マギ夢小説<紅炎寄り>
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「シンドリア王国に行ってこい」
早朝、紅炎の元を訪れたナマエは紅炎自らそう命令された。唐突で理由も伝えられず、ただ強引に準備された荷物を持たされてナマエは旅立つことになった。
(……突然のことで、困惑しかない)
だが、困惑した理由はそれだけではない。
紅炎は眉をしかめ、明らかに機嫌が悪そうだった。そういえば目の下に隈も見えたし、遅くまで仕事をしていたことは明らかだとナマエは思う。
(紅炎さま、ごはん食べたかな……ちゃんと眠れたのかな……)
ぼんやりと、そんなことが頭に浮かび、すぐに考えることをやめる。紅炎にはナマエの他に侍女が多くいるのだし、きっと彼女たちがちゃんと世話をしてくれるだろう。
むしろ今までと同じ生活に戻れるのだ。それに関していえば紅炎の為になるのだろう。ナマエがいなければ、余計なことをしなくて済むのだから。
「ナマエ」
「………」
「……ナマエ?」
「っ、あ!はい、なんでしょう?」
白龍の声が届き、ナマエは返事をする。白龍は少し首を傾けて、
「具合が悪いんですか?船酔いですか?」
「い、いえ!そういうわけじゃないんです!ただ、ええと、わたしはシンドリア王国で何をしたら良いんでしょうか?とかなんでわたしが行かなければいけないのかな?とかわからなくて……」
「ああ……それはシンドバッド王が望まれたのだと聞きましたが?」
「……王が?……望んだ?」
「はい。宴の後で、俺の留学条件としてそうおっしゃられた、と紅炎殿が」
「え?……紅炎さまも、知っていたのですか?」
聞いていない。何も理由なんて伝えられなかった。ただ心底不機嫌な表情で命令されたのだ。
シンドリア王国の王は、たしかシンドバッドさまと言うはずだが、けれどそれだけである。ナマエはその程度の認識しかないし、それは相手も同じはずだ。むしろ目に止める必要などないくらいなのだ、ただの侍女のナマエに。
(……なんだろう)
今まで困惑しかなかったナマエだが、不安を感じ始める。
(……シンドバッドさまは、どうしてわたしを呼んだのかな)
そんな疑問だけが頭の中を染める。
けれどそれだけだろうか。
だが、その時のナマエにはそれ以外の何かを理解できなかった。
初めて出会った(と思っている)ナマエは通された部屋で居心地悪そうに立ち尽くしていた。
「……豪華な部屋、ですね」
「気に入ってくれたかな?」
シンドバッドがにっこりと笑うとナマエは戸惑う様に苦笑する。きっと自分が何故この国に呼ばれたのかわかっていないのだろうと思い、シンドバッドは長椅子に座りながら「実は」と切り出した。
「煌帝国の宴の夜に、君を見かけてね」
「?……ええと?」
「宴が終わった後に君が舞い踊る様は、見事にオレの酔いを覚ますほどのものだったよ」
思い至ったナマエは少し恥ずかしそうに俯いてしまう。
「……見苦しいものを、お見せしました」
「いやいや、良い意味で言っているんだ。あれほどの踊りなら、ぜひ宴で見たかったものだよ。……まあ結果的に君を呼んでしまったけどな」
「……あの、わたしを呼んだ理由、とは?」
「君を口説きたかった」
「………はい?」
シンドバッドはずいっと顔を寄せる。さらにはナマエの小さな手を掴んで見つめた。
「君はとても美しい。あの歌う姿、踊りを見ればそれがわかる。……機会があればまた見せてくれるかな?」
数多の女を口説いてきたシンドバッドの声に、ナマエは震える。
「……あ、の」
「ん?」
ナマエは俯いていた顔をそっと上げる。
「……そろそろ、離れてくれないでしょうか……?」
ナマエの顔を見たシンドバッドは目を見開いた。その拍子に手を離すとナマエは走り去っていった。
「……シン?話は終わりましたか?」
「………」
「シン?」
ジャーファルの声にシンドバッドは深く息をつく。
「……参ったよ、ジャーファル。あの子はオレの予想外な反応をした」
「は?」
「煌帝国の皇子も、良い趣味をしている」
(離れてくれないでしょうか……?)
そう言った時のナマエの顔は頰を赤く染め、眉をひそめていた。それは、誘惑に揺らぐ女の艶やかさを表しているように。
無自覚に、シンドバッドを誘惑する表情だった。
(純粋な、可愛らしい少女だとだけ思っていたんだがな)
「ジャーファル」
「はい」
「彼女の世話はお前に任せる。……頼めるか?」
「仰せのままに」
シンドバッドは手で顔の熱を冷ます。
久しぶりに恋する乙女の心情を知った王に、ジャーファルは首を傾けた。
早朝、紅炎の元を訪れたナマエは紅炎自らそう命令された。唐突で理由も伝えられず、ただ強引に準備された荷物を持たされてナマエは旅立つことになった。
(……突然のことで、困惑しかない)
だが、困惑した理由はそれだけではない。
紅炎は眉をしかめ、明らかに機嫌が悪そうだった。そういえば目の下に隈も見えたし、遅くまで仕事をしていたことは明らかだとナマエは思う。
(紅炎さま、ごはん食べたかな……ちゃんと眠れたのかな……)
ぼんやりと、そんなことが頭に浮かび、すぐに考えることをやめる。紅炎にはナマエの他に侍女が多くいるのだし、きっと彼女たちがちゃんと世話をしてくれるだろう。
むしろ今までと同じ生活に戻れるのだ。それに関していえば紅炎の為になるのだろう。ナマエがいなければ、余計なことをしなくて済むのだから。
「ナマエ」
「………」
「……ナマエ?」
「っ、あ!はい、なんでしょう?」
白龍の声が届き、ナマエは返事をする。白龍は少し首を傾けて、
「具合が悪いんですか?船酔いですか?」
「い、いえ!そういうわけじゃないんです!ただ、ええと、わたしはシンドリア王国で何をしたら良いんでしょうか?とかなんでわたしが行かなければいけないのかな?とかわからなくて……」
「ああ……それはシンドバッド王が望まれたのだと聞きましたが?」
「……王が?……望んだ?」
「はい。宴の後で、俺の留学条件としてそうおっしゃられた、と紅炎殿が」
「え?……紅炎さまも、知っていたのですか?」
聞いていない。何も理由なんて伝えられなかった。ただ心底不機嫌な表情で命令されたのだ。
シンドリア王国の王は、たしかシンドバッドさまと言うはずだが、けれどそれだけである。ナマエはその程度の認識しかないし、それは相手も同じはずだ。むしろ目に止める必要などないくらいなのだ、ただの侍女のナマエに。
(……なんだろう)
今まで困惑しかなかったナマエだが、不安を感じ始める。
(……シンドバッドさまは、どうしてわたしを呼んだのかな)
そんな疑問だけが頭の中を染める。
けれどそれだけだろうか。
だが、その時のナマエにはそれ以外の何かを理解できなかった。
初めて出会った(と思っている)ナマエは通された部屋で居心地悪そうに立ち尽くしていた。
「……豪華な部屋、ですね」
「気に入ってくれたかな?」
シンドバッドがにっこりと笑うとナマエは戸惑う様に苦笑する。きっと自分が何故この国に呼ばれたのかわかっていないのだろうと思い、シンドバッドは長椅子に座りながら「実は」と切り出した。
「煌帝国の宴の夜に、君を見かけてね」
「?……ええと?」
「宴が終わった後に君が舞い踊る様は、見事にオレの酔いを覚ますほどのものだったよ」
思い至ったナマエは少し恥ずかしそうに俯いてしまう。
「……見苦しいものを、お見せしました」
「いやいや、良い意味で言っているんだ。あれほどの踊りなら、ぜひ宴で見たかったものだよ。……まあ結果的に君を呼んでしまったけどな」
「……あの、わたしを呼んだ理由、とは?」
「君を口説きたかった」
「………はい?」
シンドバッドはずいっと顔を寄せる。さらにはナマエの小さな手を掴んで見つめた。
「君はとても美しい。あの歌う姿、踊りを見ればそれがわかる。……機会があればまた見せてくれるかな?」
数多の女を口説いてきたシンドバッドの声に、ナマエは震える。
「……あ、の」
「ん?」
ナマエは俯いていた顔をそっと上げる。
「……そろそろ、離れてくれないでしょうか……?」
ナマエの顔を見たシンドバッドは目を見開いた。その拍子に手を離すとナマエは走り去っていった。
「……シン?話は終わりましたか?」
「………」
「シン?」
ジャーファルの声にシンドバッドは深く息をつく。
「……参ったよ、ジャーファル。あの子はオレの予想外な反応をした」
「は?」
「煌帝国の皇子も、良い趣味をしている」
(離れてくれないでしょうか……?)
そう言った時のナマエの顔は頰を赤く染め、眉をひそめていた。それは、誘惑に揺らぐ女の艶やかさを表しているように。
無自覚に、シンドバッドを誘惑する表情だった。
(純粋な、可愛らしい少女だとだけ思っていたんだがな)
「ジャーファル」
「はい」
「彼女の世話はお前に任せる。……頼めるか?」
「仰せのままに」
シンドバッドは手で顔の熱を冷ます。
久しぶりに恋する乙女の心情を知った王に、ジャーファルは首を傾けた。