HQ 菅原
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ワンクッション
*ミョウジナマエ
「うう゛…」
お母さんへ。私は流れ弾で頭を強く打ちそのまま帰らぬ人となりました。ボールだよね?ってくらい固くて痛くてびっくりしました。レンガや石壁をぶつけられたのかと思いました。脳内でそうやってお母さんへの遺書を書いていると、投げてきた張本人が叫びながらすっ飛んでくる。私は流れ弾に当たりやすい星のもとに生まれてきたんだろうか…。
梟谷と烏野戦。エーススパイカーと言われるやたら声も体も大きくてテンションが高い3年生が打ったボール、烏野のレシーブがうまく上がらず他の試合のスコアをまとめていた私の左の頭と顔も少し巻き込んで当たる。よろけて倒れたし、ほっぺが痛いから左の頬を抑えているせいでビンタされた人みたいになってる。
「おい、大丈夫か?!」
「すっげえ音した…」
「目回ってない??」
いろんな人に顔を覗かれ、あまりに様子を尋ねられるからどれに答えていいか分からない。
「悪い、平気か…?!」
「木兎さん、集中力切れてコントロール悪いからですよ」
また増えた…。痛む頬を抑えて大丈夫です、と答えるけど生理的に流れる涙を見られて「泣いてる!!!」と大声で言われる。
「木兎、まず声でかい。慣れてない人にその声量で近寄るなって言ってるでしょ、離れて。…はいナマエちゃんアイシング。…視界、ぼやけたりしない?木兎ボールは相当痛かったでしょ…」
雀田さんにアイシングをもらい座ろうか、と地面に座らせられる。
「あ〜涙止まらないよねえ、分かるわかる。タオル貸すから顔隠しなね。…ごめんねえ、うちの木兎が…」
白福さんがタオルを貸してくれるのでお礼をいって頭から被る。いや……生理的な涙なのに、たくさんの人にジロジロ見られたくないっていうの分かってもらえるの助かる…。
「おい、平気か?目動かしてみろ」
コーチに言われたとおり目を動かす。
「っは〜ヒヤッとした……コート脇いるときはお前も気をつけろな…」
はい、と返事をして散らばったスコア表を集め…てある!!仁花ちゃんだ。ありがと〜と言うとこのくらいやるやる!と言ってくれた。
左の頬が熱い。アイシングってよっぽど熱をもった患部なら当ててて気持ちいいけど、少し打撲とかだと冷えすぎて痛くなってくるから苦手。でもアイシングを離すとジンジンと痛むんだよね…。
「……ごめん、ミョウジさん…俺がレシーブミスった…」
「手の角度こうだっつってんだろボゲェ!!!」
おお、騒がしい二人だ。うちの二人とも負けじと声も存在感も大きい。
「いいよ、事故なんだから気にしないで。それと影山くんもやんのかステップしすぎないでね」
「「やんのかステップ…?」」
2人がハモる。知らないのかな。猫が威嚇してるときにぴょんぴょん飛ぶときのやつ、というと影山くんは分かった!って顔のあと、どこがやんのかステップなんだ…?って顔してた。
「あの…大丈夫か…?」
さっきより声を抑えて心なしかしょんぼりした梟谷のエースがやってくる。ほんとに同じ人…?!ものすごい背中が丸まってる、そんなに向こうでコテンパンに怒られたんだろうか。
「だ、大丈夫です…!」
痛みによる涙は収まったけど、少し腫れてるみたいでじわ〜とした放熱を感じる。いきなりボールが当たったからわからないけど、相当な威力だったんだな…。ヤンキー漫画みたいに殴り合うまでしないと顔が腫れることないだろうし…お母さん誤解しないといいけど…。
「ナマエちゃん、少し腫れてんなあ…アイシングちゃんと当てて」
痛そう、と眉をしかめる菅原先輩がおろしてたアイシングを私の手ごと持ち上げて頬にゆっくり当ててくる。
「清水も谷地さんも危ないし…マネは皆ヘルメットつけたらどう?」
「先に熱中症になるからいい」
菅原先輩、多分真面目に提案してるんだろうけど清水先輩からピシャリと断られていた。こういうとこちょっと天然ぽいよね。
夏休み入ってから一週間の合宿でまた会おう、とそれぞれ別れを告げてるのを見守ってると黒尾さんがやってきた。さっきの、大丈夫?と聞かれるのでもう痛みだいぶ引きました!と返す。
「…ほんとすごいね、ナマエちゃんのトコのナイトくん」
いきなり笑い出す黒尾さんに疑問を浮かべてると私と黒尾さんの間にふわふわの髪の毛が割り込んでくる。このふわふわは菅原先輩だ。
よそ見厳禁、そう言ってきた菅原先輩は前よりさりげなく…ただ私も気づくレベルで他の男の子と2人きりになったりするのを阻止するようになった。部活的にどうしても2人きりにならないわけにはいかないから、烏野ではあんまり見ないけど…ナイトくんか、言い得て妙だ。
「俺の子に何か用ですかコラ」
「ヤンキーになっちゃった…」
聞いたことある口調で黒尾さんを見上げる菅原先輩。はい行くよ、と手を掴まれる。ひらひらとこちらに手を振る黒尾さんに会釈だけしておく。
「ふふ、俺の子嬉しいです」
「こっちの身にもなってよね、目を離せばすぐ攫われかけて…!不用心だべ」
攫われかけてるように見えたらしい。
「だって菅原先輩来てくれるから……私先輩しか見てないですし」
「だぁもう!!!レッドカード!!」
また退場くらってしまった。審議の余地もない即刻退場に厳しすぎないか?とブーイングしてると武田先生から車に乗るよう呼びかけられる。
烏野に帰り荷物をまとめていると仁花ちゃんが血相変えてやってくる。影山くんと日向くんが殴り合う勢いで突っかかってるというものだ。それは…先輩の力を借りないといけないと判断した私は仁花ちゃんに田中先輩あたりを呼ぶように頼み二人の元へ向かう。
ふたりの攻撃の持ち味は身体能力が高い日向くんがブロックの手薄なところに走り、人間離れした技術を持つ影山くんがそれに合わせるような形。ここに打て、と影山くん主導のスパイクだから日向くんはなんと打つ際に目をつむって打ち込んでいる。
「影山くん、日向くん」
あんまり刺激しないように二人の肩を掴む。…けどヒートアップしてるな…私じゃ止められそうにない。単語単語を拾うと……日向くんは影山くんに頼りきりじゃだめだと感じているようで、今までのやり方を変えると主張して影山くんはそれを反対しているようだ。
お互いの出方を見ているタイミングで物理的に間に入る。目を見開いた影山くんと目が合う。
「内容的に大事だから話し合いをしたほうがいいと思う。さっきみたいに手が出るなら私も手を出して止めるよ、二人はどうする?」
「コラコラ!!お前らなにやってんの!!!」
田中先輩がやってきたこともあり、二人は頭が冷えたようだ。……私まで正座させられてるけど。
「で?頭に血が上った男の間に割り込み?何してたの?」
たいそうお怒りの菅原先輩付きでだ。田中先輩もアワアワしてる。
「落ち着いたタイミングで割り込みましたもん…」
「割り込むなっつってんの!」
腫れてない右の頬を指で突かれる。
「なんか……急に私が視界に入ってきたらびっくりして冷静になるかなって…声かけても聞こえてない感じでしたし…」
「まあその考えは分かるけど…間違えて殴られでもしたら俺も殴り合いに参加するハメになるべ…」
「スガさんサラッと怖いこと言わないでください!!」
田中先輩も震え上がってる。心配はかけただろうし一応謝る。
「ミョウジさん…悪かった…あと、間入ってくれてサンキュ。頭冷えた」
影山くんがそう伝えてくる。
「うん、次は手を出さないようにね」
そろそろ帰るかとお開きになる。鞄を持つとひょい、と重みが消えた。隣を見ると菅原先輩がカバンを取り上げるように持っている。
「も〜、ヒヤッとしたべ」
「ふふ…すみません」
でも私意外とああいうの得意だったりする。たとえばさっきの二人のうち、日向くんか影山くんどちらかと対峙するような状況だったらこんなに落ち着いていられないけども…第三者仁花ちゃんみたいな構図のときは意外とうまく仲裁できる。そのことを菅原先輩に伝える。
「そうじゃないんだけどな……でもなんで仲裁うまいの?」
「昔、母と父がよく喧嘩してたんですよ。たぶん、我が家の方針について?色々ぶつかってて…」
「えぇ、今あんなに仲良さそうなのに??」
たしかに…おばあちゃんも言ってたけど今こんなに落ち着いて仲良くできてるのはすごい。そこまで悪化したわけじゃないけど関係修復できてるのかな…
「りくのことも、私のことでもよく話し合ってたんで…。昔、私も結構体弱くて…すぐ熱出すし、吐いちゃったり…なんかもらってきたり…。
そういうのもあってりくが生まれてちょっと…全員過剰に過保護になってた時期に、横浜から東京に引っ越していつでも2人とも通院させられるようにすべきだ派の父と、私は落ち着いてきたからともかくりくは環境要因な気がするから都会じゃなくて静かなところに行くべき派の母で大喧嘩してた時期あって…」
「ナマエちゃん、たしかにすぐ熱出すよね」
う…その節は大変ご迷惑をおかけしましたが…!!昔よりマシになった方と強調しておく。
「多分私しかこの家族をとり持てない!って火事場のバカ力で鍛えてきました、私の意見としては暴力は絶対NGだけどお互い言いたいこと言い合ってちょっと尻すぼみになれそうなときに私という関係ない存在を物理で挟みます」
「物理で挟む…?」
「物理的に間に入るんです、いきなり言い合ってた相手じゃなくて私が入るからどちらもえっ?ってなるじゃないですか。呆気にとられる感じ?…そのときにできれば5分程度のクールダウンを促します、話し合いをしろと。それでなんか…怒鳴り合いはだいたい終了しますね」
「さすが…経験してきた数が違うからか顔つきが違うね?」
そうでしょうそうでしょう。人の怒鳴り声は未だに苦手でたまに固まってしまうけど、仲裁しなくては!となってからは動けるようになった。
「この2日でめちゃくちゃ太った気がします」
「………」
「なんですかその目…めちゃくちゃ食べたんですもん。一応…」
「あんなんで太るわけねえべ…いやあ、あんなに偏食とは知らなかった。あ!もしかして……野菜食べないから熱出やすいんじゃないの?」
「…それ前お母さんに言われました…でもお米は食べてるので」
そう言うとお米はすべてを解決してくれるわけじゃないよ、と冷静にツッコまれた。
「先輩が食べたほうがいいって言うなら食べます…」
「ふは、じゃあ食べて」
分かりました、と返事する。その日の夜、サラダを食べた私にお母さんが立ち上がって驚いてた。そもそもなんでこんなに野菜嫌いなんだっけ…?と思い返してると、熱が続いて後遺症として短期間味覚機能が落ちたときに野菜が軒並みだめになってしまった、とお父さんに教えてもらった。何を食べても美味しくなかったというのが残ってるから苦手なのかな…。普通に食べたサラダは特にいんげんが甘くて美味しかった。
「というわけで野菜デビューしたよ!いまはレンコンがお気に入りです」
ほら、とお弁当に入れてもらったきんぴらを見せる。
「お肉が嫌いなのは?」
「単純に好きじゃないだけ…脂身胃もたれして辛くない?」
そうナツメちゃんと仁花ちゃんに尋ねると分かる、と返ってきた。最後に食べたお肉の記憶は…お父さんが福岡のお土産で買ってきたホルモン鍋だったかな。次の日まで胃もたれしてほんとに辛かった。
「あ、そういえば…顔のこと何も言われなかった?」
「帰ったら一番にお父さんが大騒ぎしてた…大変だったよ仁花ちゃん…」
誰に殴られたんだ?!と言われ、それによってりくとお母さんまですっ飛んできて大騒ぎだった。ボールが…って言っても最初は信じてもらえず…こんな腕の太いこんな背の高い人のボールが当たっただけ!とエアー木兎さんをなんとか再現してようやく信じてもらえた。
(烏養さぁん…あ、居た。)
(おぉ、顔平気か?)
(もう痛くないです…あの、木兎さんみたいな…全国的に強い学校と選手のリストほしいんですけど、書いてもらえますか?)
(木兎みてえな…?動画でも見んのか?)
(はい、とりあえずその人たちの中学〜今まで漁って……時間あれば見に行こうと思って)
(見に…?)
(…怒られますかね?)
(いや…部外者禁止って言われたら素直に帰れよ)
(ありがとうございます!)