13 With …?
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With 雲次
困った。長谷部が何故かプリプリしながら「あの小僧はなんです!」と私の袖を摘みながらアズール先輩を指差すもんだから、短刀同士のデザートの取り合い喧嘩を思い出して思わず微笑んでいると、より長谷部が拗ねてしまった。
「ごめんね、長谷部。怒らないで」
「監督生さん、僕が言うのもなんですが気にしない方がいいかと」
「主は俺に言ったのでありお前に向けたわけじゃないぞ!」
どうどう……長谷部の頭を撫でていればぐりぐりとお腹に頭が押し付けられる。これは相当我慢をさせてしまっていたな……。
「そういえば、私が異世界に行ってしまってどのくらいの期間が経ったの?」
「1年4ヶ月と13日です」
さすが長谷部、大体でよかったのに日数までちゃんと数えていたんだ。
「そっか……私は半年くらいしか向こうにいなかったけど、こっちだとそんなに留守にしちゃってたんだね」
「……ということは僕やカリムさん達も帰ったら何年も経っていた、なんてことが…?」
「それは避けたいですね……」
アズール先輩たちには未来がある。これから就職や進学の進路を決めていくんだろうし、その邪魔はしたくないな。
「あ、いたいた……主、今……は都合が良くないようだね」
無言の長谷部を目にして雲次が謝ってくる。
「なにかあった?」
「ううん、これから雨がざっと降りそうだから畑当番をしていたアズールくんたちに知らせようかと思ってたんだ…けど、休憩中なら問題ないね。ほかの当番には僕から伝えておくよ」
「ありがとう」
こんなに晴れてるのに雨が降るのか……通り雨かな。
「主、どこへ行くのです」
「ちょっと外を覗いただけだよ、こんなに晴れてるのに雨が降るんだって」
「…まるでひっつき虫ですね。監督生さん、彼に少女漫画を渡す際は創作であると伝えなくてはいけませんよ」
「煩いッ!小僧は黙っていろ!」
「こら、長谷部。口が過ぎますよ」
何か言いたげな長谷部を見つめる。言い訳したいし、言い分はあるけどそれを口にはしたくない……って感じかな。プライドやらなんやらが邪魔してすんなり言いたいことを言えない長谷部はいじらしいと思う。
「……頭を冷やしてきます」
「おやつ一緒に食べようね、だから戻ってきて」
ふらふらときっとお気に入りの中庭の木陰が気持ちいい場所か猫が遊びに来る裏手へ向かった長谷部を見送り、アズール先輩に謝っておく。
「猛獣使いですね、アナタは……」
「そうですかね?……あ、おかえり、雲次」
「ただいま。あれ、長谷部くんの甘えんぼタイムは終わったのかい?」
甘えんぼタイムと呼ばれているのか。長谷部が聞いたら『甘えてなどいない!』って怒りそうだな。
「アズール先輩に良くない口のきき方をしたので注意して、いま頭を冷やしに離れたよ……1年4ヶ月も留守にしてたんだってね」
「ふふ、長谷部くんも毎日主が不在の中頑張っていたからね」
「そうなの?」
「うん、時の政府が誰かが神域に隠したんじゃないかって疑って来たときも毅然と対応してくれていたし、政府とのやり取りもほぼ長谷部くんがメインだったかな。毎日毎日寝ずに本丸周辺や今までの合戦跡地に赴いて探し回ったり……主が居ないと寝れない短刀たちを寝かしつけてくれたりね」
「……よく倒れなかったね、長谷部」
「丈夫だよね。まあ三日月宗近や小烏丸なんかに詰められて無理やり寝かされてることも多々あったけど、長谷部くんのおかげで回ってた部分も多いにあるよ」
「そっかあ……」
「君も顔色がさっきより良くなってきたね、これからお昼かい?」
雲次がアズール先輩を覗きこんでる。ほんとだ、だいぶ良くなってきた。さっきまっかっかで本当に焦ったな……。
「うわっ!??!」
「あで」
いきなり雲次の背中がドアップになり後ろに倒れる。
「ご、ごめ、主、む、むむ虫、虫ッ!!!!虫ついてる!!!」
怖がる短刀たちのように私にひっついてなんなら盾みたいにしてる雲次が後ろからアズール先輩の裾を指差す。……あれは……青虫だ。あれくらいなら私もなんとか触れる。
「虫が苦手なんですか?意外ですね」
「私も苦手だけど青虫くらいなら……アズール先輩、ぺいってできます?」
「人魚だからってこれくらいできますよ……他にはいませんか?」
「もっとちゃんと両手あげて、はい回って!……うん、うん、ヨシ、多分よし」
「雲次、怖がりすぎ。肩の血止まっちゃうよ」
ぽんぽん、と私の肩を圧迫する勢いで掴む雲次の手を軽く叩く。昔Gが出たときのパニック具合は凄かったもんな……。でも私もアイツは苦手だから気持ちは分かる。みっちゃんがスリッパで叩き潰したのを信じられないものを見る目で見てたもんな……。
「ご、ごめんね主、痛かった?……ぼ、僕にはついてないよね?」
くるくる回って確認して!とじたばたする雲次を見上げる。そっか、さっき畑にいる桑名たちに伝えに行ってくれたんだもんね。
「うん、ついてないよ」
「ふ〜………びっくりしたぁ……ごめんね、見苦しいところを…」
「いえ。誰しも苦手なものはありますからね」
「アズール先輩、海から陸に上がって初めて虫見たときビビらなかったんですか?『なにこれキモ…』みたいな」
「興味深い、が勝ちましたね。海にもいわゆる虫っぽい造形の生き物はいますが僕の故郷は寒すぎてそういうのも居なかったので……初めて見る生命体といいますか」
なるほど……。確かにそうなのかも。北海道の人はG見たことないから怖がらないとかあるもんね。(見たことなくてもあの動きに恐怖を感じないものなの?と思っちゃうけど……)
「あ、あの、あるじさま……」
「あ、ごこちゃん。どうした?」
「えと……その…」
おろおろしてる足元から目線を上げない時は、甘えたい合図だ。
「虎くん、アズール先輩には優しくね」
がうがうと返事をしながら頭をこすり付けに行ってアズール先輩がびっくりしてる。大きいネコだと思ってください、と伝える。猫と虎は違うでしょうと至極まっとうなツッコミが入ったけどスルーしておこう。
「はい、ぎゅ〜っ!ごこちゃん、クマできてるねえ」
「あ、その……あまり眠れなくて…寝ようとは、してたんですけど…」
「長谷部くんと一緒に寝てたね」
「あ……ぅ……」
「雲次、バラしちゃダメでしょ」
「ごめん……五虎退くん、僕も初めて顕現して、さぁ寝ろ!って言われたとき怖かったんだよ……眠るっていう感覚が説明されても掴めなくて、主と雲生に手を握ってもらいながら眠ったんだ……これは秘密だよ」
「そ、そうなのですか?」
「流石に手を握られなくても眠るようにはなったけど、一人で眠るのはまだ怖いから雲生と相部屋なんだ……ふふ、誰だって甘えていいんだよ。怖いものは怖いし、寂しいものは寂しいんだから」
そうなんだ。仲がいいから相部屋がいいって申し出てきたのかと思ってた。私達人間は記憶もないくらい幼い頃から眠って目覚めるのを繰り返して習慣化してきたから、すっと怖がることなく眠れはするけどそんなのを何十年も繰り返していても眠り方が分からない時もあるくらいだ。
いきなり実体化した男士たちがそうなっても何もおかしくはないか。
「今日は私と一緒に寝ようか、大部屋で雑魚寝するのもいいね」
「は、はい……ありがとうございます、あるじさま」
「ごこちゃんは今日何の当番でもないよね?寝てないのにお仕事したらだめだよ」
「そ、それは……あるじさまもな気がするんですが」
ゔ。朝もヴィル先輩の前で刺されたのにまた刺された。
「それは……反省してるので水に流してほしいナ……」
「わあ、すごい密集してる。お昼できたよ…おや、五虎退。主を独り占めしてるのかい?……じゃあ主たちのご飯はゆっくり用意しようかな?あと10分くらいかけて」
みっちゃんに頭を撫でられたごこちゃんはちょっと嬉しそうに私の膝の上に乗ってくる。か、可愛い……!悶えると同時に、こうして短刀たちの相手をしながらも政府とのやり取りをしてくれた長谷部はしっかり者だなぁと感心する。
ごこちゃんが満足するまで抱っこして、食堂へ移動する前に長谷部を探す。そろそろ帰って来てもいい頃合いだ。あ、いた。中庭の隅っこでしょげてる。
「長谷部、迎えに来たよ。お昼食べに行こう?」
「あ、主……」
「雲次から聞いたよ、神域に隠したんじゃないかってあらぬ疑いかけられても毅然と対応してくれてたとか……ごこちゃんたちが眠れるようにサポートしてくれてたとか」
「主の刀として、当然のことをしたまでです」
「ふふ、ありがとう。でもそんな頑張ってくれた長谷部には何かお返ししたいんだけどなぁ…」
「………」
「何がいいかな、今日皆で雑魚寝とかどうかな」
「……雑魚寝」
「うん、短刀たちとか…にゃーさんもいるけど。どうやって過ごしてたか知りたいって皆言ってたから、読み聞かせみたいにしようかなって」
どうかな?と続けると長谷部が蹲って伏せていた顔が上がり、目線が交わる。
「……主の、右手側に五虎退を。俺は左手側が良いです」
「うん、分かった」
じゃあお昼行こう、と手を伸ばすと長谷部が握りしめながら立ち上がる。そぼろ丼だってよ〜と続けると心なしか足取りがるんるんしてる。長谷部、みっちゃんが作る丼好きだもんね。そういえば奮発してみっちゃんと海鮮丼作ったときはどうにかして保存できないかと冷凍室に詰めようとしてたっけね……。
「お泊り会楽しみですね、長谷部さん」
「あぁ……でもお前は早く寝ろ。大きくなれないぞ」
*アズール・アーシェングロット
「それでね、その時エースがリドル先輩のこと叩いて怒って……」
「なんて話をしてるのよ……夢見が悪いわ」
「全くですね」
何故か僕達全員も寝具を並べて監督生さんたちと並んで雑魚寝している。意外にも、ヴィルさんは話を持ちかけたら嫌がらなかった。カリムさんは想像通り快諾。
「時系列どおりがいいかなって」
「アタシたちにとって苦い経験を眠りの導入にしないでって言ってるのよ」
僕とヴィルさんの周りには短刀、と呼ばれる少年にしか見えない方々が眠っている。すうすう寝息を立てて……よくあの話で眠れるものだ。僕も、カリムさんもヴィルさんも慣れない事をしてるものだから体の疲労はある……が大人数と同じ部屋で眠るというのが初めてだから少し眠気が遠い。
「おや、眠れないのかい?」
「いえ……雑魚寝というものに慣れないだけです」
ナガミツ、とヴィルさんに呼ばれていたまるでモデルのような方が僕達を覗きこんでくる。僕の頭上に座り込んだ彼はあろうことが僕の頭を撫でてくる。
「あの、稚魚扱いしないでほしいのですが」
「あぁごめんごめん、君は人魚なんだっけ?人魚ってのはこうも綺麗なんだなぁ……」
「近いです」
「注文が多いな……ほら、ゔぃるも目を瞑りな。夜更けは良くないものが彷徨くからな」
「逆に怖くねえか?それ」
カリムさんの意見に同意だ。
「何を言う、俺らがいるのに近づけさせるわけないだろう?こんなに用心棒がいるんだから手放しで寝てくれ」
「…貴方達は眠らないのですか?」
「俺は主が寝たら月見酒をして眠るさ」
目を閉じてそうやり取りしていると、撫でてくる手の暖かさが気持ちいい。……頭を撫でられながら眠るなんて何年ぶりだろうか。ウトウトしてきた感覚とともにナガミツさんも気付いたのか、口数が減る。
(大般若〜、チビ共寝た?)
(あぁ、皆爆睡だ……ふふ、短刀と並んで寝てるよ)
(あはは、ほんとだねぇ……主もすぐ寝ちゃったんだ)
(彼女が一番本丸内を駆け回ってたからね)
(大典太、アンタも掛ふとんくらいかけなよ)
(いい……しばらくしたら俺も交じる、残しといてくれ)
(長谷部…主の隣で寝てんのかい、ちゃっかりしてるねえ)
(まあまあ、彼にはいいご褒美だろう)
(おや、次郎太刀に大般若長光。どうしたの?)
(おお、髭切!主たちが寝付いたから酒どうかって誘ってたんだ)
(いいねえ、僕も呑もうかな)