マギ夢小説<紅炎寄り>
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(……やりすぎた)
まだ日が昇っていない時刻に、紅炎はぼんやりとそんなことを思い出した。
腕の中にいるのはまだ幼さの残る少女だったが、その体には無数の赤い痕が残されている。そして疲れ果てたその寝顔も見れば、情事後の激しさもわかる。
(……この様子では今日の仕事はできんだろうな)
こんな状態で仕事をしてはきっと辛いだろう。体についた赤い痕の理由とか、痛みや怠さの言い訳を考えるのは面倒だが、ナマエの立場上すぐに言い出すことはできないはずである。
ナマエは紅炎の侍女だ。上司の命令で休みを取るのは簡単だし、それに紅炎はこのままナマエを妻とし、旦那になる気でいるから、特別扱いする気満々だ。
だが、不安要素はある。
(……陛下の病、後妻の玉艶、次期皇帝の候補、そして白龍)
警戒しなければならないことは山積みで、知りたいことと守るべきものもある。紅炎には、国のために最善を尽くす権利と義務がある。
けれど。
(今は、この時間が幸福だと、ずっと続けば良いと思う)
そんな願いは叶わない。今は戦の時代なのだ。多くの犠牲、争いが増えるのは避けられない。
わかっている。今の紅炎は煌帝国の皇子だ、この先ナマエがずっと自分の側で安心して生活するのは難しい。敵がナマエの存在を知れば、弱点として利用されるはずだからだ。
「……ぅ」
(!……起こした、か?)
紅炎がじっ、と見つめているとかすかにナマエが目を開ける。そして完全には目覚めていないらしく、紅炎の胸にぴったりと擦り寄るとまた眠った。
「……お前は、いつも無邪気だな」
紅炎は無意識に頬を緩ませる。ナマエを抱き寄せて目を閉じると、香の匂いではなくナマエ本来の匂いがする。
この瞬間だけは、何よりも誰よりも、ナマエの愛おしさで紅炎は満ち足りた気がした。
「ん……」
うとうとと曖昧な意識でナマエは目を覚ました。
もそもそ、と寝台から起き上がり、立ち上がろうとした瞬間足に力が入らなくなって、寝台の下で転ぶ。
(痛い……)
転んだ時の痛みに対してそう考え、しかしそれだけではないことを思い出すとナマエは顔を赤らめて悲鳴を出しそうになるのを堪えた。
(ど、どどどどうしよう?仕事、そうだ仕事しなくちゃ、あああでも、首に、思いきり痕が!紅炎さま、紅炎さまは?……だめだこんな時間じゃ多分、紅炎さまは思いきり仕事中だー!)
混乱しすぎてナマエは部屋で項垂れる。いくら血の代わりに対価を払ったにしてもこれではただ迷惑をかけるだけではないだろうか。
(……ああ、でも、紅炎さまは満足したのかしら)
こんな貧相な体の、しかも男を知らない侍女が夜の相手をしたのだ、ただただ気を遣うばかりで欲情を発散できるものなのだろうか。
だが。
「……これからも、血をもらったらああいうことをするのかしら」
そのことに気づいたナマエは再び項垂れてしまった。
一方、その頃紅炎は。
「兄王様、随分と顔色がよろしいですね」
紅明にそう言われた紅炎は仕事を一息ついて茶を飲んでいた。その中には紅覇もおり、「確かにねー」と同意見を示す。
「最近の炎兄は機嫌も悪いし、病気になっちゃうんじゃないかって心配してたんだよー?」
「……そうか、心配かけたな。だが、もう大丈夫だ」
「何か良い発散法でもあるのですか?ぜひ教えてくださいよ、私も最近鳩に餌をあげる暇もないので……」
「対価をもらうことにした」
「……ん?」
「対価って、なんのことー?」
「ナマエが血を欲する体質なのは知っているだろう。だから対価を要求した。……相性が良いことも確認できたし、これからは堂々とナマエを抱ける」
「ぶっ!」
「っんぐ!げほっ!げほげほっ!」
紅炎の爆弾発言に紅明は茶を噴き出し、紅覇は茶をむせる。ただ紅炎だけは涼しい顔で書物を読む。
(……そろそろ起きた頃か。部屋に戻ったらどんな顔をしているか、楽しみだ)
紅炎は静かにそんなことを思いながら、自然と噛まれた跡を撫でる。
結局代償と対価、どちらも一番得をしたのは紅炎だった。
まだ日が昇っていない時刻に、紅炎はぼんやりとそんなことを思い出した。
腕の中にいるのはまだ幼さの残る少女だったが、その体には無数の赤い痕が残されている。そして疲れ果てたその寝顔も見れば、情事後の激しさもわかる。
(……この様子では今日の仕事はできんだろうな)
こんな状態で仕事をしてはきっと辛いだろう。体についた赤い痕の理由とか、痛みや怠さの言い訳を考えるのは面倒だが、ナマエの立場上すぐに言い出すことはできないはずである。
ナマエは紅炎の侍女だ。上司の命令で休みを取るのは簡単だし、それに紅炎はこのままナマエを妻とし、旦那になる気でいるから、特別扱いする気満々だ。
だが、不安要素はある。
(……陛下の病、後妻の玉艶、次期皇帝の候補、そして白龍)
警戒しなければならないことは山積みで、知りたいことと守るべきものもある。紅炎には、国のために最善を尽くす権利と義務がある。
けれど。
(今は、この時間が幸福だと、ずっと続けば良いと思う)
そんな願いは叶わない。今は戦の時代なのだ。多くの犠牲、争いが増えるのは避けられない。
わかっている。今の紅炎は煌帝国の皇子だ、この先ナマエがずっと自分の側で安心して生活するのは難しい。敵がナマエの存在を知れば、弱点として利用されるはずだからだ。
「……ぅ」
(!……起こした、か?)
紅炎がじっ、と見つめているとかすかにナマエが目を開ける。そして完全には目覚めていないらしく、紅炎の胸にぴったりと擦り寄るとまた眠った。
「……お前は、いつも無邪気だな」
紅炎は無意識に頬を緩ませる。ナマエを抱き寄せて目を閉じると、香の匂いではなくナマエ本来の匂いがする。
この瞬間だけは、何よりも誰よりも、ナマエの愛おしさで紅炎は満ち足りた気がした。
「ん……」
うとうとと曖昧な意識でナマエは目を覚ました。
もそもそ、と寝台から起き上がり、立ち上がろうとした瞬間足に力が入らなくなって、寝台の下で転ぶ。
(痛い……)
転んだ時の痛みに対してそう考え、しかしそれだけではないことを思い出すとナマエは顔を赤らめて悲鳴を出しそうになるのを堪えた。
(ど、どどどどうしよう?仕事、そうだ仕事しなくちゃ、あああでも、首に、思いきり痕が!紅炎さま、紅炎さまは?……だめだこんな時間じゃ多分、紅炎さまは思いきり仕事中だー!)
混乱しすぎてナマエは部屋で項垂れる。いくら血の代わりに対価を払ったにしてもこれではただ迷惑をかけるだけではないだろうか。
(……ああ、でも、紅炎さまは満足したのかしら)
こんな貧相な体の、しかも男を知らない侍女が夜の相手をしたのだ、ただただ気を遣うばかりで欲情を発散できるものなのだろうか。
だが。
「……これからも、血をもらったらああいうことをするのかしら」
そのことに気づいたナマエは再び項垂れてしまった。
一方、その頃紅炎は。
「兄王様、随分と顔色がよろしいですね」
紅明にそう言われた紅炎は仕事を一息ついて茶を飲んでいた。その中には紅覇もおり、「確かにねー」と同意見を示す。
「最近の炎兄は機嫌も悪いし、病気になっちゃうんじゃないかって心配してたんだよー?」
「……そうか、心配かけたな。だが、もう大丈夫だ」
「何か良い発散法でもあるのですか?ぜひ教えてくださいよ、私も最近鳩に餌をあげる暇もないので……」
「対価をもらうことにした」
「……ん?」
「対価って、なんのことー?」
「ナマエが血を欲する体質なのは知っているだろう。だから対価を要求した。……相性が良いことも確認できたし、これからは堂々とナマエを抱ける」
「ぶっ!」
「っんぐ!げほっ!げほげほっ!」
紅炎の爆弾発言に紅明は茶を噴き出し、紅覇は茶をむせる。ただ紅炎だけは涼しい顔で書物を読む。
(……そろそろ起きた頃か。部屋に戻ったらどんな顔をしているか、楽しみだ)
紅炎は静かにそんなことを思いながら、自然と噛まれた跡を撫でる。
結局代償と対価、どちらも一番得をしたのは紅炎だった。