TWISTED-WONDERLAND
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執着される・レオ監♀
*ミョウジナマエ
少しずつ聞こえてきた足音に肩が跳ねる。このサンダルの底で砂を擦るような足音は一人しかいない、私をここに閉じ込めてる人だ。
「ダーリン、会いたかったぜ」
「……」
塔に閉じ込められたプリンセスの童話を思い出す。自由に憧れて彼女は指名手配犯と塔から逃げ出すんだよなぁ……わたしも一度、この国から出ようとしたことはある。空港に当然のように待ち構えていたレオナさんによって何事もなかったかのように連れ戻された。
その日から足枷をつけられてる。あんまり動かないのも体に悪いし、と部屋の中を最低限動くだけでも擦れて血が出る。だから毎日レオナさんは軟膏を塗りにくる……侍女の人たちに任せればいいものを、一度抜け出した実績を作ってしまったことで信用できなくなってしまったようだ。
「……わたし、死ぬまでこうなんですか?」
「こう、って?」
「好きなときに市場にもいけない、グリムたちにも会えない、不自由な人生です」
「寝床を用意してやって飯まで恵んでやってるのに酷ぇ言いようだなァ?無戸籍のお前を喜んで匿ってやってんのに」
頼んでない。そんなこと、一言も。働き先は学園長に紹介してもらう予定だった…その前に帰れれば、万々歳で。わたしから全てを奪っておいて恩着せがましい。だから定期的に欲しいものはないかと訊かれるけど、いつも何も望まない。これ以上『恩』も『借り』も作りたくない。
「そう拗ねるなよ」
「い、た……っ」
ガブリ、と首を噛まれると当たり前に痛い。レオナさんは普通の人間より歯が尖ってる。失礼ながら、草食動物の侍女さんの歯を見せてもらったことがある。やっぱり牙の鋭さは全然違ったことに感動したのは覚えてる。
もう諦めたと思わせるために2年、2年も大人しくしていた。明日は夕焼けの草原の独立記念日とかなんとかで、国を上げてのパーティがある。独立記念日なんて毎年あるけど、独立して100年の大きな記念パーティを予定している。
今度こそ。せめて……ツノ太郎にでも連絡が取れたら。エースたちはそれぞれ企業に就職してる。企業先にレオナさんが話を持ちかけて…なんて迷惑はかけたくないから話してないし、もう何年も連絡自体取れてない。最後に会話したのは卒業式か……ってことは、もう……5年も経つ。
「い…っ」
擦り傷が酷いのか、今日は染みる。かぶれやすいし肌は弱い方だ。だから軟膏を塗ってもらっても治りが遅い。
「可哀想になァ……痛いだろ」
「痛いです」
貴方のせいでね、と睨むと鼻をつままれる。あくまで逃げ出した私が悪いらしい。そうしたら逃げ出すように閉じ込めてるレオナさんが結局悪いと思う。
「反抗的だな、ナマエ」
「レオナさんに心を捧げたわけではないので」
「…そうかよ」
そう言ってそっぽを向いたレオナさんは拗ねたらしい。当たり前だ、勝手に拉致監禁して好き勝手抱いてる人をどう好きになれというのか。
ご飯や寝る場所の提供で釣り合いが取れるわけがない。
数ヶ月待って、待ちに待ったパーティの日。ドレスやらなんやらの支度は侍女の人たちにお願いするしかないので久々に対面した。頭を下げてお願いする。
「ナマエさま……こんなにお痩せになってしまわれて」
「ちゃんとご飯は食べられていますか?」
腕を取った侍女からそう告げられる。そんな痩せたかな…?まあほんとうに、この部屋にいるだけだもんな…。お腹も空かないし、痩せたというより筋肉が落ちた気がする。
「はい、食事ありがたくいただいてます……運動不足ですかね、恥ずかしい」
そう言いながら侍女の一人がメモを見せてくる。この人たちは、私の味方。いきなり連れてこられて外にも出さず一切の面会不可と告げられ、毎日泣いていた私に優しく接してくれた人たちだ。
『ファレナ王のスピーチは13時から、第二王子は13半より』
つまり、スピーチさえ始まれば監視の目を抜けられる…空港はもう無理とわかった、船に積荷と紛れ込んで乗ってしまえばいい。レオナさんから贈られ続けて身につけてない宝石を質屋に入れればお金は足りるだろう。
身支度を終えて適当に食事を取る。こんなに人に会うの、去年のパーティ以来かも。今年は流石に規模が大きいから人も多い。こんだけ人が紛れ込んでいたら逃げやすくもなる。
ファレナ王、王妃にも挨拶を済ませてスピーチが始まる。トイレに行くふりをして窓から脱走して裏口から街へ。ローブを被ってドレスも何も見えないようにしてしまえば、婚約者として顔が出てるわけでもない私のことなんか誰も気に掛けなくなる。
一直線に質屋に行き換金。胸元とパンツの中にお金を分けて入れ、あとはスられてもいいようにポーチへ。港に走る間ファレナ様のスピーチを聞きながらばくばくと跳ねる心臓と震える体をなんとか抑える。
「ついた…」
『本日をもって…』
少し気怠そうなレオナさんの声が聞こえる。干し草の入った箱の中に身を寄せて包まるようにして運ばれるのを待つ。少しユラユラ揺れて、雑に置かれてしばらく。汽笛のような音と共に、船が大きく揺れる感覚………出れた。あの部屋から、あの国から出られた。
たしかこの貨物船の航路は薔薇の国に一度寄って積荷を輸出し、茨の国へ輸入のために寄港する。箱からなんとか脱出し、見つからなそうな物置へ移動。侍女に偽造してもらったファレナ様のサインの手紙があるから、ツノ太郎に会うことはできるはず。
3日ほどかけてようやく茨の国についた。人目を盗んで船から降りて、ツノ太郎たちがいる城へ向かう。門番に声をかけ、これを確認してほしいと封筒を渡す。ヨレヨレの私を見て訝しげに見ていたが、ファレナ様のサインがあると分かると取り合ってくれた。
「マレウス様のお知り合いでしょうか?」
「ツノ太郎と呼ぶものといえば伝わります、急を要しているので早めに取次をお願いいたします」
VIPルームに通され、リリア先輩とツノ太郎、セベクやシルバー先輩までやって来る。4人全員、おばけを見たかのように目を見開いて固まっていた。
「う……っうぅ…セベクぅ……」
リリア先輩の袖を掴みながらそう零したせいで、わたしに記憶障害があるのでは?!とセベクが喚き散らしていたが、誤解を解くためにこの5年の話をする。皆噂も聞かないし姿も見えないから、元の世界に帰ったのかと思ってたと……なるほど、さっきの4人の反応も頷ける。
「迷惑をかけるのは承知で、来たの。お願い、助けて。もう閉じ込められるのは嫌だ…っ」
頭を下げてそうツノ太郎にお願いするとぽん、と手を載せられる。
「ヒトの子よ、どうか頭を上げてほしい」
「……」
「結論から言おう、お前のその願いは聞き入れてやれない」
「……」
「誤解しないでほしい、迷惑などとは思っていない…匿ってやることも勿論可能だ。だが、キングスカラーは優秀な魔法士だ…必ずや僕の元にも来るだろう。キングスカラーの国と同じように、お前には窮屈な思いを強いねばならない………自由に、というのが不可能だ」
「………そ、れでも充分だよ……あの、学園長に繋げてもらうことはできる?元の世界に帰れるまででいい、私も働くから!お願いします…!」
「……なら、決まりだな。セベク、シルバー……僕の護衛同様、ヒトの子の護衛を頼む……ふむ、たしか現世では禁忌だったが……姿を変えようか」
ぴかぴかと光に包まれたあと、いつもより目線が高くなる。
「おお、随分可愛らしい男子になったのう……では、ナマエよ。
お主は今日からこの国の住民であり、マレウスの臣下ということになる。カモフラージュも兼ねて働いてもらわねばならんが、それはまぁ……オンボロ寮での経験があるから大丈夫じゃろ。
そして、警備訓練も受けてもらうぞ。たまぁに侵入してくる不届き者がおるからなぁ……なに、臣下の中にも魔法が使えぬ者はおる、力こそパワーじゃ!」
バルガス先生みたいな脳筋理論をリリア先輩から告げられ、ひとまず痩せ過ぎだから体を作れとセベクに怒られながら部屋をあとにする。ツノ太郎にも、リリア先輩にも、シルバー先輩にも…セベクにもお礼を10回以上言いすぎてもういい、と言われるまで頭を下げた。
警備訓練をこなしつつ、洗濯や掃除、武器の手入れや庭掃除をこなして2ヶ月。夕焼けの草原から王族が来訪予定と伺う。
「来たな」
「まあ、そりゃあのう……ナマエが頼れて、後ろ盾があるものなんぞマレウスかカリムしか居らんじゃろ……くふ、そう心配そうな顔をするな、変身魔法の意味がないぞ?」
「に、匂いとかでバレないですかね?あと、仕草とか……」
「フン、茨の国のものを食べてそこで過ごしてるんだ。もう上書きされる頃合いだろう」
「セベクの言うとおりだが、監督生の一理もある……前日から外に出る業務は行わないほうがいいだろう……オレが班長へかけ合おう。あの方は理解がある」
「よろしくお願いします」
「そうじゃ、今更だが……もう全て処分したか?」
「はい、身につけてきたもの全て……アクセサリーとかも……換金したお金も…」
「マドルまで燃やしたのか?!」
「う、だって匂いついてるかなって……国の匂いって言うの?」
「警戒して損はないだろう……僕のそばにセベクたちがいないのは不自然に思われかねん、明日は自室にいたらどうだ?」
「そ……れは……落ち着かないかも…」
「ワガママを言うな!休んでいろ!」
「や、休めるわけないじゃん!前だって、空港に居て…っ!」
「セベク、声が大きい。監督生が萎縮してしまうだろう」
「これこれ、泣くでない……あ!そうじゃ、後ろの隠し部屋にいるのはどうじゃ?この部屋の奥ならマレウスが居る限り止められるじゃろ」
「隠し部屋…?そんなのあるんですか?」
「君主を狙う輩もおるからのう…至るところに隠し通路と隠し部屋を設けてあるんじゃ、ほれ。んで……明日はワシの香水でもつけていればいいんじゃないか?」
少し不安だけど、そうしてもらうことに。明日は9時頃に来るらしい。まだ、レオナさんと決まったわけじゃないけど……このタイミングでわざわざ来るのはレオナさんだと思う。
不安であんまり眠れないまま、隠し部屋に入りブランケットをかぶって座る。1時間後くらいに苛立ったような足早な足音がいくつか聞こえてきて、背筋が凍る。間違いなくレオナさんだ。
バァン!と遠慮無しにドアが開く音が聞こえて、開口一番に私の名を叫ぶように呼ぶレオナさんの声が聞こえる。
「なんじゃあ、久方ぶりに顔を見せたと思えば煩わしいのう………ナマエ?帰ったんじゃないのか?」
「すっとぼけてんじゃねえぞ、足どりは掴んでんだ……おいトカゲ野郎、ナマエを出せ。痛い目見ねえ内にな」
「貴様、マレウス様に向かってなんたる無礼を……!旧友とはいえ済まされんぞ!」
「レオナ先輩、落ち着いてください。これ以上は敵対とみなし攻撃しなくてはいけません」
「ハッ、上等だクソが……姿を変えようが隠そうが匂いでバレバレなんだよ……ナマエ!そこに居るんだろ!!今ならまだ許してやる、出てこいッ!!」
や、ばい。ゆっくり呼吸しないと……過呼吸になったら隠れてる意味がない。ゆっくり、ゆっくり……耳を塞いで蹲る。ばくばくと波打つ自分の心音だけに集中して呼吸をし、ようやく一定になってきた頃に手を離す。部屋は静かになっているようだ。
『ワシが開けるまで大人しく待っておれ』
扉を開こうとしてリリア先輩から言われたことを思い出す。扉から手を離した途端、バァン!と扉に凄まじい音と衝撃が来て肩が跳ねる。びっっくりした……!
「どけ、トカゲ野郎……人の嫁寝取ろうなんざ下らねえことやめるんだな」
このぞわぞわとした気配は、前にも感じたことがある………オーバーブロットした時だ。まずい、こんなところでオーバーブロットなんかしたら…怪我人もでるし、何よりレオナさんも危ない。
自分の自由と、レオナさんたちの命。天秤にかけるものが大きすぎる。
「レオナ先輩、気を確かに…!このままでは…」
「はぁ?ずっと確かだよ、盗られたモン取り返しに来ただけだ」
どうしよ、どうしよう……。
*レオナ・キングスカラー
盗られたモンは取り返しゃいい。逃げたんなら捕まえりゃいい。脱走するなら逃げられねえように囲えばいい。そうやってこの世界に縁のない監督生を囲って、何でも与えてやった。自由以外は。他の野郎に目移りなんかさせるもんかと外出すら許さなかった。どうしても出ろと言われた夕焼けの草原の100回目の独立記念日の日、ナマエが逃げ出した。
前回の失敗を糧に用意周到に計画したらしく、気付いたときには貨物船を使って脱出していたことが分かった。……2ヶ月、2ヶ月ありゃ油断も生まれるし泳がせる。予想通りトカゲ野郎の部屋に入った途端からナマエの匂いがする。大方奥の部屋にでも隠してんだろ。禁薬を使って魔法を強くしてるから、トカゲ野郎どもの魔法なんて痛くも痒くもない。城ごと落としてもいいんだぞ、と脅していると匂いが濃くなる。扉の前に近寄ってきたか……。
マレウスとリリアを魔法で拘束して扉の前から退かす。俺のユニーク魔法を使ってドアを砂にする。
「よお、迎えに来たぜ?……んだ、雑な変装なんかしやがって」
ガタガタと震えるナマエの腰を引き寄せ、随分短くなった髪に口づける。
「……何飲んだんですか…?なんか……変…」
「エナジー剤だ……こんな暗くて冷てえ部屋じゃなくて俺のとこに戻ってこい、帰んぞ」
「嫌です」
「あ?」
「ゔ……嫌ですっ!!!もうモノ扱いはされたくありません!レオナさんは誰のことも好きじゃなくせに……っわたしに戸籍がないからって体よく自分を満足させるために使わないでください!」
「んだと…?」
このガキ、いま何つった?
「ペットみたいに可愛がってれば愛してくれると思いましたか?!わたしにだって感情がある!嫌なものもある!それ全部無視して、自己都合を押し付けないでくださいよ…!そんなに誰かを可愛がりたいなら、何百人もいる候補の中から募ればいいでしょう!!」
「ナマエ、」
「触んないでっ!!!……リリア先輩とマレウス先輩を下ろしてください、今すぐ。いくら第二王子でも逮捕してもらいますから」
「待て、頼む」
「嫌です。レオナさんはそう言って待ってくれたことありますか?」
薬の副作用で目が回り始める。膝から崩れ落ちた俺には目もくれず、ナマエはトカゲ野郎たちのもとへ走って行ったのを最後に目を閉じる。
「………ナマエ…」
「触れるの禁止です」
「………悪かった、頼む、帰ってきてくれ」
「…禁術使ってもらってたわたしが言うのもアレですけど……禁薬に手を出すなんて何考えてるんですか?!」
「い゛ッ………??!?!てめ、殴ることねえだろうが!!!」
「へえ、レオナさんは首絞めながらエッチしてきましたよね。こちらはほんとに苦しくて死ぬかと思いましたが?手錠のせいで抵抗もできなかったな〜」
「…………」
「約束事を守ってくださるなら、戻ります。そうでないなら、わたしの記憶を消します。これは学園長とファレナ様の同意済みです」
「……内容は」
「こちらです」
差し出された書類に目を通す。
①外出許可
②同伴をお願いしたい場合、もしくは必要な場合を除いては一人で外出できるように
③手錠、足枷を失くす
④同衾禁止
⑤口頭で
「…口頭?」
「……正直言って、今レオナさんへの信頼度も好きって気持ちもないです。
いきなり拉致監禁されて、外出もさせてもらえなくて、でも体だけ重ねて、恋人みたいに扱われるのが意味不明でした。
学園長と連絡を取った際、久々にエースたちに会ったんです」
「……」
淡々と話す監督生の心情は読めない。当然だ、俺のモノにしたくて強制的に連れてきた。侍従の目に触れるのすら嫌で、醜い嫉妬心をぶつけたのも事実だ。泣いて嫌がるナマエを無理やり抱いた数なんて数え切れない。
「エースもデュースでさえも、口を揃えて在学時から絶対にレオナさんはお前のことが好きだったと思う、って言うので。
……わたしから、最後で最大の恩情です。
友達からやり直してください」
「……は?」
伸ばされた手を見やる。
「自分のために後腐れないわたしのことを使ってるんだと思ってたんですが、そうじゃないと思うって二人に強く強く言われたので
……そんなにわたしのことが好きなら、ちゃんと口説いてください」
「……っく、はっはっは……!……感謝する、ナマエ。
だが…お前が俺に堕ちた時はもう離してやれねえからな」
「あ、友達からなのでキス禁止です」
「………チっ!!!」
「舌打ちでっか………ちなみに死にかけたマレウス先輩たちと、5年間会わせてくれなかったエースたちと、ヴィル先輩たちがカンカンに怒ってるので怒られてください………どうぞ」
「ふふ、先日ぶりだな。キングスカラー……ヒトの子、本当に良いのか?」
「うん、啖呵切ったし書類交わした!」
「くふふ、随分逞しくなったのう……茨の谷に来たときは外を歩くのも泣いて怖がっていたのに……さて、レオナよ。制裁を受ける準備は出来ておろうな?」
(チっ………クソ、あいつら加減なくぶん殴りやがって……)
(それレオナさんが言います…?なんかハルクみたいになってて最初本当にレオナさんなのか見間違えたくらいなのに)
(いって………!)
(痛いですねえ、可哀想に。次はヴィル先輩が来国予定です……いた!尻尾でぶたないでくださいよ!)
(人を痛ぶって楽しそうなモンでな?)
(レオナさんだってニコニコしながら軟膏塗ってたくせに)
(………悪かったっつっただろ……)
(5年分は重いですからね)
(……なぁ)
(?)
(手も駄目か)
(手?)
(繋ぎたい)
(……手ならいいですよ)
メリバ?っぽいエンドに。
この前科者レベルのレオナさんは、果たして信頼を勝ち取ることができるのでしょうか!!
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