HQ 及川
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サーブ
*及川徹
自覚したならチャンスは逃したくない。獲物はもともと逃さない質だし?
そう思ったオレはひとまずナマエちゃんに意識してもらう前段階、近くにいることが当たり前の距離感になるべく空き時間にやたらと話しかけに行く。
「………なんの用?」
それに嫌そうな態度を丸出しにするのが坂ちゃんだ。腕を引っ張られ、ナマエちゃんと引き剥がされてやってきた渡り廊下には誰もいない。
「何企んでるの?……返答によっては蹴り上げる」
「怖い怖い怖いから……オレってそんなに信用ない?」
「ん〜…信用がないとかそういうんじゃなくて、不要なトラブルを避けたいって感じ。ナマエがマネになった時だって大変だったでしょ……卒業までそれが続いたら、流石に落ち込むよ」
坂ちゃんの言うことも最もだ。オレはカッコイイと思う…モテるし。見た目に気も使ってるし。だけど人気だからこそ少し話した子と、オレのずっといるファンがいざこざを起こすのなんて日常茶飯事だった。坂ちゃんにもそのことで1年生のとき迷惑をかけたのも知ってる。
「……好きな子、には話しかけたい、じゃん…」
どういうテンションで言っていいか分からなくてしどろもどろになる。情けないけどこんなの初めてだ………そういえば、今までの歴代彼女たちってオレからアタックしたことなんてなかったな。バレーが第1なオレをしっかり理解してくれるって言ってくれた子の中から、顔がタイプな子…って選び方してた気がする。
「…………は?ごめん、もう一回」
「や、だからさ…!好きな子には話しかけたいじゃんって」
「好きな子」
「何回も言葉にしないでくれるかな!??!」
オレだって恥ずかしいんだからな!と付け加える。
「……マジ?マジで言ってる?」
「マジだよ……」
「……え、え〜……なんか及川らしくない………及川」
「?」
顔をのぞき込まれたので坂ちゃんと目が合う。きれいな形の目だなぁ。吸い込まれそうなほど丸くて可愛らしい顔立ち。
「友だちのよしみで言う、泣かせたら殺す」
「コワッ??!??」
「それと……ちょっと話しかけにきたくらいじゃ10年あってもくっつかないだろうから協力くらいはしてあげる」
「あ、ありがと……」
「まじで泣かせたら殺す、松川より先に殺る」
「なんでそんなにこの世に対して好戦的なの???」
怖いよ、戦闘民族じゃないんだから。というと誰がサイヤ人よ!!!とチョップされた。ツッコミが完璧すぎる。
*ミョウジナマエ
なんか最近やたらと及川くんといろいろ被る。購買に新作お菓子買いにいくときもそうだし、ふとした時に廊下でよくすれ違う。教科書貸して〜って一静より借りにくること増えた。
「合宿の買い出し……?持ちきれるかな」
「いやいや全員で行ってもそれじゃ足りないから。おとぼかけちゃんは買い付けて、郵送してもらうように回ってくんの」
「なるほど!」
私も枕投げしたいんですってコーチに進言して怒られながらも認められた泊まり込みの合宿。部屋割りはもちろん皆と別だけど、ちょっと楽しみ。
飲み物や合宿メニューの食材の買い出し(うどんとかの麺類とか、お米とか)をやってきて!と頼まれた。
「俺らは布団の洗濯のしなおしするから…これ、買い物リストと買い物先。ちゃんとスマホ持って」
「ほい、はい」
スマホはもうなくさないようにストラップをつけた。ルナちゃんがビーズで作ってくれたお手製のストラップ。可愛くて首から下げれて便利で助かってる。
「付き添い誰行くの?」
「あー…俺離れらんねえし……及川でいいだろ、ミョウジ、あいつの居所分かるか?」
居所……まるで逮捕前の犯人みたいな言われ様にちょっと面白くなりながら頷く。さっき体育館前にいたの見た。
「じゃあ頼んだぞ」
「あい!」
びし、と敬礼をして入り口へ向かう。ジメっとした空気だ、これが少し湿度が下がるともう夏休み……早いなあ。
「いた、及川くん」
「?どしたの?」
「買い出し行ってきてって岩泉くんが」
買い物リストを見せながらそう言うと及川くんの肩が並ぶ。改めて見ると及川くんってデカ……なんかもうロボットみたい。
「合宿のやつ?じゃ行こっか」
「うん」
スマホ持った?財布は?と聞かれるのでバッチリですとポーチを見せながら言う。財布もちっちゃいポシェットに入れてるし、これごと全部忘れない限りは平気。
「はい、手」
「?」
左手をとられる。どういうこと?不思議に思って見上げると及川くんの耳が赤い。
「迷子の前科があるからネ」
「…いつの間に今世は迷子が罪に…??」
随分大きな手だ。私の手なんかすっぽり……そりゃそうか、あんなサーブ打つんだもんね。軌道はわかるようになってきた、けどレシーブできるかと言われれば絶対にNO。
「及川くん、耳…赤いよ」
「ゔ……ナマエちゃんはなんともなさそうだね」
なんか睨まれた。
「恥ずかしさは、ある」
「ふぅん?嫌なんだ」
あ、口元がとんがってしまった。及川くんがちょっと拗ねたときのわざとらしい仕草の1つ。あともう一個は、岩泉くんに怒られすぎて反省してますのポーズもある。
「い、や…ではないけど……普通に恥ずかしいじゃん」
「ふふ、へえ?」
なんか立場逆転してしまった。もう解けないように、とさらに強く手を握りしめられてはもっと抜け出せなくなる。そんなことしなくても、おにぎりの海苔みたいに包まれてたのに。及川くんにも告げたとおり、ジロジロ見られるし恥ずかしさはあるけど別に嫌ではない。
二人で歩いて業務スーパーや100均、スポーツショップに顔を出していく。毎年恒例の合宿なのもあってジャージを見るだけで用意してくれるところがほとんど。
「へえ、青城もついにマネできたんだ」
「はい……まあ多分この世代だけだと思いますけどね」
「そうなの?じゃあラッキーだね、お姉ちゃん」
「ラッキーだって」
「ラッキーでしょ」
そうなんだ、ラッキーなんだ。近くで皆のプレーを見れるのは確かにラッキーかも。領収書と郵送先の住所をサラサラと書いていく。
「ナマエちゃんって字キレイだね」
「そう?…まぁほら、名は体を表すって言葉もあるし字もそうなんじゃない?」
「岩ちゃんに喧嘩売ったね」
「流れるようにハメられた」
褒められてたと思うんだけどな???おかしいな。私いつの間に怒られるように仕向けられてた?及川くんも書いて、と別の伝票を渡す。なんだ、及川くんだって字綺麗じゃん。
何軒も回ってようやく買い物終了。一応買い付けは終わったよ、と一静にLINEする。
「ね、見て」
「わ〜真っ暗……ゴロゴロ言ってるじゃん」
急な夕立らしくて道行く人もスーパーの中の人も傘なんて持っていなかった。もちろん、私達も。でもこれ、あと5分もすればザーザー降りだろうな……。
「雨宿りしてこ、濡れたら風邪ひいちゃうよ」
「ちょっと、そんなヤワじゃないよ」
食べてるもん、と続けると2度見された。失敬な……ほんとにバレー部のマネになってから私も運動量増えたからご飯ちゃんと食べるようになった。特に朝ごはん、前まで2食だったけど今や3食ないと体が持たない。
『一静、夕立降りそうで雨宿りしてから戻るね』
『りょ 及川は?』
『てるてるぼうず鷲掴みにしてる』
降るなー降るなーと頭の部分を鷲掴みしてる。絶対降ると思う、その扱い方。及川くんの努力と祈祷も虚しくしとしとと雨が降り始め、すぐにバケツをひっくり返したような雨模様になる。なんなら少し寒い。こういう夕立って気温下がるよね。
「すごいね」
「雷もすごいね、めちゃくちゃ光ってる」
私の心臓もバクバク鳴ってる。昔からどうも雷は苦手。小学生の頃は雷になるたびに親の部屋に行って一緒に寝てもらってた。
*及川徹
「ナマエちゃん、寒い?」
雨が降り始めてから顔つきが強張ってるナマエちゃんに声をかける。結構歩き回ったし疲れちゃったのかな?
「ううん、大丈…」
ナマエちゃんが大丈夫って言いかけた瞬間にピカ!とひときわ強く空が光る。フラッシュ焚かれたみたいだな、と呑気に思ってると間髪入れずにドォン!と大きな音と衝撃が響いて辺りが真っ暗になる。
「うわ、停電だ‥…ナマエちゃん、へ、いき……?」
スマホのライトつけて照らすと目の前にいたのに居ない。そのまま下に視線を向けるとしゃがみ込んでる。
「ナマエちゃん?」
「うぅ……」
背中を擦ると震えてるし声も震えてる。目が合うとぽろぽろ大きな涙の粒が流れてく。……え、ナマエちゃんってこんな泣くことあんの??!てか泣いちゃった顔可愛すぎない????とオレの脳内はパニック。
「こわい……」
「っ、大丈夫大丈夫、オレのジャージかぶってて」
しおらしいナマエちゃんにそっと左手を握られて完全にキャパオーバーのオレはとりあえず、左手はそのままに(だって嬉しいからね)羽織ってたバレー部のジャージを頭から被せる。
「雷苦手なんだ」
「びっくりするから苦手なの……」
ごめんね、と続くナマエちゃんは言葉とは裏腹にオレの手を彼女の力の割には両手で強く握ってくる。本気で怖いんだ……別にオレも性格悪くないし、人が本気で怖いものを揶揄う趣味はない。虫とか、なんかの集合体とか……暗いとことか狭いとことか。人によっては過呼吸起こして倒れたりするくらい苦手なものはひとつやふたつ、あるでしょ。
それにしてもナマエちゃんにそこまで怖いものがあるとは思わなかった。大きな声、怒鳴り声が苦手なのは知ってたけど……その時だってここまでは、あ、いや結構手震えてた気がする。
「大丈夫、ダイジョーブ。ここには落ちてこないからね」
そう言いながらジャージの上からおそらく後頭部に当たるであろう箇所をゆっくり撫でる。10分くらいゆっくりそうしてると電気がパッ、とつく。よかった、冷房効いてたからまだマシだった。
「電気ついたよ」
「雷やんだ…?」
ジャージをまくりあげて下から覗いてくる子猫みたいなナマエちゃんに心臓を抑えつつ、窓の外を見る。相変わらず雨足はまだ強い……し、さっきより感覚は開いてるけどピカピカ光ってる。
「まだ続きそう」
「う〜……家帰りたい……」
「お母さんたち心配してるんじゃない?連絡する?」
そう尋ねるとそれは大丈夫、と続く。
「部活に行ってるの知ってるし、誰かしらいるから大丈夫ってなってると思う……」
「あらあら、体調悪くなっちゃった?こっち冷房よく効いてるよ」
スーパーのバイトのおばちゃんがパタパタと小走りでやってくる。しゃがみ込んで怖さで顔が青褪めてるナマエちゃんを見て、誤解したんだろう。確かにパッと見は体調悪そうに見える。しゃがんだままだと足も痺れるし、ありがたく椅子を使わせてもらおう。
「、まってどこ行くの……」
グイ、と背中のシャツを引っ張られて振り返れば少し涙目のナマエちゃんが見上げてた。それがあんまりにも小さい頃の甥っ子に似てて、あんまりにも可愛くて思わず笑うと少し不服そうな顔してる。
「…ふは、飲み物買いにいこうと思って……大丈夫、室内には落ちないよ」
「わ、私も行く」
「うん、行こうか」
自然に伸ばした手に迷いなく握り返してくれるようになったナマエちゃん。あまりに可愛すぎ……バレないように反対側向いて悶えてるとナマエちゃんに脇腹を突かれる。
「笑わないでくれる?意地悪」
「笑ってない笑ってない!冤罪です」
「さっきは笑ってた」
「それはごめん。子犬みたいだったから」
可愛いから、なんて口が避けても言えない。恥ずかしすぎてオレが爆死する。飲み物のコーナーに行き、ナマエちゃんはオレンジジュース、オレはカルピスを手に取る。
「あ、まっつんから電話きてる……もしもーし」
『お〜……ナマエ大丈夫?停電なったから』
「さっきまで蹲ってたけど今は平気かな……雷やんだらそっち戻るよ」
『おぉ。買い物全部イケた?』
「それはも〜ばっちし!ここで最後だったんだ、ほんとにあと戻るだけ」
『……なんかテンション高いネ、そんなにウチのナマエは可愛かった?』
「まっつん………」
『プッ、ふはは!!!やべ〜及川照れてんだけど………もしもし俺花巻、何及川照れてんの?』
「照れてないし!!!!」
「うお……どうしたの及川くん、表情筋がすごいことに……」
「まっつんたちがオレのことバカにしてきたの。」
『ミョウジ〜、安全第一で帰ってこいよー』
「花巻くんありがと〜、今ジュース買うとこ…雷どお?」
『音はすっけど光らなくなってきた感じ?』
顔の火照りをなんとかジュースで抑えてごまかす。まじで夏でよかった、テキトーに暑いからとか言っておけるし。
(帰還!)
(おいなんだその両手のお菓子は)
(早……お土産お土産、駄菓子コーナー充実してたんだ)
(…それはいいけどおとぼけちゃん、少しジャージ濡れてる。風邪引くから着替えてきな、食べるの待ってるから)
(はーい)
(……………で、及川何あった?童貞みたいな反応してるけど)
(だって雷怖いって泣きながら手なんか握られちゃったらさァ……!!可愛いじゃん…っ!!!)
(だっはははは!!!!!)
(お前……手ェ出してねぇだろうな?)
(岩ちゃんまで揶揄うのやめてくれる??!?!出すわけないでしょ!!!)
(岩泉、出すわけないじゃなくて今の及川じゃ出したくても出せないが正解だよ)
(まっつん!!!!!)
(見たかったなー顔真っ赤にしてるであろう及川)
(もうほんと……見世物じゃないんだからね!!)