HQ 及川
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練習試合
*ミョウジナマエ
「あの…さっきの、大丈夫?」
他校の生徒に心配を掛けてしまった……まあ悪意がある表情だったもんね。
「私さ……つい最近、マネになったの。マネになりたいけどなれない子たちの僻みが凄くて……烏野に当たらなくて良かった」
一静が貸してくれたシャツに袖を通しながら言えば清水さんがそうなんだ、と返してくれる。
「あの子達は及川くんの近くに居たいだけだからね、気にしても無駄だから平気……うう、さぶっ…よし行こうか」
体育館に戻り番号ギブスやら飲み物とスコアノートの用意を行う。
「おとぼけちゃん、監督に言った?」
「……グミの感想?」
「それはどうでもいいしお前グミ食いながら迎えに行ったのか?」
岩泉くんに頭を小突かれた。
「失礼だな、ちゃんと清水さんにもあげたよ」
「独り占めしたかどうかの話じゃねえよ……まあいい、松川からある程度聞いてるから。悪質なら言えよ」
監督に言われ、そこでようやくさっきの子たちのことか!と理解した。何か言うことあるのか分からなかったし思い浮かばなかった。
「相手にするだけ時間の無駄だから気にしてないです……君は…えと……国見ちゃん」
「ちゃん」
「及川くんのあだ名移っちゃった」
はい、とギブスを渡していく。今日の番号と…名前、念の為の似顔絵をノートに書いていく。当の本人は整骨院に行っていてなおかつアップしてからになるから、練習試合に遅刻。偉そうな条件を烏野側に提示しといて本当に偉そうだと思う。
「……?」
「どした?」
「渡くんがいない」
「い、います……!」
後ろからちょっと泣きそうな渡くんと目が合う。
「あ、違う違う…烏野の渡くん」
「……リベロか?」
岩泉くんの言葉に頷く。渡くんに聞いたらとんでもなく上手なリベロがいるって今日ウキウキしてたのに、ユニフォームが反転してる子もいないしギブスの色が違う子もいない。不在…?
「なんかクソ騒がしいやつだよな」
「あ〜……いた、あの元気っ子か。今日はたまたま居ないのかもネ……おとぼけちゃん、皆の名前覚えたんだ」
一静に偉い偉いと褒められる。
「次はポジションだな、渡がしょげちまってる」
「あ、いや!誤解だったので!」
ルールブック買うか…。滞りなく練習試合は開始し、烏野の1年生がとても緊張しているのだけは伝わった。なんか足がもつれたりしてるのもそうだけど、他のメンバーからの声掛けに返事がかみかみしてる。あの子、随分背が低い。私と同じくらい…?男子バレーにしては背が低い方だ。ということは、ものすごく飛ぶ?
1セット目はあの子が最後金田一くんたちと同じ中学校の影山くんと呼ばれる子の後頭部にサーブをぶつけて終わった。な、なんてこと……いくら及川くんみたいな殺人級とか被弾したって言われてないにせよ、同じ球を私が受けたら即入院レベルなのでは…??
「あの…」
「?」
「入院費用は出せないので、こちらで…」
「おとぼけ、戻って来いそいつピンピンしてんだろうが」
「あっはっはっ!髪の毛あるし湿布貼れないでしょ!」
花巻くん笑いすぎだし。じっとりと睨むと背中を向けて震えて笑ってる。
「おとぼけちゃん、困らせないの……すみません、この子ちょっと天然で」
「だってサーブのとき被弾するなよって」
一静に湿布ごと回収されたので異論を唱える。未だに朝のサーブ練習とか被弾するなよ!気をつけろ!って言われるのに…。
「それはお前だからだ……影山、お前の石頭健在か?」
そうか、岩泉くんと…及川くんも同じ中学校になるのか。金田一くんと国見ちゃんは同じところって前言ってたもんなあ。
「ゥス、平気っス」
本当だ、全然平気そう……。なんなんだ?バレー部の人たちってやっぱり体に鉄でも埋め込んでるんじゃないの…?
2セット目からが凄かった。変人速攻と烏野でさえどんなあだ名?という攻撃名をつけていたとにかく素早く動いた一年生に、さっきサーブが被弾した子がブロックのいない箇所へボールを飛ばす。その飛ばした先にいつも彼がいる。
「………何あれ……」
「バケモンみてえな技だな…」
溝口コーチがそう呟く。……あの子、目を瞑ってる…?タイムアウトの時に一静に聞いてみる。
「ねえ、及川くんがあげた軌道に一静が目を瞑って全力フルスイングってバケモノ?」
「呪物レベル」
「……呪物…」
及川くんも天才だと周りは言うけれど、あの…石頭の子も中々天才と呼ばれる部類なのかもしれない。2セット目取り返されてセット間の休憩中に体育館に悲鳴が響く。……ああ、及川くんか。石頭くんに挨拶してる。
「ナマエちゃん、ヤッホ〜」
「え……何?昨日も会ってるじゃん」
「冷たいなあ…これナマエちゃんの?」
私の生ラムネ!それに飴やプレッツェルまである。
「部室棟と体育館横に落ちてたよ」
「冬眠前のリスかお前は!!!飯食え!」
溝口コーチに全部没収されたし監督は大笑いしてる。
「没収されるのわかっててやったでしょ……この前科者!」
「あらぬ誤解を呼ぶあだ名で呼ぶのやめてくれない!?」
もう信じられない、早くアップ行ってきてと追い出してスコアを取り直す。私の生きる源が……。プレッツェルはルナちゃんからもらったやつなのに……あ、ルナちゃんだ。もう1袋あるよ、と言わんばかりにプレッツェル出してる……心の友!
3セット目、いい感じに競り合ってる状況で前科者……及川くんがアップから帰ってきた。セッターではなく、ピンチサーバーとして。
「死人が出る……」
溝口監督の背中に隠れて見守る。やっぱり凄い音と威力だ。……随分背が高くてハンサムな子だ。あの子も1年生らしく、レシーブが苦手と見抜いた及川くんに執拗にサーブで狙われていてどんどん腕が真っ赤になっている……。
何本か及川くんのサーブで点を取っていたけれど烏野の主将がレシーブを繋いで、呪物レベルの速攻で試合は終了。今日の部活はこちらもこれで終わりなので、一旦体育館からすべての人を追い出してコートのモップかけなどをする。
「ナマエ!」
「!ルナちゃん」
烏野の方から呼ばれたから誰?と思って目を凝らせばすぐ帰るから、とルナちゃんが1階に降りてきていた。
「アンタどんだけ通ってきた道にお菓子落としてんの?ほんとリスじゃないんだから」
「プレッツェルだけは後で返してもらおうと思う」
「お菓子で増量するとか言うからだよ……はいこれ、さっき上で小分けにしといた」
「ありがと〜!帰り道食べる!」
小さいジップロックに入れられたプレッツェルを受取り手を降って見送る。
「俺やります!!!」
いきなり聞こえた大きな声に地面から浮くほどびっくりして振り返るとこの子は…確か、
「呪物の石頭………」
「!?」
「だっは!あっはっはっ!」
花巻くんが膝から崩れ落ちて笑ってるのが聞こえた。
「悪いな影山、そいつ顔と名前覚えるのアホほど苦手なんだわ」
フォローになってない岩泉くんを睨みつつ、石頭くんの後ろに回り込み後頭部に手を添える。……た、たんこぶにもなってない!??!うそ、あんな音したのに…!?そりゃ及川くんのボールに比べたらかもしれないけれど……。
「おとぼけちゃん、アンタ何固まってんの……あ〜笑った」
「たんこぶもできてない、ほんとに石の成分が入ってるかもしれない」
「あっはっはっ、あは、あ゛〜!腹痛いむり…!」
「俺人間です」
「っふ、お前も…っのんなくていいから……!」
一静まで笑い出す。
*及川徹
マッキーの笑い声が聞こえてきて体育館を覗けば、飛雄ちゃんの後頭部に大真面目な顔で手を添えて「ほんとに石の成分が入ってるかもしれない」って真剣な顔でまっつんに申告するナマエちゃんが見えた。
岩ちゃんも金田一も笑ってるし、まっつんも肩を震わせて笑ってる。なんで笑ってるんだ?って顔してるのがナマエちゃんと飛雄ちゃんなのがむっかつく。
「ナマエちゃん、またポッケからプレッツェル出てるよ!とっちゃうからね!」
「だめ、これは私の命に変えてもあげない」
「いや、命軽くない…?」
モップをさりげなく取り上げれば今度はネットの片付けをしようとして泣きぼくろのある子に話しかけられてる。
「外す手順忘れた……これ引っ張ったらいいんだっけ」
国見ちゃんたちに助け舟を出すように指示してモップも2年生に変わってもらう。片付けまで終わって着替えたナマエちゃんが烏野のマネちゃんと一緒に歩いて出てくる。
俺は先に飛雄ちゃんに宣戦布告したから、あとはナマエちゃんが間違ってバスのらないように見守るだけ。1度他の大学から練習試合に来てくれたチームのバスにお見送りしてたときに、間違って乗り込んじゃったことがあるナマエちゃんは毎日天然による伝説を作り上げてて正直めちゃくちゃ面白い。バスに乗り込んだ時のOBたちの戸惑った顔が未だに忘れられない。
「はいナマエちゃんはここまーでっ」
「もう乗らないってば……清水さん、またね」
「うん、また」
え!?仲良くなってる……!しかも烏野のマネちゃんの名前は一発で覚えたの?俺は日跨いだら忘れられてたのに…!
「…どうかした?」
「烏野のマネの名前はすぐ覚えるんだ」
「可愛いじゃん、あと優しかった」
「俺だってカッコイイし優しいと思うけど??」
「え‥…?及川くんは前科者だし…」
「その呼び方辞めてくれる!?岩ちゃんまで真似し始めてるから!!」
殺人級のサーブ→殺人→前科あり…って思考回路で不名誉なあだ名がつけられてるのはこの間問いただしたから知ってるけど……。
「ちょっと、たらし野郎あんまりウチのに近づかないでくれる?」
いきなり引っ張られたと思いきやこの子は…ナマエちゃんの仲良しの坂田ルナちゃんだ。たしか俺は毛嫌いされてる。
「アンタのせいでこの子部活前に水風船被ってんだからね、色んな子に愛想振りまくのはいいけど誰かにしわ寄せ来てんの自覚しな」
「は…?水風船?どういうこと?…こら隠れない!」
ルナちゃんより背が高いのに隠れきる訳ないのに小さくなって縮こまるナマエちゃんの体操服を見るとまっつんの名字が書いてある。
「女バスあたりだと思うけど」
「ルナちゃんすごい…部活まで分かるの?私は同級生じゃないとしか…」
「いやあれ2組の子たちだよ、絶対アンタ対面で言うんじゃないよソレ」
顔を覚えきれてないナマエちゃんは下級生だと思ったようだ。確かに起爆剤の一言になりかねない。
「まあ清水さんにかかってなかったからいいと思う、烏野の人たちちょっとびっくりしてたけど」
「ちょっと、今ここで初耳なんですけど……それ監督たちには言ったの?」
「俺が言った」
まっつんとコーチがやってくる。ルナちゃんに会釈してる、大方今日はこれ以上の被害が出ないように見守るのを彼女に頼んだんだろう…多分ナマエちゃんは気付いてないけど。
「職員会議にはあげるが…正直監視カメラでもない限り防ぐなんて難しいからな。…つーかお前またお菓子くってんのか!?どっから湧いて出てくんだよ!」
「必要カロリーです」
「飯を食えっつってんだ……及川、お前も気をつけろよ」
コーチの言葉に頷く。
「ナマエちゃん、しんどかったでしょ……ごめんね」
「?気にしてないからいいよ」
「でもさあ……気にしないようにする前は多少なりとも気持ちは揺れ動くでしょ、ショックとか悲しいとかさ…」
「ん〜……一静とのことも言われること結構あったし…否定しても信じないからさ、皆。好きに言わせておけば飽きるよ、そのうち。」
あっけらかんと言い放つナマエちゃんの顔は……本当に気にしてないって顔だ。ダメージを受けてないといいんだけど…。
(お前……意外とどっしりしてるんだな)
(母ゆずりです)
(…これどっち?まっつん)
(ガチ。ナマエはおっとりしてるし人当たりもいいけど、傷つけてくる人たち全く相手にしないからね…マジでナマエママそっくり)
(……はっ!及川くん、コーチ、一静も…絶対一静ママには言わないでください、死人が出る)
(どういうことだ、松川)
(俺の母親はナマエが何も言わないから逆に喧嘩買って理詰めするタイプなんです)
(小学生の時地獄を見た)
(あれね〜……まあ相手が悪いよ)
(まっつんのお母さん怖いんだ…)
(いや普段は全く。ナマエに関してだけだよ、あんな血の気多くなるの)