HQ 及川
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ブロック
*ミョウジナマエ
わあ………困ったな。
夏休みになり、大学チームとの合同合宿。大学生にもなると及川くんたちが3段階進化の1くらいだとしたら、2段階目みたいな体格の良さ。壁がたくさん歩いている感じ。効果音つけるなら『のっしのっし』『ずしずし』『どすどす』そんな感じの人がたくさんいる。
「ミョウジさ〜ん、ボトルの粉こっちこっち」
「……?」
壁と壁(こんな言い方で本当に申し訳なさはある)の向こうから私を呼ぶマネージャーのお姉さんの声がする……ものの、見えない。手すら見えないからどこから呼ばれているのか分からない。
「???」
2階席?と上下左右隈なく探していると、大学生の選手たちに笑われた。
「こっちだよ」
「おい宮下、女子高生狙うなよ」
「狙ってねえよ!やめろよ、困ってるだろ」
はい、困ってます。たったひとつ、ふたつ。そのくらいしか変わらないのにまるで……小学生と高校生の私、のような年齢の扱い方される。分からないことがあるからお姉さんにも選手たちにも聞いて回ることが多々ある。なんせマネージャーとしての歴は1年生だし。声をかけるたび、お姉さんたちは気前よく答えてくれるものの、選手たちはずっとこんな調子。
遊びにきてるんじゃないんだけどな……なんかこう、いつもちょっと軽い調子というか。聞きたいことがあるから声をかけたのに好きな子いるの〜?と声をかけられたり。ちょっと辟易している。
「ナマエちゃん、こっち」
結局お姉さんがどこにいるかは教えてくれないでいる二人にどうしようかと思案していたら、及川くんに手を引かれる。
「あ、お姉さん見えた!…及川くん、ありがとう」
「はーい」
「ミョウジさん、ごめんね〜見えにくいよね。粉ここにあるから高校生の分作ってもらっていいかな?」
「いえ、背伸びしたんですが壁に阻まれてしまって……ありがとうございます、ダッシュで作ってきます!」
「溢したりケガしたらあれだし、ゆっくりでいいからね?!」
お姉さん、いつも私の身を案じてくれて優しい。最初ちょっと、え、ずっとマネージャー居なかったのに?といったじろ……っとした視線を感じた。けど、毎回サーブ練習で命の危機を感じてるから避け方を教えてほしいと進言したら、なんかウケてた。及川くんのサーブを見て『ほんとだ……』ってなったのかもしれない。
スポドリの粉を入れて水道で希釈していく。もくもくと繰り返しているせいで近づいてくる足音に気付かなかった。
「ミョウジちゃん」
「っ!……あ、すみません……どうかしましたか?」
びっくりしすぎてボトルを水道のシンク内に落とした。中身は出てない……危ない、セーフセーフ。周りの水滴を落としてカゴに入れて次のボトルへ。この人は……誰だ?名前なんかもちろん覚えられない。大学生のサークルチームになると青城より多いから顔もぼんやりしてる。
「ね、連絡先交換しようよ」
「………?なんでですか?」
連絡先?いらなくない?そう思って尋ねる。目線は水を注いでるボトルに向けたまま、でも失礼がないように体は少し先輩に傾けてちゃんと聞いてますよアピールはしておく。
「なんでって……そりゃあ、ねえ?いいじゃん」
答えになってないぞ。なんなんだ、この人。変な人だな……。顔をチラリと見上げて、覚えのある感覚に手元が思わず止まる。あ〜……そういうのか、コレ。ナンパに近いやつ。
ちゃんとお断りしないとまた明日「交換しようよ」って言われ続けても面倒だ。何度だって声を大にして言うけれど、私は春高予選まで残る皆に勝ってほしいからマネージャーを続けてるわけであって、遊びに来てるわけじゃない。
「え、と……ごめんなさい、できないです」
「できない?」
「はい。できません、遊びに来てるわけじゃないので」
きっぱり、はっきり。あなたがどうこう、ではなくそもそも前提が違いますよと示しておこう。俺は俺は?と別の人が続いてきても嫌だし。
「……ふぅん、あっそ。別に本気じゃないのに嫌な感じだね?そもそも高校生だから遊んでやろうと思っただけでマジじゃないから、そんな風に感じ出されても困るんだよね」
早口で捲し立てられて理解が遅れる。え、と……遊びで声かけたのにって言いたいのか?この人は。
「えと……遊ばれたくないので余計に困ります、普通に傷つくので」
「うっさ、いっちょ前に楯突いてんじゃねえよブスのくせに」
「ナマエ、ボトル運ぶの手伝うよ」
ガーン!と傷つく間もなく一静の声がする。先輩よりも大きい一静が来たからか、私の返答が気に触ったせいかぶつくさ文句言いながら戻っていく。
「あの、声掛け失敗したからって暴言吐かないでくれます?うちの大事なマネージャーなんで。丸聞こえでしたよ……先輩、あとはお願いします」
「は〜い、宮下アンタこっち来い」
お、お姉さんたち……!!!かっこいい……!ミヤシタさんの首根っこ掴んでどこかへ消えていったお姉さんたちを見送り、一静を見上げる。
「ビックリした」
「アイツキモいね……平気?ムカついたでしょ」
「……うーん、ちょっと傷ついた」
なんか前も……ルナちゃんとデパートに行ったときのナンパもブスって吐き捨てられた気がする。一応年頃だしそういうの気にするんだけどな。
「ナマエはちゃんと可愛いよ?あんなやつに言われた負け台詞気にしなくていいよ」
「うーん……」
一静も、一静のママも…私のママもお父さんも。なんなら一静のパパも……客観的に見て分かるくらい私に甘いからな……。可愛くないとか馬鹿とかそういう悪口、松川家からは一切言われたことないし、なんなら投げかけられた私とミョウジ家よりも怒ってる事のほうが多い。
「揺らぐ」
「早くそんなことないんだって方においで……これで全部?」
ひい、ふう、みい………うん、全部個数足りてる。
「うん、終わった。ありがと、ダブルの意味で」
「はいはい……及川と岩泉も静かにキレてっから落ち着かせてくれると助かる、練習試合で暴走しかねない」
「間違いなくサーブだけでも死人が出てしまう………任せて」
せっかく初めての大きな合宿、マネージャーとはいえ運動部らしいことして楽しいのに殺人事件が起きたらたまったものではない。
「戻りました〜、ボトルこっちです」
ほいほい、と2年生や1年生たちに手渡ししていく。……ほんとだ、ちらっと見ただけで分かるくらい主将コンビがピリついてる。そのせいで矢巾くん胃が痛そう。
「あの」
「ん?」
「試合で関係ないことにピリピリしないで」
「「………」」
主に後ろから視線がぐさぐさ刺さる。
「私大丈夫だから。見てほら、お姉さんがバチバチに怒ってくれてるし……痛めつけるんじゃなくて皆の…青城のバレーしてきて。大学生に勝つんじゃなくて、春高行くのが目的なんだから」
確かに傷ついたけど、そのまま蹲って動けなくなるほどではない。ちゃんとやらなきゃって思えば立ち上がれるしマネージャーとして仕事もできる。そんな程度のことで皆の1日を無駄にしたくはない……怒ってくれるのは、ありがたいけど。
「……1点も取らせないつもりでブロック飛ぶぞ」
「オレはサーブの得点率あげよっかな〜いい練習台だね」
あれ、なんか変なやる気を逆に注いだ?
「ごめん一静、失敗したかも」
「健闘は称える」
「まあ仕方ないね……俺らは俺らのバレーするしかないよ」
3年生のうちの半分が冷静なら大丈夫かな……2年生と1年生にはごめんね、と謝っておく。
「良いですけど…何があったんですか?」
「ん〜……トラブル…に巻き込まれた」
「トラブル?なんかされたんですか?」
「……連絡先ちょうだいって言われて、断ったらなんかもにょもにょ言われたって感じ…?」
「「あぁ……」」
金田一くんと国見くんは察してくれたようだった。先輩は悪くないですよ、と二人して慰めてくれるのでお礼を言っておく。結局及川くんを主体として一静まで暴れるような試合をして点数は大差をつけて勝利。
「座ってください」
「お、おう?」
「3年生集合」
「え、何?」
いいから、とコーチの横に座らせる。
「及川くんの足首がおかしいし、花巻くんの肩の動きは鈍い。一静のブロック率も2割落ちたし岩泉くんの反応の悪さも目立つ………怪我、してないよね?」
「いや、あの「なんか赤いけどこれ何?花巻くんは肩周り熱持ってるけど」………」
アイシングを用意していたので花巻くんは肩に、岩泉くんは手首に押し付けるように当てていく。
「いだだだだ!!!」
「痛い?痛めてるのに無理に最後までやってたもんね」
「ナマエ、ごめんって」
「私始まる前に言ったよね、試合で関係ないことにピリピリしないって。
不当な扱いを受けたことに怒ってくれるのは有り難いけど、それで怪我しちゃ本末転倒でしょ!!はいコーチ!次どうぞ」
「お、おう……なんかやる気に満ち溢れてると思ったらそういうことかよ……」
コーチにも監督にもたっぷり怒ってもらって、私はお姉さんたちのもとへ謝りにいく。サーブで及川くんの怒りの篭もったボールをあげることはもちろん大学生だって難しいので跳ねに跳ね、お姉さんたちを危険な目に遭わせてしまった。
「すみませんでした、言い聞かせたんですけど力及ばず……あの殺人ボール掠ったりないですか?」
「してないしてない!そんな謝らないで、元はといえば鼻の下伸ばしてる野郎どもが悪いんだから!……というわけで、ミョウジさん。1個約束しようか」
「なんでしょう?」
「今後は1人で行動しちゃだめ!私達もマネ同士なるべく一緒にいるけど、無理なときはそっちの高校生についてもらってね……念の為ね、一応。何かあってもやだからさ」
「う、優しい………」
「青城、及川くんのファン凄いのにそんな中3年生で急にマネやるなんて女の子たちのやっかみ凄かったでしょ?大変な中一生懸命やってるの私達でも分かるよ」
お姉さんたちに一生ついていく。お姉さんたちとは連絡先交換して、用具を片付けて支柱を持とうとすると上に上がっていく。
「……ナマエちゃん、持つよ」
「足悪いのに何歩いてんの!返して」
「これ持って歩くくらいはできるよ、骨折したんじゃないんだから……ナマエちゃんはネット持って」
ほい。と及川くんからネットが振ってくる。びっこ引いたりはしてないから平気かな……でもあまり負担かけないようにしてもらわないと。及川くんは足首痛めやすいというか…もう癖になってるのかも。捻挫したら捻挫しやすくなるっていうし。
「ごめんね、今日」
「ほんとだよ、あんな暴れて…お姉さんたち血の気引いたって言ってたよ」
「そんなに???」
「うん」
「精度あがったってことだけはプラスに受け止めとくね……お姉さんたちと仲いいんだ」
「すっごく優しいよ、さっきライン交換した」
「えーめずらし」
「初日に名前と顔覚えるのに時間かかるって言ったからか、名札下げてくれてるの」
保育園かよって岩泉くんのツッコミが聞こえたとき思わず笑ってしまったけど、同時にお姉さんたちの優しさが骨身に沁みた。
「でも……お姉さんたちも、一静も、及川くんたちも。皆怒ってくれたから、ちょっとすっきりした」
(ならコーチたちに怒られた甲斐もあるね)
(怪我はしないでほしいな…)
(気をつけるね……よっこいしょ、ほらほら戻るよ〜)
(お腹空いたね、お昼ご飯なんだろう)
(昼は麺類って決まってるからうどんじゃない?)
(豆乳ごまうどん食べたい)
(うわお腹減る……やめてよナマエちゃん、違ったらがっかりしちゃう)
(おろしでもいいよね)
(さては相当お腹空いてるね?)
(うん、珍しくお腹空いてる)
(合宿中はさすがにおとぼけちゃんもお菓子持ち歩けないしね)
(持ってきた分初日にコーチにも没収された)
(持ってきてはいるんだ……)
(おつまみにって言い訳したんだけどつまむなって怒られたよ)
(めちゃくちゃ正論だね)