TWST × とうらぶ
Name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
With 五虎退
「あ、あるじさま…!お怪我はありませんか?」
聞き慣れた声に目を開けば、涙目の五虎退と目が合う。……ここは本丸だっただろうか?いや、あの数々の合戦を傷だらけになりながら乗り越えた私達の本丸は晴れて御役御免と解体されたはずだ。……そうだ、五虎退をはじめとする短刀たちは皆私から離れたくないと大泣きして困ったんだったな…私自身も名残惜しくないと言えば嘘になるくらい長い時間を共にしたから、もしかしたら夢でも見ているのだろうか。
「う、僕のあるじさまになんてこと…!ゆるしません…!」
自身である刀身を握りしめ、私の後ろを睨みつけるようにする五虎退の視線に合わせ振り返ると半透明のまるまるとしたフォルム、少し痩せ気味のフォルム、小さめのフォルムの‥…ゴースト?がいる。
「五虎退、ちょっと待って。私は大丈夫だから」
「ふな、起きたのか!?」
何だこの猫は……耳が青く燃えている?ゴーストは恐らく五虎退に、猫は私に驚いているようで懸命にこの直前の出来事を思い出す。あぁ、そうだ…鶴丸のように驚かせてきたゴーストに驚いたこの猫…魔獣のグリムが吐いた炎を避けようとして運動音痴の私はすっ転んだんだ。そして運悪く頭を打ち付けて……あれ、五虎退はいつここに…?
「皆さん、落ち着いて話をしましょう。真剣なお話です」
五虎退にはここはツイステッドワンダーランド、という元いた本丸とはおそらく別の世界であること、魔法というものが使えるということを説明し、グリムとゴーストには私達がいた本丸と刀剣男士、そして審神者であることを告げる。
「ここの世界の用語でいえばこの子は私の使い魔です…五虎退、悪い人…?たちではないから挨拶をして」
「は、はい…っ!僕、五虎退です…さっきは…すみません」
そうして和解に繋げていると学園長がやってくるので同じように説明する。
「本当に神様と同じなのか?なんか小せぇし弱っちそうなんだゾ」
「グリム…五虎退は少年に見えるかもしれないけれど…そうだね、大体700年くらい生きている刀剣だし私の側に仕えてくれる頼もしい子だよ」
「な、700…?!」
「あらま、私よりも遥かに歳上なんですね……ゴコタイくんとやら…なんとも不思議な……」
元いた本丸にはこういった子たちがたくさんいたのだと説明すると学園長はこれで魔力がないというのは不思議だと返してくる。……確かに、魔法と捉えたらそれっぽい能力ではある。物、としての刀に力を与え人の姿として顕現させる……。
「ぼ、僕でよかったんでしょうか……いち兄とか…ほかの皆の方があるじさまを…うぅ…」
ぽろぽろと泣きだしてしまった五虎退を撫でる。まったく、グリムのせいだぞ。軽く睨むと気まずそうにもじもじしている様子からして言い過ぎたと思っているのだろう……あとで謝らせる機会を設けるとして。
「五虎退、君は私が遡行軍に狙われたときも本丸に侵入されたときも夜通しで私のそばにいて守ってくれたでしょう、越後の虎と共に。
誰のほうがとかじゃなく、久しく皆私の頼れる刀剣男士です……自信をなくさないで」
虎が出てきたことにより更に驚いた学園長とゴースト、五虎退を泣かせたとして食べられかねない勢いで詰められたグリムの悲鳴が響く。
*エース・トラッポラ
なに、このちっちゃいの。
白くてふわふわな毛とほっそい手足。エレメンタリースクール生?と見間違えたこの子供は監督生の使い魔らしい。魔力なかったんじゃないの?と思ったけど、ここでの魔力と異世界人の監督生の持つサニワっつー力はイコールで結ばれなかったぽい。
「ほ、ほんとに僕も食べていいんですか…?」
リドル寮長にわざわざ使い魔の出席について質問してたのはこいつの為か。トレイ先輩が作ったケーキを前にきらきらした目で皿を受け取り、フォークを握った慣れない手は右往左往してる。
「いいじゃん、せっかく監督生がゆっくりしなよって言ってくれたんだろ?」
「は、はい…!いただきます」
腰にはナイフ…よりかは大きい短剣程度の刀が添えられている。こいつの本体はこの刀らしい、それを監督生が人の姿を表すようにしたっていうんだから凄い話。3回くらい聞いてようやく理解した。
「お、おいしい…!すごい、こんな美味しくて甘いものはじめて食べました!」
「おお、そんな喜んでくれるとは…作り甲斐あるな」
「あるじさまにもお渡ししたいです、予備分はありますか?」
「おお、あるぞ。グリムの分もあるから渡してやってくれ……おわ!?びっくりした、お前は食べちゃだめだ」
でっっかい虎がトレイ先輩の前に犬みたいに座ってる。じ、とケーキを見てるので多分食べたいんだろう。ゴコタイの連れらしい。
「あっ、す、すみません…っ!虎くん、だめです」
監督生自身はせっかくゆっくりしてほしいのに自分が同席したら意味がないと今日は欠席。主従関係なんて言うとカリム先輩とジャミル先輩が出てくるけど、カリム先輩よりも従者を思い遣ってる気がする。そのおかげかゴコタイはかなり監督生を敬い慕ってるのがオレでも分かる。
「あるじさま、いつも僕たちを優先してくださるので…ご飯とか、寝る場所とか…」
「ご飯?どういうこと?」
「本丸には、たくさんの刀剣がいました。総勢……117振。僕のように体が小さい刀剣もいれば、槍や薙刀、大きな太刀の刀剣もいます。
本丸では……その、馬の手入れや畑なども行っていましたがどうしても不作のときもあって…そういうとき、戦いに出る僕らが力をつけなくては駄目と…何日もご飯を抜いた時があったんです」
「………だからアイツあんな細いの?」
「も、もともと痩身でしたけれど……僕、ずっとそれが気がかりで…」
そりゃそうだ。従者からしたら主人が自分のためにご飯抜いて譲ってくれてるなんて辛い以外の気持ちないだろう。
「今は?オンボロ寮にちゃんと備蓄はあるのかい?……グリムが随分と食べるようだけれど」
「あ、るにはあるんですが……ぐりむさんがいっぱい食べるからちょっと不安です」
「そうしたらハーツラビュルにおいで、少なくとも監督生や君のご飯を賄えるくらいの食料はあるからね」
リドル寮長、いい事言うじゃん。ていうか備蓄とかあるんだ……例えば何頭の事故とかで学園に箱詰めになってもハーツラビュルなら大丈夫そう。
「あ、ありがとうございます……!とても安心しました、僕畑いじり下手で……」
「そうしたらサイエンス部で植物育ててるし、家庭菜園のコーナーでも作ろうか?」
「さ、さいえんすぶ…??」
「科学だね、実験したりしてるんだよ」
「す、すごい…!それもまほう、で生み出すのですか?」
「そういう場合もあるけど、普通に水やりして実験材料を育てるときもあるさ」
手をぱちぱち叩いてすごいすごい、と褒め称える様子を見ルとやっぱり子供にしか見えない。グリムによれば700歳超えてるらしーけど……全ッ然見えねえ。
*レオナ・キングスカラー
「うぅ……ぼ、僕…っ」
あ〜〜〜めんどくせ。なんなんだこのチビは……。昼寝中の俺の尻尾に軽い痛みが走り起き上がって威嚇すればオンボロ寮の監督生の使い魔がボロ泣きしだした。どう見ても俺が脅して泣かせたようにしか見えねえ構図に苛立ちが募る、お前が踏んだんだろうが。
「ご、五虎退どうしたの?…すみません、レオナ寮長。なにかありましたか?」
「お前んトコの使い魔が俺の尻尾踏んだんだ、おかげで昼寝してたのに最悪の目覚めだ」
駆け寄ってきた監督生にそう言い放つとそれは申し訳ありませんでした、と丁寧な謝罪が返ってくる。
「ぼ、僕じゃなくてぇ……虎くんが踏んじゃって…」
「……は?虎?」
「虎くんいないね……爪とか引っかかってませんか?」
疑問を浮かべる俺を他所に監督生は俺の尻尾に手を添え見てきたあと、きょろきょろと周りを見渡している。
「……てめえか…」
「ごめんなさい、興味があるみたいで…虎くん、こっちに来て」
ガウガウと子猫みてえな返事をする白虎。使い魔の連れ?らしい。虎を使役してんのにこんな泣き虫で弱っちそうなのか。
「うるせえ、俺は虎のガキとは戯れねえ」
遊んでほしいと煩い虎の首根っこを掴んで監督生に引き渡すと言葉が分かるんですか?と監督生の使い魔がきらきらした目で見てくる。
「すごい、虎くんの言葉がわかるんですか?」
「お前な……俺はライオンの獣人だぞ、分からねえ訳ねえだろ」
それでも凄いと返ってくる。……くそ、やりづれえ。虎も器用に座って俺を見てる。
「こら、二人とも。レオナ寮長に詰め寄りすぎ。すみません、お邪魔をしてしまって」
「使い魔同様虎もきちんと見張っておけ」
「そうします……そういえば先程ラギーさんがレオナ寮長のことお探しでしたよ、結構慌ててる感じで」
「あぁ?ラギーが……?」
何のようだ?大方トレインあたりの呼び出しか?そう考えてると虎の耳が反応しラギーがきた!と騒ぎ始める。大きな図体ではしゃぐな、と牽制していると慌てた様子のラギーがやって来た。
「あ…!?あ、なんスか、そいつ……アンタの使い魔だったんですか?!」
「虎くんですか?そうですね、正確には五虎退のですが」
「なんだぁ……オレてっきり迷い込んだかなんかかと思ってめちゃくちゃびっくりしちまいましたよ…」
「お前虎くらい捕獲できんだろ」
「あのねぇレオナさん、オレとアンタじゃ図体が違うんスから」
こんなガキみてえな虎に負けるなと続けると虎がまた鳴き出す。遊び相手がほしいと。毛玉がいんだろと返すと毛玉は怖がって逃げちまうとのことだ。
「マジフトで追いかけ回したらいいんじゃないスか?一年坊の体力育成にいいかもっスよ」
「……なるほどな、おいチビっこ、コイツ乾燥地帯にいても平気か?」
「は、はい…!大丈夫かと……」
「マジフトってなんですか?」
監督生に説明するよりも見たほうが早いと返してサバナクローヘ移動する。一通りプレイを見せれば拍手が返ってくる。
「そこのチビ虎が遊べと五月蝿えんでな……おい、1年。走り込みだ」
チビ虎にコートを円周上に10周周り、追いついたやつの耳やら尻尾やらを甘噛みしろと伝える。走りたくてウズウズしていた虎は気合十分に走り出した。
「わ、と、虎くん……あの、さっきは何を言ってたんですか?」
「10周走って追いついたやつのケツ叩けって。動きたくてうずうずしてたみてえだからな」
「レオナ寮長がいいならいいですけどアレ……けが人出ませんか?」
「ハッ、あんなチビ虎に追いつかれるくらいの体力ねえ奴は選手になんかなれねえよ」
それならいいですが…と監督生は不安そうに見守っている。
「おい、チビっこ。あいつどんだけ動けんだ」
「う、うーん……本丸でもこんなに走り回せたことなくて……耳がヘタったらバテてると思、います…」
「本丸にはこんなに大きな運動場なかったからね……乾燥地帯には本来虎は居ないから、終わったときのためにお水用意しようか」
「はっ……チビ虎、もうバテてきやがったな。無駄な動きが多い、狩りが下手くそだ」
「れ、れおな寮長は……狩りの達人ですか?」
「お前、俺をあの虎と同じにするなよ。獣人とはいえ100%ライオンじゃねえ、人間の脳もあるからもっと賢い」
「僕にはよく分からない……ですけど、どこが無駄なんでしょうか?」
「走るときのフォームがジタバタしすぎだ、赤ん坊みてえな動きしてる。手の振りも大きい……渾身の一発がパワー不足で空振りしてる」
犬っころみてえに息を切らして返ってきた虎が俺の足元に倒れ込んできた。監督生が用意した水をやりながらまだまだだな、と返すと情けない声が返ってきた。
「白くて目立つ虎は格好の餌食だ、毛皮にされねえようにグラウンドでは面倒みてやるが普段はきちんとお前が面倒みてやれ」
「は、はい…!よろしくお願いします!」
弟子入りでもすんのか?と聞きたくなるくらい背筋が伸びたチビっことチビ虎を目に入れる。監督生はまた丁寧なお辞儀とお礼を申してきた。
*ヴィル・シェーンハイト
「ちょっと、待ちなさい」
血色の悪い監督生の腕を掴む。
「あ、の…何か?」
「血色悪すぎ、今にも倒れそうな顔色しているけど」
「あ、あるじさま……やっぱりご飯足りてないんですか?」
オンボロ寮の使い魔がひょっこり後ろからやってくる。始めリドルと学園長が話したときは信じられなかったけれど、こうも目の前で見ると本当なのね……刀に意思を宿して人の形として顕現させる力をもつ監督生はまるで異能力者。けれどここで必要な魔力は一切ないからペンを振るっても風すら起きない。
「『やっぱり』?」
「た、食べてます食べてます!五虎退、誤解を招く言い方はよくないよ」
話を聞けば学園長から毎月定額でお小遣いをもらっているものの、親分と読んでるグリムの食欲はそれだけでは賄えないため監督生と使い魔のゴコタイで畑で野菜を育ててるみたいだけれど、それでもやりくりが難しい場合は監督生のご飯を減らして二人に振る舞ってるのだとか。
「あのねえ………アンタ、従者想いなのは結構だけれどそれで倒れたりしたらその子が今度倒れるくらい泣くんじゃないの?」
現にもう泣きそうなほど眉を下げて心配そうに監督生を見上げている。
「グリムの分を減らしなさいよ、このお馬鹿」
「はは……お腹空いた〜って夜冷蔵庫漁ってるの見ちゃって。それにお腹が空くのって結構辛いじゃないですか」
「……まぁそうね」
「ハーツラビュルの皆さんにも食糧難になったらおいで、とは言ってもらっていますけど…それも寮の、何か緊急時の備蓄のものですし。だから今度モストロラウンジで働こうかと」
「今のまま働き出したら間違いなく倒れるわよ、ちょっとゴコタイ。アンタこの子の使い魔なんでしょう?グリム1匹くらい懲らしめてやりなさいよ、アイツの食欲は異常よ」
「私がやめるよう話してるので…ふふ、まあいいじゃありませんか。グリムのぽんぽこりんのお腹で眠ってる姿可愛いんですよ」
「グリムの健康状態にも悪影響だわ……ひとまず、これ。チョコレートバーあげるから少し糖質とりなさい」
ポケットに入っていたバーを渡す。……カリムあたりに話を通せば食糧難は切り抜けられそうだけど…。ベンチに座らせて食べる様子を見守っていると、そのチョコレートバーでさえゴコタイと半分に分けようとしている。
「ぼ、僕はけっこうです!あるじさまが食べてください…!僕心配です…」
「あら、ちょうどいい……カリム!この子のことで話があるんだけど」
ちょうど移動教室で歩いていたカリムを引き止め、監督生のことを話すと予想通り快くオンボロ寮の食料問題を引き受けてくれた。
「なーなー、オンボロ寮に定期便みたいに送るんじゃだめなのか?」
「あるだけ食べるブラックホールがいるんだから変わらないと思うわ」
「確かにそれもそうか〜…、よっ!ゴコタイ?はじめましてだな、オレはスカラビア寮長のカリム!」
手を差し出したカリムに対しておどおどしながら手を伸ばしたゴコタイ。後でわかったことだけれど監督生たちのいた国には初対面で握手する文化はないみたい。
「すみません、お手数おかけしてしまって」
「何言ってんだ?1人2人分の飯が増えるくらいそんな変わんねえよ!スパイス効いてたりする料理多いけど2人とも平気か?」
「用意してくださったものを有難くいただきます、五虎退もおそらく大丈夫かと思います」
「あるじさま、いっぱい食べてくださいね!」
「本丸にいたときそれで太っちゃったからね……体重管理は厳しくするよ」
「そんな、全然です!あるじさまはずっと痩身なんですから僕よりも食べないと」
元いたところではこの顕現した人形の姿のほうが本体である刀剣を使用して、歴史を変えようとする奴らとの戦いの日々だった……というのは大まかに聞いている。
「元いたところは色々厳しかったんでしょう?そもそもそんな食べられてないんじゃないの?……お腹が空くのって結構辛いことって自分の経験からの言葉のように思えたけど」
「……せっかく手塩にかけて育てた作物が焼き払われた年があって…前年に比べて刀剣たちも増えて、備蓄が足りないときがあったんです。そのときは戦前に出る刀剣たちに優先して食料をまわしていたから…流石にそのときはお腹空いて大変でしたけど、それに比べれば今は平気です」
どこまでも従者を優先する主だからこそ、ゴコタイはここまで監督生のことを慕っているのね。
「そりゃ辛かったな…今日はたっくさん用意するようにジャミルに言っておくよ」
(お、おいしい…!あるじさま、これとても美味しいです)
(本当美味しい…グリム、口汚れてるよ)
(美味えんだゾ!)
(辛い思いなんて嫌だからな、いっぱい食えよ!)
(ジャミル副寮長、こんなにたくさんありがとうございました…今度は手伝わせてください)
(いい、客人が気を遣うな)
(じゃあお皿洗いは私達でやろうか……グリムもだよ)
(ふなっ!?…仕方ねえな〜)
五虎退くんの泣き顔に弱い審神者です。
1発目は1番最初に修行に行かせた五虎退くんと決めていました。実際にこんなクロスオーバーがあるなら、オルトくんと大変に仲良くなってそうな気がする。
2/14ページ