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『……普通科からプロデューサー科に転科されることになりました。九重アリスです。』
よろしくお願い致します。
そう挨拶して案内された席に座る。
御伽噺の魔女のような男から渡されたのは転入届だった。
おまけにメモが入っていた。
[君の日常評価からの結果プロデューサー科の転科を進めるよ。]
あの話をすれば来るであろうと、だから彼は私に話したんだ。
彼は絶対苦手だ。
クラスは3-Aだった。
全ての元凶と言いたくなる天祥院英智。
ふと目が会った。
[君は来ると思ってたよ。]
そう言ったような顔で笑いかけられたが、思いっきり顔を顰めてやった。
あれから私は2年のあんずちゃんと出会った。
初めは、普通科から来たということと、もう卒業手前の転科だったから変に警戒されてしまったので、プロデューサーとして1人で担当するのは難しく、しばらくはあんずちゃんと行動していた。
何故か天祥院英智が各ユニットに自分が転科を進めた話をしていたようで、なんとか受け入れられるようになった今日この頃。
(今日の担当ユニットは…)
確認のため席で手帳を開いていると
「わははははは! おはよう諸君! ぐぅてんもるげん☆」
隣のクラスから聞こえて来たのはレオの声だった。
会いに行きたいけど、あの日から変に考えてしまって行けない私は、授業と他のユニットのプロデュースに専念することにした。
「アリス先輩…お昼休み相談があるのですが、良いですか……?」
昇降口で私を見かけたあんずちゃんは何やら荷物が多かった。
『Knightsがデュエル?!え、こないだもライブしていたよね??』
「そうなんです……しかも、特殊なやつでジャッジメントというのをやるみたいなんですけど……」
『ジャッジメントって………』
目の前のあんずちゃんは突然レオに準備してくれと言われたらしく、目の前で疲れのあまりすっかり伸びてしまっている。
私は天祥院英智から以前に聞いていた。
今回はKnightsとレオが集めるジャッジメントをするためのユニット……Knightsが負けたら解散、Knightsが勝ったらレオがKnightsの言うことを聞くらしい。
『他のユニットはしばらくライブないから、手伝うよ。』
「本当ですか!!」
『うん。だけど……』
「だけど…?」
『月永レオが率いるユニットのプロデュースだけは出来ない』
「な、なんでですか?!」
『期間内はジャッジメントの全体的なことやKnightsのプロデュースサポートはするし、他のユニットもこの期間は私がやるから……お願い。』
我儘なのは分かるけど、私はレオの姿を見る勇気が出なかった。
「……理由は聞きませんが、アリス先輩が月永先輩と何かあるのは分かりました。でも……嫌いとかではないのなら、解決した方がいいと思います。」
『と、言われたんだけど……どうしたらいいと思う?』
瀬名くん。
放課後、教室にいた彼を捕まえ、相談した。
綺麗な顔の眉間に皺がよっている。
「はぁ…??なんで俺な訳??」
『いやぁ…同じクラスでKnightsなの君しかいないんだもん。』
あの日に居たのも
そう言うと瀬名くんは目を見開き、しばらく私の顔を見てから、天祥院が言ってたのはあんたのことだったんだ……ポツリと言った。
「今思えば、れおくんはたまにアリスの話をする時あった。[アリスは、公園でいつもおれの話を聞いてくれる月みたいなやつだ!]って、自分の話を横でずっと聞いてくれるそんなあんたと居る時間が楽しいって。」
『……私は、そんな存在じゃない……寧ろレオは私にとって太陽だったの。嫌な事あっても、レオと居る時間はいつも心が温かった。あの時間だけは私にとって大切だった。だけど………』
『私は、あの日までレオの様子がおかしいこと気づけなかった!あの時間だけでも…僅かな日でも、一緒に居たのにッ……』
「………俺は一緒に居たのにれおくんを助けられなかった。あんたは悪くない。」
涙が溢れる私の頭に瀬名くんはぽんぽんと手を置いた。
「ほら、アリスもジャッジメントするためにプロデュースしてるんでしょ?俺達はKnightsの王座に王様を戻すため、アリスはれおくんのためにわざわざ転科してきたんでしょ?しっかりプロデュースしてよね。」
そう言って瀬名くんはレッスンしに行った。
ジャッジメントまで数日……。
私は、レオに会えたらなんて話そう。
ジャッジメント当日
私はKnights側の裏方に居た。
衣装がギリギリになってしまったが、あとは朱桜くんの調整………。
ふと、レオの声が聞こえてくる。
「アリス先輩、始まりましたね…。」
『うん……。』
Knightsは元々いた瀬名くんと凛月くん、あの日以降に入った鳴上くんと1年の朱桜くん。
対してレオの集めた臨時ユニットはナイトキラーズ、まさにKnightsを潰すために集めれたメンバー…。
Ra*bitsのなずなくんに紅月の鬼龍くん、さらにあのfineの天祥院くん……。
ステージの上に居ない私でも心配のあまり緊張してしまうが今は手を動かさないと……。
初めは、ナイトキラーズからはなずなくんと鬼龍くん、Knightsからは瀬名くんと鳴上くん……。
凛月くんは、こちら側は学校から支給された曲に対してあちらはレオが即効で作れてしまうことと、やはり様々なパフォーマンスの幅があるのに対してある程度こちらは知られていること。
苦戦すると話しているという険しい表情の凛月くん。
だけどまだ手の内が明かされてない朱桜くんがある意味希望であると話していた。
次は天祥院君と凛月くん……。
[俺たちの屍越えて、未来を掴み取ってほししいな]
朱桜くんに最後を託し、ステージへと向かう。
絶望的なのに不思議と清々しい。これが青春と話す朱桜くんの表情は緊張がほぐれていた。
あんずちゃんにキザっぽいことを言えるくらいなら大丈夫であろうと笑っていると、朱桜くんはこちらを向いた。
「アリスお姉様にもしたいくらいですが、瀬名先輩から聞きました。」
「Leaderは必ず私が倒し、Knightsが勝利を掴みます。その時は、笑顔でLeaderと会ってください。」
『……うん、約束する。だから、朱桜くん…頑張ってね!』
「はい!」
あんずちゃんが、頑張ってね!と伝えると朱桜くんもステージへと向かった。
(これがラスト……)
私とあんずちゃんはステージを覗き込んだ。
互いに向き合って何かを話している。
「月永先輩は何だかんだ言いつつ、Knightsが大切で仕方がないんですね。」
『うん、彼がずっと守りたかった場所だからね。瀬名くんが言ってた通り、これは子供の喧嘩と一緒。素直じゃない子が相手の時は引っ張ってあげないと仲直り出来ないからね。』
「じゃあ、アリス先輩も月永先輩を引っ張ってあげないとですね!」
『え、いや、私は喧嘩してないよ!ただ、タイミングが擦れて……気まづい…だけ……というか…』
2人で話して、そろそろ始まるかな?と思っていると朱桜くんに何か言われたのか驚いたような反応をしたかと思えばレオが物凄い勢いでこちらを向いていた。
私もまさかこちらを向くとは思わなかったので目を見開く。
どうすればいいか分からず、声に出さず[がんばれ]と口を動かす言うと、笑ってくれた。
ジャッジメントが終わった。
大きい物は片付けて、細かい物は明日ということで解散した。
短い期間だったけど長かったなぁと1人歩く。
日は傾いてはいるが、まだまだ明るい空を見て私は公園へと足を動かす。
公園で遊んでた子供は帰ったのであろう。
部活帰りの学生や会社終わりの社会人がちらほら見えるそんな時間。
「アリス」
呼ばれた方へ振り向く。
そこに居たのは私がずっと会いたかったレオ。
「久しぶりだな!」
ずっと聞きたかった声に私は涙をこぼす。
『おかえりなさい、レオ』
私が泣き笑いしながらそう言うと彼も
「ただいま、アリス」
涙をこぼしながら笑っていた。
日が完全に暗くなるまで、今度は私が沢山話す。
今度は私が彼の太陽になれるように。
空いてしまった月日は長いかもしれないけど、今度はもっと近くに居れる。
この距離が、隣同士になるのは遠くも近い未来かもしれないけど、こんな終わりが始まるになる結末も
案外良いのかもしれない。
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