マギ夢小説<紅炎寄り>
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紅炎が目を覚ましたのは、いつもと同じだった。自分の腕を見て、何もないことを確認してから自嘲する。
(いないと分かっている。もう、自分の腕には戻ってこないと分かっているというのに)
もう戻らないことを決めたからこそ、シンドリアに、シンドバッドに託したのだ。ナマエに煌帝国の戦争に関わらせないように、紅炎の側に置くことが絶対安全な場所ではない、最善ではないと理解したからだった。
(元々、俺にはナマエにとって相応しい場所を与えられなかった。与えられない男の側にいつまでもナマエを置くことは、辛いだけだろう)
たとえ夜中にナマエの温もりを求めてか、目を覚ますことがあったとしても。
それは紅炎の問題であり、誰にも打ち明けることはない。ナマエを愛しているというだけで自分の戦いや問題に巻き込むことに躊躇いがないと言えるほど紅炎は無邪気ではないし、無謀にもなれなかった。
(女々しすぎる……水でも浴びて頭を冷やすべきだ)
不自由な身体で寝台から起き上がり、外に出ると冷たい風が吹き込んでくる。しかしそれだけでは甘いと思い、紅炎は水を汲みかけて、動きを止めた。
(……風の、匂いが変わった…?)
流刑された孤島、しかも深夜の今は冷えた海の匂いしかしなかった。海の住む怪物でも出たかとも思ったが、紅炎の脳裏にあることが浮かんでいた。
(香水、ですか……?こんな、高価なものをどうして?)
(虫除けだ。毎日つけていれば、匂いで虫どもは逃げ出すだろう)
(虫除け……。……あ、紅炎さまと同じ香りですね)
(ああ、俺も同じものを使っているからな)
(ふふ。この香水を使っていたら、なんだか、紅炎さまとずっと一緒にいるみたいですね)
そんなことは、ありえない。いや、あってはならない。
紅炎はぎゅう、と胸元を強く掻いた。
鼓動が早い。胸が苦しい。必死で自分をごまかそうとする自分に嫌気が差すが、期待と焦燥感で、ある可能性を考え出して止まらない。
匂いが濃くなる。自分のよく知る、匂いが。
そして。
一際、強い風が巻き起こった。紅炎は頭上を見上げ、目を見開く。
そこにいたのは、羽根をはためかせて向かってくる炎の馬。
「………何故」
しかし、紅炎の瞳には違うもののように見える。
それは、ずっと戻ってこないと思っていた、諦めていた、たった一人の。
「ナマエ………?」
紅炎の声を聞いた炎は途端に姿を変化させる。羽根が消え、人の形に変化したそれは紅炎が思っていた通りの少女の姿に変化した。
「紅炎、さま………」
ふらつく身体で自分を呼ぶ少女、ナマエの第一声は紅炎を呼ぶ言葉。そしてほっと安心したように、愛おしそうに笑いかけてから。
「ただいま、戻りました……」
たった、それだけで。
紅炎の身体は、無意識にナマエの方へ向かい、抱き寄せていた。
「……馬鹿者、どうしてここにきた」
抱き寄せた身体は想像と違い、以前よりも痩せ細っている。こんな身体で、どうやってきたのかという疑問が浮かんだが、しかしそんなものは関係ない。
ただ、自分の腕の中にいるナマエの温もりが、笑顔が、愛おしかった。
「紅炎さまに、会いたくて……」
「愚か者が。お前の身体は、他のものと違うのだぞ。あんな、魔力を、ルフを消耗させるような真似を」
「それでも、わたしは、………あなたに、お会いしなくてはと、思って」
「なんだと………?」
「わたしは、確かにお役に立ちません。紅炎さまに、相応しくないと自分でもよく理解しているつもりです。……でも、その、」
ナマエは頬を赤くさせて恥じらいながら紅炎を見上げる。
「わたしは、紅炎さまをお、お慕いしています……ので、紅炎さまの側にいたい、です!」
「………、」
紅炎が絶句しながら固まっていると、ナマエはさらに続ける。
「わたし、わたし今まで紅炎さまに気持ちをお伝えしていませんでした。わたしはいつも紅炎さまに与えられているばかりで、何もできなくて、………でも、わたしが欲しかったのは、紅炎さまなんです。だから……。………?紅炎さま?」
「………」
紅炎は目元を手で覆って愕然とした。
(……今更、それを言うのか?俺に恨み言とかはないのか?もっと他に言うことがあるはずなのに、何故こいつは………)
だが。
天を仰ぎながら紅炎は深く息をついて。
「お前は、……俺でいいのか。俺は戦争に負けた男だぞ?」
「……あなたがいいんです、紅炎さま」
「ずっとこの孤島で暮らし続ける、罪人だ」
「それでもあなたはわたしが愛する人です」
「……俺は、お前を一度は手放した男だ」
「でも、わたしはあなたの側が一番、幸せです」
説き伏せようと試みたはずなのに、紅炎はなんだか馬鹿らしくなってきた。何を言っても、この少女はきっと紅炎から離れないのだろうと安堵する自分に気付いてしまったのだから。
だったら。
「……来い」
「ひゃっ!こ、紅炎さま、わたしは一人で歩けますから、」
ナマエを抱き上げて紅炎は歩き出す。不自由な身体でも、痩せてしまったナマエを担ぐくらいの事はできるのだ。
それに。
「……お前は、温かいな」
この温もりを、ずっと求めていた愛する女を紅炎はもう手放したくなかった。
「色々と言いたいことがあるが……今夜はもう眠れ」
紅炎が微かに微笑むとナマエは紅炎にしがみつくように抱きついた。
「紅炎さま、」
「ん?」
「もう、わたしを離さないでくださいね」
「……愚問だ」
紅炎がそう言うとナマエは嬉しそうに笑う。
どうやら、今夜からは深夜に目を覚ます事はないだろう。
紅炎の腕の中に、ナマエという温もりが戻ってきたのだから。
(いないと分かっている。もう、自分の腕には戻ってこないと分かっているというのに)
もう戻らないことを決めたからこそ、シンドリアに、シンドバッドに託したのだ。ナマエに煌帝国の戦争に関わらせないように、紅炎の側に置くことが絶対安全な場所ではない、最善ではないと理解したからだった。
(元々、俺にはナマエにとって相応しい場所を与えられなかった。与えられない男の側にいつまでもナマエを置くことは、辛いだけだろう)
たとえ夜中にナマエの温もりを求めてか、目を覚ますことがあったとしても。
それは紅炎の問題であり、誰にも打ち明けることはない。ナマエを愛しているというだけで自分の戦いや問題に巻き込むことに躊躇いがないと言えるほど紅炎は無邪気ではないし、無謀にもなれなかった。
(女々しすぎる……水でも浴びて頭を冷やすべきだ)
不自由な身体で寝台から起き上がり、外に出ると冷たい風が吹き込んでくる。しかしそれだけでは甘いと思い、紅炎は水を汲みかけて、動きを止めた。
(……風の、匂いが変わった…?)
流刑された孤島、しかも深夜の今は冷えた海の匂いしかしなかった。海の住む怪物でも出たかとも思ったが、紅炎の脳裏にあることが浮かんでいた。
(香水、ですか……?こんな、高価なものをどうして?)
(虫除けだ。毎日つけていれば、匂いで虫どもは逃げ出すだろう)
(虫除け……。……あ、紅炎さまと同じ香りですね)
(ああ、俺も同じものを使っているからな)
(ふふ。この香水を使っていたら、なんだか、紅炎さまとずっと一緒にいるみたいですね)
そんなことは、ありえない。いや、あってはならない。
紅炎はぎゅう、と胸元を強く掻いた。
鼓動が早い。胸が苦しい。必死で自分をごまかそうとする自分に嫌気が差すが、期待と焦燥感で、ある可能性を考え出して止まらない。
匂いが濃くなる。自分のよく知る、匂いが。
そして。
一際、強い風が巻き起こった。紅炎は頭上を見上げ、目を見開く。
そこにいたのは、羽根をはためかせて向かってくる炎の馬。
「………何故」
しかし、紅炎の瞳には違うもののように見える。
それは、ずっと戻ってこないと思っていた、諦めていた、たった一人の。
「ナマエ………?」
紅炎の声を聞いた炎は途端に姿を変化させる。羽根が消え、人の形に変化したそれは紅炎が思っていた通りの少女の姿に変化した。
「紅炎、さま………」
ふらつく身体で自分を呼ぶ少女、ナマエの第一声は紅炎を呼ぶ言葉。そしてほっと安心したように、愛おしそうに笑いかけてから。
「ただいま、戻りました……」
たった、それだけで。
紅炎の身体は、無意識にナマエの方へ向かい、抱き寄せていた。
「……馬鹿者、どうしてここにきた」
抱き寄せた身体は想像と違い、以前よりも痩せ細っている。こんな身体で、どうやってきたのかという疑問が浮かんだが、しかしそんなものは関係ない。
ただ、自分の腕の中にいるナマエの温もりが、笑顔が、愛おしかった。
「紅炎さまに、会いたくて……」
「愚か者が。お前の身体は、他のものと違うのだぞ。あんな、魔力を、ルフを消耗させるような真似を」
「それでも、わたしは、………あなたに、お会いしなくてはと、思って」
「なんだと………?」
「わたしは、確かにお役に立ちません。紅炎さまに、相応しくないと自分でもよく理解しているつもりです。……でも、その、」
ナマエは頬を赤くさせて恥じらいながら紅炎を見上げる。
「わたしは、紅炎さまをお、お慕いしています……ので、紅炎さまの側にいたい、です!」
「………、」
紅炎が絶句しながら固まっていると、ナマエはさらに続ける。
「わたし、わたし今まで紅炎さまに気持ちをお伝えしていませんでした。わたしはいつも紅炎さまに与えられているばかりで、何もできなくて、………でも、わたしが欲しかったのは、紅炎さまなんです。だから……。………?紅炎さま?」
「………」
紅炎は目元を手で覆って愕然とした。
(……今更、それを言うのか?俺に恨み言とかはないのか?もっと他に言うことがあるはずなのに、何故こいつは………)
だが。
天を仰ぎながら紅炎は深く息をついて。
「お前は、……俺でいいのか。俺は戦争に負けた男だぞ?」
「……あなたがいいんです、紅炎さま」
「ずっとこの孤島で暮らし続ける、罪人だ」
「それでもあなたはわたしが愛する人です」
「……俺は、お前を一度は手放した男だ」
「でも、わたしはあなたの側が一番、幸せです」
説き伏せようと試みたはずなのに、紅炎はなんだか馬鹿らしくなってきた。何を言っても、この少女はきっと紅炎から離れないのだろうと安堵する自分に気付いてしまったのだから。
だったら。
「……来い」
「ひゃっ!こ、紅炎さま、わたしは一人で歩けますから、」
ナマエを抱き上げて紅炎は歩き出す。不自由な身体でも、痩せてしまったナマエを担ぐくらいの事はできるのだ。
それに。
「……お前は、温かいな」
この温もりを、ずっと求めていた愛する女を紅炎はもう手放したくなかった。
「色々と言いたいことがあるが……今夜はもう眠れ」
紅炎が微かに微笑むとナマエは紅炎にしがみつくように抱きついた。
「紅炎さま、」
「ん?」
「もう、わたしを離さないでくださいね」
「……愚問だ」
紅炎がそう言うとナマエは嬉しそうに笑う。
どうやら、今夜からは深夜に目を覚ます事はないだろう。
紅炎の腕の中に、ナマエという温もりが戻ってきたのだから。