HQ 及川
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新米マネ
*ミョウジナマエ
「というわけなの。どう思う?」
「……ん〜…過去一難しい議題持ってきたね」
今日のご飯は好物のおいなりさん。ご飯が始まる前に家族会議開きます、と宣言し一静にバレー部のマネに誘われていることを話す。
「皆本気だった…それは分かった。ちょっとぴりぴりしてたから」
「一静くんがナマエなら、って言ってくれてるんでしょう?」
まあそうなんだけど…。
「頼まれてるなら引き受けてもいいんじゃないか?最初から本気もやる気もMAXで、なんてプレイヤーならまだしもマネでは難しいと思うけど」
お父さんの意見に食べながら頷く。ひとまず夕飯を飲み込み、お風呂に入ってバインダーで書いてたメモを取り出す。
スターティングメンバーから1年生に至るまで名前がわからないからとりあえず番号でメモを取ってある。練習はいつ流れ弾にあたるかヒヤヒヤはしたけど……ちょっと楽しかった。一静たちの本気に混じれそうな気はする。
「いっせー」
「……なにやってんのアンタこんな時間に…」
部屋の窓から一静の部屋の窓に話しかけると開いてたみたい。少し呆れた顔の一静が顔を出す。
小さい頃はここの窓からお互いの部屋を行き来していた時期もあったけど、私も一静も1回ずつ落ちてお互いの親にものすごい怒られてから辞めた。効率的と思ってたんだよね、当時は…。
「やるよ、マネージャー。頑張ってみる」
「……マジ?」
「マジ。そんな意外?」
目を見開いてとにかく驚く一静に尋ねる。誘ってきたのそっちじゃん。
「……やってくれるって思わなかったから……ありがと」
「皆の名前覚えて卒業できるといいけど」
あんなに人数いると思ってなかった。バレーの強豪校である青葉城西にはたくさんの部員が県内からも集まってくるんだな…本当に野球部みたいな大所帯で一番のネックだ。
朝、いつもよりびっくりするほど早い時間に一静が家に迎えに来た。
「人が起きる時間じゃないよ…」
「おとぼけちゃん、靴左右違うからちゃんと起きなさい」
朝練行くよ、と手を繋がれる。お母さんに小さくおにぎりを握ってもらい、道中つまんで歩くと眠気が覚めてくる。
「寒…明日はマフラーしよ…」
「俺らは走り込みとかするから暑いけど、マネはそうはいかないしもっと厚着してきな。今日は…俺のジャージ貸すから2枚重ねでね」
「岩泉くんのももらう、3枚ないとキツイ」
「じゃあ花巻からももらいな…はい、ここ一応更衣室。でも今までずっとマネ居なくて使ってないからちょっと汚いかも…今日はここの掃除でもする?」
「虫いないか一静見て、私戦力外」
はいはい、と中に入る一静を見送る。ロッカーをバンバンたたく音やガチャガチャと扉を開ける音が聞こえる。
「多分いない」
「ありがと」
少し埃っぽい更衣室に入り、寒いけど窓を開ける。換気しないと咳が出ちゃうくらいには埃っぽい。更衣室のドアも開けて風が通るようにしてから掃き掃除、拭き掃除開始。
「おー、はよ。決めてくれたんだって?」
「岩泉くんおはよ…うん。ジャージ貸して」
「松川から聞いて花巻とアホ川のもかっさらってきた」
及川くんのジャージ着たなんてバレたら私暗殺されるのでは…?1番中に着込むか。お礼を言って受け取り順々に着ていく。3年生は皆背が高いから私には全部ブカブカでちょっと着膨れ感はありつつもそこまでおかしくない見た目になってるし何よりあったかい。
「ブハ、すげーもこもこしてるじゃん…ナマエちゃんオハヨ」
及川くんだ。おはようと声をかける。
「更衣室の掃除終わった?走り込み終わってサーブ練始まるからおいで」
「…あとこの雑巾洗っておしまいかな…皆あれやってるとき私何するの?球拾い?」
「被弾する気…?外に行っちゃったやつとかの救助でいいよ、コート内まだ慣れてないだろうし」
被弾…?!恐ろしい、やっぱり私いつか意図せぬ大怪我してしまいそうだ…。もっと体作りして被弾しても青あざで済むようにしないと。
及川くんについていき、体育館へ入ると何人かに2度見されるので一応頭を下げておく。昨日の番号がないと誰が誰だか分からない。
「あ………君は確か……金…」
「金田一です」
ああ、そうそう。一静たちから私の激的な物覚えの悪さは聞いてたみたいで気にしてないよって言ってくれた。助かる〜〜…。サーブ練習をみて、たまに体育館の外に出ていくボールを拾い集めてタオルで拭いて戻す作業を繰り返してると女の子たちに囲まれる。
「ちょっと、アンタ何?マネージャー?」
「まだ仮かな」
そう返すとなんで私みたいなのがマネージャーなんだと怒り始める。この子達…誰だ?見たことないから同じ学年じゃないかも、下級生?
「じゃあ聞くけど…どうしてそんなにマネージャーになりたいの?多分みんなボール当たったら骨折れるよ」
「はあ?そんなの、及川先輩を近くで見ていたいからに決まってるでしょ!」
「近くで……応援ってこと?」
そう尋ねるもどうでもいいと返ってくる。
「いや、どうでもよくないでしょ。どれだけあの人たちが本気でやってるか分からないの?」
「大会前になれば夜遅くまでビデオを見て相手校を研究したりして…それでも負けて泣いて帰ってきて、毎日どんな思いで練習してると思ってるの?
本気の人たちの中にそんな中途半端な人が混じればどれだけ迷惑かわからない?」
「ハイハイ、ストップ。ナマエちゃん、正論パンチよしてね…君たちも練習の邪魔はしないでね」
及川くんにグイ、と腕を引っ張られる。
「ナマエちゃん結構言うとき言うんだねえ」
「…及川くんの中で私どういうイメージなの?まりもじゃないんだから…」
「まりもとは思ってないけどね?!」
何にも考えてなさそう、とよく言われる。けど私だって人間だから感じるし考えることもある。顔に出にくいだけで感情も豊か…だとは思ってる。
「おとぼけちゃん、遅かったな」
「下級生に絡まれてた…はい」
そういうと一静は早速か…とため息。及川くんの人気はすごい、ルナちゃんも辟易するほどなんだから。そして唯一のマネになった私への攻撃はこれから増すんだろうな……。
「何かあったら言えよ、コーチ交えて対策考えるから。…つーかお前がへらへら愛想振りまきすぎるからこうなんだろうか、土下座しろ」
「応援したい気持ちは嘘じゃないんだから無下にしなくていいんじゃない?……まぁ誰のものでもない人を独占しようとして攻撃してくるなんて時間の無駄だと思うけど……あ!」
「何?忘れ物?」
「今朝一静にベッドから引きずり出されたせいでお菓子忘れた……朝練終わったら購買行ってくる」
「だめに決まってんだろ、食うなら飯を食え」
お母さんみたいなこと言ってる岩泉くんにジャージ返せと言われ脱ぐ。花巻くんや一静の分、及川くんの分も脱いで返すと一気に寒くなる。そのまま職員室に寄り、入部届にサイン。
「というわけでマネになった」
「え〜放課後のお菓子パーティーが…たまにはルナの相手もしてよね」
「もちろんするよ」
「マネの方はともかく、下級生とかに絡まれたりしない?アタシはそっちが心配だわ……あんたどうせ言い返しちゃうでしょ」
「うん…今日早速言い返しちゃった」
「何かあったら言いな、証人は多いほうがいいでしょ」
頼りになるルナちゃんにヤングドーナツを献上。やはり持つべきものは友!1年生の頃からクラスが一緒で、初めてできた友達ということもあるけれど、このあっけらかんとしたルナちゃんの性格や考え方に何度も救われてきた。
「あ」
「コラ、食うな」
「げ、一静……また2秒しかたってないよ」
「秒数の問題じゃないの」
ヤングドーナツをゴミ箱に捨てる一静の背中を睨む。まだ食べられたのに…。
「現国のテキスト貸して。忘れた」
あいよ、と電子辞書つきで渡す。
「またシール増えてる」
「可愛いでしょ?懐かしのミルモ」
シールをペタペタ貼りすぎてパッと見電子辞書には見えない代物になってるけどかなり気に入ってる。パソコンやスマホもシール貼っちゃうので、私の持ち物は柄やキャラクターの主張が強い。
そうやってお昼まで過ごしてルナちゃんとご飯を食べる。追加のお菓子を買いに購買に行くと、また女の子たちに囲まれる。
「松川くんの次は及川くんなんだ?尻軽女じゃん」
おお…すごいこと言うな。ルナちゃんが威嚇した猫みたいに肩をあげて怒るので宥める。
「否定しても信じないだろうし言わせておけばいいよ」
「……ならいいけど…」
カントリーマアムを買ってご機嫌に帰る。どうせ皆、卒業さしたら及川くんのことなんか忘れるだろうに…。彼のバレーを本気で好きで追いかけてる人があの子達の中にいるとは思えない…練習の見学だってロクに見てないんだから。
チクチクと攻撃される日は続いたけど無視してれば段々とやんでいく。そんなものだ、攻撃しても折れない私に対してもどれだけマネージャー希望しても及川くんや先生が頷かないのが続けば諦めるしかない。
「今日って……こっちがどっか行く日だったっけ?」
「違うよおとぼけちゃん、烏野が来るの」
一静に言われそうだった、と返す。練習試合に行くことも他校が来ることも多くて予定がごっちゃ混ぜになる。最近買ったスケジュール帳にも書ききれないからやめた。
「じゃあ…コーチの椅子は国見くんにまかせる。私ツアーガイドしてくる」
「おー頼んだ」
「先輩、迷子にならないでくださいね」
「国見くん、私この学校3年目だよ」
スターティングメンバーは優先的に覚えるようにコーチにアドバイスされたから頑張って覚えた。補欠の子たち、そうじゃないメンバーもなんとなく顔とプレースタイルは一致するように…なってきたかなという感覚。
「あ、こんにちは」
「ちわっす!!!」
声でか……びっくりして固まってると向こう奥からどっしりした人が出てきた。烏野の主将らしい……顔だけとりあえず覚えよう。あとは番号。
「マネのミョウジです」
「清水です…3年生?」
「うん、グミ食べる?」
「え…あ…ありがとう…3年生からマネに?」
羨ましそうに見てくる人がいたけど女の子にしかあげないよ。
「そう、幼馴染から誘われて……続いて右手にまがります」
そう曲がった瞬間水風船が飛んでくる。顔じゃなくてよかった…投げた先を見ると…知らない子たちだ。
「あ〜ごめんなさ〜い」
「ミョウジさん、知り合い?」
「………いや…分かんないや…まあともかく、この先の体育館です。ツアー完了」
多分同級生ではない、と付け加えると清水さんがマジか?みたいな顔してた。何か言いたげな時の一静そっくりだ。
「ナマエ、あんたずぶ濡れでなにやってんの…?」
「あ、ルナちゃん。これ…ずぶ濡れなの?」
「アタシはずぶ濡れに見える、シャツ貸したげる」
そうなんだ、ちょび濡れくらいかと思ってたから私もびっくりした。すぐ乾くよ、と断っておく。
「矢巾くーん、更衣室教えてあげて。清水さんはこっち」
「コラコラコラおとぼけちゃんこの数分で何あったわけ?」
「水風船に被弾した」
(あとで烏野にも聞き込みするけど…とりあえずシャツ着替えてらっしゃい、はい)
(一静の?今日汗かいたって言ってなかった?)
(汚いみたいな扱いしないでくれる?じゃあ及川のあるけど)
(あ、いい…じゃ清水さん行こうか。荷物も置けるから)
(うん)