TWST × とうらぶ
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With 燭台切光忠
*カリム・アルアジーム
「お、おい…監督生〜〜!泣きやんでくれよ」
俺が脇に手を入れて抱き上げるとぐったりした様子で体を任せてくる監督生は泣き始めてもう10分くらいは経つ。顔が真っ赤になってる……確か子供ってあんまり泣くとそのまま熱出したりするよな?うちのチビたちもそうだったし…。
「みっちゃ、みっちゃんがぁあ…」
「みっちゃん?あの使い魔か?」
えぐえぐと赤ん坊みたいに泣きじゃくる監督生は頷いて……るようだ。腕に抱え、上下にゆらゆら揺する。
突然スカラビア寮にやってきたと思えば、扉付近の柱に足を取られて顔面から盛大に転んでからずっと泣いている。ひとまず近くにいた寮生にジャミルと救急箱を持ってくるよう頼んだんだが……全然泣きやまねえな〜…。
「痛いか?」
「いだくない」
「えぇ?そんな泣いてるのにか?スゲー痛そうだけど……他は怪我してねえか?」
「うん………っひ、みっちゃんは…?」
「スカラビアでは見てねえけど…いつも一緒なのにどうしたんだ?」
「起きたらいなかった……グリムもいないし」
泣きすぎて疲れたのかようやく少しずつ落ち着いてきた監督生が俺の肩に頭を乗っけて寄りかかってくる。……これ寝るやつだな。
少し前、新入生の入学式で突然現れたグリム、そして監督生と使い魔は今でも覚えてる。グリムは魔獣だし、監督生は異世界人、そんでもってまだミドルスクール生くらいのチビだ。使い魔は大人らしいけど……サニワと呼ばれる能力を持つそうで、物に意思を宿らせて実体化できるらしい。何回聞いても魔法みてえだ。
「カリム……おお、随分と派手にコケたんだな」
「ジャミル〜〜ッ!!なんか疲れたからかぐったりし始めてよ…」
「……ん?待て、監督生。おでこ触るぞ」
「やだ、痛い!」
「じゃあ首にする、見せろ」
染みないからな、と声をかけて消毒液にガーゼを浸す。おでこも顎も、鼻先も擦りむいて血が出て痛そうだ。あとはこれを貼って……。
「参ったな、相当熱があるぞ。しんどかったんじゃないか?」
「え…?」
「冷えピタあるっけか?監督生〜、お前熱あるってよ」
ジャミルから受け取り、監督生のカットバンの上から貼り付ける。ほんとだ、泣いてるからかと思ってたけど顔がめちゃくちゃ赤い。
「失礼……あぁ!やっと見つけた…主!」
「みっちゃん……うぅ…」
「会えたんだから泣くな泣くな!悪いな、そこの入り口に足引っかかって転んじまったんだ」
「いや……主、熱があるのに出歩いてはいけないじゃないか。ぐりむも僕も随分探したんだよ?」
「ぼくもみっちゃんのこと探した」
「一応書き置き残したんだけれどね……二人とも、すまないね。主の手当をありがとう、中々泣きやまない子だから苦戦しただろう?」
「そりゃもう……20分は泣いてたんじゃねえか?実家にいるチビたちの誰よりも泣いてたな」
「お前の弟たちも相当なお転婆だからな…転んで20分なんて泣かないだろうな。悪化する前に見つかってよかった、薬などはあるのか?よければ救急箱のを渡すが」
ジャミルが使い魔のみっちゃんにそう聞くとみっちゃんはうぅん、と唸る。
「……医者にかかるべきか悩んでいて……お金とかもあるしね」
「お金?それがなんだ?」
そう尋ねると言いにくそうに手持ちが厳しいことと、監督生が大の医者嫌いなのだと言われる。
「そうか、そういうことなら俺の家から医者を呼んでやるよ!俺の弟たちも小さい頃はよく医者に噛みついてなぁ……対応は慣れてるだろうし」
「それがいいな…監督生はこの世界の人間ともしかしたら違うかもしれないし。すぐ連絡する。明日にはつくだろう」
ジャミルが家に連絡してくれてる間に迎えに来たグリムとみっちゃんにそれぞれフルーツやらを渡していく。病のときはひとまず栄養のあるもん食わねえと元気になれないからな。
*ジャミル・バイパー
完っ全に油断していた。熱でぐったりしていた監督生はカリムの家に専属で仕えてる医者を見るなり走って逃げ出した。
幸いにもスカラビアにも獣人族の生徒はいる。だからどこに隠れたのかはすぐに突き止めた。
しかしまさか……ゾウたちが暮らす小屋だとは。しかも不思議なことにゾウたちが退かない。こうなったら癪だがあいつを呼ぶしかない。
「はいはい、すみませんね〜……おお、こりゃ殺気立って」
「ラギー、監督生熱があるから早めに出てきてくれるように説得してくれ…頼んだぞ」
報酬に釣られてやってきたラギーは座り込んでゾウと話し始める。
「……へえ、定期的にここ来て遊んでるんスね。んで我が子同然だから隠してると」
「定期的に?………知らなかった」
道理ですんなりここまで来れた訳だ。監督生も動物と話せるんだろうか?頑なに退かないゾウたちへ引き続きラギーが説得を始める。
「主、聞いたが注射などはないそうだよ……お願いだから出てきておくれ」
従者のように仕えるミツタダがそう呼びかけるも、返事はない。中で気を失ってないといいんだが…ようやく説得できたラギーが中に入っていき、ぐったりして意識が朦朧としてる監督生を抱きかかえて帰ってくる。
「こんな熱上がっちゃって……こりゃ大変ッスね」
「らぎぃ、だったっけ?ありがとう、恩に着るよ」
ま、こいつ今日はタダ飯食って帰る予定だからな。だからこそ協力したとは露も知らないミツタダに心の中で罪悪感を覚えながら医者に見せる。体の免疫が弱くちょっとしたウイルスが悪さをしているんだろうと診断、解熱剤と鼻炎薬などを調合されてどっさりと渡されている。
「ほう、その場で調合するんだね」
「凄えだろ?その場で診てから調合するから効き目バッチリなんだよ…あと、ちゃんと子供用に味も甘くしてあるぞ」
ミツタダとグリムの分の飯も渡してスカラビアから帰っていく。すぐ治るといいが……熱であんなにぐったりするものなんだな、子供というのは。
「ありゃ相当な甘え上手ッスね、ゾウが人間気に入るなんてそうそうないから」
「そうだ、ゾウたちはなんて言ってたんだ?」
「親代わりだとか…痛いことするなとか、そんなとこ。あの子らが医者にかかるなんて大概重い病気になったらでしょ?だから自分たちみたいに痛いことされるんじゃねえかって心配してましたよ」
「監督生って動物言語学得意なのか?」
「さあ?……でも会話できてるとは言ってましたね」
体調が回復したら聞いてみるか。魔力のない異世界人というだけでハンデのようなこの学園内で、文字通り最年少の監督生は何かと大人たちに気をかけられてるが理由がよくわかった。転ぶし、かと思えば熱を出すし、脱走するし目が離せない。ナジュマは手のかからない妹だったが、カリムの兄弟たちを思い出す。
*燭台切光忠
「やだぁぁあああ!!!!」
「おやおや、そんな暴れて……」
いつもはこんな暴れん坊じゃない主が泣いて癇癪を起こしている。熱を出すと昔からこうだ。コントロールが自身でも効かないらしく、主と出会った頃のような……ほんとうにもっと小さい童の駄々をこねるような主に戻る。主はまだ、齢10にも満たない小さな小さな子供だ。
最初は家族のもとを離れて寂しい寂しいと毎夜泣いていた。3人兄弟の末っ子で少し年の離れた兄上と姉上から随分可愛がられていたようだ。家族の中で最後まで兄上たちが審神者として過ごすのを反対していたんだとか。
そんな主と過ごして……5年か。舌っ足らずだった主は滑舌良く話せるようになったし、たまに覚束なかった足元も駆け回れるほどしっかりした。
「すげーな……毎回こうなのか?大変なんだゾ」
「グリ坊、主はね……4歳のときからご家族の元を離れ政府の命に付いている。弱ったときくらいしかこういうわがまま言えないんだよ、普段は隠してるからね」
疲れてきた主の動きが鈍ったタイミングで膝を追って目線を合わせる。
「主、すこし眠るかい?」
「やだ…」
そんなに声が掠れてしまって。優しく頭を撫でると主は目を瞑る。もう眠ってしまいそうだけど……。
「お腹は空いた?何か食べたいものはあるかな?」
「……みっちゃんのプリン…」
「できればご飯が良かったけれど…リクエストならば作ろうか。喉は痛くないかい?枯れてしまってるね」
ぷりん。ぷりんとはなんぞや?と他の刀剣たちと頭を悩ましたことを思い出す。ぷるぷるで、甘くて、冷たくて、おいしい。卵が使われているお菓子と言葉が少なかった主の言葉たちから試作品を繰り返して33回目……これこれ!と言われたあの日のぷりんは苦い思い出でもある。
「よーす、監督生〜熱どお?………何、押し入り強盗でもあった?」
「これはまた凄いな…」
「エース、デュース!オメーらちょうどいいとこに!!片付け手伝え!」
「主、起こしてあげるから少し休みな………よし、見舞いに来てくれたところ悪いが早急に片付けるぞ」
「え、この暴れた形跡全部監督生のなの?」
「ああ…前から特に熱が出たときに魘されやすくてな。…いま、主は9つになる。家に帰る、母親と会いたいと熱になるたびに泣いて暴れてな………知らないところに来たから、思い出したんだろう」
「9………そんなチビだとは…」
「主は普段、君たちが見ている通り聞き分けがいい素直で優しい素敵な主さ。わがままなんて言わない…まあ悪戯してる時はあるけどね。……そんな主が弱ったときくらいしか泣けないからいつも気の済むまで泣かせてるのさ……でもまあ、ものは壊れてないし…軽い方だね」
そう言いながら主が暴れてあらぬ方向に動いてる机や椅子を元に戻していく。あ、靴下が片方脱げてる……可愛い。
お見舞いに来てくれた二人にも、と主がりくえすとをくれたぷりんを作る。様子を見てくれる人間がいるのは助かる。
「ミツタダ〜、冷えピタかぴかぴだから新しいのつけてもへーき?」
「すまないね、頼むよ」
「汗ふくタオルどこ?お湯で濡らす?」
「固く絞ってくれれば問題ないかな…はいこれ」
えーすにタオルを渡し、でゅーすにぬるめのお湯を入れた桶を渡す。ちゃっちゃと卵と牛乳、砂糖をいれて型に入れて固める。あとは出来上がりを待つだけ…お茶でも淹れるか。
「おや……ふふ、まるで赤子のようで可愛らしいね」
えーすのネクタイ、と呼ばれる服飾の端をしりしりと感触を確かめるように触ってる。
「でっけえ赤ちゃんなことで……熱下がった?これ」
「うん、下がってる」
「オレ様もうクタクタなんゾ……」
「初めてだもんなあ、ぐり坊。主は泣いたら長いぞ、3人とも意地悪のし過ぎには気をつけたほうがいい」
ぐり坊も昼寝を始め、二人も釣られるようにして眠っている。30分後に起こそうか…。主は今日は何なら食べられるかな…そう思い献立を考えようと厨へと向かう。食材を出していると、ひたひたと片方だけ裸足の足音がする。
「主、おはよう」
「みっちゃん……」
抱っこの催促か。両手を上に上げてる主を抱き上げると首に少し熱のある主の頭がくっついてくる。
「体調はどう?寒かったりする?」
「しない……みっちゃん、ぼく……」
「ん?」
「……ここに来てから…おとうさんの顔思い出せなくなっちゃった…」
「……そっか、忘れたくないよね」
「みんなのこと忘れちゃうの?…こんのすけはそんなこと言ってなかった、のに」
また大きな目からポロポロと涙が溢れるので指で拭う。あまり泣くとまた熱が上がってしまう。
「主、まだここへ来てから数ヶ月だよ。主は……本丸に慣れるのだって1年と少しかかっただろう?…ゆっくり慣れていくまで、少し混乱しているだけだよ。思い出せるようになるさ、大丈夫」
背中を擦って上下にあやすように揺する。本丸のときも姉上の顔が思い出せないから家に帰してくれ、とわんわん泣いてた時期があった。あの時は結局……こんのすけが写真を持ってきてくれたんだっけ。その写真は主が肌見放さず持ってたはず。確か一緒に持ってきてるはずだから、あとで部屋を探してみよう。
「みっちゃんは?ぼくのこと忘れない?」
「忘れるわけがないだろう、僕の大事な主のことを」
折れるまで一緒さ、そうやって約束しただろう?と目を見ると頷きが返ってくる。主は賢い。過去に戻ってる自分が忘れるということは、未来にいる家族も自分のことを忘れてしまう可能性にきちんと気付いている。
「さ、そろそろぷりんできるよ……ほら、どうかな」
「おぉおおお〜!おいしそう」
反応がいいねえ、相変わらず。
(うま!みっちゃん、ありがとう)
(邪魔するぞ……おや、回復したのか?仔犬が熱を出したとバイパーたちから聞いてな)
(すっげ、誰よりも見舞い品豪華じゃん)
(ぼくこんなに食べられないよ)
(そしたらオレ様が食うんだゾ!)
(これは仔犬への見舞い品だ、グリム。お前にもツナ缶買ってきてるから奪うような真似はするなよ……薬をまだ飲んでいないな?)
(プリン食べたら飲むよ)
(………ミツタダ、甘やかし過ぎもよくないぞ)
(主はいい子だからきちんと飲むさ、ねえ?)
(全くお前は……バイパーが気にかけていたぞ、早く風邪を治せ)
ショタっこ審神者もいいと思うんですよね、はい。
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