13 With …?
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With 和泉守兼定
困った。突然の政府職員の来訪。来訪だけなら良かったのだけれど……今日近侍をお願いしたのは兼さん。
ここでは1年半近く経った間に担当職員が変わったんだな。前の人は結構……嫌味な人だったけどこの人はどうなんだろう。
「連絡もなく申し訳ありませんね」
「いえ。こちらこそ帰城の連絡ができずに申し訳ありません」
正装に急いで着替えて一応メイクもした。顔は見えないように面布を垂れているけど……。面布を付けた私の様変わりした様子に驚いていたのはカリム先輩たち。報告がてら、同じ部屋に立会してもらっている。
「して、こちらのお三方は?」
「はい……実はこちらでの1年半弱、私はこちらの方々が住まう世界にてお世話になっておりました。
そこは現世ともこちらの世とも異なるツイステッドワンダーランド、という世界で彼らは魔法が使えます」
「魔法?」
「はい、およそイメージされてる魔法そのものです。炎を出す、風を生み出す、石を金に錬金するなどです。
ツイステッドワンダーランドでは半年ほどしか時は経っておりません。そちらの世界で鏡により、本丸に戻ってきたのですが、巻き込まれて本丸に来てしまったという経緯です」
「………はあ…ふ、そのような作り話を信じろ、とでも?」
あ〜〜〜〜嫌味なタイプ継続だ〜……。ハズレと言ってしまってはなんだけど…大ハズレっぽい。
「1年半も何もなく留守にしたと思えば……はぁ…男性3名を侍らせてお帰りとは。審神者のくせになんと品性のない」
「お言葉を返すようですが、彼らは友人であり想像されているような間柄ではございません。侮辱するようなお言葉は慎んでください」
「まあ口ではなんとでも言えますからね……どこかの男士の神域に隠れてまぐわうなども容易い」
「口を閉じねえか」
カリム先輩はおろおろ、アズール先輩はまじか?とドン引き、ヴィル先輩は氷のような表情をそれぞれ浮かべていたのでどうしようかと頭を抱えた時、兼さんが聞いたことないくらい低い声で割って入ってきた。
「おや?気を悪くしましたか……すみませんね」
「オレの主が一度でも資材数やら決算の金額を間違えて提出したことがあるか?」
「何を…」
「担当職員なら手前が担当する前のも見るだろう?まさか何も見てねえ引き継ぎもなしでやってんのか?一度でも研修に遅れたことがあるか?
一度でもお前らの指示に背くようなことがあったか?」
「それは政府に仕える身として当然でしょう」
「ほう、その当然のことができない本丸は他にいくつある?この備前国だけでいくつ?全体で本丸がいくつあるかなんて知る由もねえ俺が把握してるだけでも両の手と足の指を合わせても足りねえくらい品位も節度も規範もありゃしねえ本丸を見てきたぞ、演練やら研修の付き添いでな……一度でもオレの主がそういった線を越えたことがあるかと聞いてンだ」
「兼さん、やめて」
「主、下がってろ。オレは聞いてるだけだ」
止めようと掴んだ腕を握り返される。ピリピリとした空気に胃が痛くなるものの、職員は何も言えないようだ。資材の予算をちょろまかしたり、演練に出席しなかったり。よほどの緊急性がない研修や集まりをすっぽかして連絡が取れないなんて本丸は、確かにいくつも見てきた。
「いつ、オレらと主がお前らに嘘をついた。
何故一度でもお前らに反抗したことすらない主の言葉を信じない。何故信じるどころか故意に傷つけようとする態度なんだ?
なぁ、答えろよ、小僧」
「……歌仙!堀川!兼さんのこと止めて!」
己の本体を鞘から抜きはしないものの、このままだと殴りかかる勢いで胸ぐらを掴んだ兼さんを止めるために他の男士を呼ぶほかない。
「要らないわ…魔法が信じられないのでしょう?これならどう?」
「ヴィル先輩……!?」
ふい、とマジカルペンを動かせば兼さんごと二人が浮き上がって逆さまになる。
「よ、よせ!やめろ!なんだこれは!」
「あら、まだ信じられない?錬金術で金でも作ろうかしら。魔法よ、アンタが信じない魔法」
「ヴィ、ヴィル先輩、戻してください…」
「そもそも一報入れずに来る非常識さを持ち合わせてるくせに監督生さんには常識を求めようとする辺り、矛盾していますね。」
アズール先輩まで参戦してきた。もう止められない。走ってきた歌仙と堀川が口をあんぐり開けて私を見てくる。私だって何がなんだか…!!
「確かにアタシたちは男だけど、そんな下品なことしか思い浮かぶ脳みそじゃないのよ。アンタ男と女がいたらすぐそういうこと考えるの?アタシ達にもこの子にも失礼よ」
くる、とペンを回してしまったヴィル先輩。兼さんと職員の人も1回転して床に降りた。そもそも、刀剣から人の形のものが顕現する事自体不思議なことだけれど魔法はもっともっと不思議な力。魔法を使えるということは信じてくれただろうか……変なふうに報告されないといいけどな……。
「兼さん、すごい目が回ってるよ……?」
「急に浮いたんだぞ、回るだろ……何故オレまで回したんだ」
「殴りかかりそうだからよ……いい?アンタはこっちでいうと監督生の使い魔。主従関係ならこの子が主人でアンタは従う身。主人の命令きかないで好き勝手したアンタの行動責任は誰が負うの?少しは考えなさいよ」
「………ッチ」
「わあでっかい舌打ち……ちょっと兼さん、どこ行くの!?」
「頭冷やしてくる!付いてくるなよ国広」
どすどすと足音を立てて部屋から出ていってしまった兼さん。あぁ〜〜〜荒れないといいけど……!!!
「行っちゃった……主さん、大丈夫?」
「全然ダメ……あの……」
「帰ります。このことは上にきっちり報告させていただきますね」
「え、あの……」
青筋立てて見送りは結構!と拒否。職員は走るようなスピードで帰って行った。
「……主、一旦皆をあつめ……主?!泣かないで」
「クビだぁ……」
「何メソメソしてんの、アイツの上司がまともじゃなくても人事や窓口に言えばセクハラパワハラで一発アウトなのはアイツよ。シャキッとしなさい」
ばしん!と結構強めにヴィル先輩に背中を叩かれる。そんな……そんなうまくいくかな……。
「こんのすけに口添えしてもらう…?」
「う〜ん、悪くはないけどそんなに権力無いだろ、こんのすけも」
そっかあ……あくまで仲介みたいなことをしてくれてるだけだもんね。
「監督生、いつもあんなん相手にしてるのか?」
「……帰ってくる前と担当職員変わってるんですけど……前の人のほうがマシでした、けど……あんなものですよ」
「嫌ですねえ、政府を後ろ盾に持つとあんな話の通じない頭の凝り固まった人になるんですか」
アズール先輩、チクチク攻撃してる。確かに話は通じないけど、魔法の件については信じられなくても仕方ないとは思う。その前後の侍らせてるとかの辺りは最悪だったけど……。
緊急でみんなを集めてもらう合間に、ぽろぽろと泣いてしまった私は歌仙に手を引かれて台所のテーブルへ。私が好きなお茶を淹れてくれた。
「ほら、飲みな。君たちも……あ、そうだ。堀川、あのお菓子出して」
「はーい。えーっと……あったあった」
最中がお皿にのって出てくる。私の好きな最中。みっちゃんか歌仙が買っておいてくれたんだろう。やばい、泣きそう。
「昨日万屋で買ってきたんだ、これ好きだろう?」
「綺麗ね、亀の形かしら」
「ふふ、可愛らしいだろう?中に餅があるから、詰まらせないようにね」
「モチ、とは?」
「驚いた、餅もないのか。……米、あるだろ?あれがこうもっとねばっとしたもち米をついて、コメの形状がなくなるくらいついたものが餅だ。粘り気があるもち米だから、よく伸びる。思った以上に口に含むと飲み込むのが大変だから少しずつ食べて」
歌仙の説明のさなか、私はがぶっと半分ほど口に含む。うん、美味しい。涙でちょっとしょっぱいけど。
「慣れてないうちは主みたいに食べちゃだめだよ」
「アンタも早く泣きやみなさい、泣き虫ね」
「だって……」
「まあまあ、監督生だって気持ちの整理は必要だろ!いただきまーす!お、甘いな!」
「この渋いお茶と合いますね」
ぺろっと平らげてしまった。お茶をすすって、おかわり。あったまる〜‥…ほっとして涙もようやく止まってきた。悔し涙か、悲しい涙なのか分からない。この本丸もどうなるかは分からないけど……私達には実績はある。無遅刻、無欠席。毎年の監査もきっちりこなして、予算の使いみちも帳簿にきっちり書いて決算書にして毎年送ってる。管理するものはしっかり管理して、報告に出してきた。その実績が守ってくれればいいな。私はあるがままを報告しただけ、だし。
「美味しかった、ごちそうさまでした」
「ふふ、お粗末さまでした…。ぷりんもあるけど?」
「ゔ……いい!甘やかさないで!……プリンは、兼さんにあげる。兼さんの様子見てこようかな………あ゛ー……まだの方がいいかな……」
「もう大丈夫だと思うよ、兼さん…多分落ち込んでると思うけど」
堀川に頑張って!と肩をさすられる。ちょっと行ってくる、と台所をあとにした。
*ヴィル・シェーンハイト
「………何よ」
「いえ?ヴィルさんが啖呵を切るのが意外でして」
「なぁに、アズール。アンタも乗っかってきといて」
そう目を細めればとんでもないとアズールが肩をすくめる。
「僕は先程の方は非常識だと独り言を言ったまでですよ」
「あんなに馬鹿でかい独り言ないでしょう……ああいうの大嫌いなのよ、反抗させない立場を使ったいびりみたいなの」
「まあ……君がまほうを使ってるとは思わなくて僕達も驚きはしたけれど……ありがとう、主を守ってくれて。あの子はここ、備前国では比較的更に幼い審神者でね。よその本丸からもいろいろ……言われたり、絡まれたり。職員もああだろ?言い返せないほうが多くてね」
「だからああやってマメに全部記録に残してるのね、不正がない事実とかちゃんとしてる証明として……こっちでも凄かったわよ」
「ふふ、彼女なりの対抗策だからね。そこまで?と思うこともあるけど……結果、それがいつも主の助けになることのほうが多いから。和泉守も我慢ならなかったんだろう」
あれは……誰が監督生の隣に座っていても我慢できなかったんじゃないか。あそこまで馬鹿にされて監督生は逆に冷静だったのは、自分の代わりに怒る使い魔を見たから…かしら。
逆に、昨日の夜アズールとぎゃいぎゃい言い合ってたハセベ、とかひっつき虫になっていたジュズマル、ミツヨあたりが隣に座っていたらもう手が出ていたかもしれない。逆にカネサダで良かったのかもしれないわね。
*ミョウジナマエ
「兼さん、いま大丈夫?」
「………あぁ」
うーん、兼さんとこんな1対1で話すの、本当に久々だな……。たしか、初めては……主としてなんか認めないと啖呵を切られた時だっけな。たとえば光世とか数珠丸みたいに甘えてくるようなタイプではない兼さんはいつもサッパリしてる。どう接しようか悩む刀剣のひとり。
「失礼します……お、寝てた」
「あんだよ…寝ちゃ悪いか」
「ううん、座ってるかと思ってた……兼さん、さっきのことなんだけど」
「……オレぁ、あんたに責められるようなことしたかよ」
わ……まだ納得いってなかったか。
「うん。胸ぐらを掴む必要はなかったと思うな」
「………それだけか?」
「うん、それだけ。それ以外は、嬉しかった。ありがとう、兼さん」
「お…い、泣くなよ。オレがどやされるだろ」
「嬉し涙くらい喜んでよ」
「嬉しくても悲しくてもあんたが泣いてちゃ騒ぐヤツばっかだろ……ほら、手ぬぐい」
「……これちゃんと洗ったやつ?」
「………」
むかっとしたのか無言で手ぬぐいを当てられた。あ、いい匂い。ちゃんと洗ったやつだった。よかった。
「ふふ、兼さんかっこよかった」
「いつだって格好いいだろオレは……なぁ」
「?」
文字通り大の字で寝ていた兼さんが起き上がり、座り直す。
「なんであんたは怒らねえんだよ」
「……ちょっとは怒ってたよ。政府の職員さんに『口を慎め』って言ったのは初めてだし」
「それだってあのガキ共のこと言われたからだろ」
「まあ、そうなんだけど……もしかして自分のこと大事にしてないって思われてる?」
「そうとしか見えねえよ、オレはあんたのことは…顕現したての頃とはもう違ぇから主だと思ってる。オレらの為によく動いてくれてるとも思ってるし…オレみたいな扱いにくい野郎にもよく相手してくれてると思ってる。けど、あんたのことは大事にしねえところは嫌いだ」
「ふ、すごい褒めてくれるね……大事にしてないわけじゃないよ。なんていうか……うーん……今日の人、私は初めて見たからなんとも言えないけど。あの人は除いて、他の本丸の審神者とか前の担当者でイメージしてほしいんだけど」
「おう」
「何回か、進言はしてみたの。恐る恐るだったり、下からへりくだってはいたものの、そうじゃないんです。とかちゃんと否定はして、ストレートに伝えたつもり。
3回、多いときは5回伝えてもなんていうか……話が通じないの。理解されようともしない人に一生懸命言っても、跳ね除け方なんてどうとでもなる。そんな人に時間を割くのは私の心が疲れてしまうと思って……諦めたわけじゃないよ、見限ったの。」
これも、自分を守る術。分かり合えない人にどうして分かり合えないんだろうと頭を悩ませて心を削り取るより、あ、無理なんだって見限って接触を断つ。分かってくれる人だけ、分かってくれればいい。
「今日の人にも3回は進言してみるつもりだよ…それでも無理だったら、あの人との関係は見限る。最初から悪いように見てる人を良いようにするのって、もうその人の努力なところあるから」
「………そうかい」
「…うん、これが1番私に合ってるかなって」
「おお。あんたらしい……手ェ出しちまって悪かった。あいつに何か言われたらオレがあいつに頭下げるから……あんたは下げるな」
ちょっと言いにくそうに、そう言う兼さん。ヴィルさんの発言を気にしてるんだろう。ごめんなさいって言うくらい、全然いいのになぁ……。
(はい、兼さんこっち)
(あら…おかえり。仲直りしたの?)
(仲直りというか………価値観のすり合わせ?ですかね?)
(ま、なんでもいいわ。スッキリしてそうだし)
(はい、スッキリしました!はい、兼さん。プリンどうぞ)
(いい、あんたが食えよ)
(私もう最中もらったし…あ、先輩たちお餅大丈夫でした?)
(アズールが詰まらせかけたけど平気)
(あんなものを飲みこもうとするなんて……危険すぎますよ)
(ま、僕達の国の古くからある縁起のいい食べ物だからね……危険性については言い返せないけど)
兼さん〜〜😭😭