HQ 及川
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セットアップ
*ミョウジナマエ
ね、眠い……。体筋肉痛で痛い…目をしょぼしょぼさせながら起きたらもうお姉さんたち起きてた。朝早すぎる。アイロンを貸してもらって日焼け止めだけ塗ってべたつかないようにパウダーしたらおしまい。寝るときの服からジャージに着替えて歯磨きして下に降りていく。父兄さんたちと協力して朝ごはんを用意しなきゃだ。
「おはよ〜、ナマエちゃん。なんかしんどそうだね?」
「体が筋肉痛です」
「え!?枕投げで??!」
湿布いる?と言われたけど、汗で浮いちゃうだろうし…と断る。
「そいやバレー未経験って言ってたよね?他のスポーツ経験はあるの?背高いしバスケとか」
「小さい頃は喘息ひどくて…運動会とかもあんまり参加できなかったくらいなんで、ほんとに何もやってこれなかったんですよ…なので、体力なさすぎてマネの仕事だけでへとへとです」
そうお姉さんたちに話すと意外だ、と驚かれる。身長は…女子の中では高いのかもしれないけど、私より高い人はお姉さんたちの中にもいる。特別高いと思わない…一静たち超背高いし。
「じゃあ今日レクやろうと思ったけどむずいかなぁ」
「レク?」
「そうそう、じゃんけんで負けた人の得意なもの披露会……1年生が入ったりしたらよくやるの、自己紹介も兼ねてね。
あ、もちろんマネだけでやろうと思ってるから心配しないで」
「楽しそうですね」
でしょ〜?とお姉さんたちと話しながら階段を降りて食堂へ。もう集まってる父兄さんたちに挨拶をしてみんなでお米研いだり、味噌汁作ったり鮭焼いたり。私は目玉焼きとウインナー担当。焦がさないようにじっと見てる……4つのフライパンを。
思った以上にご飯を作るっていうマルチタスクが大変で目玉焼きをメインに担当しつつサラダの盛り付けと漬物準備もしたから1個めちゃくちゃ焦げた。流石にこれは私が食べる、と避けてある。
「おはよ」
「おはよう…なんかげっそりしてんな」
「ご飯焦がしたの、見て」
「お〜真っ黒」
「なかなかいい感じにちぎれないレタスに手を焼いてたら焦げちゃった……他のは綺麗にできたよ」
岩泉くんにドンマイ、と慰められながら青城の席に座る。
「おはよ〜枕投げどうだったの?」
「おはよ……楽しすぎてもれなく筋肉痛だよ」
そういうと花巻くんと聞いてきた及川くんがツボに入って笑ってる。
「枕投げで筋肉痛なってるの初めて聞いたんだけど」
「3ラウンドやったよ」
「あっひゃっひゃ…っ!!!!」
「花巻、少し落ち着け」
そこまで笑わなくていいのに。いつものことかぁ、と国見ちゃんたちは気にも留めてない。大学生たちがなんだ?って顔してるくらいだけど。
「ナマエちゃん、それちょーだい」
「……え、焦げてるよ?」
「うん。だって明らか嫌そうに残してるんだもん、及川さん食べてあげる」
「………焦げっ焦げだよ?」
「それは見れば分かるよ」
炭の塊みたいな目玉焼きを一口で食べちゃった及川くんを見てると代わりにトマトが置かれる。や、優しい…!どうやってこの炭を食べようかと思案していたところだから助かった。
「ありがとう…今日の夜秘密のお菓子あげる」
「また持ってきてんのか?!」
「お姉さんたちと仲良く分けてるよ」
「そういう意味じゃ……まあ飯食ってるからいいけどよ…」
やった!青城のお父さんを説き伏せたぞ。お許しが出たのでるんるんで味噌汁を飲む。
「おとぼけちゃん、味のりいる?」
「いる〜」
味のり大好き。ご飯を巻き巻きして食べる。ご飯ちゃんと朝から食べられるか不安ではあったけど、なんとか完食。そのまま早朝練習してたはずの皆の練習が始まるんだからすごい。今日も昨日と流れは一緒…ってことは午前午後基礎練してから練習試合形式でローテーションかな。
「ボール出してネット張って…得点板出して、タオルとドリンク用意して…あとギブスか」
戦績ノートとシャーペンもベンチに置いておこう。ギブスを取りに行って戻ってきたら戦績ノートが置いておいた位置からなくなっている。どこいったんだろ。
「水色の背表紙のノート見てませんか?ここ置いてて…」
大学生のスタメンの人たちに尋ねるも見てないと。おかしいな……お姉さんたちも見てないよ〜って言ってた。あれないと困るのに。念の為ギブスを取りに往復した道をたどる……いや、持ち歩いてないから落ちてるわけないんだよなぁ。
「探してるのコレ?」
「あ………はい、それです」
昨日の……人?スギシタさんだっけ。なんか意地の悪い笑みを浮かべている…ような。そんなに連絡先交換断ったのが良くなかったんだろうか。それともその後言い返したこと?
ゴミを捨てるようにノートを床に投げられて慌てて拾う。ペラペラめくると真っ黒に塗り潰されてた。質の悪い……かたまって動けないでいると、またノートを取られる。びっくりしすぎて近づいてることに気付かなかった。
「調子のんなよ」
「……器物損害ですよ、これ」
私がみんなのプレースタイルを4月から地道ながらもまとめたものだ。あとは宮城県内の強豪校のこととか、東京とか関西の試合をビデオで見て書いた部分もある。
「俺がやったって証拠ないでしょ?」
「………じゃあなんで持っていたんですか?私はベンチに置いてから持ち運んでないですが」
「そこら辺に落ちてたからだよ」
ああ言えばこう言う。もうこの人はこういう人なんだろう。責め立てても真っ黒になったページは元に戻らない。ノートを握りしめてコートに戻る。
「遅かっ……何された?」
「……なんでも、ない」
「泣きそうな顔してそれはナイでしょ……ノートあったんだ?ちょっと戦績見してよ」
及川くんにノートを取られそうになって手を引く。上手い言い訳が思いつかないから、ノートに何かされたんだと言わんばかりの態度になってしまっている。
「ほい、借りるわ……うわ、なにこれ真っ黒じゃん」
花巻くんにノートを取られて3年生が覗き込む。金田一くんにタオルを渡されて初めて泣いてることに気付いた。
「ボール貸して」
「だーめ、何する気?」
「顔に向かって及川くんのサーブする」
「アホ川がしたほうが早いだろ」
しれっと実行犯にしようとしてる岩泉くんに私がやるの、と返すもボール前に国見ちゃんや矢巾くんたちが立ちはばかるせいで取れなかった。
コーチたちが来て話してご覧と言われたけど、悔しくて悲しくてむかつきすぎて泣いてしまって全然説明できない。
「確かに誰も見てなかったんじゃあ断定はできないな…ほぼクロだけどよ…」
「他校の分析まで書いてくれてたのか…じゃあ尚更腹立たしいが向こうの監督にも共有しよう。人の努力を踏みにじる上に自白しない輩がもしかしたら両学校に潜んでいる、と。……あぁ、もちろんお前たちがやるなんて思ってないからね」
ゴシゴシとジャージで目を擦ってると及川くんに手を取られる。見上げていると岩泉くんにずいっとアイシングを目に押し当てられた。
「昨日の今日でこれか…」
「でもそいつスタメンじゃねえだろ、Bチームにもいなかったよな」
「ベンチにも入らないような奴が年下の子に声かけてフラレた腹いせにここまでするんですか…大学生って結構暇なんですね」
「国見ちゃん、火力高い高い」
思わずアイシングを取る。聞いたことない声色だ。私がぼろぼろ泣いたから流石に怒っちゃったんだろうか……意外に怒ったりしてくれるんだ。
「あっちのマネたちに知れたらすごい事になりそうだな」
「いやもうそりゃ戦争でしょ……相当おとぼけちゃんのこと可愛がってくれてるからね」
「まあ、それは練習後に報告する…基礎練からやっからお前らはお前らのバレーに集中しろ。ミョウジも……また分析、1からになるけど頼んだぞ。」
「分かりました」
切り替えて集中。怪我が起こるようなことじゃなかっただけまだマシと思うしかない。ヒリヒリと特に一静たちから無言の圧を感じて、矢巾くんたち下級生に少しの申し訳無さを感じながら1日過ごす。
たまにちらりとお姉さんたちに用事があるからコートを見れば、タチカワ?さんと目が合う。名前はアレだけど、顔は覚えてしまった。意地の悪い笑みを浮かべてこっちを見ているから気にしないように視線をそらす。
「あ、カエデさん、あの…ローテションの組み方について変更があるって伝言です」
マネの1人、ポニーテールが特徴の元気っ子カエデさんに伝言を伝えているとこれみよがしにヤマダ?さんがこちらを馬鹿にしてくる。カエデさんには微妙に聞こえてないようで、質が悪い……というか陰湿すぎない?
「……はあ」
「ナマエちゃん、どうかした?」
「お昼……のあと、少し相談したいことあって。いいですか?」
「うん、もちろん!さっきのコーチたちに伝えておくね!」
男所帯の中に1人じゃあ勘違いするよな、とか思い上がりも甚だしいとかそんなこと。周りは同意してないし、明らかに私に執着しすぎているからか困ったような返答しか聞こえてこない。青城側に帰ろうと背を向けると背中に衝撃がきて少しよろめく……もしかしてボールぶつけてきたの?
「おい、宮下お前流石に…」
カチン、ときて振り返る。……名前、ミヤシタさんだった。どこをどうしてヤマダさんだと思ってたんだろう。
「すみませぇん、ボール返しますね〜」
もう怒られてもいいや。私が自分より背が低くて、ボケッとしてるように見えて、強く言い返してこないから『こいつにはここまでしてもいい』ってナメられた態度取られるんだ。
ぽーんと斜め前にあげて助走をつけて大きく飛ぶ。4月からとはいえ県内1って言われてる殺人サーブ、何本被弾するかも…と恐怖になりながら見てきたと思ってるんだろう。フォームは完璧、飛ぶタイミングは及川くんなりのコツ…これも完璧。モノマネの制度は相変わらず高い。
でも私の筋力無い腕じゃあの威力は出せないから、グーパンで一番スピードと威力が出る位置に右腕を叩き込む。
バゴォン!と大きな音を立ててミヤシタさんの顔に直撃、仰け反るように倒れたのを見てようやく胸がしゃっきりした。我ながらいいコントロール力だ。スピードも申し分ない。女バレの人たちには負けるだろうけど素人にしては中々では?
「お…おい…」
「先に手を出された」
岩泉くんが何かを言う前にそう言う。
「え、ナマエちゃん、」
「私はボール返しただけ」
及川くんにもそう告げながらノートを拾う。
「こ、コラ!ミョウジ!手を出すな手を!」
「人聞き悪いですね、ボール返しただけです……サーブで。コントロールできないのか背中に思い切り当てられたので、見本を兼ねてみました」
「屁理屈言うな!!!」
コーチがそう叱ってくるけど、監督は笑いを堪えてるようだった。その後連れていかれた別室ではさすがに駄目だよって怒られちゃったけど。ミヤシタさんはその場で合宿強制帰還、のちに退部させるって結論になった。
「あー……ミョウジ、お前今後腹立つことあっても手を出すなよ」
「暴力キャラと認定されるの解せないんですけど……あまりに陰湿だったので。最初から対話してますけど話が通じないので物理で行くしかないんですよ」
「こらこら、それは最終手段だろう……怪我もなくて良かったが遺恨が残るやり方は今後控えなさい。自分に危険が及ぶからね……にしても、随分と綺麗なフォームだったなあ」
「及川くんのサーブを参考にしました、私の背中に当てるくらいコントロール力なかったみたいなので」
「監督!褒めるようなこと言っちゃダメでしょう……お前も嫌味言うな」
(ただいま)
(すんげ〜笑顔で帰ってきたな………スッキリしたのか?)
(うん!怒られてきたよ、あの人は親御さんに迎えに来てもらうってさ)
(ナマエちゃんちょっと集合〜〜〜はい逃げないよ!)
(い、一静)
(残念俺も及川側。アナタ説教です、こっち来なさい)
(うう…矢巾くん!国見ちゃん!)
(都合悪いとき後輩頼らないの!国見ちゃんも揺らがない!金田一、お前も!)
(私悪くないもん……悪くないもん〜〜!!!!)
(遺言それでいいのね?)
(え、何、死ぬの?)