13 With …?
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蜂須賀虎徹
夕方頃に目を覚まして頬にくっきり残った畳の跡を撫でながら部屋を出る。もう、誰か起こしてくれればいいものを。今日は朝から政府職員の対応をしたとはいえ、1年以上も空けていた本丸ではやること、確認することがいっぱいある……それこそ今の私に一気にふりかかるとキャパオーバーなくらいには。
まず、政府からの溜まりすぎてる書類。近侍に読ませてもいいものかどうかすら怪しいものが多いから皆政府から口頭で指示があったもの以外の書類は律儀に取っておいてくれてた。
もう日付が過ぎた研修や演練会場の変更のお知らせ、近隣の本丸の合併事情などなど……内容は多岐にわたるし一応見ておいたほうがいいものも紛れてる。
「主……うわ、これはまた……」
「げ、はっちー……」
「げ、とはなんだい?あなたを心配して様子を見に来たというのに」
はっちーは世話焼きの兄気質。だからよく面倒を見てくれる……けど怒らせたら怖い。開封して捨てるもの、保管しておくものと簡易的に仕分けしてるせいでしっちゃかめっちゃかの机を見て眉を顰めてる。
「夕餉のあと直ぐ部屋に篭ったって加州から聞いてね……赤封筒以外捨てたらいいだろう」
「そういうわけにも……ほら、新任のころいろいろ助けてくれたご近所の本丸。あの審神者さん、体調が芳しくなくて審神者を一家の方に代理交代したとか……私的には大事なこともあるから」
「……あぁ、あの。最近見かけないと思ったらそういうことか」
「ね、寂しいね」
「主が寂しいんだろう……君はあの婦人によく懐いていたしね」
「だって優しく色々教えてもらったから……明日、ここにお花とか果物渡しに行きたいんだけど、はっちー空いてる?」
「うん、付き添わせてもらうよ……なんだか懐かしいね、西瓜を頂いたことを思い出した」
「ふふ、私も。あのスイカ甘くて美味しかったよねえ……亡くなったとか正式に交代って書類はないから、まだ大丈夫だと思うんだ」
「うん……でも主、今日は夜風が冷える。書類に目を通すのはまた明日にしたらどうかな」
しれっと次に読もうとしていた書類を片付けながらはっちーにそう言われると、うんとしか返事ができない。……けど……せめて、さっき机に乗せた分は確認しておきたい。なんていったって後ろにまだ山積みなんだもの。
「乗せた分だけ確認しちゃいたいんだけど……だめ?」
「だめ。手土産を持参となると万屋にも寄るだろ?そしたら相応の時間がいる。しっかり休まないと、主が見舞いに来られるよ」
ぐ……。渡さないという意思をひしひしと感じる。折れるしかなさそうだ。
「分かったよ……」
「ふぅ〜ん?主ってば、蜂須賀の言うことは素直に聞くんだ?」
思わぬ声にはっちーの後ろを覗くと清光が腕を組んでいじけた表情でこっちを見てる。
「俺だって心配して早く寝なよ?って言っても分かってる〜とか言ってこんな時間まで起きてるくせに?蜂須賀がだめって言ったらすんなり言うこと聞くんだ」
「加州、いじけるのはいいけど僕まで巻き込まないでくれるかい?」
捨てるやつをまとめてくれる二人にお礼を言いながら保管用のものをファイルに入れていく。
「あと10通確認したら寝ようと思ってたよ」
「ふぅ〜〜ん???」
「機嫌直してってば……皆の忠告はちゃんと、耳が痛いなって思いながら聞いてるから…」
「過労で倒れたこと何度もあるくせにどうだか」
「はっちー…」
「僕に助けを求めないでよ……あ、そうだ。明日主をよく可愛がっていた婦人のいる本丸に行くんだ、加州は空いてる?」
「え、いつもどら焼きくれる審神者さんのとこ?!」
「そう、いつも何かしらくれるあの人」
ぱっと顔が明るくなる清光。清光もあの人のこと大好きだったもんね。
「行きたい行きた〜い!明日たぶんなんの当番にもなってなかったと思う」
「じゃあ決まり。僕も加州もちゃんと用意するから、主も早く寝て用意するんだよ」
「うん、はっちー、清光。おやすみ……眠くなってきた」
「今日寒いから布団ちゃんとかけなね」
*ヴィル・シェーンハイト
「と、いうわけなんです!……万屋行きませんか?」
「アタシは別にいいけど……その、ハチスカたちのお守りを増やすことにならない?」
格好も違うし目立つことは避けられない。初めて監督生がナイトレイブンカレッジの入学式に来たときも、洋服が違いすぎてものすごい印象に残るくらいだったもの。
「初日の当番のときみたく空いてる男士を側につけさせるので平気ですよ……和菓子、食べてみてほしかったんですよ」
「フフ、楽しみね……カリム、アンタいい加減に起きなさい」
まだ眠ろうとしてるカリムを揺すって起こす。昨日夜遅くまでナマズオたちと遊んでいたわね。
「じゃあ…今日は脇差たちに来てもらおうかな。篭手切と浦島〜、万屋来てくれる?」
「え、万屋!?いいの?」
「うん、お土産買いにいくんだ」
「お土産……あのご婦人へでしょうか?」
オレンジ色のぴょこぴょこ動く少年と、眼鏡の大人しそうな…アズールみたいな少年。ご婦人、というのは良くしてもらった他のホンマルのサニワのことね。カシュウもいつもお菓子くれてたと言ってたあたり、本当に仲良かったのね。
「じゃ!れっつらご〜」
ご機嫌で鼻歌を歌うカシュウに続いて私達も街へ。へえ……風情のある町並みね。異文化のアタシたちは浮いてるのかジロジロ見られるけど、観光地に来たような気持ち。低めの町並みのおかげで空が広く感じて開放感もある。ふんわり甘いいい香りがしてきたら出店がたくさん並ぶ通りに着いた。
「わあ…‥なんて書いてあるの?」
「あ、そっか!読めねえのか…あれはだんご。ずんだのだんご!」
ずんだ?初めて聞くわね。ウラシマはあれはこれは、とアタシたちに教えてくれる。
「これ綺麗ね」
「簪……ゔぃるさんに似合いそうですね」
「あら、上手ね?髪の長さ足りるかしら」
試しに結んだ髪の毛に簪を刺してみればなんとか固定はされた。繊細な装飾が素敵。細かいところを気にする風土だと思っていたけど、民芸品にも出るのね。
「浦島〜、フルーツいいの当てて〜」
「まっかせて」
「わ、ヴィル先輩簪似合いますね!流石」
「フフ、あんたも上手ね……主に似たのかしら」
コテギリにそう言うと本音ですよ、と注意された。フルーツと花束を買って帰ってきた監督生とまた少し歩いて、どこか見たような平屋につく。……あれは、確か。
「ナガミツ?」
「おや、俺を存じ上げてくれてるとは……嬉しいねえ」
「監督生、どういうことだ?ナガミツは二人いるのか?」
そうカリムが監督生に問うと、いわゆる博物館なんかに寄贈されてるものは唯1つしかないけれど過去に遡って各サニワが築くホンマルごとに刀剣があてがわれ、同じ刀剣でも個体差のある男士たちが顕現する、というもの。
「あの……私少し離れた向こうにある本丸のものです。こちらの本丸の代理前の審神者に良くしていただいてて……事情があり、本丸を1年以上空けていて昨日知らせの手紙を読んだんです。これ、いつもお世話になってるお礼と御見舞品としていろいろ持ってきちゃったんですけど…」
「あぁ……君が、彼女の言う『可愛い孫娘』か」
他所のホンマルのナガミツとはいえ、基本的に口説く姿勢なのは変わらないのね。監督生の髪を掬いあげてキザったらしく微笑んでる……カシュウたちが辟易した顔で監督生をナガミツから離していた。
「代理とはいえ、彼女の実の孫にあたる今の主も頑張ってるんだ……君のほうが先輩なんだ、良くしてやってくれないか?」
「そ、そんな……若輩者なのは変わりませんよ…」
「そーそー、俺の主から学んだら過労で倒れるよ」
「清光!…今気をつけてるじゃん」
「おや、倒れられるのは困ってしまうな……ふふ、さあどうぞ中へ。僕が主のところまで案内するよ」
「ねえ、代理前の主はここにはいないの?」
どこにいるのか気になってコテギリに耳打ちする。
「……恐らく、ですが。あの御方は妙齢だったんです……現世に戻って病院にいるのではないかと……現世に遠征に行くことも稀にあるので、二度と会えないわけではないですよ」
「なるほどね」
間取りや内装がまるで違うホンマルにお邪魔する。……これは、ネコのスリッパ?
「主、お客人だよ」
「し、失礼しま…」
「あー!ばあばの写真にいた人だ!」
「こ〜ら主ィ!人を指差しちゃいかんっていっつも言っちゅうが!……すまんのぉ…そんで、久しぶりだな!」
こ、子供……?!まだ年端も行かない子供じゃない。義務教育を受けるべき年齢の子供が政府からの命についてるの?監督生を写真にいた人、と指を指した子供をひょいと抱えてこちらを不思議そうに見る彼は…確か、ムツ…だったかしら。
「お久しぶりです、大変なときに顔出せずにすみません」
「な〜にを固いこと言っちゅうが…!そっちの長谷部から聞いてる、なんやらお前さんトコも色々あったってな……秋田ぁ、お前の好きな睡雪ちゃん来たぞ!」
廊下に向かって大きな声でムツがそう呼べば、パタパタとした足音が駆け寄ってくる。
「睡さん?!」
あ、アキタね。たしかに…ここのアキタのほうが監督性のところよりも元気っ子な気がする。
「わぁ、秋ちゃん!久しぶり」
「睡さんだあ!待ってたんですよ…あ、僕お茶をお持ちします!皆さん座って座って…主君も!」
「秋ちゃん、うれしそおだね」
「はい、久々にあえて嬉しいです……主君も前の主の話聞きたいでしょうから、ゆっくり話しててくださいね」
目にも止まらぬ速さで部屋を出ていったアキタを眺めているとナガミツが少し困ったようにこちらに声をかけてくる。
「すまないね、騒がしくて……」
「いいや、元気なのはいいことだろ?」
カリムがそう返すとコテギリとウラシマもうんうん、と頷いている。
「ねえ、ばあばのおともだち……あたしともなってくれる?皆子どもだからって仲良くしてくれないの」
「ふふ、もちろん……お祖母様にはたっっっっくさんお世話になってるので困ったときはお互い様!……お祖母様は元気?」
「3日前病院行ったよ、元気だった!」
「そうなんだ、よかったぁ…」
「人間っちゅうのはあっという間に弱っていくものやき、分かってはいたけんど……いざ目の当たりにすると慌ててしもうてな」
*ミョウジナマエ
「ね、寝ちゃった」
「かわい、懐かれたねぇ主」
「相当はしゃいどったけんのぉ…おまんらもよう付き合うてくれたな、主が久々に嬉しそうにしてるの見れたなぁ」
子供だから仲良くしてくれないの、と言っていたのが気になる。私だってここらの審神者の中では若い方だし、何故かここは男性が多い。そういった意味でも仲良くできる人は少なかった……子供となればなおさら、だろうな。
先代の主の宏美さんはなにか病気かと思っていたけど、風邪から肺炎を拗らせてしまっての入院らしい。癌とかじゃなくて本当によかった…。
「おお、主が好きな果物こじゃんと……助かる、主も元気になる」
「なら良かった」
「ほいで……後ろのおまんらは?不思議な気ィ放っとるけぇずっと気になっとったやき」
彼は宏美さんの初期刀だ。打ち明けてもいいだろうと判断し、ナイトレイブンカレッジの話をする。面白くて不思議なことが大好きな陸奥守吉行は目をキラキラと輝かせてアズール先輩たちを見ている。
「主、足が痺れてしまうよ…代わろうか?」
「いや、寝かせてこよう」
大般若に瑠璃ちゃんを任せる。確かに足がしびれた……伸ばさしてもらっていると、アズール先輩が不思議そうに尋ねてきた。
「気になっていたんですが、先程の睡雪というのは?監督生さんの名前とは異なりますが」
答えようとする前に秋ちゃんがはいはい!と答える。
「審神者の方々の渾名…のようなものですよね、本名とは異なるのは僕達も存じてます」
「へえ、面白いな!なんでスイセツって渾名なんだ?」
「初めて本丸に来た日が冬にしては少し暖かい日差しのある日で……雪も積もってたので、微睡むような雪の日、ってことで睡雪です。」
「ふふ、可愛らしいですよね」
「秋ちゃん、全肯定すぎるって……」
控えめに隣に座ってきた秋ちゃんの頭を撫でる。秋ちゃんは宏美さんの初鍛刀の男士で、この本丸の古参な方だ。宏美さんが審神者として就任したときは物資のバックアップとかそういったキャンペーンはやっておらず、初期刀のの陸奥守吉行と初鍛刀の秋ちゃんの2振り体制が長かった。そこからじわじわと経験と刀剣を増やしていった…って聞いている。
(あんた、本当に誑かしてるのね)
(え??!ど、どういうことですか…)
(ほら、帰ってきたときもジュズマルが背後霊みたくくっついてたり、ミツヨが蔵に隠れて探させようとしてたり……あんたの取り合いはここでも起きてるなんて誑かしてる以外の表現ないわよ)
(主ってなんていうか…人たらしってやつ?)
(あぁ……それには同意するね、余計な審神者からも好かれてきたりするし)
(はっちー、毒気しまって)
(そんな不届き者が?)
(秋ちゃんも神気しまってしまって……あ、そうだ。初期刀2振り組におみやげ買ってきたんだよ)
(す、睡さん………!僕睡さん大好きです!)
(ほら、誑かしてる)
(違います!!)