TWST × とうらぶ
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With 三日月宗近
*デュース・スペード
「はっはっは……皆元気だなぁ」
「お、おい監督生……ミカヅキも平気か?」
随分と背の高い大きな監督生の使い魔が姿を表した。ハーツラビュルは寮の中でも1番寮生が多い。リドル寮長が目を光らせているけど、こうして裏で悪さをする奴も多い。
2学年の7人が寄ってたかって監督生とグリムにイチャモンをつけてたことから始まった。止めようと僕とエースが間に入ると更にヒートアップし、水属性の魔法を当てようと放ってきた。燃やされたり草で切り刻まれるより証拠が残りにくいけど、水とはいえ当たれば骨折くらいの怪我はする。
痛みも冷たさも来ないと目を開けると、ミカヅキがその大きな服の袖をカーテンのようにして前に立っていた。
「してお前ら…元気なのは良いが、わが主を攻撃しようとしたと認めるか?」
かたな、と前に教えてもらった大きな刀身に手を当てるミカヅキ。チャキ、と金属製の音が鳴る。
「はっ、うるせえよ!使い魔だかなんだか知らねーけどよ……使い魔居なきゃ何もできねーんだろ!」
1人がそう野次ると他の奴らが大声で笑い出す。
「お前ら…!」
「これ、坊は手を出すんじゃあない……主、よいか?」
思わず前に出そうになるとミカヅキに肩を押される。ミカヅキは1000年くらい刀として生きているようで、本気で長寿だ。自分のことをじじいと呼ぶし、僕らのことを坊と不思議な呼び方をする。
「だめに決まっているでしょう、死人を出すつもりですか」
サラッととんでもないことを言う監督生を二度見したあと、エースと目が合う。……エースもマジで?って顔だ。
「私は気にしていないから手出しはご法度……こら刀から手を離して、宗近……宗近!」
監督生が前に出てくる。ニコニコとしているミカヅキだが、よく見ると目が笑ってない。
「因果応報は大事なことだと思うが」
「今の宗近では手加減出来ないでしょう、だめです」
「いいんじゃね?先に仕掛けてきたのあっちじゃん」
「それはそうだけど、大丈夫。ほら……あそこでリドル寮長が見てる」
指差した先を見ても誰もいない。その発言に驚いた2学年の奴らも振り返ってる。
「え?僕には見えないんだが……」
「なんだ、見えないのか?木陰に隠れているぞ」
ミカヅキにも見えるらしい……全然見えないが?
「というわけで首を跳ねられたくないなら、お引き取りください」
監督生がそう言うとミカヅキの圧に負けたのか、走り去って行く。その後本当に木陰からリドル寮長が出てきた。
「本当に居たんですか!?」
「ハッタリなわけ無いでしょう……宗近、分かってて抜刀しようとしたのは見過ごせないですよ」
監督生がミカヅキに詰め寄っている。ミカヅキは両手を上げて降参のポーズをしている。
「峰打ちにするつもりだったぞ」
「もう……エースくんやデュースくんを始めとした皆は未来ある若い人間なんですよ」
ミカヅキがどんどんしょぼくれていく。僕らがまあまあ、と宥めても監督生は断固として譲らなかった。
「デュースくんたちにも言えるけど…この世界には私のように魔力がなかったり、低い?人たちもいるんでしょう。そういう人たちにこの名門校に通う皆が魔法を使用したらどうなるかは分かるでしょう?
神聖で誇れる力をふるう相手はきちんと見定めないと、その価値ごと下がってしまうから」
*マレウス・ドラコニア
「おお、まれうす坊。奇遇だな」
「坊…?」
オンボロ寮の前を歩いていると、普段の仰々しい格好とは打って変わった装いの人の子の使い魔が声をかけてくる。
「あぁ、すまないな。俺からしてみれば皆坊なんだ」
「……ミカヅキの年齢は?」
そう尋ねると1000年くらいだな、と返ってくる。もともとは腰に携えている刀剣を人の子の力によって人の姿として想いと力を与え顕現させたと以前に聞いた。
確かに刀剣なら手入れさえ行っていれば1000年くらい持つのだろう……納得がいく。
「以前、人の子とお前たちは戦いに明け暮れていたと聞いた……ここは平和だろうな」
「腑抜けになるのではないか?と心配になるくらいには平和だな…だがしかし、戦争や争いはない方がいい。俺たちは武器だ、この身で相手を斬り倒してきた……その分血も浴びてきた。それが嫌だの思ったことはないが……今のほうが主はよく笑っている」
「……そうだな、従者からここまで慕われる人の子は幸せだな」
「何を言う、お前も一人でいたら探し回されているではないか……ほら、やってきたぞ」
ミカヅキの言う方向を見れば、セベクとシルバーがこちらへ駆け寄ってきているのが見えた。
「僕はたまには一人になりたいんだがな……」
「はっはっはっ、まあそう嫌ってやるな」
「嫌ってなどは…」
「俺ら従者は主が全てだ、主が笑えば嬉しいし主が泣けば何よりも悲しい。主が道を踏み外そうものなら身を削ってでも止める、主が苦しむのは見たくないからな」
「……人の子もお前たちを嫌っていたのか?」
そう尋ねると顎に手を当て考え始めたミカヅキ。思い出したようでニコニコと笑いながら教えてくれた。
「実はな、俺たちは本丸というところで戦うために歴史を逆行していた…つまり今いるこの時間から遡って、歴史を改変しようとする奴らを斬っていたんだ」
「…?ふむ」
「今の主の正式な年齢は、主にも俺にも分からない。戦いが終わって本丸は解体されて、何もかもが元に戻る際にここへ来たからな……俺が初めて主のもとへ顕現した日はここにいる誰よりも小さくて幼かった」
年齢が分からない……人の子の見た目はエース・トラッポラやリドル・ローズハートと同様に見える、が過去に逆行し戦った時期が長いからこそ分からないのだろう。
「今の主よりも前の主を含めても、1番最年少だったからな…俺も気を遣いすぎて、1度泣き叫ばれたことがある。
『三日月はいつも私を見張ってる、私はどこにも逃げないのに。本丸内の散歩くらい一人で行かせてよ!』とな……ふっふふ、今のまれうす坊に似ているとは思わんか?」
ミカヅキの手が頭に伸びてくる……頭を撫でられるのなんて何年ぶりだ?目を見開いて固まっているとセベクの怒鳴り声が響いてくる。
「き、貴様!マレウス様になんて不敬を…!」
「セベク、いい。…ミカヅキ、僕は子どもではないぞ」
「気を悪くしないでくれ、1000年も生きてると100年そこらの者も10年も変わらんよ」
そんなことはない、と言いたくもなるが1000年も生きてる妖精族は珍しい。僕自身よりも遥かに長寿のミカヅキには言い返せない、ましてや更に幼かった頃の人の子と同じことを言っているとなると……。
セベクの声が聞こえたのか、オンボロ寮から人の子がやってくる。
「わ、ディアソムニアの皆さんお揃いで……どうかしました?なんか大きい声聞こえましたけど」
「俺がまれうす坊の頭を撫でてな、叱られてしまった」
「何してるんですか、宗近…!この間話したでしょう、マレウス寮長やレオナ寮長、それにカリム寮長は王族の方だと!」
「すまんすまん、愛いことを申していたのでな」
申し訳ありません、と人の子が頭を下げてくるので止める。僕を怖がらない人の子も珍しいが、子供扱いされるのは尚珍しい……今後もないだろう。
「愛い…??まぁマレウス寮長が気分を害してないなら……宗近、気をつけてくださいね」
*エース・トラッポラ
「そういえばオレ、お前の名前しんねーわ」
ほんとにたまたまその話になった。たしか、元いたところと文字が違うから名前の読み書きしてた。そういえばオレ、監督生の名前しらねえ…監督生の使い魔のミカヅキも基本「
「あ、名前?名前は明かしてないね」
「明かしてない…?どゆこと?」
「こっちでは、真名を知られたらよくないって話は聞いたことない?」
「マナ?」
聞けば名前にはそれだけで力が宿るから真名を他人に明かすことはタブーの考え方があるらしい。呪術的な…ちょっとオカルトチックな考えの一つだ。
「ここでは分からないけど、例えば人を呪うときってその人の名前と顔、爪や髪の毛なんかが必要だったりするくらい名前って大きいものなの。
三日月宗近……つまり彼らはものに宿る神様、付喪神と似たようなものだから。神様に名前を知られたらよくないって聞いたから、誰にも明かしてないの」
「へ〜…一生自分の名前呼ばれないのってなんか変な感じしそう」
「それはあるね……私、今いろいろとあやふやで」
監督生がそう続けると、デュースもレポート書くのやめて見てる。
「まだ人間なのかなって」
「………え、どういう意味?」
思ったよりも小さい声が出た。まだ?まだ人間なのかな?
「あくまで私の国の神話の話ね、神様と同じ食べ物を食べたり、神様からもらった食べ物を食べたり、さっき言った真名を知られたりするともう戻れなくなるって迷信……なのかな、そういうものがあるの。
私はいわゆる付喪神のような刀剣男士たちを生み出して、寝食を彼らとともにしてきた。歴史改変を目論む犯罪者たちを止めるために過去に逆行して戦ってきた。
時間のことでもそうだし、迷信的な意味でもだいぶ人間離れしたことしてきたから。
本丸解体のタイミングでここにやってきたから、私やっぱり戻れないのかなぁって」
「……つまり監督生、神様ってことか?」
デュース、お前もう黙ってろ。読解力がないデュースをしばいて黙らせる。
「分かんねーけど……帰りたいの?元のとこ」
「戻ったところで私何歳から始まるのかな〜とかいろいろ思う……審神者になったの、確か……10歳くらいだったから」
「はぁ!?監督性の世界ではそんな小さいうちから歴史を守れとか言われんの?!」
「年齢は関係ないよ、政府によって審神者の能力があるって見出されただけだから……でも確かに他の本丸の審神者で私より幼い人見たことなかったから…同じ10代の人はちらほらいたけどね」
思ってたよりも壮絶な監督生のこれまでの話を聞いてオレもデュースも黙りこくる。10歳で親元から離れて、刀の持ち主として手入れやら管理しながら、歴史が変わらないように戦ってたってことだよな?……今の監督生の見た目はオレらと変わらないくらいに見える。少なくとも6年は離れてたんだ、もうよくわからないって言ってたしもっとかもしれないけど。
「元の……元のとこに帰ったらミカヅキはどうなるんだ?」
「あぁ、それはね本丸が解体されるときにみんなを解放してたんだよ。
戦のために私達は政府によって集められたからね、戦が終わればゆっくりできるでしょう?
泣いて嫌がる子もいたけど……やっぱり刀である以上、戦のための道具となってしまうから顕現したままだと辛いかなって……全員できたかは記憶が曖昧だから残してきちゃったかもしれない皆が、今はただただ気がかり」
ここにきてもまだ、気にかけるのは使い魔たちなんだ。なんつーか……使い魔想いとかそういうの超えてる。ぐーっと伸びた監督生の手元を見ればレポートいつの間にか終わってる。
「よし、レポート終わり……あ〜慣れない文字は難しいねえ」
机に伸びた監督生はオレとデュースが必死こいてレポートをこなしてる内に寝ちゃってることに気づいた。
「おぉ、坊たち……勉強か?偉いな」
ミカヅキだ。指を立てて静かにするようにしても通じなかった。寝ちゃってる、と言うと知ってると返ってきた。
「坊たち、主の真名を聞いたのか?」
「なんで知って………こっそり聞いてたワケ?」
そう睨むと肩をすくめて酷い言い草だとミカヅキは笑う。監督生が寝ているのを覗き込んで確認し、隣に座り込んで頭を撫でている。
「なんだ?俺は疑われているようだな」
「そりゃ疑うでしょ」
「はっはっは、厳しいな……俺たちは平たく言うと主の言うとおり神だ。そして主は俺たちに取り囲まれすぎた、神気を吸いすぎて本丸が解体される前から人間じゃあない。
真名がどうこう、神からの食べ物がどうこうの話じゃないさ」
淡々と話すミカヅキに背筋が寒くなる。ぞわぞわした何かが這いずりよってくるような感覚にペンを落とす。
「主の真名なんぞ分からなくてももう現世からは隠せる。ただ物事には順序があるだろ?」
そう笑顔で言い放つミカヅキにいつもは反射的に言葉を返すデュースでさえ、黙りこくっていた。
(主には俺が話すから、くれぐれも内密にな)
(言えねーよこんな話…!)
(こ、ここで人間と暮らしたらそれがなくなるとかは…?)
(うむ、ないだろうな…それに主を手放すつもりはない)
(どうこうできるわけじゃねえし、別にいいけどさ……泣かせるようなことはすんなよ)
(無論。そのために順序を踏んでいるからな)
(……同情するよ、監督生に)
なんか書きたいの書いたらヤンデレみたいになっちゃった、どうしよ……。
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