、多分。
実際あれから、チョコ見るたびにあの時のなまえさんを思い出してヤバい。柔らかかったとか可愛かったとか、いい匂いだったとか。チョコの味ぜんぶ吹き飛ばす勢いで思い出す。
なまえさんも俺と同じだったらいいな、てかチョコなんて見なくても俺のことだけ考えててほしい、ってのは流石にワガママすぎ?
____後日、なまえさんとコンビニの積み上げられたチョコの前で鉢合わせたのは、また別の話。
ちょっと前から街の広告がバレンタインに侵食されてきてんなー、と思う。
下校の時によく寄るコンビニでも、入店と同時にチョコレートの山がこれでもかってくらい主張してくる。
いや、正直アレは発注ミスだと思うけど。発注ミスした店員はきっと震え上がってんだろうけど……俺はそこを通る度に浮かれまくっていた。
____ってのも、今年は俺、所謂「彼女持ち」ってヤツなんで!?バレンタインを理由に、イチャイチャしまくりなカンジ(になる予定)だし!?
……なまえさん。最近やっと俺の彼女になってくれたひと。歳が一個上なだけなのに、俺よりずっと大人っぽい。なまえさんが半兵衛様や刑部さんとかと並んでると余計にそう感じる。
まぁ、今年のバレンタインはそんななまえさんと過ごせるわけで。いや、別に約束とかしてるわけじゃねーけど。
……そして、待ちに待った放課後。なまえさんの口から衝撃の発言が飛び出した。
『左近くんさ、今日私の家来てくれない?』
『ハイ!…………えっ、家?』
なまえさんの提案に、勢いだけで返事をしてしまった。
『家ぇえ!!?』
状況は全然理解できてない。え?家?なんで?
……でも気づいたら俺はなまえさんの部屋にいて。道中何を話しながら来たんだろうとか、もうほとんど覚えてないし。
途中、なまえさんに突然手を繋がれてヤバかったのは覚えてる。
『……左近くん、あったかいねえ』
そう呟いたなまえさんの手はちょっと冷たかった。俺カイロ代わりにされた?
……あー、でもいいやカイロ代わりでも。なまえさんが嬉しそうだったからいい。
てか俺、マジでなまえさんの部屋にいるんだよな?てかなまえさんて一人暮らしだったよ……な?え、密室に2人っきりってこと?俺と?
……なまえさんが?
なまえさんわかってんのかな?俺を部屋に呼ぶってことはねぇ、なまえさん。さっきみたいに手を繋ぐだけじゃ済まないし、俺はなまえさんとそういうことしたいって思ってるわけで。
だから、強引に迫るかもしれねーし?いや、無理強いなんて本当はしたくねーけど!やろうと思えば、キスとか、押し倒すとか、もっとすごいことだってできるわけで。いつもなまえさんに押され気味な俺だけど、今日ばっかりは……
……今ちょっとヤバい想像しかけた。でも俺も健全な男子高校生だし?そういうこと想像すんのも仕方ないっしょ!?
ってなわけでなまえさん、今日はそれなりの覚悟してください、ね?
*
「ね、左近くん……」
……数十分前までは、『それなりの覚悟してくださいね?』とか思ってました、ハイ。
なんやかんやでなまえさんといい雰囲気になった……のはいい。でも、俺は完全になまえさんにリードされてる。
「ん……」
うわ、なんでこの人こんな顔できるわけ?マジでおかしくなるってこんなの……!
「ん、かわいい……」
まただ、また可愛いって言われた。
なまえさんはいつもそうだ。キスの後に必ずこう言う。
なまえさんはずるい。すごくズルい。
こんな風にいつもなまえさんのペースに乗せられて、とにかく俺は翻弄されっぱなし。
ってかなまえさんホントずるい。
俺がなまえさんにベタ惚れなの知ってて、俺を煽るようなことしてくるっていうか!?
いや、毎日のように好き好き言ってたのは俺だから、そりゃベタ惚れなのバレるだろって話だけど……。
『俺そんなに頼りないっすか?どこがだめっすか?』とかなんとか散々言って……なまえさんが折れてくれたっていうか。
……え、なんか俺カッコ悪くね?
今日だって本当はもっと、スマートに?カッコよく?なまえさんと……
い、いやまだこれから!これからっしょ!?
今日こそは俺がなまえさんを翻弄……で、できるのか?
あと、なまえさんのかわいい反応が見たい。むしろこっちがメイン。いつも余裕な感じななまえさんが照れてるとことか、見たい。
……俺が大胆な行動したら、いつもと違う反応とか見れちゃったりするわけ?
例えば俺がなまえさんを、押し倒す……とか?
*
『左近く、ん……っ』
俺に組み敷かれて、真っ赤になる(想像の中の)なまえさん。
うわ、これやばいかもなあ。
今は想像の中でしかなまえさんに対して強気になれない。べ、別にいいっしょ!?想像するくらい!
「左近くん」
「うわっ!?」
突然なまえさんに名前を呼ばれて、一気に現実に引き戻された。
あー、さっきまで俺が想像してたなまえさんもよかったけど、やっぱ今目の前にいるなまえさんが最強。まじで最強。
「……左近くん?」
え、ちょ、近ッ!?な、何また俺なまえさんからキスされ……
「っ!?」
……なまえさんの手が、俺のシャツの中に侵入しようとしていた。
「なっ、いや、それはだめっしょ!?」
「えー」
「えー、じゃないっすよ!」
この人は平気でこういうことしてくるから……!!
「左近くん何か考え事してるみたいだったから、いたずらしちゃおうかと思って。何考えてたの?」
何考えてたかって?そんなの、なまえさんを押し倒したら、どんな反応してくれんのかなって……
「え、えぇ〜っと……あは、は」
なんて、言えるわけない、か。
「……やましいこと考えてたんだ?」
「な、いやっ!え!?」
「ええ〜?わかりやすいなあ……」
微笑むなまえさん。しまった。やらしーこと考えてたのバレバレ!?
「す、すんませんっ!ほんっと!いやでも、そんな変なこと考えてないです!すんません!」
「ふふ、いいよ。左近くんのそういうとこ好きだから」
そういうとこ?
……どういうとこ!?
「そういう素直なところ。全部態度に出ちゃうから」
「う……」
にこにこ笑うなまえさん。ああもうだめだ、俺この人には敵わない。
「まあ、そんな素直な左近くんが好きだということで、その。プレゼントがあるんだけど」
え?プ、プレゼント?なんだこの急展開。
「ハッピーバレンタインということで」
なまえさんが持っているのはなんかすげーキレイな箱___ってコレ、お高いチョコじゃん!?
そうか、今日バレンタインだったわ。あんなに浮かれてたのに、なまえさんのせいで全部吹っ飛んでた。
「よいしょ、っと……あれ、これどこから開けるんだろう?あ、こうか」
「ってちょ、え!?ここで開けちゃう!?てかなまえさんが開けんの!?」
なまえさんによって箱の包装をべりべり剥がされてしまった上に、箱の蓋まで開けられてしまった。
……あ、2人で今食べようってことか。
「___どうせならなまえさんに食べさせて欲しいんすけど!だめ?」
「はいはい」
「スマートに、カッコよく」という目標は何処へやら。あー!もうかっこよくなくていい。今日はもう、思う存分に甘えてやる!
……俺、この人に甘やかされるのなんだかんだで好きなんだよなあ。他のヤツにはこんなとこ絶対見せられねーけど。
小さなハート型のチョコを摘んだなまえさんの手は俺の目の前。
「はい、あーん」
うわ、ヤッバ……なまえさんが俺にあーんしてくれてる……?
夢?夢だろこれ。いや夢じゃない!現実!?聞いてるかちょっと前の俺!なまえさんに当たっては砕けて、復活してまた砕けてを繰り返していたあの頃の俺!なまえさんが、あのなまえさんが俺に向かって、
「ちょ、チョコ溶けてきちゃってるんだけど……」
「わーっ!!!すんません!食べるっ!今すぐ食べるんでっ」
……ん、ウマい。ほどよい甘さ。
「ん、よかった。美味しい……」
なまえさんも指についてしまったチョコを舐める。ちょ、なんかすごいいけないもの見てるカンジなんですけど!?
学校では絶対見られないヤツだわ。なにこの色気っ!?
さっき俺が喜びを噛み締めている間、チョコはずっとなまえさんの指に摘まれていたわけで。そりゃあ当然チョコはなまえさんの体温によって溶かされる。
____なまえさんの体温で溶けたチョコ、ねえ。俺も似たようなモンか。なんつーか、なまえさんにでろっでろに溶かされてる感じする。
俺も周りから見たらこんな風に見えちゃってんの?
「……な、なに?いくらなんでも見過ぎだって」
「えっ?」
やべ。無意識になまえさんのことぼーっと見てた。
「お行儀悪いのはわかってるよ、指についたチョコ舐めるなんて……」
「いやそうじゃなくて!なんかその……秘密っス。よからぬこと考えてたんで」
いや何言ってんだ俺。ヤバいこと考えてましたって言ってるようなモンじゃん!?
「そっか、よからぬことかぁ。まあ私も左近くんのこと言えないや」
「え、なまえさんも?」
「……じゃなきゃ、部屋になんてわざわざ呼ばないよ」
珍しく目を伏せるなまえさん。え、照れてるってこと?
「……なんか、最初勢いだけでキスとかいっぱいしちゃったから。今になって恥ずかしくなってきた」
「え、なまえさん可愛い……」
なにこの人。なんか急に可愛い。いやなまえさんはいつも可愛いけど。なんていうか、いつも余裕で、大人っぽいから……うまく言えねーけど、今のは反応がかわいいっていうか。
「左近くんもかわいかったよ」
「む、何すかそれ〜!」
「え、かわいいよね?」
「いや俺に聞く!?」
いや、まあ可愛がられてるのは嬉しい……けど。
「だからいっぱいキスしちゃった。ごめんね」
えへへ、と笑いながら少し照れてるなまえさん。なんか、ちょっとヤバいかも。マジでかわいい。
「じゃあ俺も、なまえさんがかわいいからなまえさんに同じことします」
これくらい許されるっしょ?やられたら、やり返すってことで。
「……さっき私がやったみたいに、シャツの中に手も入れる?」
「そ、れは……していいんスか」
「変な声でたら、ごめん。」
いや絶対変じゃないし可愛いし。むしろ俺がヘンになっちゃう可能性高いんスけど!?
「……あ〜〜、もうなにそれずるくねえ?なまえさんなんでそんな可愛い顔でカワイイこと言うんすかあ」
「なんで左近くんはそうやって全部口に出しちゃうかなあ」
「なまえさんがカワイイから」
「そ、そっか」
珍しくなまえさんが照れてる。なまえさん、もしかして『カワイイ』って言われるの弱い?
なまえさんの頬に触れると、なまえさんの顔が少し熱くなるのが分かった。
うわ、早くキスしたい。キスだけじゃない、それ以上のことだって……
「いっぱいしましょーね?」
面食らったような顔をしたなまえさんにキスをした。
……がっつきすぎて、ちょっと怒られたけど。
でも、満更でもないカンジだったように見えたのは、俺の気のせいじゃないって信じたい。
*
なまえさんと付き合い始めて、初めてのバレンタイン。
かなりイイ時間を過ごしたと思うけど、唯一心残りがあるとしたら。
……チョコの口移し、やってみてもよかったかなー、なんて。
ちょっと変態っぽいこと言ってんのはわかってる。あー、あの時はチョコ食べ終わってから気づいたんだよなあ……俺のバカ。ほんとバカ。
近いうちに例のコンビニに寄って、あの発注ミスしたであろう大量のチョコを何個か買ってみますか。バレンタイン終わってさらに値下げしてそうだし?
なんか俺、チョコをなまえさんとイチャつくための免罪符にしてね?
……まあいっか。商品買うならコンビニの人も喜ぶっしょ、多分。
実際あれから、チョコ見るたびにあの時のなまえさんを思い出してヤバい。柔らかかったとか可愛かったとか、いい匂いだったとか。チョコの味ぜんぶ吹き飛ばす勢いで思い出す。
なまえさんも俺と同じだったらいいな、てかチョコなんて見なくても俺のことだけ考えててほしい、ってのは流石にワガママすぎ?
____後日、なまえさんとコンビニの積み上げられたチョコの前で鉢合わせたのは、また別の話。
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