HQ 及川
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迷子
*影山飛雄
「……ミョウジさん?」
いつもとコースを変えてランニング中、見覚えのある後ろ姿の人がいるので声をかける。なんでこんなとこでしゃがんでるんだ……?
「あ、石山くん」
「影山です!!!」
石頭って覚えられてて全然名前を覚えないので訂正する。やっと後半の山を当ててもらえるようになった。
「……えと、こんなとこで何してるンすか?青城の誰も居なさそうですけど…」
「……ぐす…」
周りを見渡して及川さんやタッパのある3年生、国見たちが居ないか見ていると、鼻を啜る音が聞こえた。振り返るとミョウジさんが泣いてる。
「ど、え、どうしたンすか!?腹痛いとか…?!」
「迷子……」
まいご?
「迷子になっちゃった……」
ひとまず少しあとから走ってきて合流した澤村先輩と菅原先輩に事情を話す。
スマホは幼馴染の松川さんが持ってて、いつもなら財布も持ってるが今日は金欠だからスマホ決済で持ち合わせもないからバスにも乗れず、とりあえず歩いてたら烏野の方まで来てしまった……とのこと。
「一生帰れないかと思った」
「そりゃないべ、交番とか行けばいいんだし」
「……!」
「その手があったかみたいな顔やめなさい、早めに思いつくべきだぞ」
オレ以外の知り合いに会ったからかミョウジさんは泣きやんで少し表情も和らいだ。一旦烏野に戻り、清水先輩経由で連絡してもらおうとなる。
「てか青城部活は?」
「今日は月曜だからお休みなんだ……あぁ…駄菓子屋開拓で迷子になったなんて岩泉くんに知られたら……絞め殺される……」
「さ、流石に岩泉さんでもそこまでは……」
「やるよ、あの人私がお菓子食べるたびに『ナメてんのか飯を食え』って取り上げようとしてくるんだよ??」
「想像つくわ……まあ良かった、影山が見つけて!ナイスだな〜」
菅原さんに撫でられまくる。
「砂でお絵描きしてたら石山くんいて助かったよ……手持ちないけどあとでなんかあげるね」
「お絵かきしてないで大人に道聞くなりなんなりしなさい」
「でも知らない人に話しかけるな、誘拐されるって岩泉くんが」
「宮城ってそんな治安悪かったっけ???」
ミョウジさんなら確かに誘拐とかされちまいそうだ……谷地さんもだけど、なんかひょいっと担いで持っていけそうな感じがする。
「コーチ、武田先生!すみません、少し遅れました」
「お〜遅かっ……どこで拾ってきたんだ」
コーチがキレイな2度見をしてきた。……日向もだ。谷地さんも固まってる。
「石山くんが拾いました」
「影山ッス……迷子みたいで、道端でしゃがんでたんで……すみません」
「はあ?!迷子??!……お前、スマホは?」
「たぶん友達に預けちゃってて、財布もなくて」
「何やってんだよ……武田先生にスマホ借りて親御さんにでも連絡しろ」
「ふふ、影山くんナイスですね……青城からここだと結構遠いでしょう、随分歩いたんじゃないですか?椅子どうぞ」
武田先生がパイプ椅子を差し出し、ミョウジさんは座る。……ほんとだ、確かに靴とか靴下が汚れてる。しゃがんで落書きしてたのもあるだろうけど。
「清水さん!久しぶり、元気してた?」
「わ、ナマエちゃん久しぶり……ふふ、迷子だったの?」
「うん、迷子だった…歩き疲れたぁ……妹?」
「ううん、新しいマネージャー。1年の谷地仁花ちゃん」
「やち…やち…頑張って覚えるね」
マネージャー陣がほのぼのし出すと田中さんたちが感涙してる。5分休憩中にミョウジさんは家に電話をかけてた。
「あ、ママ?もしもし?ナマエだけど……うんそう、なんか新しい駄菓子屋さんないかなって歩いてたら烏野の方まで来ちゃってさ」
「どんな理由だよマジで…」
「ま、まぁまぁ……」
全員が思ってることだろう。ミョウジさんのお菓子好きは目を見張るものがある。
「うん……え、一静が?!………あ、そうなんだ……分かった、一静にも電話しとく。ママ烏野分かる?」
*ミョウジナマエ
「ちょっとすみません、今から本気の謝罪電話をするので見てみぬふりしてもらってもいいですか?」
ママに電話したら一静や及川くんたちから死ぬほど私が居ないって家に連絡来てたみたいで、私の死刑は確定してる。手をあげて烏野のお父さんと監督、先生に申し出れば皆「??」って顔してた。
「フゥー………」
『…も、もしもし?』
息が荒い一静の声だ。あぁ………言い出しにくい。知らない番号だから出てくれないでいたらよかったのに。
「もしもし、一静?あの『どこいんの?何してんの?』はい、誠に申し訳ありませんでした」
こっっわ!!!!こんな遮られたことないのに!!電話越しに土下座してると石山くんが土下座してる…って呟いてた。
『どこで何してんのって聞いてるんだけど』
「迷子に…なっちゃってて」
『は?迷子?どこいるの、今。これ誰のスマホ?』
「た、……たか、たや、たな……」
『場所は?』
「烏野。……石山くんが拾ってくれた」
ごめんなさい、先生の名前がどうしても思い出せなくて。言い詰まってしまった。た、から始まるのは覚えてる。
『……岩泉、及川!烏野にいるって』
「……お願い岩泉くんには代わらないでほしい」
『おう、代わったが?お前何してんだ』
「すみませんでした。烏野の桜の木の下に埋まってきます」
「やめて!??!いわく付きにしないで!?!」
烏野のお母さんに止められる。
「わ、わざとではなくて…」
『おう、わざと迷子になるようならサーブ練に混じらせるけどよ……何して迷子になったんだ』
「駄菓子屋さんを探しに……適当に歩きました」
びっくりするくらい無言が続いて切れたのかと思ってスマホを見つめる。5G、アンテナバッチリ立ってる。
『…………埋めンぞこのボケェ!!!!…影山に代われ』
「ウス……石山くん……ご指名です……」
もう私は終わりだ。皆に的あてみたいにサーブで蜂の巣にされるんだ……。
「ず、随分げっそりしちゃって……」
「埋めるぞって……今までありがとうございました」
「おい縁起悪ィな、埋められねえからそんなしょぼくれてんじゃねえ!!」
監督たちからは慰められ、烏野のお父さんお母さんは肩を震わせて笑ってた。清水さんにも別れの挨拶してたら、石山くんが何か言いにくそうにこっち見てた…なんだろう?
「……あ、いや….岩泉さん、あんま言わないであげてほしい、です…泣いてたんで」
「………なんで皆の前で言うの!!!」
「ゔぇっ!?すみません、でもめちゃくちゃ号泣してたんで」
次々にバラさないでくれる?!泣いたんだ……みたいな空気になってるじゃん!!!
「もー石山くんとは絶交」
「まーまー、影山も心配して全く悪意無いからさ〜許してやってよお姉さん」
烏野のお母さんが仲裁しに来た。私は応じない。恥ずかしすぎて体育館の超隅っこに隠れてママの迎えを待ってると、表れたのは一静だった。
「ご迷惑おかけしました、すみません」
「いえいえ!逆に僕達が気付けてよかったです……ミョウジさんも気をつけてね?」
「はい……すみませんでした……」
「あ〜影山も言ってたけどよ、あんまり叱ってやるなよ。ずっとそこで落ち込んでたんだから」
「なんで烏野の人って皆バラしてくんですか」
「こら、噛み付かないの。影山、ナマエの回収ありがとうな…岩泉もお礼言ってたから」
もう二回ずつくらい謝罪とお礼を言って烏野の体育館を後にする。
「……はぁ〜〜……ほんと、お前」
「ご、ごめん」
「めっっちゃくちゃ心配したんだからね、分かってる?この間の坂田さんとのこともあるしさぁ…誰かにどっか連れてかれちまったのかなとかさぁ……!」
「ご、ごめん一静、ほんとに…」
「……怪我とかしてない?」
してないよ、と返す。初めて一静が泣きそうな顔してるの見て慌てることしかできない。
「まあ……1番キレてるの及川だから。いいよ、こってり怒られてきな」
「うゔ………」
一静の言うとおり車には何故か岩泉くん、花巻くん、及川くんが居て助手席に一静が乗り込んだので私は必然的に及川くんの隣に座るしかない。めちゃくちゃ怖いんだけど……!!!腕組んで睨まれてる。
「おかえり、ナマエ。皆すごい心配して我が家に来たんだよ……凄かったんだから、ドリフみたいで」
お願いだからママ笑わせないでよ…!!!
「た、ただいま…あの、皆、ごめん」
「あのさぁ」
「ハイ」
「ナマエちゃんさぁ、女の子の自覚ある?」
「あります」
「そんでさぁ、今年のミスコンに選ばれるくらい可愛いの分かってる?この間も坂ちゃんと悪質なナンパされたりしてたよね?」
「あ、うん、ハイ」
「あの時だって坂ちゃんとの壁になろうと前に出てきてたけど、腕とか掴まれたらどうすんの?こんな華奢なのにさ…一人で?知らないところ出歩いて?あげく1円も持たずに?スマホもまっつんに預けたままで?見つけたのが飛雄じゃなかったらどうするつもりだったの??」
「…及川、あんま詰めんなよ」
「いーや譲れないね、ナマエちゃんは自覚なさすぎ。そりゃコナンの蘭姉ちゃんくらい強いなら別だよ?助けてあげるとか言って知らない野郎の家とか連れてかれたらどうすんの?」
及川くんの言われることを一個一個想像してくと、たしかに私はどうすることも出来なさそうで。手首とか掴まれたら振り払えないだろうし、殴られでもしたら痛くて逃げることもできないかもしれない。見つけてくれたのが烏野の皆じゃなかったら、と想像して段々と怖くなってくる。
「ゔ、ごめん…っ」
「あーあ………及川、泣かさない約束は?」
「一斉にオレを悪者みたいにすんの辞めてくれる!??!どうもできないでしょ、だからせめてスマホは人に預けないで持ち歩いて!あと防犯ブザーも!!分かった!??!ここに居るみんな駆けずり回って探したんだからね!!!」
「わがっだ……」
「アッハハハ!ママより怒ってる……じゃあ皆今日はお礼も兼ねてご飯食べてってくれる?親御さんに連絡つくかな?」
*松川一静
あらら、泣きだしちゃった。及川と岩泉の冷戦を知ってるから俺と花巻は慣れてるけど、初めて見たし矛先が自分のナマエは相当怖いだろう。事前にナマエのママに「ごめんなさい、ものすごい怒っちゃうかもしれません」と申告していたからママも普通にしてたけど、目線が「凄いね」と物語ってた。
まあ、怒られる内容ではある。スマホが俺のとこにあって、連絡つかない。校内にもいない。家にもいない。体育館やコンビニとかにもいない、坂田のところにもいない……大捜索しても見つからなくて、皆一瞬嫌なことをよぎらせたくらいだ。駄菓子屋をめざして迷子になってた、なんて結末だと思わなかったけど……。
「どうすんだ、及川。しょぼくれてんぞ」
「もうお説教終わったから泣きやんでよ〜ナマエちゃん」
「女泣かせだ、ひでー」
好き勝手言われてる及川が不憫で笑えてくる。たぶん………及川とナマエ以外は及川の気持ちに気付いてるんだろう。まあおとぼけちゃんは気付けなくても納得できるんだけど、別に童貞でもない、恋愛初心者でもない及川が自分の気持ちに気付いてないのはちょっと面白い。
誰がどう見たってナマエのことが好きだからあんなに校舎内を駆けずり回って探してたんだし、勢いやばすぎて坂田さんはちょっと引いてたし。そんな一生懸命になるのはナマエがバレー部のマネだから、という理由よりも大きい気持ちがあるからなんだけど………まだそのことに二人とも気付いてないのが笑える。ナマエはどうなんだろう?聞いたことなかったな……今日後で聞いてみるか。
家に帰って、ミョウジ家にお邪魔してからもナマエは元気なかった。よっぽど及川の詰めが怖かったし、自覚が芽生えたんだろう。俺が言うのもなんだけど、俺の幼馴染は超可愛いくて思い切りが良くてカッコイイ。そんな子だ。でも小学生の時から俺もそれとなく進言はしてきたんだ。
知らない人についていくなよ、知らない人に声をかけられやすいんだから気をつけろよ、可愛いんだからって。
それでもナマエはそうかなぁ?なんて気にも止めず。ナマエはモテてた。まあでも擁護するなら、及川とは全く異なるモテ方だから(ファンがいてキャーなんて歓声があるっていう、外からのわかりやすい評価は無い)無自覚なところがある。
陰でどれだけナマエとワンチャン狙う奴がいて、俺が牽制してきたか。ワンチャンじゃなくてガチの一途ならいいよ、でも皆そうじゃなかったから。
「ナマエ、着替えてきなよ……制服しわっしわになるよ」
「うん……」
「なに、まだしょぼくれてんの?……皆心配してただけだって」
いつもみたいに頭をちょっと大げさに撫でる。下がった眉は上がらない………及川にやりすぎって怒っとくか。しょぼくれたまま着替えに行ったナマエを見送り、振り返る。
「「「及川」」」
偶然にも及川以外の声が重なる。
「何、オレ別に間違ったこと言ってないじゃん」
なんでこっちは拗ねてんだよ…。
「あぁ、正論だな。でも正論ふるっとけばいい訳じゃねえだろ……中身はいい、態度。あれはやりすぎ」
「ほんとだよ、お前女の扱いには慣れてんだろ。なんで俺と喧嘩するときくらいの凄み出してたんだよ」
「ナマエちゃん最後手震えてたぞ」
「……心配だっただけだし」
「……え、これ俺と岩泉と花巻今同じ気持ちだよな?」
「おお」
「多分そう」
よかった。じゃあネタバラシするか、追い詰められたナマエがちょっと可哀想だし……まあほんとに、及川が言ってた中身は何一つ間違ってないんだけど。
「及川、お前好きな子には優しくしろよ……俺の幼馴染なんだし」
そう言うと全く可愛くない三角座りしてた及川がバッ!と目を丸くしながら顔を上げる……やっぱり気付いてなかったんだ。
「は……?え?ごめんまっつん、今なんて?」
「うわマジなんだ」
「お前、ミョウジのこと好きなんだべ……気付いてないみてえだが」
「…………」
数秒停止した後、みるみる顔が赤くなっていく及川。うわ〜珍しい、こんな初心な及川3年間で初めて見た。
「い、や、べつに…そんな目で見てたわけじゃ」
しどろもどろすぎるのがもう答えだろう。べつに責める気も咎める気もねえよ、と岩泉が続ける。
「お前ならバレーに支障出さねえし、あいつも支障きたすようなことしねえだろ……だから、くっつこうがそうじゃなかろうがいい。ただ、てめえの気持ちに気付かずあいつを縛り付けるようなことはしてやんなよ……さっきのもそうだ。松川の言うとおり、お前のガン詰めで平気な奴少ねえんだからよ…あとでちゃんと謝ってこい、じゃねえと多分あいつずっとああだぞ」
(……待って、3人とも気づいてるというか分かってたの?)
(お前わかりやすいもん、ただ自覚ないのは意外だった)
(別に今までを否定するわけじゃねえけど、本命には初心なタイプ?)
(い、や……ちょっとニヤつかないでくれるかな!??!)
(いや〜無理だろ、これは成人するまで引っ張るわ)
(見る目あるよ、及川。今までは見る目ないけど)
(まっつん!!!ちょっと黙って)
(まぁ泣かせたらタダじゃおかないから。そこよろしく)
(こっわ………良かったな、及川。双子の兄貴とかじゃなくて)
(マッキーも揶揄わないでくれるかな……??!)