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「彼は壊れてしまったけど、君はどうするんだい?」
私は目の前のこの男が苦手だ。
周りから王子様だと言われている彼は、私からしたら御伽噺の魔女と変わらない。
王様に呪いをかけてしまったのだから。
私は夢ノ咲学院の普通科に通っている。
アイドル科とは離れてるし、関わることはないと思ってた。
周りの子はアイドルという響きに惹かれ、やたらキャーキャー騒ぐのだが、私にはそれが鬱陶しく感じていた。
ただ、それは今ではちょっと違う。
私の中でのアイドルという存在が変わるきっかけがあったのだから。
あれは本当に偶然だった。
いや、ある人は全て必然的なことだったとも言うのであろうか。
その日はただただボーッとしていた。
学校が終わり、放課後何をする訳でもなくだからと言ってすぐ帰りたいとは思わなかったから公園のベンチに腰掛ける。
押し潰されそうな毎日に嫌気がさす。
毎日毎日が同じ。
私は親が俳優の父とスポーツ管理栄養士の母という家庭で育った。
どちらかと同じような道に進まなくてはいけないわけでもないから、自分の道を進みたい。
そう過ごして来たが、一緒に生活していると嫌でも知識は増える。
やたら頼られたのは運動部だ。
前に同じクラスの野球部のマネージャーの子が悩んでいたので、少し案を出した。
それがいけなかった。
気づいたらほかの部まで来だして……。
朝、昼休み、放課後…捕まらないように帰るのに必死だった。
「ここに人がいるなんて珍しいな!」
後ろからの声に驚き、振り返った。
(ここまで来るなんて……。)
軽く顰めてしまったが、そこにいたのは同じ学科では見た事ない顔だった。
太陽の光で部分的に金色になるオレンジの髪
翡翠のような目
制服は見た事あるような……そう思っていると、黙っている私を見て、若干拗ねたような顔している。
「おーい、無視しなくてもいいだろー!」
『えっ、あー…ごめん。君のこと初めて見たからさ。つい…。』
「まぁ、おれもお前は初めて見たからいいんだけどさ。」
「お前、名前なんていうんだ?おれは月永レオ」
『私は、……アリス。そう、アリスって呼んでよ。さんとかちゃんとかいらない、名前で呼んでよ。』
名字は言いたく無かった。
私が名前で呼んでというと彼はおれも名前で呼んでくれと言った。
レオとはたまに公園で合うようになった。
放課後だけだったのが、夕方も。
こんな時間にもいるんだ。と言うと、彼は忙しくてさ〜。と言っていた。
互いに細かいことは聞かずに、今日はーとか明日はーとかそんな何気ない会話が好きだった。
そんな彼がある日私に言ったのは、
「おれはみんなが大好き、みんなと仲良く歌いたい」
だからおれは曲を考えるんだ。
そう笑っていた。
眩しい向日葵のような笑顔に私は惹かれた。
惹かれていたのに、彼が辛くなっているのを私は気づけなかった。
しばらくして彼は公園に来る頻度が減っていた。
会えたとしても若干クマもできてるようで、最近無理していることはないかと聞くと大丈夫だと返されてしまった。
大丈夫と聞けばそう聞けばそう返されてしまうだろう。
そう思って聞き方を変えたとしても、彼は大丈夫としか言ってくれなかった。
いつ来るかわからない。
それでも彼に会いたいから公園に行く。
今日は来ないのか。
そう思っていると、「やぁ。」と声をかけられた。
『誰?………その制服…レオと同じだ。』
「そうだよ。月永くんとは同級生なんだ。」
そう言って彼は、私に細めの封筒を差し出した。
何が入っているのか。
目の前彼に開けてみても良いかと聞くと良いよ。と言った。
『何これ……。』
「明日、これを見に来て欲しいんだ。」
中身はチケットだった。
”君の友達の月永くんも出るよ”
彼は、見に来てあげてね。
そう言って公園の入口に止められた高級車に乗って行った。
(レオが……)
行っても良いのだろうか?
少し……嫌、とてつもなく嫌な予感がする。
私にこれを渡した彼は見た時こそは”王子様”だと思っていた。
だけど、彼は呪いをかける魔女と変わらない。
思っていた。
思っていたけど、それが確信になるなんて
なって欲しくなかった。