13 With …?
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With 鶴丸国永
*アズール・アーシェングロット
「あの、そのツルマルという方は?」
「あぁ、あるじさまのおきゃくさま!鶴丸国永をおさがしなんですね、えーっと……こちらです!」
監督生さんは入学式の日、突然やってきた。子どもにしか見えない付喪神というサヨさんを連れて。最初こそ半信半疑だったものの、彼女の物の心を目覚めさせるという能力は刀だけではなく、たまたま触れてしまったモストロラウンジの観葉植物にまで力が及んだ。
擬人化、というものに近しいのか?とも思う。そんな彼女が過ごしていた場所に図らずもカリムさんたちと来てしまい、100人以上に囲まれながら慣れない衣服に身を包み歩く。どうしたって洋服にやっと慣れたのに、和服と呼ばれるこれは着るのも大変だしきちんとしてないとはだけてくるし、はだけたときの直し方もコツがいる。引っ張ればいいのではなく伸ばして内側に引っ張るようにしないと綺麗にならない。
洋服のような服装の方もいれば、ナイトレイブンカレッジでは目にしない服装の方ばかり。今目の前を歩くサヨさんと同じくらいの子ども………と言っていいんでしょうか、彼もまたそうだ。
「たしか、はたけとうばんだときいたので……はたけはここです!おそらくどこかにいるとはおもうんですが……」
よっ、と掛け声をしたかと思いきやジャンプして屋根に登った?!?な、なんて跳躍力…!!決してバネなどがついてるような履物ではない。
「鶴丸国永〜!どこですか?」
「よっ!」
「うわあっ!??!」
屋根に登って見渡す彼を見上げていると、突然肩を叩かれて思いの外声が出てしまう。振り返ると僕と少し似た銀色の髪に真っ白な和服の方がカリムさんのようなニコニコと笑顔で立っている。
「おぉ!いい驚きっぷりだな!俺は鶴丸国永だ、きみはたしか……あずーる、だったか?よろしくな!」
「もう、あるじさまのおきゃくさまをほうっておいてどこにいたんですか!」
やはり屋根から当たり前のように飛び降りてきた彼を2度見する。学園よりはたしかに小さいが、普通の民家と同じくらいの屋根の高さだぞ……?軽いジャンプで昇り降りできる高さじゃない。
「悪い悪い、もてなしの準備してたんだよ…案内ありがとさん、今剣!」
「はーい!……おきゃくさま、ひとつよいですか?」
「は、はぁ………なんでしょう?」
「このひとのおもてなし、はおとしあななのでごちゅういくださいね!では!」
「……は??!落とし穴?!」
「なーんでバラしちまうかなァ……、ま!落ちてみてからのお楽しみだ!結構掘ったぜ」
結構掘った???何を言ってるんだこの人は……。
「桑名〜!当番しに来たぞ」
警戒しながら歩いたおかげか、落ちずに済んだものの落とし穴とそうでない箇所の見分けが全くつかない。ハッタリか?いや、本人だけが言うならまだしも先程の彼が言うなら本当なんでしょう、僕にわざわざ嘘をつくメリットがない。クワナ、と聞こえツルマルさんが声をかけた方を背中から覗いて見る。
「あの……彼は何を?」
「何って………土を食べてるんだよ?」
「土を食べる………???」
何を言ってるんだ??今はまだ朝だ。朝からこんな理解できないことが続いてるせいで早くも頭痛がしてくる。もくもくと土を食べるクワナさんにドン引きしながら見ていると、謎の持論を聞かされる。
「僕は畑が好きなんだけど、畑って育てる土壌が何より大事なんだ。土が悪ければ天気や水がいくら条件がよくてもいいものが育たない。だから良し悪しを見極めてるんだ、たとえば触ってみるだけでも分かることもある」
「お〜、今年はミミズやらなんやら多いなあ……いい感じじゃねえか」
「うん、虫がいるってことは生きていける環境ってことだからね」
「む、虫も食べるんですか…?」
「あのね、別に僕ゲテモノ好きじゃないからね……挨拶が遅れたけど僕は桑名江。
じゃあまずは土を耕していくよ」
「おー!」
ひょい、と渡されたクワ。これはさすがに教科書で見たことがある……が使用したことはもちろんない。
「お、重……!」
「なんだ、きみ体の使い方が下手くそだな?顕現したての頃の南泉みたいだ」
「主より幼いんでしょ?子どもだからじゃないかな」
「彼女の年齢をわざわざ尋ねたことはありませんが……16ではないのですか?」
「うん、21だよ……まあほぼ変わんないか、5歳なんて」
レオナさんより年上なのか?!信じられない……普段のお転婆ぶりを思い返してみてもやっぱり、信じられない。
「俺らは軽く見積もっても200くらい違うもんな」
「200??!」
「そうだぜ、平安時代と南北朝時代。刀といえど作られた時代が違うからな」
「刀としてあり方や求められることは同じなのに、随分目まぐるしくいろいろ起こっていったよね。
もちろん僕達は武器だから、僕達が作られた理由は戦が理由だ。戦があれば世の中は否が応にも対立しなきゃいけないし、厳しくなっていく。食べるものもなくなって奪い合いが起きる……
ここでは絶対にそんな風にさせたくないから、畑仕事は汚れるし馬当番と同じく毎日やらなきゃいけないから手間もかかるけど大事な仕事なんだよ」
「なるほど……土を食べるまではいかないですが、食は人間の基本的欲求の一つ。差し引くことができないものですからね」
「そのとおり!クワはこうやって使うんだよ、はい持ち上げる」
「わ、……こうですか?」
「もっと腰入れてぐっと踏ん張れ、腰いわすぞ?……そうそう、で、腕はここまであげる」
ぐい、とツルマルさんにクワを持っている両手ごと更に上に上げられ、重みによって体がふらつく。確かに姿勢や力の入れ方を意識しなければ、体が変な痛め方をしそうだ。
「んで、自分の足に気をつけながら振り下ろす……そこまで力は入れなくていいが、力抜いてたら土をおこせねえからな……土を掘り起こして、柔らかくする作業だ。そのイメージで進めてくれ」
こ、これはかなり大変な……。
一心不乱に土を耕し、ようやく一面が終わる頃には太陽が真上に登っていた。お昼くらいか…?汗もすごいし、慣れない動きのせいで体中が重い。
「アズール先輩!お疲れ様です……ちょっと休憩してください、顔が真っ赤ですよ」
「か、監督生さん……」
「……桑名!鶴丸!アズール先輩のことちゃんと見ててってお願いしたでしょう」
「悪い悪い、作業没頭しちまった……おい、大丈夫か?向こうまで運ぶか……よっこいせ」
急に体の向きが横になり、ツルマルさんの顔が見上げるとあることで、彼に横抱きにされているのだと気付く。
「水がほしいです…」
「分かりました!ホース持ってきますね」
「ホースから直で飲ますのかい?」
「流石にそんな拷問みたいなことしないよ……!先輩、まずは手からかけていきますね」
冷たい……そういえばホンマルと呼ばれるこの建物の裏手側に井戸があると教えてもらった。深海くらい冷たい水に故郷を思い出す。
「………おお、こりゃ一体なんだ?肌の色が変わったぞ」
「アズール先輩は人魚なの、薬で人間に変身してるんだよ」
「人魚……?へえそいつは……凄いな、人魚が実在するなんて」
なぜ彼はそんな嬉しそうな声色なんだ?手から二の腕、首、と水をかけてもらい、水を飲んで乾きがだんだん治まってくる。ふらついて仕方なかった、バルガス先生の授業でさえこんなに体がヘトヘトになるまでの重労働を長時間やることはない。
「すみません、もう少し早く来るべきでしたね……アズール先輩、平気ですか?」
「体が重いです……」
「バテちまったか……悪いことしたな、あずーる」
「いえ……」
「桑名は何してるのかな」
「また土食ってたぞ、さっきは」
どんだけ土の様子を知るために食べるんだ…主食が土と言われても仕方ない量だぞ。幾分か楽になってきたので体制を変える。
「あの畑、何を育てる予定なんですか?」
「大豆と季節の野菜だな、あとは貯蓄に困らないさつまいもとか……」
100人以上が住むこの大所帯なら畑のあの大きさも頷ける。残りをやり切るとツルマルさんが戻っていき、僕と監督生さんの二人になる。貸してもらった服の足元が土まみれだ。
「すみません、ほんとに……」
「大きな貸しですよ、と言いたいところですが。貴方がナイトレイブンカレッジに来た当初に仰っていた『働かざるもの食うべからず』という言葉の意味がようやくわかりました。
手違いとはいえ、僕達は貴方の住まいにお邪魔させていただいている…衣食住が確保されている、その対価だと思えば」
「そんな………逆に何もしないの暇かなって思ったから割り振っちゃっただけですよ、隣いいですか?」
「えぇ、どうぞ……あ、汚れが」
「いいですこのくらい、洗えばすぐです!お昼ご飯もうすぐできますよ」
「こんなに体を動かしたのは初めてです……地上に上がってから海にはない職種を理解してきたつもりですが……農家というのはこんなにも大変なんですね」
質のいい野菜や肉が高い値で取引されるのも頷ける。畜産や農家というものは一朝一夕でできない。疫病や災害なんかですべてがパーになることも少なくない。
「まさか一面分アズール先輩に任せてるとは思わなくてびっくりしました……クワ、重かったでしょう。マメとかできてませんか?」
「ご心配なく、それは魔法で治しながらいたしました」
「うーん、いいのか悪いのか……肩とか腰は?痛めてませんか?」
「筋肉痛になりそうな気配はしますが、療養が必要な痛み方はしてないかと」
「主……」
「長谷部!どうかした?」
「燭台切光忠が呼んでおります」
「なんだろ……アズール先輩、ここで安静に!お水を飲んで!休んでてくださいね」
「そんな強く言わなくてもそうしますよ…」
慌ただしく走る監督生さんを見送ると、ついていくのかと思っていたハセベ、と呼ばれた彼が少し距離を開けて隣に座ってくる。
「……一つ、言っておく」
「?」
「主はやらないからな」
「………は?」
(他の小童は主と適切な距離を置いているがお前は違う、主を好いているのだろう……畑仕事もこなせないような軟弱者に主はやらん)
(……何を仰ってるのか理解に苦しむのですが、僕が監督生さんに対して特別な想いがあると仰ってるのですか?)
(何だ、無自覚か?人の姿になってからは浅いがそのくらい分かる。参考文献も読みあさった)
(参考文献とは……?)
(主から頂戴した絵巻物だ)
(……それ、女性目線の話でやたら助けてくれる男と途中から当て馬のような男が出てきたりします?)
(お前の世界にもあるのか?!)
(少女漫画を参考文献に現実に当てはめるのやめていただけますか?それにあれは創作で、研究データに基づくものではありませんから)
(ぐ……っ)
(はぁ……もうツッコむのも疲れますね)
主が読んだ少女漫画を借りて読んでる長谷部いたら可愛くないですか???可愛いですよね、私もそう思います。
この本丸の長谷部はちょっとアホの子です。