TWISTED-WONDERLAND
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不便
*ミョウジ・ナマエ
「……何やってんの、マンタちゃん!」
「おわっ!?何?!何…?どうした、フロイド」
まな板で野菜切ってたら慌てたフロイドに包丁を取り上げられる。何やってんの、も何も……スムージー作ろうとして細かく切ってただけだ。
「危ないじゃん!包丁で目切るつもり!?」
「はぁ!?切るわけ無いだろ……?近づかないと指切るから見えるとこまで近づいただけだよ」
「えぇ…?もっかいやってみて、切る手前までね!」
フロイドにそう言われ、包丁も戻ってきたのでニンジンを左手にセットして極限まで近づく。オレンジ色の野菜だし、まだ見やすい。物体が滲むように、ぼかされたようにぎりぎり見える。そこに白いセラミックの包丁を近づける。
「………マンタちゃんが目見えにくいから仕方ないの分かっけどさぁ…目に包丁近くて危なかっしーよ……オレがやるんじゃだめ?」
「うーん……押されたりいたずらされない限りは怪我したことないし大丈夫だと思うけど」
「は?そんなことするやついたら絞め殺すけど」
すぐ殺すな、とフロイドを宥める。
「ね、お願い。オレ近くにいないときはベタちゃん先輩に頼んで?」
「いちいちヴィル先輩の手を借りるのもなぁ……けど分かった、相談してみるよ」
確かにこの学園は度が過ぎたイタズラ好きの生徒も多いし、何よりフロイドはあのアズールの手下みたいに動いてるからな。契約結んで自業自得なくせに逆恨みは多い……そんなフロイドの恋人の俺へのやっかみでちょっかい出されることは増えた。視力弱いから足かけられたり、酷いときは光魔法やライトを目に向けられたり。あとはなんかコソコソ言ってるのが聞こえたり?
「あとさぁ、マンタちゃんオレになんか隠してなぁい?」
「?」
「……なんでこんなとこ包帯巻いてんの?」
やっべ、料理中だから腕まくりしたの忘れてた。
「バルガスの授業でコケた」
「ふぅん?……オレに嘘つくの?」
「い、た…っ…分かった、言うから!……魔法薬学でペア組んだやつが失敗して、魔法薬がかかったんだよ」
「へ〜?魔法薬学得意なポムフィオーレのマンタちゃんがいたのに失敗したんだぁ?」
わざとらしくネチネチと嫌味を言うフロイドに今度こそ白旗をあげる。最初から気付いて聞いてきたんだな、こいつ……ほんとオクタヴィネルの調査力には参る。
「わざとだと思うけど……まぁ、邪魔されたとはいえ失敗したのは俺だから」
「誰にやられたの?……つか、なんで言ってくんねえの?オレそんな頼りない?」
「違う違う、フロイドはやり過ぎちゃうだろ。これだってクルーウェルが見てたからしっかりそいつだけ補習受けてたよ、あと反省文も書かされてたし」
「………さっき、廊下でそいつマンタちゃんのこと魔法で攻撃しよーとしてたけど?」
「え?」
「あんな顔近づけてるとこに風魔法なんか放ったら一発だよね………ねえ、マンタちゃん」
「フ、フロイド」
「……ぐす……オレ、オレのせいでマンタちゃんが怪我するのやだ……でも何も教えてくれねぇのが一番やだ…!オレ、番なのに」
ずびずびと鼻を啜って泣き出したフロイドの頭を慌てて撫でる。あ、やべ、ニンジン触った手だった。タオルで拭き直してから抱きしめて撫でる。
「ごめん、フロイド。悪かった」
「マンタちゃんのバカ〜〜〜ッッッ!!!!」
声デッカ……。負けないくらいのバカ力で抱きしめられるので背中を擦る。
「正直そこまで狙われてるとは思ってなかったよ……ごめん、俺が甘く考えてた。フロイドに言わなかったのはその場で終わったと思ってたからだ。
正直、ちょっと火傷するくらいでフロイドに刃が向かないならいいかなとも…思ってたけ「…は????」ど、けど!最後まで聞く!」
信じられないくらい低い声が聞こえたので大きな声で遮る。キレ散らかしたフロイドは止められないから。
「逆で考えたら…すっっっっごい嫌だ。だから考えを改める……ごめん、しんどかったな。……けど、お前が停学、退学になるのは嫌だから加減だけはしてほしい」
「………ん。……はぁ…バカマンタ」
「反省したからその呼び方やめろ」
*フロイド・リーチ
マンタちゃんの左腕の包帯に手を伸ばす。火傷っつってたっけ……解いてくと真っ赤に爛れた肌が見える。これ相当熱かったんじゃないの?人魚は海の中にいるから炎や熱とは無縁。だから人間になる魔法薬飲んで、ヒレを使う練習中に口酸っぱく言われてたのは火の取り扱い方だった。感じたことのない「熱い」って感覚のせいで、初めての火傷が取り返しつかないレベルのものだった……って人魚も過去には居たみたい。
「………アズールに薬もらいにいこ」
「あら、その必要はないわ」
「げ…ヴィル先輩…」
「何が『げ』なの?見せなさい………あんた1週間で治るレベルの火傷だってアタシに報告しなかった?ナマエ」
「な、治るかなって」
「治らないわよこのバカ!!!適当に治療して中途半端に痕が残ったらどうするつもりだったの?痕だけならまだいいわ、痛みや痺れだって残るのよ!」
わー、マンタちゃんベタちゃん先輩にも嘘ついたんだ。見たことねえくらい青筋立てて怒ってるのアズールそっくり。けどオレも怒ってるからどんどんマンタちゃんちっちゃくなってく。
「やっぱあいつ油かけてから殺す」
「やめなさい、フロイド。前科者にナマエを預けられないわ」
「………イシダイせんせぇ、これ見て反省文と補習だけなのおかしくね?オレが分からせるしかねぇじゃん」
「もっと頭を使いなさいって言ってるの……アンタは手に負えない気分屋で鍋爆発させてばかりじゃない。ペア組んだ相手に『たまたま』魔法薬かぶったら反省文と補習は免れないでしょうから気分屋を止めなさい」
「ヴィル先輩!!それは俺が嫌なんですってば」
「……ッチ……イシダイせんせぇのとこ行ってくる」
もう絞め殺しちゃえばいいじゃん。けどそれはマンタちゃんが嫌がるし。けどあいつマンタちゃんのこと殺そうとしてたし。目なんか切ったら痛みでショック死してもおかしくねえし。
「イシダイせんせぇ」
「フロイド・リーチ……入る時はノックくらいしたらどうだ」
「あ〜今そんなんどうでもいいからさぁ……2年D組のウマの獣人……なんだっけ、エルドなんとか。あいつ、マンタちゃんのこと殺そうとしてたんだけど」
「………は?」
「目が見えねえマンタちゃんがこーんな近寄って野菜切ってる後ろから風魔法使って狙ってたから締めて今ジェイドに見てもらってんだけどぉ……アイツでしょ、マンタちゃんの左腕火傷させたの」
「………あぁ、3日前にペアを組んでいたな」
「あのさぁ、せんせぇ人間だから分かんないかもしんないけどさぁ……海には炎も熱もねーの。海底にマグマがある地域もあっけど……オレらのとこも、マンタちゃんの故郷も海底火山なんかない地域でヒレで歩くようになってから炎とか電気があったけーの知ったレベルでさぁ………あの火傷を反省文で済ませる意味が分かんねぇだけど??何考えてんの?」
「……フロイド・リーチ、落ち着け。話ができないなら処置についての意図も話せない」
「………キレる前に話してくんね?じゃねえとオレあいつのこと殺すから。なんだっけぇ、どっかの国には仏の顔も三度までってあんでしょ?魔法薬学の前にはあいつマンタちゃんのこと足かけて転ばせてんだよね〜〜まじで次とかねえから」
ポッケからミントのアメ出してガリガリ食べてイシダイせんせぇの顔見る。
「分かった…いいか、俺が監督した授業下においては事故に定義される。何故なら魔法を使ってミョウジの腕を操作したり、鍋をミョウジにむけてひっくり返した訳ではないからだ。しかし適当な手順によってペアに怪我をさせたのは事実……それで反省文とどうも動きが怪しかったので聴取のつもりの補習を行った」
「…で?」
「反省してない、何かを企てている駄犬の表情は仕草で分かる。だから次に問題が起こるなら学園長に進言すると忠告済みだ……フロイド・リーチ、先程の話を学園長に漏れなく話せ。退学処分が妥当だと話をする」
「………一発ぶん殴っていい?」
「…教師としてはノーだが、デイヴィス・クルーウェルとしてはイエスだ」
「ん……ベタちゃん先輩が薬作ってくれてっけど治る?」
「……そんな酷いのか?あの駄犬……飼い主に嘘までつくとは」
「アハ、イシダイせんせぇにも嘘ついてたんだ……マンタちゃんにも話しね〜となぁ……まぁいいや、オクタヴィネル行ってくる〜」
すぐ学園長の部屋行くから先行っといて、とイシダイせんせぇに伝えとく。あのウマどうしてやろっかなぁ……歯でも折る?
「ジェイド、あいつは?」
「おかえりなさい、フロイド。アズールがお話していますよ…どうなったんですか?ナマエさんは」
「ベタちゃん先輩にもイシダイせんせぇにも軽いやけどって嘘ついて今二人から怒られてる。このあと学園長に話して退学もってくってさ……一発なら殴っていいって」
「おや、クルーウェル先生が?珍しいですね」
「教師としてはダメだけど、人間としてはいいってさ…マンタちゃんにもやり過ぎちゃうから言わなかったって言われちゃったから一発だけにしとく」
「ふふ、愛ですねぇ…サメの餌にしてしまえば良いのに」
「マンタちゃんがそれで気に病んだら腹立つじゃん、どーでもいいやつのこと考えてるの無理……アズール入るよぉ…」
「フロイド、お待ちしてましたよ。ジェイドとも『お話し』して色々聞けましたので僕はもう充分です」
「それ学園長も聞ける?あとでこいつ連れてくから」
「えぇ、もちろん」
じゃー録音はしてあんのね。怯えたような目でオレのこと見上げてくるゴミを見下ろす。
「足引っ掛けて転ばせた程度でやめときゃよかったのにね〜人の番に3回も手ぇ出すなんてさ……覚悟できてんだよな?」
「ヒッ…!!!も、もとはと言えばお前らが…!」
「あ?アズールの契約書にサインしたのはお前だろ?オレとジェイドがサインしてくださいって頼んだのかよ?契約違反しといてナメてんじゃねえぞ」
あっつあつのお湯をかけようとか、油かけようとか、生身のまま燃やしてやろうとか思ってたけど一発だけって考えるとそのままがいい気がしてきた。力いっぱいに右腕を振り下ろす。顔にめり込むくらい振り下ろしたからそいつの口から何本か歯が飛んで血が垂れてる。
「……立てよ、学園長トコ行くんだから」
「フロイド、待ちなさい」
「あ?」
「ったく……僕に殺気を飛ばすのやめてもらえますか?よく見なさい、気絶してます」
「……チっ…あ゛〜イライラする…どぉせ退学になるならもう二発殴っとこうかな」
「よしなさい、顔の原型をなくすつもりですか?」
(っていう訳でぇ、嘘つきなナマエちゃんお仕置きね)
(オレの好きなところ5個言って?
(……せめてVIPルームで)
(だぁめ♡お仕置きだから……ホントは脱がせても良かったんだけど、マンタちゃん流石にやだーって泣いちゃうかもって譲歩してんだよ?それに、オレにもイシダイせんせぇにもベタちゃん先輩にも嘘ついてたでしょ?その分の5個だから)
(…………はぁ……困るくらい猪突猛進なところ、眠いときエイみたいな顔してるとこ、気分屋なとこ、本気で嫌なことはしない優しいとこ、笑顔かわいいとこ)
(ふふん……スラスラ出てきたね)
(そりゃな…好きなとこくらいあるよ、満足?)
(じゃあちゅーも)
(それはだめ……部屋で!近い近い)
(ほっぺは?)
(もうしてるじゃん……)
(フフフ、相変わらず仲がよろしいですね)
(胸焼けするくらいのバカップル加減だ……フロイド、モストロラウンジで盛らないでください)
(ね〜アズール、オレ今日マンタちゃんと厨房いる〜)
(分かりました、それでやる気が続くなら。急遽でホールへ入ることも忘れるなよ)
(分かったぁ……マンタちゃん、今日賄い作ったげる♡)
フロイドに関わらずジェイド、アズールと付き合う子たちって報復に絶対巻き込まれると思うんですよね。しかし1番(ギリギリ)冷静に教師陣にも進言できるの実はフロイドなのでは?という妄想から生まれたお話。
ジェイドは証拠を残さずサメの餌にしちゃいました♡(事後報告)ですし、アズールもイソギンチャク生やして半ば奴隷にして二度と反抗できないようにしちゃう(報告すらなし)だと思います。
……ヤクザ????
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