13 With …?
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静形薙刀
次の日、その次の日。ドキドキしながら政府からの通達を待っていると、またも来訪。でも前回と違うのは、職員が2人いること。
「……皆のこと回収しに来たのかも…」
「主……そう気負うな、まだそうと決まったわけではない」
「もうここに家出する」
そう言いながら静ちゃんのもふもふストールに包まる。彼は私が2倍くらいの大きさだからストールももはや布団レベルになる。すっぽり部屋の端っこで包まってると、静ちゃんが慌てて私をストールから出そうと奮闘してる。
「あ、主……っ!返してはくれぬか?」
「家出中だから無理、あの二人も追い返してきて」
「困ったぞ……そうは言われてもだな…」
ストールの隙間から顔を覗かせて静ちゃんを見上げる。静ちゃん、困ったように隣に座り込んでた。
「話を聞くまでは分からないだろう?主に何かするようなら俺が叩き切る」
「叩くのも切るのもだめ。………はぁ……胃が痛いなぁ…」
静ちゃんのストール籠城をやめて、部屋にあの二人を入れる準備するか……。
「何も心配するな」
静ちゃんに頭を撫でられる。上手くいくといいけどな…。職員二人を部屋にご案内し、座る。手土産まで貰ってしまった……これ、小夜ちゃんの好きな羊羹のお店だ。
「先日、こちらに伺った際の不思議な能力を持つ方々はおられますか?同席をお願いしたく……」
担当職員ではない、上座に座る方……つまり上司の方がそう言うので静ちゃんに3人を連れてきてもらうよう頼む。
「いや、俺ではなく他の奴に迎えを頼もう……そこの職員が言うには男女が同じ空間にいると神域に紛れてまぐわうことも容易いのだろう?」
「し、静ちゃん…!」
「俺の大事な主が襲われたら首を落とすだけでは済まさない……防衛だ、主」
だからってそんな、傷口に塩塗りこんでバターで焼くような真似しなくたって……!異様にピリピリする部屋にやってきた先輩たちと、火車切。
「火車切も、ここ座ってくれる?」
「ん」
「では…私はこの備前国の審神者たちを纏める統括マネージャー、とご認識ください。
先日は私の部下の度重なる発言、そして前任者の無礼な言動、大変に失礼を重ねてしまいお詫びしに参りました」
「……!あ…えと…」
まさかお詫びだと思ってなくて思いっきり黙り込んでしまい、火車切に突かれて意識が戻る。戻るのはいいけど何を言えばいいんだろう。
「……オレ、和泉守呼んでくる。当事者でしょ、あいつも」
「あ、うん、ありがとう」
「ん」
火車切、かなりしかめっ面してたな……フンッて態度をしてる彼を見送り、無言の間が気まずくて口を開く。
「ぜ、前任者の件はどうして…?」
「今回の件が発覚した際に記録を読み返したのと、本人からの聴取です。前任者は美濃国に異動しており、どうしても本日同伴させることは出来ず……大変申し訳ありません」
美濃に行ったんだ。美濃の審神者はどんな感じなんだろう……風の噂でちょっぴり気が強くてしっかりされた方が多いと聞いたような……やり返されてそうな気もする。
「……失礼する。……主、今どうなってんだ?」
兼さんがやって来た。今謝罪を受けているところ、と簡単に告げると眉が釣り上がる。
「ほう、謝罪はどちらが?」
「備前国のエリア統の方が直々に。」
私がそう告げると兼さんは振り返ってどかっと座布団に座る。
「そうか、オレはアンタに用はない。お前さんだ……先日は頭に血が昇って胸ぐらを掴んじまったことは申し訳ねえと思ってる。……オレがしたことはオレが責任をとる。お前はどうなんだ?」
「か、兼さん…」
「主人が責任を負えば何したっていいわけじゃねえだろう?」
兼さんは、私に頭を下げるなと言ってくれた。胸ぐらを掴んで詰め寄ったのは自分なんだからと。だから頭を下げて謝罪した兼さんは、私と先輩たちに無礼なことを言ったあの人からの謝罪を要求してるんだろう。
「……大変申し訳ありませんでした。審神者である貴方と、あなたのご友人に…お詫び申し上げます」
深々と頭を下げるその様子にたった数日でここまで態度を変えるなんて、逆に何があったんだろう…?と少し怖くもなる。突っ込んだら負けだ。
「ありがとうございます……私は、もう平気です。わざわざご足労いただきましたし」
ちら、とヴィル先輩たちを見やる。
「この先もその方が担当なのかしら?」
「えぇ、こちらの本丸以外にも謝罪に回り今回の件を真摯に受け止め、今後に活かしていかせるつもりです」
やっぱり他の本丸にもあの態度を取っていたのか……想像はつく。今日はきっと相当堪えるだろうな、この人。
「ふぅん……今後監督生……いえ、審神者である彼女とその使い魔である刀たちに無礼な態度を取らないことは前提として、身の回りすべての人間への態度を改めてほしいわ。
ここ以外にも回るってことは社内外でもそう振る舞ってるんでしょう……声を上げないからって許されるわけじゃないのよ」
ギロリ、と眼光が鋭いヴィル先輩の雰囲気は凄まじい。むちゃくちゃ怖い。しっかり頷いた2人を確認して兼さんの顔を見ようと視線を動かせば兼さんもこちらを見ていた。
「主、いいのか?」
「うん」
「ならオレも口出さねえ。……静、てめえもな」
「無論だ」
では、次があるので。と何度も頭を下げる2人をいいからいいからと見送り、どっと疲れが出る。来訪というだけで朝からばたばたしたし疲れた……。今日の当番確認やらなんにも出来てない……朝ごはんだってまだだ。
「はあ……よかった……よし!当番作業の割り振りしよう」
「主、その前に朝餉を取らなくては倒れてしまうぞ」
ぐるぐると静ちゃんのストールに巻かれて横抱きにされる。嫌がる私の手や足が出ないようにしてる…いわば拘束。ぐるぐる巻きにして運ぶとは……静ちゃんは最初そんなことしなかったのに。清光やらみっちゃんから悪い方へ学んでしまったようだ。
「時間ないし軽いものでいいよ……あ!さっきもらった大福食べたいな」
「「「主」」」
火車切、兼さん、静ちゃんの声がキレイに揃う。圧やば………。下手なこと言わないほうがいいと長年の経験から察して口を噤む。火車切の視線がすごい。そんなジト目で見なくてもいいじゃん!!
「わかった……食べます…」
「アタシがいるのに朝食抜こうとしたの?いい度胸ね」
うげ。ヴィル先輩たちがいつのまに後ろに……。4人でテーブルに座り、火車切がもう完成してるおにぎりを置いてくれた…みっちゃんか歌仙かな…?それとも青江?お味噌汁も装ってくれて、私の大好きな梅干しとこんぶ、漬物と焼き鮭が出てくる。
「ありがとう!みんなは?」
「静以外は食った」
「静ちゃんも食べよ」
隣に座って、と椅子を叩くともそもそと座ってきた静ちゃん。静ちゃんこそしれっと朝ごはん抜こうとしてたみたい。いつもよりは遅めの朝ごはんをしっかり食べて片付ける。今日もきちんと仕事はしないと。遠征要請書類が届いていたから編成を組まないと。
「監督生〜、同じ文字のやつもう一個増えてたぜ」
「カリム先輩…ありがとうございます!」
同じ文字、と言われたとおり遠征要請の追加。結構遠い場所だな…。
「あるじ。鳴狐が行く」
「え…?」
ぱ、と紙を取られたかと思えば鳴狐が立っていた。
「この地名に覚えがある。勝手が分かるやつが居たほうがいい」
「な、鳴狐ちょっと待って…でも遠征2日はかかるよ?」
「大丈夫……でも」
「?」
「帰ってきたらおいなりが食べたい」
「……分かった、100個くらい作って待ってる。鳴狐隊長にするね、皆のことお願い」
「ん」
準備してくる、と部屋を去った鳴狐を見送り、誰がいいかなと本丸名簿を確認する。鳴狐は良くも悪くもバランス型の戦闘方法だし、誰か一人くらい切り込み隊長してくれる子がいると動きやすくなるはず。短刀……薬研に入ってもらおう。あともう振り打刀にも入ってほしい。誰にしようか……鳴狐のフォローに入れる…宗三にしよう。あとは太刀…小豆、一期と大太刀の次郎ちゃん。
「………うん、この編成なら安心かな」
鯰尾に皆を呼んできてもらい、遠征準備をするようお願いする。
「薬研、もし怪我しちゃったら皆のことお願いね」
「ほんとに心配性だなぁ〜、アタシらそんなヘマしないって!どーんと構えて待ってなよ……あ、アタシはいなりじゃなくて酒が呑みたい!」
いつもの調子の次郎ちゃんに頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でられた。お酒か……蔵の床下倉庫にこっそり隠してあるいいお酒があるんだよね。あとで見つかってないか確認しようかな。
「まぁ戦場に行くんじゃねえし、遠征で見回りだろう?怪我する可能性は低いだろうが……任されたぜ、大将」
「油断はだめだからね」
準備が終わった鳴狐たちを見送り、遠征開始。今日はなんだかバタバタしてるな…。そういえば、アズール先輩たちは何をしているんだろう?暇を持て余してないといいけど……。
「あ〜るじさんっ!ねね、あの子たちとすこしゆっくりしようよ」
乱ちゃんに肩を叩かれる。
「あの子?」
「うん、あるじさんのお友達!ゔぃるさんたちだよ」
「……あ、髪型いつもと違う。また結んでもらったの?」
「うん!ゔぃるさん器用だよね…こっちに3人ともいるよ、かりむさんって人は包丁とか手なづけてる」
「そうなんだ…実家ではお兄ちゃんだったらしいからね、対応慣れてるのかも」
乱ちゃんに手を繋がれて部屋に近づくと楽しそうな声と走り回る音がする。ふふ、この声は鯰尾たちもいるな。
「あるじさん来たよ〜」
「か、監督生さん!なんとかしてください!」
「あららら……虎くん、だめ!体格差を考えて」
アズール先輩にのしかかるように遊ぼうとしていたので声をかける。残念そうに離れた虎くん、そして虎くんの毛まみれになったアズールさんに手を伸ばす。
「す、すみません…すみません!」
ごこちゃんが青ざめながらすっ飛んできたので頭を撫でる。虎くん、随分アズール先輩のこと好きみたい。
「全く……少しは加減というものを覚えなさい」
「意外に動物に好かれるのね、アンタ」
「意外とはなんです、意外とは……」
「虎くん、のしかかったらアズール先輩が潰れちゃうでしょう、優しく優しくだよ」
め!とマズルを両手で包みながら言うも、虎くんは目が合わない。ま、聞こえてはいるはずだから大丈夫かな。怒られてるってことは分かるみたいで心なしかしょんぼりしてる。
*カリム・アルアジーム
「お……なんだ、監督生寝ちまったのか」
「何かかけてあげないと、主さん風邪ひいちゃうよ」
「毛布かけてやって、包丁」
「はーい」
短刀と呼ばれるチビにしか見えない奴らとオレたちで魔法を使ったり、監督生の国の手遊びなんかをしながら過ごしていたら何か仕事をしていた監督生が座ったまま突っ伏して寝てる。ナマズオが監督生を横にしてホウチョウが毛布をかけてやってる……今日は朝からバタバタだったもんなぁ。
「あ……いた」
「お、朝いたやつだな」
「俺は火車切……ふわふわ、戻ってきて」
オレの頭を見ながらカシャギリがそう呟く。ふわふわ?
「おや……カリムさん、頭になにか………これは一体?」
「猫…かしら?」
「猫?文献で読んだ姿とだいぶ異なる気が……」
「ん?オレの頭に猫がいるのか?全然重くねえけど」
ふわふわの正体は猫らしい。ゆっくり手を伸ばすと確かにふわふわの毛に触れた……子猫なのか随分と小さいな。首を傾げるアズールとヴィルの横にカシャギリがやってくる。
「こいつは…まあ猫みたいなものだけど、猫じゃない」
「お前の相棒なのか?可愛いな!」
手に渡ったふわふわをみると、確かに黒猫のちっちゃくて丸いやつみたいだ。黒い体に黄色い目、耳は完全に猫。サイズとフォルムが少し違うけど……カシャギリの肩に乗っかってすりすりしてるのは可愛らしいな。
「ん……主体調悪いの?」
「何か書きながら寝てたわ、朝の対応で気が抜けたんじゃないかしら?」
「あぁ……弱ってるんじゃないならいいよ」
書きかけの何かを見たらカシャギリには何の書類なのかすぐ分かったようで続きをサラサラ書いて持っていった。
(……!寝てた……)
(もう少し寝てもいいんじゃない?あるじさん、顔が疲れてるよ)
(夜寝れなくなるし起きる………あれ……あれ?!乱ちゃん、ここの申請書知らない?)
(さっきカシャギリが書いて持って行ってたぞ)
(カリム先輩、ありがとうございます…そっか、火車切書いてくれたんだ)
(不思議な猫?を連れてましたね)
(あぁ、ふわふわちゃんのことですか?可愛いですよね…噛まれませんでした?)
(噛むんですか??!)
(噛みますよ、私はしつこく触りすぎて鼻をガブッと)
(なにやってんのよ、アンタ…)
(虎くん基準で行くとだめですね、虎くんは犬か?ってくらいお腹も触らせてくれるし)
(フン!)
(いだだ…重い重い、重いよ〜!)
(あ〜、主さんにのしかかってるのずるい〜!)
(ずるくないずるくない、だから追加で来ないの)