HQ 及川
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呪物の石頭くん
*ミョウジナマエ
スポーツ用品店で備品の買い出しをしてると横から手が伸びてくる。目を合わすと先日見かけたことがある顔だ。
「………あ、石頭くん」
「…ぅす……影山です」
「影山…影山…ごめんね、なるべく覚えるから」
先に名前覚えるの苦手なんだ、というと俺もですって返ってくる。
「……あの…及川さんのことなんで前科者って呼ぶんですか?」
「サーブが殺人級だから……あ、この間のあのハンサムな子の腕折れてなかった?前科が増えたかと思ってさ」
「ハンサム……?」
「あの、メガネの子」
そう言うと合致したみたいで、ハンサムか…?って呟いてた。それ絶対に本人の前で呟かないほうがいいよと忠告しておく。うちの部でそんなノリで及川くんが他の人のことをつぶやいたら乱闘騒ぎになる、大体キレてるの岩泉くんだけど。
「平気ですよ、確かに威力は凄いですけど…折れるまでは」
「でも私は部活中サーブ練習してる時は特に近寄るなって言われてるからさ……当たりどころ悪かったら折れちゃうのかなって思って」
「そんな扱い受けてるんスか及川さん……」
サーカスのライオンみたいだよね、ちょっとした隔離。サーブ練習の時くらいだけど。そうこう話してるとまた元気な声が響く。
「影山〜、お前……ッ!?おま、女の人捕まえてナンパか?!」
この子は目を瞑って全力フルスイングの呪物コンビの子だ。普段こんな元気なんだ……噛み噛みだったほうが印象強い。
「違ェわ日向ボケ!!!青城のマネだ!」
おお、石頭くんは岩泉くんタイプなんだな……岩泉くん、及川くん、金田一くん、国見くんは同じ中学校だったというし、一緒にやってるうちに移っちゃったのかもしれない。
「…あぁ!グミ食べてた人…!」
「私の印象もすごいね…」
岩泉くんが居たらため息ついてそうな会話だ。石頭くんだの、呪物コンビだの、グミ食べてた人だの。お互いの名前を全然覚えてないのちょっと面白い。
烏野の何人かでお買い物に来たらしいけどこのスポーツ用品店広いから先輩を探し出してるみたい。
「私迷子は慣れてるよ、手伝おうか?」
「え、いいんですか!?」
「ちなみに誰と来たの?」
「澤村先輩と、スガさんです!」
名前が多い……。ひとまず1番先に出てきた澤村さんから行くか。手を上に上げて少し声を張る。
「澤村さん、いらっしゃいますか」
「何やってんスか!?」
「迷子を呼び出してるの」
何をそんな信じられない奇異なものを見る目で私を見つめてくるんだ、石頭くんは。
「すすすすみません、オレらが迷子なんです……!」
非常に申し訳なさそうに呪物コンビくんが申し出てくる。まさかの君たちが迷子側なの!?
「よくさっきゆったりサポーターなんか見てたね」
「新しいのがあって気になって」
気になって…じゃないでしょ、と石頭くんをチョップ。ほんとに頭固くて石入ってる?と聞いたら入ってません!人間です!って怒られてしまった。
「ていうか2人ケータイは?連絡つかないの?」
「「あっ」」
なるほど、2人相当おマヌケちゃんだな。私だってまっさきに迷子になったら一静に連絡取るもの。そうこう騒いでいると見覚えのある体のずっしりした人と目が合う。
「あ、お前ら!」
「ヒィすみませんっ!」
すごい怯えてる……私の背中に隠れた呪物コンビくんとそんな彼を引っ張り出す石頭くんに挟まれる。
「大地〜、居た?もーお前ら店に駆け込んでったと思ったらすぐ居なくなるんだから…………え、青城のマネちゃん?」
おお、私のことを覚えてくれているとは。私はぼんやりとしか覚えてないことは墓場までの秘密にしておこう。ぺこ、と会釈をすると釣られて会釈する2人は保護者みたい。
「迷子保護してました」
「俺は迷子じゃねえッス」
「迷子だったじゃん、探されてるもの」
「そうだ影山、認めろ」
うるせぇ!ボケ!と小学生みたいな語彙力で言い争ってる2人に挟まれてると岩泉くんと及川くんの小競り合いを思い出す。
「清水が嬉しそうにしてたんだよ〜、ありがとね」
「……清水……ああ、あの子!」
「なんで清水先輩は覚えてるんですか」
「ほんと及川くんみたいなこと言うね?…ちゃんと覚えてるよ、君は石頭くんでしょ」
「影山です!」
「頭固かったもん、石入ってるよ」
「入ってません!」
鉄も入ってるし石も入ってるしどんだけカチコチなんだ。そうじゃなきゃボールを食らっても平気な理由が立証されない。
談笑してると後ろに引っ張られ、見上げると一静だった。
「どしたの?」
「遅すぎ、連絡つかないから迎え来た……烏野に保護してもらってたの?ごめんなさいね、うちのおとぼけちゃんが」
「違うよ、私がこの呪物コンビを保護してたの」
「影山です」
「日向です!」
「……ふっ、んっふ……あ〜……大変だったでしょ」
ひとしきり笑ったあと一静はどっしりとした保護者の方へ声をかけてる。
「てかアナタ、ケータイは?」
「………」
ない。ポケットやカバンを見てもない。
「………学校?」
「俺のカバンに入ってましたヨ……ほら行くよ、世話になりました」
「お世話しました」
「されてたんでしょうが」
してたの!と言うとカゴを取られる。
「良い子にはご褒美があるべきだと思います」
「またおかしのまちおか……?寄らないよ、アナタ破産する勢いで買い占めるでしょ」
「このために2万持ってきたのに」
一静に自分の財布まで没収された。ひどい、末代まで呪ってやる。私じゃ背が足りなくて届かない。
「あー……うちの一年が世話になったのは事実だからな…何買いたいんだ?2万分は無理だけど」
「か、神さま……!」
烏野のキャプテンが助け舟を出してくれる。嬉しくて拝んでると特大の舌打ちが聞こえた。こんな舌打ちしてくるの一人しかいない、私にとっても厳しい岩泉くんだ。
「ひぃっ、悪魔……!」
「何やってんだボケが、ケータイ忘れた挙句よお……」
「助けて神さま」
キャプテンの背中に隠れるとまた特大の舌打ちが聞こえてくる。
「……出てこい、今すぐ出てきたら及川は召喚しないでやる」
「出ます」
あまりの変わり身の速さに泣きぼくろのお母さんみたいな人がこっそり笑ってるのが見えた。バレバレだからね!
「つかお前…財布は」
「一静に没…盗まれた」
「没収だろ当然だ…飯を食え、特に肉」
「やだ、顎疲れる」
「ぶっ倒れんぞお前。……うちのおとぼけが世話んなったな、騒いで悪かった」
「違うよ岩泉くん、私が先にあの呪物コンビ見つけて迷子って聞いて保護してたの。私良い子」
「オメーも迷子みてえなモンだろうが!」
おでこをぐりぐり押されて下がると烏野のキャプテンにぶつかる。ごめんなさい、と謝ってくどくどが止まらない岩泉くんをちゃんと買い物してたと宥める作業に入る。部費が入ったお財布で備品の会計をしてきた一静から袋と財布を受け取る。……私の財布はない、くそう。
「…じゃあまたね……」
石頭くんのおでこを軽く突いてみたけどやっぱり岩にしか思えない。思考がだだ漏れだったのか、人間ですって先に言われた。
「全くお前不用心にもほどがあんだろ…おら、早く買ってこい。制限時間は5分な」
結局おかしのまちおかに寄ってくれた岩泉くんにお礼を言いながら大量にお菓子を買って変える。14000円分を使ったから岩泉くんと一静ちょっと引いてたけど買えてホクホクだからもういい。
「最近はどうなんだよ、及川の取り巻き」
「?なんかミスコン以降落ち着いた」
「お菓子目当てにミスコン勝ち取られちゃ文句言えねえわな……はい、優勝おめでとさん」
「えっっ…??!い、岩泉くんからカントリーマアムを…!?」
「声でけぇぞおとぼけ」
びっくりしすぎて立ち止まると一静が笑いながら雲のラムネをくれる。これ今日新発売のやつ…!!
「えぇ…ありがと嬉しい!」
「お菓子でんな喜ぶなら安上がりでいいわ」
「何言ってるの、カントリーマアムのファミリーパックもこのグミも結構高いでしょ!」
「そういう計算はやいのね」
腐らせないように大事に取っておいて食べる!と言うと早よ食えと怒られた。でもおかしのまちおかで買っちゃった14000円分のおかしもあるから…あとはクラスの皆から貰ったミスコンの参加賞として約束していたお菓子もある。6割は私のスタイリングをすべて担ってくれたルナちゃんにもちろん譲渡するつもりではある。
「そういやあのミスコンの動画バズってた」
「……え、動画?」
「知らねえの?何人かあげてるよ」
一静に言われ画面を覗き込めば私がアイドルの歌を1回見て踊った動画が本当にアプリにあげられてる……知らなかった。
「……私ひとこともお断りもらってないんだけど…まあいいけどさ…」
「ま、そうなるよね」
あることないこと言われるだけならまだしも一生残る形にされたのはちょっと嫌だったな。まあもう遅いから仕方ないと受け入れるしかないか。
大量のお菓子を抱えて部室に戻ったせいでまたコーチにお菓子を取られそうになりながらもなんとか阻止してサポーターやらボロボロのギブスの交換をしていく。ボールを拭くタオルもボロボロすぎて、こんなの渡されたらシンデレラも泣くレベルだったからやっと交換できた。
「ナマエちゃん」
「及川くん」
「買い出しおかえり、迷子になってたんだって?」
「断固否定するけど迷子の石頭くんたちを保護してただけだよ」
「石頭?」
「うん、ほら呪物コンビの……お父さんとお母さんもいた」
「待って待ってあだ名多いな誰?お父さんお母さんはガチのやつ?」
「失礼だなあ、私だってご両親の前で石頭くんなんて言わないよ……ほら烏野の」
説明すればするほど首を傾げていく及川くんがおかしくてつい笑う。なんにも理解できてないんだもの。
「あの……なんだっけ…トビウオ?ちゃんやっほーとか言ってたじゃん」
「とびうお………だっはっはっ!!!え!?飛雄ちゃんのこと?!!あっはっはっ、げほっ!」
噎せるくらい笑い転がる及川くんにちょっと引いてるとちょっと引いてそうな顔した国見ちゃんがやって来た。
「何してんですかミョウジさん……」
え、この状況で私??笑い転げて噎せてる及川くんじゃなくて?
「別に何も…」
「あ〜…っ…おっかしい、飛雄ちゃんのこととびうおって言うんだもんめちゃくちゃウケた…じゃあ呪物はチビちゃんか……待ってお父さんとお母さんは誰?」
「名前聞いたんだよね。…………さ…里山……さん?と、泣きぼくろある人」
「絶対違うでしょソレ……」
国見ちゃんにまでため息つかれてしまった。部内のメンバーを覚えただけでも褒めてほしいくらいなのに。
(おいミスコンコンビ何やっとんだ)
(なんか勝手に及川くんが笑い転げてる)
(ミョウジさんの言い間違えのせいですよ)
(惜しかったじゃん、トビウオ)
(……影山のことか。ミーティングすっから集まれ)
(……)
(じゃあ私部室でお菓子食べよ、じゃなくてアナタも参加)
(え、なんで分かったの??)
(おとぼけちゃんの思考回路くらい分かるよ)