恋人らしく
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ナユタが恋をするナマエが、ようやく恋心を自覚した。
それは非常に喜ばしい成長という変化であり、彼としてはこのまま良い方向にその想いが花開いていけば良いとただ願い、その成長の助けになれれば良いと単純に思っていた。
ただ、恋に慣れていないナマエはあまりに初心で、あまりにナユタを意識しすぎてしまうようで。
今まで普通に接してきた距離感がどうもうまく測れないようだった。
だから。
「ナマエさん。……あまり緊張ばかりされておりますと、身体を痛めますよ?」
ナユタの休憩時間のお茶会で。
自分を意識してしまってなかなか近づいてこないナマエを、ナユタは自分が座っているソファーの隣に少し強引に座らせてみた。
ナマエは気まずそうに「ごめんなさい」と小さく謝る。
「普段は、こうならないんですけど……ナユタさんの前だと、こうなっちゃうんです」
「そうですか」
微かに頬を赤く染めて恥じらうナマエは本当に可愛くて、こんな姿を見せてしまうのは恋人である自分だからだと暗に証言してしまっている無意識さに、嬉しさで頬が緩む。
とはいえ、隣に座るだけでこうも緊張されては身体が保たないだろう。初心な彼女はもちろん可愛いが、少しだけでも自分に対する恋心に耐性をつけて欲しいとナユタは思った。
(少々強引ですが……練習、ということで)
「ナマエさん。手に触れても?」
「え?え、……あ、の、……いま、ですか?」
「はい。今、です」
「……は、ぃ」
「ありがとうございます。では、失礼いたしますね?」
ナユタの手がそっとナマエの手に触れる。
一瞬、手が震えたがしかしナユタの手を振り払うことはない。手の甲、指の一つ一つを丁寧に触れて、改めて『小さく華奢な手だ』とナユタは確認する。
(……少々、乾燥しておりますね。彼女の肌に合う保湿クリームでも見繕いましょうか。……爪も、綺麗な形をしている。ここに色を差したら、映えるのでしょうね)
「……あ、あの、ナユタ、さん」
「はい?」
「………あまり、その見られると、さすがに……恥ずかしさもピークに達するというか」
既に限界だと言いたげなほどに頬を紅潮させているナマエに、ナユタはただ穏やかに微笑む。
「ああ……申し訳ございません。あまりナマエさんの手を観察する機会がありませんでしたので、つい」
「そんな綺麗なものではないでしょうに……見てて楽しいですか?」
「楽しい、といいますか……こうして触れ合えるのは嬉しいですよ」
「……ナユタさんは、本当に嬉しそうに笑いますね」
「本当に嬉しいのですから、仕方がございませんでしょう?
……では、ナマエさん。あなたの番ですよ」
「え……え!?」
聞いてない!と言いたげなナマエに有無を言わさず、
「先日申し上げましたでしょう?拙僧に触れ合う機会を与えて欲しい、円満なお付き合いをしていくために耐性をつけていただきたいと。
拙僧だけがあなたに触れるのは、平等ではございません。といいますか、一方的に接触するのは頂けませんでしょう?」
「まあ……そ、それはそうかもです、けど」
ナマエは肯定しながらもあまり乗り気ではないようだ。
だが、ここでナユタは引いたりはしない。むしろ畳みかけるべきだと優しく、しかし彼女がやる気になるように若干同情を誘うように、寂しさを滲ませて語りかける。
「……あまりそうした反応をされますと、拒絶されているようで寂しいのですが」
「う。……きょ、拒絶、じゃない、です」
「では、少しでも宜しいので慣れて下さいませ」
「……。じゃ、じゃあ、手に触れてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
ナユタは微笑んで右手を差し出した。……どうやらナマエは特別に心許した人間にはとことん弱いらしいというのは最近知ったことだ。
ナマエは恐る恐るナユタの手に触れて、じっと観察している。そして掌にある『龍の刻印』に視線を落とし、首を傾げた。
「これは?」
「ああ、これは龍の顎ですよ。拙僧の亡き父、ドゥルクの意志を継ぐと決めた時にいれたものです」
「ナユタさんのお父さんの……じゃあ、大切な意味があるんですね」
「ええ、とても。……『龍は屈せず』。それが、父の信念でございました。戦うと決めた相手の首を決して離さず、どこまでも食らいついて諦めることはない。
それを拙僧は、いえホースケも受け継いでいるのです」
「龍は屈せず……いいですね、そうした想いが継がれていくのは。きっとナユタさんのお父さんも、ナユタさんを誇りに思っているんでしょうね」
「そうですね。……そうであったら、嬉しいことです」
ふとナユタはナマエを見つめる。彼女はナユタの龍の刻印を指で優しくなぞり、労わるように見つめている。
彼女自身、きっと自身の尊敬する養父を思い出しているのだろう。その眼差しは柔らかく、温かい。
(__ああ)
ナユタはそんなナマエが愛おしくて、もう片方の手で彼女の頬を撫でた。
……その唇に、触れたくなったのだ。
恋愛事の経験が浅くとも、そうした欲が全く生まれないわけではない。
想いが通じ合った今ならば、なおのことだ。
ナマエがナユタへ顔を向ける。そして、ナユタの熱い視線で意図を察したのだろう。一瞬、わずかに身を引いた彼女の後頭部にナユタは頬を撫でていた手を差し入れて、逃げないように固定する。
じわじわと彼女の頬が熱を帯びて、瞳が潤んでいく。
……そういう反応は勘違いをさせると言ったのに、とナユタは思いながらも顔を寄せていく。
誰かにキスをしたいと思うのは初めてのことで。誰かとキスをするのは、お互いに初めてのことだ。
特別に愛する人と唇を重ねるのは、どのような心地がするものなのだろうと、期待と愛おしさと、若干の好奇心で胸が満たされて。
切なくなるほどのときめきに、ナユタは熱い吐息交じりに声を発する。
「……口づけても、構いませんか?」
そう、了承を求める。熱い眼差しと声色だけで顔を紅潮させたナマエは息を呑んでナユタから逃れられないようだ。
それがまた、ナユタが抱く愛おしさを増幅させる。
吐息が触れ合う。その愛おしい柔らかな熱に触れる
___その時だった。
「ナユタ検事!早急に報告したいことがございまして、失礼いたします!!」
ドアノックと同時に、現在扱っている案件に関わる警官がちょうどドアを開け放った。
『……………………』
「……………………あ、」
一瞬、気まずい静寂が生まれ、そして。
「っこ、こちらこそ!失礼しました!!お話の邪魔になりますよねすぐに出ていきますすみませんでしたごゆっくり!!」
ナマエは早口でそう言って、ナユタの手を払って脱兎のごとく走り去って行ってしまった。
残されたナユタは手持ち無沙汰になってしまった手を下し、警官のほうを振り向く。
「……それで?」
「へ?」
「早急に報告したいこととは、何でしょうか」
「あ、え、そ、その……」
「どうしました?……早く言いなさい」
静かに警官のほうへ歩み寄るナユタ。
綺麗な、あまりにも綺麗な微笑を浮かべて話しかけてくる検事に警官は恐れおののく。
柔和な笑みを浮かべる、穏やかな僧侶でもあるはずの彼の背には、恐ろしい般若が睨んでいるように見えるのだ。
警官は報告したかったことを急いで話し、ナユタは冷静にその報告を聞いていた。
「……そうですか。わかりました、報告ご苦労様です」
「はっ!!では、自分はこれで失礼いたしま、」
「ああ、言い忘れておりました」
「は?」
報告の最中、大したお咎めがないことに安心しきって首を傾げる警官に、ナユタは告げる。
「先程見た出来事は、安易に口外しないように」
「………………」
「返事がないようですが?」
「は、はははは、はいぃ!!絶対、誰にも、言いません!!」
「わかればよいのです。……下がっていいですよ」
警官は慌てて部屋を去っていきながら、始祖様に祈る。
……とんでもない場面を目撃するだけでなく、邪魔をしてしまった罪を懺悔しまくった。
それは非常に喜ばしい成長という変化であり、彼としてはこのまま良い方向にその想いが花開いていけば良いとただ願い、その成長の助けになれれば良いと単純に思っていた。
ただ、恋に慣れていないナマエはあまりに初心で、あまりにナユタを意識しすぎてしまうようで。
今まで普通に接してきた距離感がどうもうまく測れないようだった。
だから。
「ナマエさん。……あまり緊張ばかりされておりますと、身体を痛めますよ?」
ナユタの休憩時間のお茶会で。
自分を意識してしまってなかなか近づいてこないナマエを、ナユタは自分が座っているソファーの隣に少し強引に座らせてみた。
ナマエは気まずそうに「ごめんなさい」と小さく謝る。
「普段は、こうならないんですけど……ナユタさんの前だと、こうなっちゃうんです」
「そうですか」
微かに頬を赤く染めて恥じらうナマエは本当に可愛くて、こんな姿を見せてしまうのは恋人である自分だからだと暗に証言してしまっている無意識さに、嬉しさで頬が緩む。
とはいえ、隣に座るだけでこうも緊張されては身体が保たないだろう。初心な彼女はもちろん可愛いが、少しだけでも自分に対する恋心に耐性をつけて欲しいとナユタは思った。
(少々強引ですが……練習、ということで)
「ナマエさん。手に触れても?」
「え?え、……あ、の、……いま、ですか?」
「はい。今、です」
「……は、ぃ」
「ありがとうございます。では、失礼いたしますね?」
ナユタの手がそっとナマエの手に触れる。
一瞬、手が震えたがしかしナユタの手を振り払うことはない。手の甲、指の一つ一つを丁寧に触れて、改めて『小さく華奢な手だ』とナユタは確認する。
(……少々、乾燥しておりますね。彼女の肌に合う保湿クリームでも見繕いましょうか。……爪も、綺麗な形をしている。ここに色を差したら、映えるのでしょうね)
「……あ、あの、ナユタ、さん」
「はい?」
「………あまり、その見られると、さすがに……恥ずかしさもピークに達するというか」
既に限界だと言いたげなほどに頬を紅潮させているナマエに、ナユタはただ穏やかに微笑む。
「ああ……申し訳ございません。あまりナマエさんの手を観察する機会がありませんでしたので、つい」
「そんな綺麗なものではないでしょうに……見てて楽しいですか?」
「楽しい、といいますか……こうして触れ合えるのは嬉しいですよ」
「……ナユタさんは、本当に嬉しそうに笑いますね」
「本当に嬉しいのですから、仕方がございませんでしょう?
……では、ナマエさん。あなたの番ですよ」
「え……え!?」
聞いてない!と言いたげなナマエに有無を言わさず、
「先日申し上げましたでしょう?拙僧に触れ合う機会を与えて欲しい、円満なお付き合いをしていくために耐性をつけていただきたいと。
拙僧だけがあなたに触れるのは、平等ではございません。といいますか、一方的に接触するのは頂けませんでしょう?」
「まあ……そ、それはそうかもです、けど」
ナマエは肯定しながらもあまり乗り気ではないようだ。
だが、ここでナユタは引いたりはしない。むしろ畳みかけるべきだと優しく、しかし彼女がやる気になるように若干同情を誘うように、寂しさを滲ませて語りかける。
「……あまりそうした反応をされますと、拒絶されているようで寂しいのですが」
「う。……きょ、拒絶、じゃない、です」
「では、少しでも宜しいので慣れて下さいませ」
「……。じゃ、じゃあ、手に触れてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
ナユタは微笑んで右手を差し出した。……どうやらナマエは特別に心許した人間にはとことん弱いらしいというのは最近知ったことだ。
ナマエは恐る恐るナユタの手に触れて、じっと観察している。そして掌にある『龍の刻印』に視線を落とし、首を傾げた。
「これは?」
「ああ、これは龍の顎ですよ。拙僧の亡き父、ドゥルクの意志を継ぐと決めた時にいれたものです」
「ナユタさんのお父さんの……じゃあ、大切な意味があるんですね」
「ええ、とても。……『龍は屈せず』。それが、父の信念でございました。戦うと決めた相手の首を決して離さず、どこまでも食らいついて諦めることはない。
それを拙僧は、いえホースケも受け継いでいるのです」
「龍は屈せず……いいですね、そうした想いが継がれていくのは。きっとナユタさんのお父さんも、ナユタさんを誇りに思っているんでしょうね」
「そうですね。……そうであったら、嬉しいことです」
ふとナユタはナマエを見つめる。彼女はナユタの龍の刻印を指で優しくなぞり、労わるように見つめている。
彼女自身、きっと自身の尊敬する養父を思い出しているのだろう。その眼差しは柔らかく、温かい。
(__ああ)
ナユタはそんなナマエが愛おしくて、もう片方の手で彼女の頬を撫でた。
……その唇に、触れたくなったのだ。
恋愛事の経験が浅くとも、そうした欲が全く生まれないわけではない。
想いが通じ合った今ならば、なおのことだ。
ナマエがナユタへ顔を向ける。そして、ナユタの熱い視線で意図を察したのだろう。一瞬、わずかに身を引いた彼女の後頭部にナユタは頬を撫でていた手を差し入れて、逃げないように固定する。
じわじわと彼女の頬が熱を帯びて、瞳が潤んでいく。
……そういう反応は勘違いをさせると言ったのに、とナユタは思いながらも顔を寄せていく。
誰かにキスをしたいと思うのは初めてのことで。誰かとキスをするのは、お互いに初めてのことだ。
特別に愛する人と唇を重ねるのは、どのような心地がするものなのだろうと、期待と愛おしさと、若干の好奇心で胸が満たされて。
切なくなるほどのときめきに、ナユタは熱い吐息交じりに声を発する。
「……口づけても、構いませんか?」
そう、了承を求める。熱い眼差しと声色だけで顔を紅潮させたナマエは息を呑んでナユタから逃れられないようだ。
それがまた、ナユタが抱く愛おしさを増幅させる。
吐息が触れ合う。その愛おしい柔らかな熱に触れる
___その時だった。
「ナユタ検事!早急に報告したいことがございまして、失礼いたします!!」
ドアノックと同時に、現在扱っている案件に関わる警官がちょうどドアを開け放った。
『……………………』
「……………………あ、」
一瞬、気まずい静寂が生まれ、そして。
「っこ、こちらこそ!失礼しました!!お話の邪魔になりますよねすぐに出ていきますすみませんでしたごゆっくり!!」
ナマエは早口でそう言って、ナユタの手を払って脱兎のごとく走り去って行ってしまった。
残されたナユタは手持ち無沙汰になってしまった手を下し、警官のほうを振り向く。
「……それで?」
「へ?」
「早急に報告したいこととは、何でしょうか」
「あ、え、そ、その……」
「どうしました?……早く言いなさい」
静かに警官のほうへ歩み寄るナユタ。
綺麗な、あまりにも綺麗な微笑を浮かべて話しかけてくる検事に警官は恐れおののく。
柔和な笑みを浮かべる、穏やかな僧侶でもあるはずの彼の背には、恐ろしい般若が睨んでいるように見えるのだ。
警官は報告したかったことを急いで話し、ナユタは冷静にその報告を聞いていた。
「……そうですか。わかりました、報告ご苦労様です」
「はっ!!では、自分はこれで失礼いたしま、」
「ああ、言い忘れておりました」
「は?」
報告の最中、大したお咎めがないことに安心しきって首を傾げる警官に、ナユタは告げる。
「先程見た出来事は、安易に口外しないように」
「………………」
「返事がないようですが?」
「は、はははは、はいぃ!!絶対、誰にも、言いません!!」
「わかればよいのです。……下がっていいですよ」
警官は慌てて部屋を去っていきながら、始祖様に祈る。
……とんでもない場面を目撃するだけでなく、邪魔をしてしまった罪を懺悔しまくった。