マギ夢小説<紅炎寄り>
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「紅玉さま、ご指導ありがとうございました」
そう言って頭を下げるナマエに紅玉は「いいのよぉ」と笑う。
「紅炎兄様に頼まれたことなのだし、当然のことをしたまでだわ。……そ、それに、私もつまらなくもなかったというか、楽しかったというか」
「はい、本当にありがとうございます。……あ、白龍さま」
静かに立ち去ろうとする前皇帝の皇子、白龍は名前を呼ばれ、振り向く。
ナマエは白龍にも頭を下げた。
「白龍さま、ご指導ありがとうございました。ご迷惑になってしまい、申し訳ありません」
「ああ……いいえ。俺も良い刺激になりましたし、筋が良いと思いました」
「ほ、ほんとですか?……実感がない、です」
「最初は皆そんなものです。実践すればわかるんですけどね」
「はあ……」
「そういえばナマエ。宴の準備はどうなのかしら?し、シンドバッドさまがいらっしゃるんでしょう?」
「ああ……あのお話は無かったことになったんですよ」
「え!?だって、あなたずっと準備していたじゃない!私が言うのもなんだけど、舞や歌の稽古だってあんなに……」
「ええと……」
ナマエは苦笑する。
確かに準備として稽古はした。衣装だって準備されていた。だが、数日前のことだ。
(得体の知れない娘を大事な宴に参加させるべきではない)
と、ナマエの上司にあたる侍女に言われた言葉が伝わったらしく、それ以来講師は来なくなり、準備に手を出すこともできなくなったのだ。
(……まだ嫌がらせが続いていた、なんて言えないし)
「わたしの稽古はあまり上達していないので、披露できないそうなんですよ。大事な宴ですし、見せる価値があるものでないといけませんから」
「まあ……それは残念だわぁ」
「俺は見ていないのでわからないですけど……残念ですね」
「い、いえいえ、人前でそういうことするのは、正直苦手ですから……それに今は武術の鍛練の方が大事ですからね」
(お前が強くなれば多少は安心できる)
紅炎はナマエにそう言った。その言葉にナマエには何を意味するのかわからない。ただ紅炎がそう望むのなら従わなければならない。
だからナマエは武術を身につけなければならない。紅炎が、そう命ずるのなら、意味を知る必要はないのだろうと思う。
「あ、じゃあ今度、私に披露してちょうだいよ」
「え?何を?」
「稽古の出来、よ!せっかくなんだから見たいじゃない?……それとも嫌なの?」
「い、いえ!そういうわけでは……」
「じゃあ、決まりね!約束よ?」
(……舞の練習、あと歌の練習を確認した方がいいかなぁ)
夕方。
仕事を終えたナマエは紅炎の帰りを待つ時間の中、そんなことを思った。確か今夜は宴当日で他の侍女たちもその対応をしていて、ナマエだけが留守を待たされているのだ。
「……うん、やってみよう」
そう思ったナマエは中庭の広場で練習しようと足を運んだ。静かで冷たい空気が気が引き締まる思いを秘めたナマエは遠くから聞こえてくる宴の音楽を自分の頭の中で奏で、舞を添える。
(……稽古をしている時、何も考えずに舞うことができた。音楽が、歌が、心が、自然と体を動かして)
舞うこと自体、嫌いではなかった。舞をしている時は必ず自分の中で歌が聞こえたからだ。
今も、そう。
ずっと前から知っている歌声が、ナマエの体を動かしている。
(どうしてだろう…すごく、気分がいい)
知らないうちにナマエは歌を奏でていた。柔らかな、それでいて繊細な波が揺らめいては消えていくような、儚い声音で。
その様は月夜で輝き美しい調べで歌う、女神のよう。そしてその歌が終えるまでの、泡沫の時間であった。
「……あんなに美しい姫がいたのか」
男は感嘆の呟きをこぼした。その言葉に男の従者も頷くしかできない。
ナマエの舞と歌は、それほどの美麗さだったのだ。
「良いものを見た。……良い土産ができそうだ」
男は不敵な笑みを浮かべ、立ち去る。
男の、シンドバッドの酔いはすっかり覚め、代わりに美しい少女の姿に酔いしれた。
そう言って頭を下げるナマエに紅玉は「いいのよぉ」と笑う。
「紅炎兄様に頼まれたことなのだし、当然のことをしたまでだわ。……そ、それに、私もつまらなくもなかったというか、楽しかったというか」
「はい、本当にありがとうございます。……あ、白龍さま」
静かに立ち去ろうとする前皇帝の皇子、白龍は名前を呼ばれ、振り向く。
ナマエは白龍にも頭を下げた。
「白龍さま、ご指導ありがとうございました。ご迷惑になってしまい、申し訳ありません」
「ああ……いいえ。俺も良い刺激になりましたし、筋が良いと思いました」
「ほ、ほんとですか?……実感がない、です」
「最初は皆そんなものです。実践すればわかるんですけどね」
「はあ……」
「そういえばナマエ。宴の準備はどうなのかしら?し、シンドバッドさまがいらっしゃるんでしょう?」
「ああ……あのお話は無かったことになったんですよ」
「え!?だって、あなたずっと準備していたじゃない!私が言うのもなんだけど、舞や歌の稽古だってあんなに……」
「ええと……」
ナマエは苦笑する。
確かに準備として稽古はした。衣装だって準備されていた。だが、数日前のことだ。
(得体の知れない娘を大事な宴に参加させるべきではない)
と、ナマエの上司にあたる侍女に言われた言葉が伝わったらしく、それ以来講師は来なくなり、準備に手を出すこともできなくなったのだ。
(……まだ嫌がらせが続いていた、なんて言えないし)
「わたしの稽古はあまり上達していないので、披露できないそうなんですよ。大事な宴ですし、見せる価値があるものでないといけませんから」
「まあ……それは残念だわぁ」
「俺は見ていないのでわからないですけど……残念ですね」
「い、いえいえ、人前でそういうことするのは、正直苦手ですから……それに今は武術の鍛練の方が大事ですからね」
(お前が強くなれば多少は安心できる)
紅炎はナマエにそう言った。その言葉にナマエには何を意味するのかわからない。ただ紅炎がそう望むのなら従わなければならない。
だからナマエは武術を身につけなければならない。紅炎が、そう命ずるのなら、意味を知る必要はないのだろうと思う。
「あ、じゃあ今度、私に披露してちょうだいよ」
「え?何を?」
「稽古の出来、よ!せっかくなんだから見たいじゃない?……それとも嫌なの?」
「い、いえ!そういうわけでは……」
「じゃあ、決まりね!約束よ?」
(……舞の練習、あと歌の練習を確認した方がいいかなぁ)
夕方。
仕事を終えたナマエは紅炎の帰りを待つ時間の中、そんなことを思った。確か今夜は宴当日で他の侍女たちもその対応をしていて、ナマエだけが留守を待たされているのだ。
「……うん、やってみよう」
そう思ったナマエは中庭の広場で練習しようと足を運んだ。静かで冷たい空気が気が引き締まる思いを秘めたナマエは遠くから聞こえてくる宴の音楽を自分の頭の中で奏で、舞を添える。
(……稽古をしている時、何も考えずに舞うことができた。音楽が、歌が、心が、自然と体を動かして)
舞うこと自体、嫌いではなかった。舞をしている時は必ず自分の中で歌が聞こえたからだ。
今も、そう。
ずっと前から知っている歌声が、ナマエの体を動かしている。
(どうしてだろう…すごく、気分がいい)
知らないうちにナマエは歌を奏でていた。柔らかな、それでいて繊細な波が揺らめいては消えていくような、儚い声音で。
その様は月夜で輝き美しい調べで歌う、女神のよう。そしてその歌が終えるまでの、泡沫の時間であった。
「……あんなに美しい姫がいたのか」
男は感嘆の呟きをこぼした。その言葉に男の従者も頷くしかできない。
ナマエの舞と歌は、それほどの美麗さだったのだ。
「良いものを見た。……良い土産ができそうだ」
男は不敵な笑みを浮かべ、立ち去る。
男の、シンドバッドの酔いはすっかり覚め、代わりに美しい少女の姿に酔いしれた。