TWST × とうらぶ
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With 小狐丸と鳴狐
「ぬしさま」
ウトウトしてると声をかけられる。……いつの間にブランケットがかけられている、足元にしゃがんでいる小狐丸を撫でると目元が細まる。
「うたた寝してた……小狐丸が?ありがとう」
「いいえ。そろそろ肌寒くなりますからね」
小狐丸は撫でられるのが好きだ。大きい体格に似合わず、可愛がられるのが意外にも好きな少し変わり者。私は小狐丸の髪の毛なのに狐の耳にしか見えないところが好き。
「よしよし、小狐丸は可愛いね」
「ぬしさま、もしや揶揄っておりませんか?」
そんなことないと返すも少し不服そうな表情だ。長かった合戦を勝ち抜いて任務が終了後本丸が解体し、元の時代に戻ろうとしている最中にここツイステッドワンダーランドという世界へ私と小狐丸、そして鳴狐の狐コンビはやって来た。
魔法というものはファンタジーでしかしらない私と、映画や読み物語でも存在がない時代を生きていた2振りは大変に戸惑ったものの、9月の入学式からもう早3ヶ月ほどたち、ホリデーシーズン……分かりやすくいうと冬休みの時期に差し掛かっていた。ここの冬は本丸で過ごした冬より寒い。私の本丸は確か…美濃、岐阜県の山岳部だったからそれなりに雪も降ったから寒かったけどそれより寒い……もしかしてここが隙間風多いからなのかも?
「寒いや……小狐丸あったかくして」
「仰せのままに。…鳴狐は迷ってるんでしょうか」
そういうと私が座っていたソファに小狐丸が腰掛け、私を膝の上に載せてくれる。短刀の子たちを膝上に乗せるのも好きだったけど、太刀の子たちに乗せてもらうのも好き。小狐丸はなが〜い髪の毛もあって本当に暖かい。
「ん〜…お供の狐がいるから大丈夫かと思うけど……グリム、足音とか聞こえる?」
「聞こえねぇし見えねえんだゾ」
窓辺に短い手足で立ち上がるシルエットの可愛いこと…。迎えに行く?と相談していると同時に扉が開いた。
「あるじどの〜!ただいま戻りました!」
「戻った、あるじは寒くない?」
寒そうにやってきた2人を暖炉の前に連れていけばぐで〜と伸びてる。鳴狐の耳が真っ赤だ、外は寒かったんだろう。
「買い物ありがとう、寒かったでしょ……小狐丸もきて」
小狐丸と鳴狐とくっついて暖炉の前でぬくぬく。ここに来てからの新しい日課だ。本丸に囲炉裏はあっても暖炉はなかったからね。
「今度晴れたら壁の修復をしようか…隙間風が寒い」
「そうしましょう、そうしたらグリム。あなたもですよ」
「え〜オレ様もなんだゾ?」
グリムも寒いのなくなるよ、と言えばしぶしぶ了承してくれた。鳴狐の肩に頭を乗せると狐が私の肩に乗っかってくる。あったか〜……ぬくぬくしてるとまた眠くなってくる。
「あるじ、ここで寝ちゃだめ」
「鳴狐の言う通りです、風邪を引きますよ」
「今日はここに布団を敷いて寝る」
だめに決まってるでしょう、と小狐丸が怒ってる。二人がサンドイッチしてくれたら風邪ひかないと思うんだけどな。
「よ〜す!うわ、すげー集まってる」
「あ、エース!デュースもいるんだゾ」
「トレイ先輩が監督生たちにってケーキ作ってくれたんだ、リドル寮長は紅茶くれたぞ」
皆でお茶会しよう!とエースくんたちがいろいろと持ってきてくれた。エースくんたちと身長が近いから洋服のお下がりもいくつかもらってる。それを着用するたびに小狐丸や鳴狐がちょっとムスっとしてるんだよね…二人の軽装用にも貰おうと思ったけど私が買ったほうが良さそう。
「んま〜!美味しい紅茶だねえ」
「ほう……緑茶とは異なりますが香りが良いですね」
小狐丸たちも気に入ってくれたみたい。きなこもちやみたらし団子、練切など和菓子を中心にしか食べたことのない小狐丸たちはトレイ先輩のケーキを初めて食べた時の反応は未だに忘れられない。しばらく固まってたもんなぁ……。
「今日はミカンゼリーとかもあるって」
「え〜!みかん好き、嬉しい」
いっぱい入ってる。誕生日のときケーキ屋さんに連れてってもらったときを思い出す。我が家はホールケーキより好きなケーキを2個買ってもらうスタイルで、それを円にして写真を撮って食べてたから何を買おうかワクワクしてたな。
「ぬしさまが先に選んでください、私たちは皆のあとで」
「だめだよ、こういうのはいっせーので指差すの」
「指差したものが同じだったらどうするのです?」
私の肩にいた狐がそう尋ねてくるので、そしたらじゃんけんで決めるんだよと返す。奇跡的に、か小狐丸たちが遠慮してか欲しいものは被らずにそれぞれケーキを手に取る。
「監督生はホリデー、ここに残るのか?」
「そりゃあね…学園長に旅行誘われたけど、何かあったら申し訳ないし。羽伸ばしてきてって伝えた」
帰るところもないし、オクタヴィネル寮などの一部の人魚さんたちは流氷があるからとホリデーは帰らない生徒もいるそうで、学園は完全にもぬけの殻になるわけではないらしい。
私としてはのびのびと散歩したり、雪も結構降るみたいだから雪で遊びたいなあって考えてる。
「あるじ、これ何?」
「それはバナナ。南国のフルーツだよ、優しい甘さが特徴」
「ばなな」
鳴狐はここで初めての食べ物をたくさん食べてる。特にフルーツはやっぱり分からないみたいで今みたいによく尋ねてくる。初めてキウイを食べて思ったより酸っぱかった時の鳴狐の反応はとっても可愛らしかった、今もその話をするとちょっと拗ねちゃうけど。
「コギツネ、マルもナキギツネも……やっぱり狐なのか?」
「やっぱり?」
「名前に狐が入ってるだけで……例えばレオナ先輩のような獣人ではないよ」
そう言うとそうなのか!?と返ってくる。特に小狐丸の髪を見ながら……わかる、耳みたいに見えるよねえ。
「小狐丸の耳はちゃんとあるよ、私も最初間違えたっけな」
「たしか私にくださる用に、ぬしさまは油揚げを両手に抱えて…駆け出して転んで泣いておりましたね」
「余計なことまで言わんでいい」
「鳴狐も油揚げ渡された」
「わたくしめが美味しくいただきましたぞ!アレは大変に美味でしたなぁ」
鳴狐たちにも余計なこと言わんでいい、と突っ込む。この2人はこうして私を揶揄う節がある。
ケーキを食べ終えてダイニングテーブルからソファに移動する。最近私は小狐丸のヘアアレンジにハマってる。レオナ先輩みたいな三つ編みヘアが可愛いと思って小狐丸の髪の毛で修行してる。
「ぬしさま、今日は上手くできそうですか?」
「うーん……小狐丸の毛はサラサラ過ぎて難しい」
毛束がどっか行ってしまう。よく私も櫛を通してるけど本当に惚れ惚れする毛並みだ。
「ケイト先輩とかのほうが上手かも」
「何を仰います、私はぬしさまに結ってほしいのです」
そうだな、君たち狐は意外と焼きもち妬きだからな。ぽふぽふと頭を撫でる。
「鳴狐も髪を伸ばしたらどうです?あるじどのに結ってもらえるなんて中々ないですぞ」
「……視界が遮られるのは邪魔だ」
確かに。私が今以上に髪を伸ばさないのもそれだ。思い切り短いか、結える長さかでないと髪の毛が落ちてきて視界が狭くなるのが嫌でずっと結うか耳にかけている。
「そういえば、監督生は準備してるんだろうけど……2人は監督生に用意してんの?」
「用意…と申しますと?」
「クリスマス!クリスマスにプレゼント交換とかすんじゃねえの?」
エースくんの言葉に鳴狐を含めた3人(?)が首を傾げる。
「いいよ、私は」
「なりません、その……ぷれぜんと交換というのは?」
「初めて耳にした」
ずい、と両脇から顔が迫る。私が元いた時代だともう馴染んでいる西洋の文化でそもそもの宗教観の違いによる祝日で神の誕生日としてお祝いする日であり、私達の国だとお祝いにあやかってプレゼントを親から子などへ渡すイベントごとだと説明する。
「な、なぜそんな大切なことをお話してくださらなかったのですか!もう今からじゃ工面のしようがございませぬ!」
「全くです、私たちにぬしさまへの感謝の気持ちを伝える機会すら遠ざけるなんて…」
「あるじは用意してるのか?」
「わー、静止静止っ!そこに座りなさい!主をそうやって責めないで!!」
矢継ぎ早に口々に文句を言うもんだからそう言ってソファに座り直させる。
「まず!私から使い魔である貴方達のアルバイト……つまり金銭を稼ぐ行為は禁止していますね」
「……はい」
「その理由は覚えてますか?はい、鳴狐」
「まほうに慣れてない上にあるじ意外の人間に慣れてないから」
その通り、と続ける。
「小狐丸と鳴狐、そしてお供の狐は日々私のために献身してくれているでしょう。そのお返しとしてのものだから、私はいいと言ったの」
分かった?と聞くとはい…と小さく聞こえた。
「ぬ、ぬしさま、もしやこのためにあるばいとを?」
「いや日々の貯蓄のためでもあるよ…ペンとかノートとかそういう必要経費もあるからね」
私自身の最低限の服もほしいし。雪が降るというのにニットの1枚もないなんてこのホリデーを超えられない気がする。だから麓の街にも洋服は売ってるとケイト先輩から聞いたから、ホリデー前に買いにいくつもり。
「ちゃんと当日、ご馳走作ってパーティするから楽しみにしててね。もちろんグリムにもあるよ」
「オレ様にもか!?」
「もちろん、2人でバイト頑張ったんだから」
私へはいいからね、と断りを入れておく。私は人間だし、元の時代でもアルバイトしたことはある。今の年齢……はきっと26(のはず)。審神者として選ばれたのが19。もう過去の時代で何回も誕生日を迎えたから、何歳なのか最早よく分かんないけど……。
「いーの?監督生、少しはわがまま言いなよ」
「何を何を……小狐丸たちを除いたら私が1番年上なんだから」
「え、待て、監督生っていくつなんだ?」
「誕生日を迎えた数で計算すると26、元の時代に帰った上でここに来たと仮定したら19……かな、たぶん」
「「「に、26ゥ!??!?」」」
おお、綺麗に揃った!エースくんたちは同級生だと思っててくれたみたいで嬉しいね。童顔なのもあるのかな。
「そうそう、お姉さんだからね…グリムも一生懸命働いてたけど人間の手足と比べるとハンデがあるでしょう?だから私よりか低いお給料なのにほぼほぼ同じ時間で働いてたし、内容は違えど作業量も変わらなかったし……そのお金はツナ缶でもなんでも自由に使いな」
「そしたら鳴狐たちはお兄さんになる」
「こら、話を戻すんじゃない。主の気持ちを無下にするつもり?」
そう言うとむぅ、とした口で押し黙ってる。
「私だって自分用にお洋服買うよ?暖かいニット買うんだ、あと靴下とか…ここは寒いからね」
*フロイド・リーチ
「お、おぉ……!油揚げがこんなに…!」
コンゴウフグくんが珍しくはしゃいでる。ホリデーシーズンに帰る家がないからって理由で学園に残る小エビちゃんに「よかったらクリスマスパーティしませんか?」って誘われたのがきっかけ。
パーティーメニューはモストロ・ラウンジで作るオレたち馴染みの料理と小エビちゃんたちの国の料理を作ろうとキッチンに呼んだ。事前に必要な調味料や素材なんかはウミウマくんに頼んでおいてもらって、コンゴウフグくんとキツネダイちゃんが運んでくれた。いーなー使い魔、オレもほしい。
「狐の分もそこに入ってるから……1袋だけ避けておこうか」
「わたくしめにまで!?なんとありがたき…!嬉しくて小躍りできそうです!」
キツネダイちゃんの肩に器用に巻き付いてる狐がそう言うと小エビちゃんも嬉しそうに笑う。
「見たことねーモンばっかある〜……どんなの作るの?」
「そうですねえ、まずは小狐丸大好物のお稲荷さんと…パーティ映えする和食って難しいんですよね」
「大変に興味あります、調理工程を見ていても?」
「もちろん!春の季節ならちらし寿司とかでもいいんだけどね」
チラシズシ?お祝い用のメニューらしい。
「きんぴらがいい」
「おお、いいね。鷹の爪もあるし…わあ、本丸を思い出す食材たちだ……じゃあお稲荷さんと、きんぴらと……肉じゃがなんかも好きそうだから作ろうか、あとは…」
「ぬしさまのいんげんの白和えが食べたいです」
「ごま和え」
「はいはいどっちも作ろうね、今日はパーティだから」
シラアエ、ゴマアエ……ゴマは分かるけどシラアエってなんだろ?想像つかない。手伝おうかとも思ったけど、手順も何も分からないから下手に手を出さないで置こうとアズールと見守ることにした。
小エビちゃんがコンゴウフグくん、キツネダイちゃん、そしてアザラシちゃんにうまく分担を振り分けて次々と作り上げていく。煮る料理が多いんだな〜。あとショーユっていうダイズって豆から作られたしょっぺえ調味料をドバドバ入れるものも多い。
「とにかく日本の料理はしょっっぱいです、塩気で保存食作ったりしてるので塩分過多なんですよね」
「ほう、塩で…」
「とにかく日本は縦長の国で、北と南で大きく気候が異なります。おまけに島全体で湿度が高い。こちらでいう『ちいず』などはすぐに腐ってしまうような環境の故、塩などで水気を抜いて漬けて保存したり、あとは干物などの保存食が多いのです」
「漬物は各地で有名所があって美味しいよね、燻製したのもあるし」
へ〜〜。漬けるっていうとピクルスくらいしか思い浮かばない。あれもビネガーにいれてるから水分たっぷりだし、全く違うもんなんだろうなあ。
「すげ〜美味そ!」
「よし、和洋折衷のパーティご飯食べましょう」
おいなりさんって呼んでた皮?にご飯詰め込んでたやつを食べる……皮が甘くて、ご飯は少しビネガーの酸っぱさがあってうまい。このピンクのシャキシャキしたやつがすこししょっぱいのと辛みがあっていい、うんま!
「めっちゃ美味いじゃん、これ!」
「ぬしさまのお稲荷さまは世界一ですから」
なんでコンゴウフグくんがドヤ顔してんの?きんぴら、と呼んで炒めた料理も甘じょっぱくてちょー美味い。
「あんなにしょっぱかったショーユがここまで変わるとは……香りもよく食欲をそそりますね」
「美味しい」
キツネダイちゃんと狐も美味い!って言いながら食べてる。アザラシちゃんも色んなもんつまみながらすげー食ってる。小エビちゃんはジェイドの胃袋の大きさにただただびっくりしてたけど。
「美味しすぎて進んでしまいました、ご馳走さまです」
そのあとは小エビちゃんが使い魔の2人に今の仰々しい感じのキモノって服じゃなくて、過ごしやすい室内着をあげてた。
「ぬしさま、ありがたき幸せ。ありがとうございます、言葉で表しきれません」
「ありがと、あるじ」
小エビちゃんにお礼を言ってる使い魔くんたち、超嬉しそー。見たことないくらいニコニコしてる。冬用と夏用があるみたいで、冬用のはモコモコしてた。
「か、かわいい〜!鳴狐、隠れてないで出ておいで」
「あるじ、悪意がある」
「ないない、似合うと思うから買ったのさ…小狐丸もかわいい〜モコモコあったかいでしょ?」
「そもそも私たちは暑さ、寒さは無視できます故……ですが手触りはとても良いです。さすがぬしさま」
もともとは腰にある剣が本体で、そこから意思やらを小エビちゃんが与えて人の姿にしてるらしい。小エビちゃん魔力ないって扱いだけど、結構な能力持ちだよねえ。
「ねーねー、結構積もってきたしあとで雪合戦しようよ」
「おお、いいですね!かまくら作ろう!」
(これがかまくら……本当だ、この中は寒くないですね)
(ここに暖かい飲み物とか持ってきて飲むと格別ですよ)
(ぬしさま、ここでは駄目です、敷物がないので体が冷えてしまいますから)
(ここでは流石にね…暖炉でお湯沸かしてお茶のもう)
(鳴狐、雪だるまつくった)
(おう………君は本当に独特な雪だるまを作るよね、毎回)
私の中でお化粧を施している鳴狐くんは絵を描かせたら上手いけど、粘土や雪みたいので形成するものに関してのセンスは壊滅的な気がする。陶芸を一緒にやってみたい。
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