何度目になるのかわからない程に、ナマエは紅炎に抱かれた。そして声が掠れ、足腰が立たないナマエを紅炎は湯浴みをしてやり、服を着せると再び部屋に戻り寝かせてやった。

「大丈夫か」
「も、申し訳ありません、……な、何から何まで……」
「……」
「……？紅炎さ、ひっ！？」

寝台の上で紅炎がナマエの腹部を撫で、ナマエは驚き口を手で覆う。顔を赤く染めるナマエに紅炎は手を止めないまま、

「……どちらがいいだろうな」と、呟く。

「あれが何を考えているかわからん。だが……」
「……？紅炎さま？どう、したのですか？」
「…………いや」

紅炎は腹部を撫でていた手で今度はナマエの頬を撫でる。

「何でもない。お前が幸せなら、それでいい」
「？」
「……もう寝るぞ。明日も仕事が待っている」

紅炎に抱き寄せられて、しばらくすると静かな寝息が聞こえる。

(……疲れていらっしゃる)

紅炎の腕の中でナマエは心配になった。いつもの紅炎はどこか余裕があり、威厳に溢れた雰囲気を放つ。ナマエには決して弱気など見せないし、むしろナマエの方が紅炎に救われるばかりだ。

(けれど、今は)

どことなく、ほんの少しだけ心配そうで、寂しそうだ。

「……紅炎さま」

先程の紅炎がしていたように、ナマエは紅炎の頬を優しく撫でる。

「わたしは、紅炎さまに大事にしていただいて、幸せです」

ずっと側で支えてくれた、その恩と想いに報いたいと思う。言葉が足りない自分にはきっとすべてのこの感情を表現することはできない。

思えば思うほど、応えてくれる存在がいる。

手を伸ばせば繋いでくれる温もりが、側に在る。

それは、なんて幸せなことだろう。

だから。

これから先、ナマエは紅炎の側に在り続けることを疑いもしなかった。