TWISTED-WONDERLAND
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バレンタイン
*ナマエ・ミョウジ
「え?……これレオナが?」
「悪いか」
ほらよ、といきなり渡されたラッピングが丁寧な箱からは甘いチョコレートの香りがする。今日はバレンタイン…の前日。王宮にいた頃は僕は自分の気持ちに無自覚だったし、レオナもその気を一切出してこなかったからチョコレートなんて貰ったことない。チェカ様から貰うようになったのでお返しをしたことがあるくらいだ…。
「つ、作ってくれたの…?」
「あぁ。どこかの誰かさんが俺が作った中で一番美味かった料理は失敗した炭みてえな料理だったって言い回ってるみたいだからなァ」
「そんなことない、ちゃんと卵の味したさ」
「自覚があるなら結構……ほら、口開けろ」
大事に取っておこうと思った僕の思惑を読んでいたのか、取り上げてリボンを解いた箱からは手作りとは思えない綺麗なチョコレートがずらりと並んでる。
「……保存魔法かけてとっといちゃダメ?」
「噛みつかれてぇのか?…いいから口開けろ」
グルル、と唸られてしまった。そんな怒ることないじゃないか……。食べたらなくなってしまうのが悲しい。指輪もレオナからの贈り物だけど……全部取っておきたい僕としてはそれにチョコレートも含まれる。
睨みをきかすレオナには勝てないので口を開けるとチョコが口の中へやってくる。うん、美味しい…!感想を言おうとレオナと目を合わせると顔が近づいてくる。
「…?!?」
「観念しろよ、ナマエ……さっきみてぇに口開けろ」
この状態でキスするつもり…?!?
顔を鷲掴みにされて逃げ場がないので目を瞑って口を開けるとレオナの舌が口へ入ってもっと、と言わんばかりにこじ開けてくる。
「んっ……ふ…ぁ」
「……甘ぇな……おい、チョコ1個でんな蕩けた顔すんな」
「無理に決まってるじゃん………なんか…お酒の味する…?」
そう尋ねると甘いものがあんまり得意じゃないレオナはリキュールを混ぜた、と言ってのける。
「オレもお前も20だからリキュール入ってるくらいでジジイにとやかく言われたりしねぇよ」
「キファジ様をジジイなんて呼ばないの……なるほど、チョコと混ぜるとお酒のキツさが少し和らぐんだね」
お酒単体で飲んだことがないから分からないけど、チョコレートの甘さで中和されてる気がする。
「…次」
いいと言ってないのにまた口にチョコを押し付けられてレオナにキスされる。なんかリキュール濃い…?さっきのより味も香りも濃くなってる。
「っは…ぁ…レオナ、まって…なんか目まわる…」
「こっち見ろ……お前どんだけ酒弱ぇんだ」
寝てろ、とベッドに横にされる。気持ちわるい……。チョコに入れたリキュールのせいで酔ったみたいだ。
「吐き気するか?……くっ、くく…まさかウイスキーボンボンで酔うとはな……」
「……笑わないでよ…」
「悪い悪い……顔色が悪い、残りは俺が食う」
「だめ、保存魔法かけて僕の部屋に飾る」
許すわけねえだろって怒られた。水をもらって目を瞑る。なんか……胃もたれに近い気持ち悪さだ。吐き気はないからまだマシなのかもしれないけど……。
*レオナ・キングスカラー
ウイスキーボンボンでここまで酔うやついるのか?確かにウイスキーのアルコール度数の強さ順に作った。まさか2つめで目を回して酔いつぶれるなんて思いもしなかった……し、酒に酔うとナマエが想像もつかないくらい甘ったるくなるとは…。
「どこ行くの」
「チッ……普段こんなベタベタしねえくせに…おら、もっとそっち詰めろ」
そう言って手を離してこないナマエの横に寝そべるとべったりくっついてくる上に滅多に揺れないナマエの尻尾がブンブン回るように揺れてる。
「ナマエ」
試しにおでこにキスするともっと尻尾が揺れてる……へぇ、普段は隠してんのか。ナマエは顔に出やすいが耳や尻尾には態度が出にくい。ナマエ曰く俺は顔に出にくくて耳に現れやすいらしいが……隠さないで気持ちがだだ漏れなのはそれはそれでいい気分だ。
「レオナ、もっと」
「気持ち悪ぃんだろ、じっとしてろ…水飲むか?」
背中を擦るように腕を回すとナマエが目を閉じる。スンスンと俺の胸元に鼻を埋めて匂い嗅いでやがる……。
「嗅ぐな」
「やだ」
随分わがままになるんだなァ、こいつは……。好きなようにさせていると背中に回していた左手を頭に置かれる…撫でろってか?
「ふふ」
「随分嬉しそうだな」
そう言うとニコニコしていたナマエが嬉しいよ、と零す。
「撫でられるのが嬉しいのか?」
「レオナに撫でられるのがだよ」
そうか、と撫でると耳がよく動いてる。
「チョコは?」
「没収だ、んなヘロヘロの姿寮生に見せらんねえからな」
「保存魔法……レオナが僕にくれたんだろ、ならあのチョコは僕のものだ」
「へぇ?…お前はオレのだけどな」
独占欲を見せつけてくるとは珍しい。鼻先を擦り付けるとケラケラ笑い出すナマエの頬に触れる。擽ったいようでもっと笑いだした、ご機嫌なことで…。
「レオナさ〜ん、ちょっといいスか……?あらお取り込み中?」
「いや、いい。どうした」
お取り込み中にしようとしたが思いの外ナマエの酒耐性がなくておじゃんになった。寝返りを打って起き上がるとナマエが背中にぴったり張り付いて起き上がってくる。……よく動く耳が首に当たって擽ってぇ。
「ナマエさん静かッスねぇ……、これマジフト部の備品の故障率見てくださいよ。とても部費じゃ修繕費賄えなくて…ブッ壊したやつがモストロラウンジなんかでバイトさせよっかな〜って思ってるんスけど………」
「妥当だな、好き勝手キャンキャン跳ねまわって物壊しやがって……」
「レオナぁ」
「お前は喋んな……」
「レオナさん、まさかアンタ……なんか盛ったんスか?」
真顔で聞いてくるラギーにため息をつきながらチョコを差し出すとピンと来たようで笑い始める。
「それ、僕の!」
「分かった、匂い嗅がせただけだっつの…2個でこの有様だ」
「随分弱いんッスねぇ、でもちょっと納得かも……分かってますって、アンタの大事なモン取りませんよ」
ラギーのことを睨むナマエの頭を軽く撫でると尻尾がまたブンブン揺れてる。
「僕のだもん」
「おい喉締めんな………普段からこうしてくれると有り難いんだがな?」
「ん〜?」
フニャフニャしすぎて全く会話にならない、マジフト部の備品は壊した奴らに弁償させる方向でまとめてラギーを部屋から出す。ヤキモチ妬いてるジャッカルが襲いかかりそうなのを抑えながら寝転がるとさっきよりもキツく抱きしめられる。
「苦しい」
「いつもそんなこと言わない」
「いつもこんな抱きしめてこねえだろうが」
「レオナが先に抱きしめてくるんだ」
「はいはい…」
お前が照れ屋だからだろうが、と言いたくなる口を噤む。今は好き勝手にさせたほうが得策だろう、酒が抜けてからナマエが覚えてるのかは不明だが…。
*ナマエ・ミョウジ
最っ悪だ………。昨日の失態全部なかったことにしたい。
「起きたか?甘えん坊のジャッカルさんよ」
「オブリビエイトしていい?」
魔法薬飲ませるよりこっちのほうが上手くできるから、と続けると、だめに決まってんだろとレオナが頬を抓り上げてくる。
「随分可愛かったなァ?普段からああやって素直ならいいんだが」
「素直じゃん……」
「離れるのを嫌がったりするほど素直じゃねえだろ?照れ屋な上に気にしいだ」
ちくちく嫌味を言ってくるレオナは怒ったときのキファジ様によく似てる。二人の口喧嘩はいつも嫌味から始まるもんな…。オブリビエイトなんてしようものならマジカルペンを砂にされてしまいそうなので大人しくレオナの横に寝そべる。
「ラギーくんに見られたのが1番キツい」
「くっくっ……んな苦虫を噛み潰した顔すんなよ、あいつは言い触らしたりしねえの分かってんだろ」
それは分かってるけど…。レオナの方に向き直り首筋に鼻先を埋める。
「嗅ぐな」
「いやだ」
即答で拒否すると小さく舌打ちされた。だってレオナの匂いは安心するんだもの。レオナだっていつも僕のこと抱き枕にしてぐうぐうと寝てるのに。
「お返し何がいい?」
「……ナマエの1日」
「分かった、それとは別に何か用意しとくよ」
物なんぞいいってレオナは呟いてたけど、洋服とかはどうだろう。マジフトで使えるヘアバンドとかいくらあっても困らないはず。
レオナの匂いを嗅いでうとうとしてると、笑い始めたレオナの体の振動が伝わってくる。
「なに笑ってるの」
「チェカに顔負けするガキっぽさだと思ってな……少し昼寝すんぞ」
レオナの左腕が回ってきて抱きしめられる……体温高い、レオナも少し眠いんだろう。
「君も眠いんだろ」
「添い寝だ添い寝、可愛いジャッカルのな……」
確か今日は午後レオナも僕も授業と補習はなかったはず。お昼まで寝ても平気だ。仕方なく添い寝してやってるんだと言わんばかりのレオナに納得はいかないけど、そういうことにしておく。
ラギーくんによると僕が編入してくるまではなかなか部屋で寝付けず、植物園で気を失うように寝ていることが多かったそう。そのため体調も安定せず、よく頭痛を訴えて魔法薬を飲んでいたとか……僕が来てから、僕が知る限り頭痛を訴えていることも魔法薬の匂いも嗅ぎとったことはない。
しばらくしてお腹が減って起きあがるとちょうどお昼の時間にさしかかるくらいだった。レオナに声をかけてもなかなか起きないで愚図ってる。あ、僕のチョコ……1日1個ならあんな酔わないだろうか?寝起きのぼーっとした口に運ぶ。……昨日食べたどれよりもリキュールが濃いような?でも一番甘くて美味しい、オレンジのような風味がする。
「うま…」
もう一個食べちゃお、なんかこれはダークカカオの匂いがする……気がする。むせ返るようなリキュールの濃さに視界がふらついた気もするけど、やっぱりチョコとしてはとっても美味しい。レオナにチョコづくりの才能があるなんて…やっぱり器用だな。
結局全部平らげてしまい、明らかにお酒に酔った感覚がする。一口サイズだし、昨日は2個目で気持ち悪くなってしまったけど今日は気持ち悪くないからイケるのでは?と思ってしまった……のが間違いだった。
「……おい、全部食ったのか!?」
「だって僕のだろ」
「……どこ見てやがる、気持ち悪さとか吐き気はねぇのか?」
ないよ、と答える。
「昨日……2個目でなんか気持ち悪かったんだけど…今日は5個食べても気持ち悪くない…ぜんぶうまかった」
「……ナマエ、こっち見ろ」
「?」
言われるがままレオナを見つめていると顔が近づいてくる。レオナはキス魔だ、ところ構わずキスしようとしてくるのを止めるのが毎回大変なくらい。番なんだからいいだろって開き直ってる。
「ッチ……甘ェな」
「いーじゃん、苦いより」
「…ならもっとする、んっ?!」
僕からキスをすれば珍しくレオナが耳の毛が逆立つくらい驚いてる。かわい、レオナは本当によく耳と尻尾に気持ちが出てる。耳を撫でながら舌を絡めると、もっとしろと言わんばかりにシャツを引っ張られる。
「のびちゃう……」
「もっとしろ」
「レオナ、キス魔」
(番とキスして何が悪ィ)
(ふふ、……っ!?お尻揉むな!)
(揉んでねえ、キスに集中してろ)
(えぇ……?んむっ?!)
(誘ったのはナマエだからな……寝んじゃねえぞ)
(さそってないってば、う…頭くらくらしてきた…)
(吐き気がねえなら続行するが)
(な、いけど……明るいのやだ)
(明るいとお前が感じてる顔がよく見えていいな)
(聞いてる?)
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