片倉小十郎
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「なまえ、今猿飛から連絡があったんだが……買い出しに行った政宗様たちが、この大雪でしばらくこっちに戻って来れないらしい」
「えっ!?」
本日は大晦日。なんやかんやあって政宗宅でパーティー的なことをすることになったんだけど、この辺り一帯は突然の大雪に見舞われてしまった。
そしてたった今、買い出しに行った政宗、幸村、佐助の3人が帰って来れないとの連絡があったらしく。
「でも買い出しって近所のスーパーに行ったんじゃなかったの?けっこう近くだし、歩いて来れそうだけど」
「それが、政宗様がどうしても隣町にある店に行きたいと言い出したらしくてな」
「あぁ……それは……」
なるほど、隣町までは行けたけど帰りの交通機関が……ってことね。
「ど、どうしよっか?他の準備は終わっちゃったし、私たち2人だ……け……」
……そうだよ、しばらく私たち2人きりってこと!?
む、無理無理無理無理。
だって私、小十郎さんのこと好きだし!?
いや、なんていうか!2人っきりってことですか!?
2人になれること自体は願ったり、叶ったりというか。でも突然こんな状況になっちゃって……心の準備とかしてないし!!
こういう時って何話せばいいの!?小十郎さん、だいたいいつも政宗と一緒だし。正直いつも政宗がベラベラ喋るから(ごめん政宗。でも政宗本当にすごく喋るから……)私たちはほぼ政宗の聞き役だし。
何気に私と小十郎さん、ふたりでお話をした機会って全然ないのでは!?
「しかしとんだ災難だな。なまえも俺と2人なんて退屈だろう」
「へっ!?いや、私はむしろ嬉しいですけど!!?」
……しまった。考え事をしていたらめちゃくちゃ正直に答えてしまった。
「………そ、そうか」
思いっきり顔を逸らされた。正直かなりショックです。
「あ、いや〜その!だ、だって……」
だってそりゃあ、嬉しいですよ。好きな人と2人っきりなんですから。
「あぁ、そういえば最近こうして2人で話す機会というのはあまりなかったな」
「ふふ、そうですねえ。いつも政宗がいますから」
「その……なまえは何が好きだ?」
「へ?」
私は小十郎さんが好きですけど。
……とは流石に言えず。
いや、それにしても唐突すぎませんか小十郎さん。思春期の娘と何話したらいいかわからないお父さんみたいになっちゃってるよ。
「ふ、あはは……っ」
だ、だめだ面白い。小十郎さん、そんな真顔で言わなくても。
「……笑いすぎだ」
「ご、ごめんなさい……ふ、ふふっ」
*
【数日前____】
『ところでさ、いいかげんくっついたらどうなのよ』
『……なんだ急に』
『何ってなまえちゃん!おふたりさんさぁ、側から見てるとほんと……もどかしいのよ!』
『もどかしいとはなんだ』
『なんだ、って……あ〜!!もう、とにかく早くくっつけってこと!』
『知るか。それにお前に世話を焼かれる筋合いはない』
『ふーん……なまえちゃん可愛いしぃ?なまえちゃん狙ってる男、多いと思うけどなあ〜。誰か別の男に取られちゃってもいいわけ?』
『……やはり、なまえは他の男から見ても愛らしいと思うか?』
『うわっ、それもう好きって言ってるようなもんじゃん』
『今更隠す必要もないだろう』
『なんでそこで堂々とするかなあ!俺様の前で堂々とするんだったらとっととなまえちゃんに告白しろっての!……ていうかなんでクリスマスという告白の大チャンスを逃したワケ!?』
『……はあ、その日は』
『あ〜はいはいわかったなるほどね!俺様がどうにかしてお膳立てします〜!』
『まだ何も説明していないが』
『どーせ長くなるんでしょその話!?……よし、とにかく!決戦は大晦日ってことで』
*
【現在(12/31)・政宗宅___】
『ってことで俺様たち、しばらく戻らないからさっ!まぁこれを機に、なまえちゃんといい感じになればいいんじゃない?』
……何がお膳立てだアイツ。ただ大雪の交通障害に巻き込まれただけじゃねぇか。
「ふ、ふふ……あははっ」
しかもなまえには笑われた。
何が好きだ?……何を聞いてるんだ俺は。
「だ、だって小十郎さん、すごく神妙な面持ちっていうか、そんな顔だったから」
「悪かったな、ただでさえ怖え顔が神妙な面持ちになって」
こんなに笑うなまえを見たのは初めてかもしれない。
怖いやらなんやらと言われる俺の顔と違って、なまえが笑う顔は___。
いや、愛らしいとは思う。ただ……
いくらなんでも笑いすぎだろう。
*
さっきまでは何を話していいか分からなかったくらい緊張してたのに。
小十郎さんの謎の質問によって、笑いが止まらなくなってしまった。
「ご、ごめんなさ……ふふ、はっ」
小十郎さんがあんな質問を、あんな顔で、したってことは。私と同じように……意識してくれてる、なんてことは……ない、よなあ。
「なまえ」
「へ?」
いつの間にか小十郎さんがすごく近くにいる。うわ、かっこい……じゃなくて!なんでこんな近くに!?
私、今人生でいちばんどきどきしているんじゃないだろうか。だって、まるでこんなの、キス……してしまいそうな距離だから。
「なまえ……」
「え、なんです……」
なんですか、と言いかけたその時。小十郎さんの手が、私の頬に添えられた。
____え?
ほ、ほんとうにキスされるの?
小十郎さんと私はそこそこ身長差がある。私が小十郎さんを見上げるかたちになった。
小十郎さんと、目が合った。
でも、すぐに目を逸らしてしまった。
____小十郎さんの視線が熱を帯びているような、そんな気がしたから。
「……え、と」
……また、何を言っていいのかわからなくなってしまった。
困りつつも再び小十郎さんを見ると、まっすぐ私を見ていた。
……こ、この状況、どうしたらいいんですか?
*
気づいたら俺は、なまえの頬に手を添えていた。
何故かは分からない。笑うなまえを愛おしいと思ったのか、はたまた……いや、理由なんざどうでもいい。
「……え、と」
さっきまであんなに笑っていたなまえが、「どうしたらいいんですか?」とでも言いたげに、俺に助けを求めるような表情をしていて____。
「……フッ」
思わず笑ってしまった。
「ちょ、え?今笑いました!?」
「い、いや……」
「笑いましたよねえ!?」
「ほう、誰かさんもさっきまで俺のことを散々笑っていたが」
「そ、それは〜……ごめんなさい」
「……お互い様だな」
「ですね……あ、あの、ところで小十郎さん」
「なんだ?」
「あの、手……」
「あぁ……すまん」
なまえの顔から手を離……そうとして、ある事に気づいた。
「顔、熱いな」
なまえの顔が熱いことと、なまえの顔が明らかに赤くなっていることに。
「そ、れは……」
「……なまえ?」
「ごめんなさいっ、その、キスされるのかなって……思って、どきどきしちゃって」
*
ああ、バカ正直に言ってしまった。
キスされると思いました、どきどきしちゃいました……って。
「どきどき?」
小十郎さんの口から「どきどき」なんて言葉が出てくるという事実。
正直めちゃくちゃ面白いけど、今は面白いとか思ってる場合じゃない!!
「ど、どきどきです。どきどきしたんです」
「それは……何故だ?」
何故だって……なんてことを聞いているんですか、小十郎さん。
あなたが好きだからですよ、って?
言えるわけないでしょ!?
「……なまえ」
「なんです……ん、」
_______私いま、小十郎さんに、
キス、された?
*
_______あぁ、やってしまった。色恋沙汰にそう詳しくない俺でも流石に分かる。こういうのは順序ってモンがあるだろ……!
「こっ、小十郎さん!!」
怒られるだろうか。いや、怒られるなんてものじゃないかもしれない、軽蔑されても仕方ない。
「なんか……ずるいです!」
そうか、ずる……
ど、どういうことだ?
「そんなこと、されたら……私、だ、だめですよお」
「だ、だめだったか」
「いやだめじゃないです!」
……どっちなんだ。
「だ、だって私初めてのキスだったのに!なんかスッと!一瞬で終わっちゃったから、あんまり覚えてないんですもん!」
「覚えてないならそれでいいだろう……というかずっと覚えられていても困るんだが」
「だって好きなひとからキスされたんですよ。ずっと覚えていたいじゃないですか……」
待て、今……
「好きな人?」
と、言ったのか?
*
「うっ………うわぁああああ……もうやだ……そこ聞き流してくださいよお」
困惑した勢いで、さらっととんでもないことを口走ってしまった。
本当に私、何言ってるんだろう……!
「聞き流せるわけないだろ……そもそも、俺から言うつもりだったんだ。順序を色々とすっ飛ばしちまったような気もするが」
「え?それはどういう……」
「お前が好きだ」
「……へ?」
「今日言おうと思っていたんだが……お前に先を越されてしまったんでな」
「えっ……ええっ!?」
____どういうこと?どういうことなの!?
今日言おうと思ってた?先を越された?
「俺はお前が好きだ。ちゃんとお前の目を見て言いたい。だから……」
心臓の音がうるさい。
……どうしよう、こんなのはじめてだ。
「顔を、上げてくれないか?」
小十郎さんの声が脳内に響く。
……すごくどきどきする。
「なまえ……」
名前を呼ばれただけなのに、なんでこんなにどきどきするんだろう。
____小十郎さんとの距離が近い。
今背伸びをしたら、小十郎さんに……。
背伸びをして、小十郎さんにさらに顔を近づける。
「……ん、」
……あ、ちょっと唇からずれた。こういうの、キス下手って思われるかな。
「…………さっき、そっちからキス、されたので。その、仕返しです」
ちょっとムキになってしまった。だって、自分からキスしただけでも恥ずかしいのに、唇からずれるって何!?
「お前は、本当に……」
く、くそう。小十郎さんちょっと笑ってるよね!?なんか悔しい。
小十郎さんは私の手を取って、自身の口元に持ってきた。
私の指が、小十郎さんの唇に触れる。
「今度はちゃんと、ここにしてくれるか?」
「……へぁ」
うう、完全にやられてしまった。完全にやられてしまって変な声が出た。
____こんな小十郎さん、知らない……!
小十郎さんって、こんなひとだったっけ!?
こんなに色気が溢れる感じだったっけ!?
「なまえ」
あぁなんかもうだめだ。もう小十郎さんとまともに目を合わせることができない。
っていうか、小十郎さんをまともに見れない!
「だ、だめですほんと、どうにかなっちゃいそうで」
「……さっきのなまえの仕返しで、俺はどうにかなりそうだったんだが」
「……唇からずれちゃいましたけど」
「あぁ、なまえらしくていいと思った」
むっ。なんか余裕だなあ。
なんか……癪!
「じゃあちゃんと唇にしたら、どうにかなってくれるんですか?」
なんか、変に強気になってしまった。
だって私ばっかりどきどきしてるような気がするから……。
今度はちゃんと狙いを定めて……狙いを定めるっていうのもなんか変な感じだけど。
_______今度はちゃんとキスをした。強気に出たけど、相変わらず心臓はうるさい。
「あぁ、これはどうにかなるな……」
さっきと比べるとちょっと余裕がなさそうな小十郎さん。
ふふん、どうにかなっちゃいましたか?
……と言おうとした矢先。
私は小十郎さんに深く口付けをされて、何も言えなくなってしまった。
……外の寒さを忘れてしまうほどに顔が火照る。
きっと来年の大晦日は、今日のことを思い出して悶えるんだろうな。
*
_______なんて、思っていたけれど。
来年云々以前に、この時の私たちは佐助たちが買い出しに行っていたことをそれはもう盛大に忘れていた。
甘いような熱いような、そんな空気が部屋に充満しようとしていたその時、小十郎さんの携帯から着信音がした。
……佐助からだった。
(メッセージ送っても長いこと既読つかないし?な〜んか俺様が今電話したことによってすっっごく甘〜〜い空気を壊してしまった気がするけど?流石に玄関の鍵開けてもらいたいし?)
(すまん猿飛……!)
「えっ!?」
本日は大晦日。なんやかんやあって政宗宅でパーティー的なことをすることになったんだけど、この辺り一帯は突然の大雪に見舞われてしまった。
そしてたった今、買い出しに行った政宗、幸村、佐助の3人が帰って来れないとの連絡があったらしく。
「でも買い出しって近所のスーパーに行ったんじゃなかったの?けっこう近くだし、歩いて来れそうだけど」
「それが、政宗様がどうしても隣町にある店に行きたいと言い出したらしくてな」
「あぁ……それは……」
なるほど、隣町までは行けたけど帰りの交通機関が……ってことね。
「ど、どうしよっか?他の準備は終わっちゃったし、私たち2人だ……け……」
……そうだよ、しばらく私たち2人きりってこと!?
む、無理無理無理無理。
だって私、小十郎さんのこと好きだし!?
いや、なんていうか!2人っきりってことですか!?
2人になれること自体は願ったり、叶ったりというか。でも突然こんな状況になっちゃって……心の準備とかしてないし!!
こういう時って何話せばいいの!?小十郎さん、だいたいいつも政宗と一緒だし。正直いつも政宗がベラベラ喋るから(ごめん政宗。でも政宗本当にすごく喋るから……)私たちはほぼ政宗の聞き役だし。
何気に私と小十郎さん、ふたりでお話をした機会って全然ないのでは!?
「しかしとんだ災難だな。なまえも俺と2人なんて退屈だろう」
「へっ!?いや、私はむしろ嬉しいですけど!!?」
……しまった。考え事をしていたらめちゃくちゃ正直に答えてしまった。
「………そ、そうか」
思いっきり顔を逸らされた。正直かなりショックです。
「あ、いや〜その!だ、だって……」
だってそりゃあ、嬉しいですよ。好きな人と2人っきりなんですから。
「あぁ、そういえば最近こうして2人で話す機会というのはあまりなかったな」
「ふふ、そうですねえ。いつも政宗がいますから」
「その……なまえは何が好きだ?」
「へ?」
私は小十郎さんが好きですけど。
……とは流石に言えず。
いや、それにしても唐突すぎませんか小十郎さん。思春期の娘と何話したらいいかわからないお父さんみたいになっちゃってるよ。
「ふ、あはは……っ」
だ、だめだ面白い。小十郎さん、そんな真顔で言わなくても。
「……笑いすぎだ」
「ご、ごめんなさい……ふ、ふふっ」
*
【数日前____】
『ところでさ、いいかげんくっついたらどうなのよ』
『……なんだ急に』
『何ってなまえちゃん!おふたりさんさぁ、側から見てるとほんと……もどかしいのよ!』
『もどかしいとはなんだ』
『なんだ、って……あ〜!!もう、とにかく早くくっつけってこと!』
『知るか。それにお前に世話を焼かれる筋合いはない』
『ふーん……なまえちゃん可愛いしぃ?なまえちゃん狙ってる男、多いと思うけどなあ〜。誰か別の男に取られちゃってもいいわけ?』
『……やはり、なまえは他の男から見ても愛らしいと思うか?』
『うわっ、それもう好きって言ってるようなもんじゃん』
『今更隠す必要もないだろう』
『なんでそこで堂々とするかなあ!俺様の前で堂々とするんだったらとっととなまえちゃんに告白しろっての!……ていうかなんでクリスマスという告白の大チャンスを逃したワケ!?』
『……はあ、その日は』
『あ〜はいはいわかったなるほどね!俺様がどうにかしてお膳立てします〜!』
『まだ何も説明していないが』
『どーせ長くなるんでしょその話!?……よし、とにかく!決戦は大晦日ってことで』
*
【現在(12/31)・政宗宅___】
『ってことで俺様たち、しばらく戻らないからさっ!まぁこれを機に、なまえちゃんといい感じになればいいんじゃない?』
……何がお膳立てだアイツ。ただ大雪の交通障害に巻き込まれただけじゃねぇか。
「ふ、ふふ……あははっ」
しかもなまえには笑われた。
何が好きだ?……何を聞いてるんだ俺は。
「だ、だって小十郎さん、すごく神妙な面持ちっていうか、そんな顔だったから」
「悪かったな、ただでさえ怖え顔が神妙な面持ちになって」
こんなに笑うなまえを見たのは初めてかもしれない。
怖いやらなんやらと言われる俺の顔と違って、なまえが笑う顔は___。
いや、愛らしいとは思う。ただ……
いくらなんでも笑いすぎだろう。
*
さっきまでは何を話していいか分からなかったくらい緊張してたのに。
小十郎さんの謎の質問によって、笑いが止まらなくなってしまった。
「ご、ごめんなさ……ふふ、はっ」
小十郎さんがあんな質問を、あんな顔で、したってことは。私と同じように……意識してくれてる、なんてことは……ない、よなあ。
「なまえ」
「へ?」
いつの間にか小十郎さんがすごく近くにいる。うわ、かっこい……じゃなくて!なんでこんな近くに!?
私、今人生でいちばんどきどきしているんじゃないだろうか。だって、まるでこんなの、キス……してしまいそうな距離だから。
「なまえ……」
「え、なんです……」
なんですか、と言いかけたその時。小十郎さんの手が、私の頬に添えられた。
____え?
ほ、ほんとうにキスされるの?
小十郎さんと私はそこそこ身長差がある。私が小十郎さんを見上げるかたちになった。
小十郎さんと、目が合った。
でも、すぐに目を逸らしてしまった。
____小十郎さんの視線が熱を帯びているような、そんな気がしたから。
「……え、と」
……また、何を言っていいのかわからなくなってしまった。
困りつつも再び小十郎さんを見ると、まっすぐ私を見ていた。
……こ、この状況、どうしたらいいんですか?
*
気づいたら俺は、なまえの頬に手を添えていた。
何故かは分からない。笑うなまえを愛おしいと思ったのか、はたまた……いや、理由なんざどうでもいい。
「……え、と」
さっきまであんなに笑っていたなまえが、「どうしたらいいんですか?」とでも言いたげに、俺に助けを求めるような表情をしていて____。
「……フッ」
思わず笑ってしまった。
「ちょ、え?今笑いました!?」
「い、いや……」
「笑いましたよねえ!?」
「ほう、誰かさんもさっきまで俺のことを散々笑っていたが」
「そ、それは〜……ごめんなさい」
「……お互い様だな」
「ですね……あ、あの、ところで小十郎さん」
「なんだ?」
「あの、手……」
「あぁ……すまん」
なまえの顔から手を離……そうとして、ある事に気づいた。
「顔、熱いな」
なまえの顔が熱いことと、なまえの顔が明らかに赤くなっていることに。
「そ、れは……」
「……なまえ?」
「ごめんなさいっ、その、キスされるのかなって……思って、どきどきしちゃって」
*
ああ、バカ正直に言ってしまった。
キスされると思いました、どきどきしちゃいました……って。
「どきどき?」
小十郎さんの口から「どきどき」なんて言葉が出てくるという事実。
正直めちゃくちゃ面白いけど、今は面白いとか思ってる場合じゃない!!
「ど、どきどきです。どきどきしたんです」
「それは……何故だ?」
何故だって……なんてことを聞いているんですか、小十郎さん。
あなたが好きだからですよ、って?
言えるわけないでしょ!?
「……なまえ」
「なんです……ん、」
_______私いま、小十郎さんに、
キス、された?
*
_______あぁ、やってしまった。色恋沙汰にそう詳しくない俺でも流石に分かる。こういうのは順序ってモンがあるだろ……!
「こっ、小十郎さん!!」
怒られるだろうか。いや、怒られるなんてものじゃないかもしれない、軽蔑されても仕方ない。
「なんか……ずるいです!」
そうか、ずる……
ど、どういうことだ?
「そんなこと、されたら……私、だ、だめですよお」
「だ、だめだったか」
「いやだめじゃないです!」
……どっちなんだ。
「だ、だって私初めてのキスだったのに!なんかスッと!一瞬で終わっちゃったから、あんまり覚えてないんですもん!」
「覚えてないならそれでいいだろう……というかずっと覚えられていても困るんだが」
「だって好きなひとからキスされたんですよ。ずっと覚えていたいじゃないですか……」
待て、今……
「好きな人?」
と、言ったのか?
*
「うっ………うわぁああああ……もうやだ……そこ聞き流してくださいよお」
困惑した勢いで、さらっととんでもないことを口走ってしまった。
本当に私、何言ってるんだろう……!
「聞き流せるわけないだろ……そもそも、俺から言うつもりだったんだ。順序を色々とすっ飛ばしちまったような気もするが」
「え?それはどういう……」
「お前が好きだ」
「……へ?」
「今日言おうと思っていたんだが……お前に先を越されてしまったんでな」
「えっ……ええっ!?」
____どういうこと?どういうことなの!?
今日言おうと思ってた?先を越された?
「俺はお前が好きだ。ちゃんとお前の目を見て言いたい。だから……」
心臓の音がうるさい。
……どうしよう、こんなのはじめてだ。
「顔を、上げてくれないか?」
小十郎さんの声が脳内に響く。
……すごくどきどきする。
「なまえ……」
名前を呼ばれただけなのに、なんでこんなにどきどきするんだろう。
____小十郎さんとの距離が近い。
今背伸びをしたら、小十郎さんに……。
背伸びをして、小十郎さんにさらに顔を近づける。
「……ん、」
……あ、ちょっと唇からずれた。こういうの、キス下手って思われるかな。
「…………さっき、そっちからキス、されたので。その、仕返しです」
ちょっとムキになってしまった。だって、自分からキスしただけでも恥ずかしいのに、唇からずれるって何!?
「お前は、本当に……」
く、くそう。小十郎さんちょっと笑ってるよね!?なんか悔しい。
小十郎さんは私の手を取って、自身の口元に持ってきた。
私の指が、小十郎さんの唇に触れる。
「今度はちゃんと、ここにしてくれるか?」
「……へぁ」
うう、完全にやられてしまった。完全にやられてしまって変な声が出た。
____こんな小十郎さん、知らない……!
小十郎さんって、こんなひとだったっけ!?
こんなに色気が溢れる感じだったっけ!?
「なまえ」
あぁなんかもうだめだ。もう小十郎さんとまともに目を合わせることができない。
っていうか、小十郎さんをまともに見れない!
「だ、だめですほんと、どうにかなっちゃいそうで」
「……さっきのなまえの仕返しで、俺はどうにかなりそうだったんだが」
「……唇からずれちゃいましたけど」
「あぁ、なまえらしくていいと思った」
むっ。なんか余裕だなあ。
なんか……癪!
「じゃあちゃんと唇にしたら、どうにかなってくれるんですか?」
なんか、変に強気になってしまった。
だって私ばっかりどきどきしてるような気がするから……。
今度はちゃんと狙いを定めて……狙いを定めるっていうのもなんか変な感じだけど。
_______今度はちゃんとキスをした。強気に出たけど、相変わらず心臓はうるさい。
「あぁ、これはどうにかなるな……」
さっきと比べるとちょっと余裕がなさそうな小十郎さん。
ふふん、どうにかなっちゃいましたか?
……と言おうとした矢先。
私は小十郎さんに深く口付けをされて、何も言えなくなってしまった。
……外の寒さを忘れてしまうほどに顔が火照る。
きっと来年の大晦日は、今日のことを思い出して悶えるんだろうな。
*
_______なんて、思っていたけれど。
来年云々以前に、この時の私たちは佐助たちが買い出しに行っていたことをそれはもう盛大に忘れていた。
甘いような熱いような、そんな空気が部屋に充満しようとしていたその時、小十郎さんの携帯から着信音がした。
……佐助からだった。
(メッセージ送っても長いこと既読つかないし?な〜んか俺様が今電話したことによってすっっごく甘〜〜い空気を壊してしまった気がするけど?流石に玄関の鍵開けてもらいたいし?)
(すまん猿飛……!)
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