TWISTED-WONDERLAND
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期末試験
*フロイド・リーチ
「え…は…?」
がくん、と膝から崩れ落ちたマンタちゃんに走り寄って地面に叩きつけられる前に抱き寄せる。噎せそうになるくらい血の匂いがする。
「ま、マンタちゃん…?」
「……」
返事がない。意識がない?口元に耳を寄せても吐息がねえし呼吸音も聞こえない。
べっとりついたマンタちゃんの血の量を見てオレのほうが血の気引きそう、サアっと意識が遠くなる感覚。喉が締まって呼吸が苦しくなる。
「フロイド!ナマエさんどうしたんです?!」
「わ、かんない………どぉしよ……マンタちゃん死んじゃう…?」
「しっかりなさい、なんのために魔法を学んでるんだ…!まずは寝かせて止血、シャツでも何でもいい」
指先が震えてロクに動けねえオレに変わってアズールが指示を出す。ジェイドもやってくる…去年の期末試験こんなんじゃなかったじゃん、なんでこんな、いきなり…
「フロイド、フロイド。…恐らく誰かの妨害行為です。トレイン先生の分身にはお伝えしたので、恐らくすぐ試験は中止になって保険医に診てもらえるはずです。…だから泣き止んで」
「へ……」
泣いてる…?ごしごし腕で顔をこすって仮想空間がなくなると同時に走ってきてるアカイカせんせぇと目が合う。
「……フロイド・リーチも一緒に来なさい、手当はアーシェングロットが?随分と手際がいい、助かった」
「この通り放心状態の番がいましたから逆に冷静になりました…ほら、フロイド」
「ぇ、うん…」
「大丈夫だ、たしかに出血は多いが傷はさほど深くない」
「…なんでそんなの分かんの?」
「止血に使ってるこのシャツに血がそこまで滲んでいないだろう、あとは…体温。指先はたしかに冷たいが心臓に近い体の中心部…首なんかは温かい」
触ってみなさい、と言われるからマンタちゃんの首筋に触れるとたしかにあったかい。
「ほんとだ…」
「お前が泣くなんて珍しいな……様子は見ていたか?」
「いきなり…血ぃ吹き出して倒れた…周りにオレくらいしかいなかったし」
そう返すとアカイカせんせぇに撫でられる。
「ぐしゃぐしゃになんじゃん、やめてよ」
「不安そうな顔をしていたからな……学園長にも今の様子を話してくれ、医務室に連れて行く」
学園長にも同じように答える。
「ねえアレモニターで見てたんでしょ?誰がやったか分かんだよね?」
「君、乱闘騒ぎでも起こす気ですか?教えませんよ、措置を取るのは我々の仕事ですからね」
「チッ」
その後も教えてくれねえ学園長に痺れを切らしてたらアカイカせんせぇに呼ばれる。
「目が覚めた」
「!」
学園長室からさっさと出ていって医務室に滑り込む。ドアを静かに開けなさい!と怒る保険医シカトしてマンタちゃんを呼ぶ。
「マンタちゃん!」
「わ、フロイド…ゔぉ……あ〜ごめん、色々ありがと……フロイド?」
勢い良くマンタちゃんに抱きついたせいでちょっと痛がってた。…顔を掴んでちゃんと起きてるマンタちゃんを見たら視界がぼやけてくる。
「…マンタちゃん゛しんじゃゔがどおもっだ……」
「え!?そんな泣く??!わ〜、泣きやんで……たしかに出血凄かったみたいだけど……よしよし」
「オレも゛こごでねる゛」
「え〜…??どしたのフロイド、よしよし…お前だって密猟者の銃頭に掠って気絶したりしてんじゃん…このくらいじゃ俺もお前も死なないだろ」
「しんじゃゔがとお゛もっだの!!!」
まだ手が震えてるオレに困ったように笑うマンタちゃんをぎゅうぎゅう抱きしめてるとアカイカせんせぇたちに呼ばれる。
「やだ。離れない」
「やっと泣きやんだんです…これでも」
「…そのようだな、廊下に響いていた。フロイド・リーチと回ってたんだろう?もちろん悪質な妨害行為としてモニターは見返すが…誰か近くにいたか?」
「………いや、居なかったです。怪我も…魔法の斬撃が飛んできたというより、設置型のトラップに引っかかった感じ…で伝わりますか?」
「アカイカせんせぇ、犯人分かったらオレにも教えて」
「ダメだ、終わらないイタチごっこになるだろう。……フロイド・リーチ、期末試験に始まる前に私が告げたことを覚えているか?」
「……出てくるアカイカせんせぇはホログラムだから偽物で、他の奴らへの妨害行為は禁止」
流石だな、とか偉そうに言うアカイカせんせぇを睨む。こんくらいは覚えてて当然じゃん。
「そのルールをわざわざご丁寧に破ってくれたんだ、お前が手を下す以前にこの学園に身は置けないと考えていい……パートナーなのだろう、怪我をしているんだからミョウジの世話をしてあげなさい」
「……いいよアズールに聞くから」
「全く……私は忠告したぞ。お前たちの再試験は後日行う」
アカイカせんせぇが医務室から出ていくのを見送って抱きついてるマンタちゃんを見上げる。顔色いい……あったかい。呼吸してる、胸動いてる…。
「フロイド」
「…ん?」
「眠くなってきちゃった…少し寝よ」
頷いて一緒の布団に入る。2人ともデケーから足はみでてるのなんかウケる。
「腹……痛くねえの?」
「薬飲んだからね…寒いからもっと寄って。いつもみたいに」
「ん、分かった」
いつもみたいにマンタちゃんを抱き枕にするように抱きしめてる首筋に顔を埋める。マンタちゃんの匂いと湿布とかの匂いがする。
「マンタちゃん、オレの手ぇ握って」
「うん…」
手がめちゃくちゃ暖かい。ぎゅ、と強く握るとマンタちゃんが笑い出す。
「ふ、ふふ…はははっ…腹痛い…っくく」
「なぁに笑ってんのマジで、腹チョップするよ」
「ごめ…っ…ごめん、ふふ…大丈夫だよ…いや〜でも2人とも気づかない罠?って誰が置いたんだろうね」
「……さあ……誰であってもぶっ飛ばすけど」
「えぇ?俺のお世話は?」
するに決まってんじゃん、と返す。
*ナマエ・ミョウジ
気付かぬ内に腹を斬られたような魔法で吐血したところまでは覚えてる。痛みで気を失って起きたらトレイン先生に事情を聞いて驚いて……
実感が全然沸かないうちにドタドタと走ってきたフロイドに抱きしめられ、次の瞬間涙をぼろぼろ流しながら『死ぬかと思った』とわんわん泣いてるフロイドをあやして……。
「……?」
「ステイ、じっとしろ」
クルーウェルがいる……。一緒に寝ていたはずのフロイドがいない。
「フロイドは……?」
「ステイだ、仔犬。あいつならソファで寝てる」
おでこをべち、と叩かれた。痛い。お腹を見ると多分クルーウェルが作ってくれた魔法薬が塗布されてる。グロい傷口が見えてちょっと吐きそうになった。
「キモい……」
「当たりどころが悪くなくて良かったな……フロイド・リーチは怪我しなかったのか?」
「俺だけです……あ、よかった。ちゃんと寝てる……起きたとき凄い泣かれて」
「トレイン先生から聞いた…大泣きしてたそうだな」
頷く。あんなに泣かれると思ってなかった……呼吸が止まってたみたいで、側にいたフロイドは相当焦ってたみたいだ。
「……マンタちゃん…?」
クルーウェルの後ろから目をしょぼしょぼさせたフロイドが起き上がって来ていた。
「リーチ、お前も怪我はないか?」
「オレはなんもない……んしょ」
いつも以上にひっつき虫になったフロイドが後ろから抱きついてくる。頭を撫でて応えてるとそのまま眠り始めた。
「フロイド、体痛くなんぞ」
「いい…マンタちゃんもそれ終わったら寝るでしょ」
寝るよ、と答えるとじゃあいいと本格的に眠りに入った。こんなぽやぽやしてるフロイド始めてみたかも……可愛い。
「よし…終わった。仔犬も夜ふかしせず寝るように…明日は?」
「はい…明日はもともと授業なんもなかったはず……期末試験で最後の予定だったんで」
「あぁ……そうか。まだ駆け回るのは禁止だからな」
頷いてベッドに寝転ぶとフロイドに強く抱きしめられる。
「マンタちゃん……ちゅ」
今にも寝落ちしそうなフロイドにそう言われると断れない。いつもフロイドがしてるようにおでこや鼻、唇に軽くキスを落としていくと表情がふにゃあっと柔らかくなる……え、待ってめちゃくちゃ可愛い。
次の日。歩いても少し動いても傷が痛まない程度に回復したから、モストロラウンジに行ってフロイドにご飯を作ってもらう。アズールたちにもお礼を言わないと。
「アズール、ジェイド……2人とも応急処置してくれたんだって?ありがと」
「いえ……フフ、これ以上にフロイドはひっつき虫になってしまったのですね」
「起きたとき大泣きしてそっからずっとこう……そんなやばい絵面だった?」
「だってマンタちゃん、息してねえし顔に血色なかったし指も冷たかったし……!笑うなうぜぇ」
「ごめんてば……分かるよ、俺もお前が気絶して倒れたとき手が震えたもん」
「放心状態でしたからね……フロイド、お前ももう大丈夫なんですか?」
「ん……もうマンタちゃんちゃんと動いてるから平気だけどぉ…アズール誰の仕業か分かった?」
「コラ、私怨での乱闘はダメ。フロイドまでペナルティ喰らうだろ」
そう言いながらおでこのシワを伸ばしながら言うと不服そうな顔だ。
「1つお伺いしたいのですが……君、なんとも思わないんですか?」
「…え、と何に?」
「今回のことです。対面で喧嘩を売るならまだしも、設置型の罠をトレイン先生の目を盗むくらい巧妙に仕掛けるなんて随分と小賢しいと僕は思うのですが……現にこうして怪我をして損害を受けているじゃありませんか」
つまり、アズールが言いたいのはいきなりこんな目に遭ってるのに怒ったりしないのか?ってことだろう。まあ何で俺なんだよ、とか下手したら死んでたかもしれないだろとか思うけど……。
「ん〜…フロイドがこんな目に遭ってたらかなりムカつくけど……アズールたちのおかげでピンピンしてるし平気かな、あとはもう少し用心深くならないとって戒めにもなった」
「……じゃあなおさらオレが個人的に締めるの許してよ」
「それはだめ、トレイン先生があんな忠告したんだ。停学まで行きかねないからやめろってことだよ、あれは。学園長たちを信じて措置を見守って…不服があればその時申し出ればいいよ」
「驚いた、フロイドも大概番に甘いですが貴方も相当フロイドに骨抜きなんですね……バカップルぶりが見ていられません」
「なんかしれっとディスられてねえか?俺たち」
「僻みじゃん?アズール寂しがりやだもんねえ」
「あぁコイツらといるとストレスが溜まる……!」
なんやかんや面倒を見てくれてるくせに素直じゃないアズールに口角が上がる。ジェイドもフロイドも同じ顔してニヤニヤしてるもんだから俺まで釣られて笑う。
(バカップルぶりも大概にしてください)
(はいはい……今度バイトの埋め合わせでもするよ、ありがとアズール、ジェイド)
(マンタちゃん、厨房から出てきちゃダメだからね)
(分かったよ)
(ではフロイドと同じシフトの日にしましょう、貴方がいるとフロイドも働きますからね)
(フフ……ご機嫌ですね、フロイド。ナマエさん、お茶をどうぞ)
(ありがと。追試験にさせたのも気にしてるから)
(何故?人数が少ない分アピールにはもってこいの場だ、むしろ感謝していますよ)
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