マギ夢小説<紅炎寄り>
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今、戻った」
紅炎がそう言って帰ってくると答えてくれる声が必ずある。それは当たり前のことだと思っていた時期があったが、今は少し感慨深いものがあると思えるようになった。
戦争が終わった、と思った次は世界の危機に直面していたが、なんとかその危機を脱した紅炎は弟と妹たちに世界復興の手助けをしろと駆り出されており、隠居状態だった紅炎は再び忙しく働いている。
そんな中、ナマエはマギ達によって健康管理を任せており、色々相談することが多いようだった。基本的にはルフを一定に維持する訓練をしているのだと紅炎は聞いている。
紅炎自体はナマエの発作症状を大して問題視していないが、お互いの命に関わることだとシンドバッドのマギらしいユナンがぽろっと言ったことでナマエは治す方法を教えて欲しいと青い顔をして迫っていた。
大事にされている事は嬉しいが、紅炎は血の気が多いと言われているので、少しくらい血を飲まれた方が丁度良いと自分では思う。
「おかえりなさい、紅炎さま」
少し遅れて部屋の奥から出迎えにきたナマエの姿に紅炎は首を傾げる。
「どうした?顔が赤いぞ」
「え、あ、ええと、あの、その、……」
「お帰りなさい、紅炎殿」
奥から出てきたのは白瑛と、静かに一礼するモルジアナだった。珍しい組み合わせに紅炎はもう一度「どうした?」と訊く。
「実は、」と返事は白瑛からだった。
「今日、ナマエさんが倒れてしまって。そこへモルジアナが通りかかったのでここまで運んでいただきました」
「倒れた?」
「は、はい!」
「どこか身体が悪いのか?」
どこからともなくフェニクスを召喚しようと剣に手を伸ばすが、ナマエは「違います!」とその手を封じた。
「わ、悪いわけではなくて、その、ルフを維持できるようになったんです。ですから、もう発作の心配はないのです、けど」
「『けど』、なんだ?」
「か、身体がこの世界に適応して、正常になったとユナンさんに言われて、それで、新しい変調ができた事で倒れたのだ、と言われました……こ、紅炎さまのおかげで」
「………?………つまり?」
いまいちはっきりと話さないナマエに紅炎は問いただすが、その返事は意外にもモルジアナが言った。
「子供ができたそうです。身体の変化に耐えられず、倒れたと聞いています」
「も、モルジアナさん!?」
「………子供」
「はい、そうですよ、紅炎殿」
「………俺の、子供」
「は、はい………」
気まずそうに俯くナマエと黙ったまま無表情の紅炎を見比べてから白瑛は「おめでとうございます、お大事に」とだけ告げてモルジアナと部屋を出て行った。
「………ナマエ」
「は、い」
俯いたままナマエは紅炎の言葉を待つ。
すると視界が一変した。
「え、」
「俯くな」
紅炎と同じ目線までナマエは紅炎に抱き上げられていた。まっすぐに見つめられてどんな表情を浮かべていいのやらわからないままのナマエに、
「忙しくなるぞ。早くこの世界を復興させて、国を整え、平穏を取り戻さねばならん。だが、その前に紅明、紅覇、紅玉、白龍に知らせなければな」
「こ、紅炎さま?」
「騒がしい日々になるだろうな。弟と妹たちは世話を焼きたがるだろうし、家臣たちも大騒ぎだ」
「あ、あの!紅炎さまは、よろしいのですか?」
「何がだ?」
「わ、わたしが、紅炎さまの子供を産んでしまって、わたしなんかが、母親になっていいんでしょうか……?」
時々聞こえる、過去の記憶の残滓が言う。
お前はいらないのだ、と囁く声はきっと。
「母親に愛されなかったわたしが、子供を産んでしまったら、……わたしは、」
「お前は、もう立派な母だろう」
紅炎が抱き上げたナマエを抱きしめて、そう言った。
「母親に愛されなかった?それが理由でお前は誰にも愛されていなかったか?」
「……いいえ」
「それが理由でお前は今、不幸か?」
「いいえ!そんな、」
「だったらそんな自分の子供が不幸になるのではないかという疑いは消せ。お前は俺が愛し、生涯を共にする伴侶として選んだ女だ。自信を持て」
「………、」
「俺の子供を産め。そして俺に愛されろ」
紅炎の言葉にナマエは胸がいっぱいになった。涙ぐみながら頷いて、紅炎に抱き着く。
「頑張ります……紅炎さまに愛されて、良かったです」
「ところでいつ頃産まれるのだ?」
「まだ先ですよ。ヤムライハさんに視ていただきましたから、ルフの状態で子供の性別もわかりました」
「ほう」
「ですので、名前を考えておかないと。二人分」
「二人?」
「双子だそうですよ。男の子と女の子」
「……賑やかになるな」
「紅炎さまに似ると良いですね」
「俺はお前に似ると良いが……まぁ、元気な子供なら、問題なかろう」
その後、時が過ぎていき。
「おとうさま、紅覇おじさまと紅玉おばさまにお花のかんむりをつくってもらいました!」
「ちちうえ、紅明おじうえが本をくださいました!」
二人の子供が駆け寄る先には紅炎とナマエがおり、ナマエの膝を枕にしながら紅炎は書物を読んでいた。
「二人とも、お礼は言えたの?」
「はい!」
「そうか……文字を覚えたのはつい最近のことだというのに、勉強熱心だな」
「わたくしはシンドバッドの大冒険をおしえていただきました!紅玉おばさまとアリババさんのおはなしはいつもたのしいです!」
「……ほう」
「ちちうえ、ジャーファルどのがたくさんお菓子をくださったのですが、ぜんぶ食べないと失礼でしょうか?」
「……相変わらずだな、あの男は」
「ジャーファルさんは子供が大好きですからねぇ」
「限度というものがあるだろう。俺の子供らを脂肪の塊にする気か、奴は」
「おかあさま、おかあさま。わたくし、おとうさまのお話がききたいです」
「……だそうですよ、紅炎さま」
「俺の話か……どこから話せば良いものか」
「お兄様〜ご相談したいことがあるのですけれど〜」
「あ、紅玉さま」
「炎兄〜、アリババが探索から戻ってきて、珍しいものいっぱい見つけてきたんだけど〜」
「あちらからは紅覇さまも」
「……今日くらいはのんびりできると思ったんだがな」
一息ついてから紅炎は起き上がり、「今向かう」と答えて歩き出す。
「では、行ってくる。ナマエ」
「行ってらっしゃいませ、紅炎さま」
当たり前に返される言葉と笑顔が愛おしく。
明日のために、愛するもののために歩き続ける。
その幸福を、いつまでも忘れない。
それがナマエの生き方だから。
『完』
紅炎がそう言って帰ってくると答えてくれる声が必ずある。それは当たり前のことだと思っていた時期があったが、今は少し感慨深いものがあると思えるようになった。
戦争が終わった、と思った次は世界の危機に直面していたが、なんとかその危機を脱した紅炎は弟と妹たちに世界復興の手助けをしろと駆り出されており、隠居状態だった紅炎は再び忙しく働いている。
そんな中、ナマエはマギ達によって健康管理を任せており、色々相談することが多いようだった。基本的にはルフを一定に維持する訓練をしているのだと紅炎は聞いている。
紅炎自体はナマエの発作症状を大して問題視していないが、お互いの命に関わることだとシンドバッドのマギらしいユナンがぽろっと言ったことでナマエは治す方法を教えて欲しいと青い顔をして迫っていた。
大事にされている事は嬉しいが、紅炎は血の気が多いと言われているので、少しくらい血を飲まれた方が丁度良いと自分では思う。
「おかえりなさい、紅炎さま」
少し遅れて部屋の奥から出迎えにきたナマエの姿に紅炎は首を傾げる。
「どうした?顔が赤いぞ」
「え、あ、ええと、あの、その、……」
「お帰りなさい、紅炎殿」
奥から出てきたのは白瑛と、静かに一礼するモルジアナだった。珍しい組み合わせに紅炎はもう一度「どうした?」と訊く。
「実は、」と返事は白瑛からだった。
「今日、ナマエさんが倒れてしまって。そこへモルジアナが通りかかったのでここまで運んでいただきました」
「倒れた?」
「は、はい!」
「どこか身体が悪いのか?」
どこからともなくフェニクスを召喚しようと剣に手を伸ばすが、ナマエは「違います!」とその手を封じた。
「わ、悪いわけではなくて、その、ルフを維持できるようになったんです。ですから、もう発作の心配はないのです、けど」
「『けど』、なんだ?」
「か、身体がこの世界に適応して、正常になったとユナンさんに言われて、それで、新しい変調ができた事で倒れたのだ、と言われました……こ、紅炎さまのおかげで」
「………?………つまり?」
いまいちはっきりと話さないナマエに紅炎は問いただすが、その返事は意外にもモルジアナが言った。
「子供ができたそうです。身体の変化に耐えられず、倒れたと聞いています」
「も、モルジアナさん!?」
「………子供」
「はい、そうですよ、紅炎殿」
「………俺の、子供」
「は、はい………」
気まずそうに俯くナマエと黙ったまま無表情の紅炎を見比べてから白瑛は「おめでとうございます、お大事に」とだけ告げてモルジアナと部屋を出て行った。
「………ナマエ」
「は、い」
俯いたままナマエは紅炎の言葉を待つ。
すると視界が一変した。
「え、」
「俯くな」
紅炎と同じ目線までナマエは紅炎に抱き上げられていた。まっすぐに見つめられてどんな表情を浮かべていいのやらわからないままのナマエに、
「忙しくなるぞ。早くこの世界を復興させて、国を整え、平穏を取り戻さねばならん。だが、その前に紅明、紅覇、紅玉、白龍に知らせなければな」
「こ、紅炎さま?」
「騒がしい日々になるだろうな。弟と妹たちは世話を焼きたがるだろうし、家臣たちも大騒ぎだ」
「あ、あの!紅炎さまは、よろしいのですか?」
「何がだ?」
「わ、わたしが、紅炎さまの子供を産んでしまって、わたしなんかが、母親になっていいんでしょうか……?」
時々聞こえる、過去の記憶の残滓が言う。
お前はいらないのだ、と囁く声はきっと。
「母親に愛されなかったわたしが、子供を産んでしまったら、……わたしは、」
「お前は、もう立派な母だろう」
紅炎が抱き上げたナマエを抱きしめて、そう言った。
「母親に愛されなかった?それが理由でお前は誰にも愛されていなかったか?」
「……いいえ」
「それが理由でお前は今、不幸か?」
「いいえ!そんな、」
「だったらそんな自分の子供が不幸になるのではないかという疑いは消せ。お前は俺が愛し、生涯を共にする伴侶として選んだ女だ。自信を持て」
「………、」
「俺の子供を産め。そして俺に愛されろ」
紅炎の言葉にナマエは胸がいっぱいになった。涙ぐみながら頷いて、紅炎に抱き着く。
「頑張ります……紅炎さまに愛されて、良かったです」
「ところでいつ頃産まれるのだ?」
「まだ先ですよ。ヤムライハさんに視ていただきましたから、ルフの状態で子供の性別もわかりました」
「ほう」
「ですので、名前を考えておかないと。二人分」
「二人?」
「双子だそうですよ。男の子と女の子」
「……賑やかになるな」
「紅炎さまに似ると良いですね」
「俺はお前に似ると良いが……まぁ、元気な子供なら、問題なかろう」
その後、時が過ぎていき。
「おとうさま、紅覇おじさまと紅玉おばさまにお花のかんむりをつくってもらいました!」
「ちちうえ、紅明おじうえが本をくださいました!」
二人の子供が駆け寄る先には紅炎とナマエがおり、ナマエの膝を枕にしながら紅炎は書物を読んでいた。
「二人とも、お礼は言えたの?」
「はい!」
「そうか……文字を覚えたのはつい最近のことだというのに、勉強熱心だな」
「わたくしはシンドバッドの大冒険をおしえていただきました!紅玉おばさまとアリババさんのおはなしはいつもたのしいです!」
「……ほう」
「ちちうえ、ジャーファルどのがたくさんお菓子をくださったのですが、ぜんぶ食べないと失礼でしょうか?」
「……相変わらずだな、あの男は」
「ジャーファルさんは子供が大好きですからねぇ」
「限度というものがあるだろう。俺の子供らを脂肪の塊にする気か、奴は」
「おかあさま、おかあさま。わたくし、おとうさまのお話がききたいです」
「……だそうですよ、紅炎さま」
「俺の話か……どこから話せば良いものか」
「お兄様〜ご相談したいことがあるのですけれど〜」
「あ、紅玉さま」
「炎兄〜、アリババが探索から戻ってきて、珍しいものいっぱい見つけてきたんだけど〜」
「あちらからは紅覇さまも」
「……今日くらいはのんびりできると思ったんだがな」
一息ついてから紅炎は起き上がり、「今向かう」と答えて歩き出す。
「では、行ってくる。ナマエ」
「行ってらっしゃいませ、紅炎さま」
当たり前に返される言葉と笑顔が愛おしく。
明日のために、愛するもののために歩き続ける。
その幸福を、いつまでも忘れない。
それがナマエの生き方だから。
『完』
19/19ページ