TWST × とうらぶ
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With 今剣
ぽたり、と血が垂れたのは分かった。どこから?と拭おうとする右手を優しく掴まれる。
「あるじさま、ちがついちゃいます…ぼくにまかせて」
手際のいい今剣がティッシュと抑える用のタオルをくれる。ここの世界の男の子は随分と乱暴だ。入学式に突然現れた私と今剣は当然魔法なんぞ使えない。
魔法みたいな能力じゃねーか、と先日グリムに言われたけど……魔力はないから何もできない。ひ弱で、背も小さい。おまけに男子校に女一人となるとやっかみとは違う……なんだこれは、見下し?による乱暴な扱いに日に日に手を焼いていたところだった。
今日は魔法で風と共に飛んできた……何これ、鉢植え…?こんなの頭に当たったら死んじゃうかもしれないのに。顔にうまいことヒットさせてケラケラ笑ってる三人を睨む。
「ぼくのあるじさまにひどいことするんですね」
「今剣、手出しはだめよ」
一応投げかけては見るものの、今剣の本体である刀剣には黒い靄がかかってきている。彼自身の霊力が高まってきている証拠。そんな状態でひと振りすれば、あの乱暴者たちの指や腕は簡単に斬り落とされるだろう。
「……こら、およし。君たち、2年C組の子たちだね?……ふむ、ハーツラビュル寮生ではないようだ」
リドル寮長が生け垣を飛び越えてやってきた。仲裁に入ってくれたおかげで、3人はクルーウェル先生につままれていき、私は治癒魔法とやらをかけてもらっている。魔法、便利だな……。
「女性の顔に物を投げつけて出血させるなんて、紳士の風上にもおけないね……うん、痣などは残ってないけれど、痛いところはまだあるかい?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
「ぼくがやっつけたかったのに」
振り返るとむすっとした今剣がリドル寮長を見上げている。
「私闘は禁じられている、見過ごすわけにはいかないよ」
「しとうではありません!むこうがさきにあるじさまをけがさせたのです!うでのいっぽんくらいきりおとさなくてはつりあいがとれません」
「鼻血に対して腕一本は重くないかな……」
プンプン怒る今剣の頭を撫でるともー!と更に怒られてしまう。
「まえまえからあいつら、あるじさまにあしをかけたり…つきとばしたりしてるじゃないですか!」
「おや、聞き捨てならないね。本当かい?」
ぽろっと今剣が零したあれやこれや、はエースたちにも告げてない。学園長にも誰にも告げてないことだった。眉を顰めたリドル寮長と、しまったと青褪める私の顔を交互に見て今剣はリドル寮長に次々といたずら?の件を話していく。
「かいだんからおちてしまったこともあります。ものをこわされたり、あるじさまのきものをぬがされそうにもなりました!!だからぼくはおこってるんです!」
「いや、あの、リドル寮長…」
「……君、どうしてそんな大事を一人で抱え込むんだい?!ちょっかいや悪戯じゃ済まないじゃないか!」
うう、こうなるから言わなかったのにぃ……!!!
リドル寮長が大声を出したせいで合流したトレイ先輩とケイト先輩にも話が伝わり、三人……いや四人に囲まれてお説教を受ける。
「ちょっと、監督生ちゃん。流石にそれはアウトだよ」
「いや、ですが…」
「言い訳はおよし、情状酌量の余地もない。クルーウェル先生、ひいては学園長にも申告すべきだ。今回の件だって暴力と傷害事件だよ」
「ぼくがわるさをするあのゆびをきりおとせばいいじゃないですか」
「コラコラ、マフィアじゃないんだからそんなことするな。ちゃんと法律と校則がある、それによってきちんと罰が与えられるから」
今剣はずっと自分で落とし前を!と言ってトレイ先輩に宥められている。
「ひ、ひとついいですか」
「肩を持つ以外ならどーぞ」
ケイト先輩にしっかりと釘を刺されたので頷く。
「あ、あの…もちろん嫌でしたよ。身の危険を感じるまでになれば、今剣に出てもらおうとも思ってました。
その……誰にも言わなかった理由は、これくらいが当たり前の治安なのかなと…勘違いしてて…男子校だし…本丸も男士たちしかいなかったから、喧嘩が大事になって壁破壊とかよくありましたから」
「……む、まぁ……たしかにこの学園は血の気が多い生徒ばかりだが!理由もなく怪我をさせたり、不快な気持ちにさせることをよしとするわけないだろう」
「そーそー、ぜーんぶ度が過ぎてるからね、監督生ちゃんは許しすぎ」
結局当事者の話を、と戻ってきたクルーウェル先生にとりつく前に顔に青筋をたてた上級生三人が先にあれやこれやと以前からの悪質な行為を話し、三人よりも青筋を立てたクルーウェル先生に首根っこを掴んで叱られた。
クルーウェル先生に引っ張られ、学園長室にそのままの足で向かい、上級生三人と怒り心頭の今剣、そして激怒のクルーウェル先生に囲まれながら話を聞いていた学園長は私にため息を吐きながら向かい合う。
「まったく、ここをスラムか何かだと勘違いしてませんか!?心外です!!該当生徒はクルーウェル先生のお叱りを受けた三人だけですか?」
はい、と頷く。面白がって人が増えなかったことが幸いだ。10人くらいに囲まれたらひとたまりもない。
「停学処分ではぬるすぎます、退学にすべきかと」
「そ、こまで…?」
「あるじさま!!いっておきますけど、りどるりょうちょうたちがいなければあいつらのくび、とっくにおとしてるところですからね!!!」
「レディに対して物を投げて出血、階段から突き落とす、性的暴行を加えようとする奴らなんぞろくな魔法士にならんからな」
フン、と鼻を鳴らしてこちらを見てくるクルーウェル先生にこれ以上叱られたくないので黙る。
*ケイト・ダイヤモンド
オンボロ量の監督生ちゃんは何かとトラブルメーカー気質。トラブルを起こすっていうか、巻き込まれてるほうが多い印象…だったんだけど、先日そのイメージはひっくり返った。
鼻をタオルとティッシュで抑えてた監督生ちゃんは異世界人で女の子。まぁそんな子をこの学園の子たちが放っておくわけないって思ってたけど……まさかガチで暴力振られてあげく襲われそうになってるなんて思いもしなかった。しかもそのくらいの治安かもしれない、と許していたんだから驚き。
そりゃ相手は図に乗ってもっと大きなトラブルを起こすよね。監督生の使い魔のイマツルちゃんもものすごい怒ってた。子供にしか見えなくて可愛かったけど…。
「やっほー、監督生ちゃん」
「ケイト先輩」
眉間にシワを寄せながら本を読んでたのに、オレらがいると分かると花が咲いたように笑う。正直カワイイと思う……いーなー、トレイくんも妹いるって言ってたけどこんな感じなのかな。
「イマツルちゃんが購買部から出てきたから着いてきちゃった」
あんなにたくさんの荷物もつの大変そうだったしね。軽々と走り回ってるのは驚いたけど。
「おにごっこしてきました!」
「ふふ、よかったねえ……お茶でも入れようか」
……あれ、でも奥のコンロに火ついてるように見えるけど…?
「あ、あるじさま!!!おなべからおゆがなくなってますよ!」
イマツルちゃんが慌てた様子でコンロの火を止める。監督生ちゃんは魔法が使えないから、アナログなキッチンをわざわざ取り寄せてもらったと言っていたのを思い出す。
「あ、危な〜……もう、監督生ちゃん!オンボロ寮火事になっちゃったらどうするの」
「うっかり……火かけてたこと忘れてました」
うっかりさんなんだから……。もお〜!と頬を膨らませてるイマツルちゃん、最初はおこりんぼで少し過干渉じゃない?って思ってたけど監督生ちゃん相手に確認をいっぱいしたり、色々気にかけちゃうのは仕方ないなと思う。彼女は肝も座ってるけど結構抜けてるところある。
「お邪魔するよ…おや、ケイト」
リドルくんが箱と参考書を片手にオンボロ寮のゲストルームに入ってきた。
「これ、僕が一年生のときに使ってた参考書。この間いたずらで燃えたって聞いたから……あと、トレイが君たちにと」
オレ、ここに来ること別にリドルくんにもトレイくんにも伝えてないのに…。そう疑問に思ってると鍋に再び水を入れて沸かしに戻った監督生ちゃんには聞こえないように、リドルくんが小さく呟いてくる。
「ケイトは……お気に入りのものはお気に入りの場所で食べることを好むだろう?ってトレイが」
その表情は意地悪を言うトレイくんそっくりだ。揶揄われてると分かり顔に熱が集まるのを感じる。
「ちょ、揶揄わないでよ…」
「おや、ごめんよ。トレイと僕に筒抜けなのに気付いてないケイトがおかしくて」
もう、意地悪なんだから。オレが好きな甘さ控えめのプリンと監督生ちゃん、イマツルちゃんが好きなシュークリームが入ってる。二人とも喜びそう。
「リドルくんは?」
「君……ハートの女王の法律、第641条をお忘れで?木曜日の午後2時からはプリンを食べてはいけないんだよ」
「あっ」
「ここはハーツラビュル寮内じゃないから、特別だよ。他の寮生にはくれぐれも内密にね……監督生、僕はハリネズミのお世話があるから帰るよ」
「ええ、いまきたのにかえっちゃうんですか?」
「すまないね。少し体調を崩してる子がいるんだよ」
「あぁ……あの子、またぶり返しちゃったの?」
エースちゃんから報告を受けてた子だ。クルーウェル先生とかトレイン先生にも診てもらって薬を与えてよくなったと思ったんだけど……。リドルくんによると、まだ全快じゃないから様子を見ててあげたいからって。
「治って元気100倍になるといいですね、その子」
「そこまで元気になられても困るけど……そうだね、ハリネズミは元気に駆け回るくらいがちょうどいい」
脱走癖があるから手を焼く一面もあるけどね……リドルくんにプリンのお礼を言いつつ、オンボロ寮のゲストルームのソファに腰掛ける。イマツルちゃんと監督生ちゃん、グリちゃんで完成させたというゲストルームは埃っぽい空き部屋だったのが信じられないくらい綺麗になった。
「わーい!かすたーど!かすたーど!」
「グリムの分がないや…半分置いとこうかな」
「グリムちゃんは今頃ハーツラビュルでトレイくんのケーキ食べてるから食べちゃいな」
すぐ遠慮をする目の前の子を見やる。そっか、と納得した様子でシュークリームを食べている。いや一口ちっさ……。
「あまくておいしいですね、あるじさま」
「おいしいねえ」
「ねね、そういえばさぁ…監督生ちゃんの異能力パワーは前に聞いたけど、二人の出会いはどんな感じだったの?」
「あ…ふふ、今剣。拗ねないで」
「え、聞いちゃまずかった?」
監督生ちゃんの言葉にイマツルちゃんを見ると、確かにシュークリームをお皿に置いて膝を抱えてしまっている。監督生ちゃんはそんなことないですよ、と笑いながら教えてくれる。
「はじめに、政府から初期刀を頂くんです。初めての相棒みたいな…?5振りから選んだのは加州清光という男士でした。
その後、刀剣を鍛刀するための鋼やら石やらの素材を頂いて初めてなのであれこれ教えてもらいながら薬研藤四郎という短刀を顕現させました。
私が審神者として選ばれたとき、とっても歴史改変を目論む敵対勢力に対して審神者たちが人手不足で…資材の大盤振る舞いだったんです。だから最初はひたすら刀剣を鍛刀して顕現させてました。今剣は、たしか……」
「じゅうばんめです」
「ふふ、そうだね」
「ぼく、あるじさまのいちばんになりたかったのに」
え〜…かわいい、そこで拗ねちゃってるんだ。まるで小さい子のようにそう小さく呟くイマツルちゃんの頭を撫でてる。
「あら、働きぶりは一番だったんじゃない?私が寝なさいと行っても野山をかけ巡っては他の子にも怒られてたし」
「……またそのおはなしですか?」
「もちろん、聞き分けの悪い刀の代表だからね」
後半はじっとりした視線を送りつつケラケラ笑う監督生ちゃんと、相変わらず頬が膨れたままのイマツルちゃん。頑固なところはちょっと似てるんだ。お手洗いへと席を外した監督生ちゃんを見送ったあと、イマツルちゃんがオレの隣へと座ってくる。
「おみみをかしてください」
「なになに?」
「あるじさまはぼくのあるじさまですが、あなたはあるじさまにとくべつおやさしいので…とくべつにゆるしてあげます」
「エ゛ッ」
「ふふ、おとことおとこのやくそくですよ!あるじさまをなかせたりしたらゆるしませんからね」
ちゃっかり小指と小指を結ばれてる。これなに?と聞くと、監督生ちゃんとイマツルちゃんの国の文化なんだそう。約束守れよ、破るなよって儀式に近い行為らしい。
「……ねえ、オレそんなだだ漏れ?」
「はい、あなたはよくあるじさまをみてますから」
はっず………。熱くなる顔をパタパタ手で仰ぐと監督生ちゃんの好きなものを色々教えてくれるイマツルちゃんの言葉を慌ててスマホでメモする。
甘いものやふわふわしてるものが好き、お散歩も好きだし意外と山登りするアウトドアな一面もあるんだとか。
(あれ、いつの間に仲良しさんに)
(はい、おとこのやくそくなかまです!)
(約束?今剣、無理やり交わしてない?)
(かわしてません、どういのうえです!…ね?)
(う、うん…脅されたワケではないよ)
(あるじさまもみてください、ふしぎないたですよ)
(あ、そうそう。イマツルちゃんがケーキにめちゃくちゃ反応しててさ…監督生ちゃんはどれが好き?今度三人でカフェ行こうよ)
がんばれ、恋するけーくん…!
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